◇紅い瞳の男 Ⅰ
市場に黒い影。
フードを深くかぶった男。 その隣には、金髪の派手めな男。
金髪の男が口を開いた。
「なぁ、今日は何を買いに来たんだ?」
「・・・麦。と野菜と調味料。 あと服。」
フードをかぶった男は、簡潔に答えた。
金髪の男は、ハァと小さくため息をついた。
「あいかわらずだなぁ・・・。 せっかく久しぶりに会って、外に出たのに。」
「別に久しぶりじゃない。 1週間会ってないだけだし、外には出たいと思って出たわけじゃない。」
またまた、簡潔に。
この男の名は、ルシファー=ユーリ。
その隣の男が、ロイ=アンバー。 友人といってもこの男の素性も知らない浅い仲。
「寂しい、とか感じないのかよ?せっかく唯一の友人が遊びに来てやったのにさ。」
「べつに。とっとといくぞ。」
二人は、市場へ向かっていった。
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「これとこれとこれをたのむ。」
ルシファーは、店で野菜を買っていた。 ちなみに、ロイは広場に待たせてある。 うるさいからな。
「はい、毎度。」
ペコリ、と頭を下げ広場に向かう。
道には、人であふれかえっている。 ぶつからないように避けながら歩いていく。
フワァ、と人々の間に風が吹く。
(少し風が強いが、いい天気だな・・・。 本当に久しぶりに外へ出た。 2週間ぶりか?)
そう、ルシファーはほとんど外へは出ない。 どうしてか? それは・・・
広場の方が騒がしい。 もしかして・・・、という悪い考えが頭をよぎる。
広場へ着いた。 やはり、なにかあったようだ。 否、現在進行形で、だ。
ソレを見たとき、ハァとため息がでた。
だから、嫌だったのだ。 この男と外へ出るのは。 また、見られる(・・・・)可能性が増えたじゃないか。 おれは、イライラしながら
「ロイっっ!!!!」
でかい声で騒ぎの原因となっている男の名を呼んだ。