第087話 その先で何を思う
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「これなら止められるかな?『全知全能神』"ファーストライトニング"」
似たような技ばかり使われても見慣れているので、怖くはない。
落雷を綺麗に避けながら近付く。
彼には能力を消す力もあるのだから、固有スキルに頼らない近距離戦を仕掛けた方が良いだろう。
「僕に近距離戦は意味が無いよ。」
バリアがあるからなのか余裕そうな態度だ。
だけど、今までだって似た様な態度の奴らを見て来た。
その顔を崩すのは俺の得意分野。
すぐに引き攣った笑顔に変えてやるよ。
「俺の刀の錆になれ。」
「良いね、そのセリフ嫌いじゃない。」
鬼丸が激しくぶつかる。
それでもバリアが壊れる事はない。
ならば、もう一押しする。
魔素を全身に流し込み、身体能力の向上させた。
これで鉄でも何でも斬られる力を得た。
「魔素か。無意味な事を。僕の本気を見たいなら・・・」
パリンッというガラスが割れるのに近い音がした。
バリアが壊れたのだ。
田中も予測していたなかった出来事に驚いた表情を見せている。
「魔素だけでバリアを突破されるはずが無い。」
「それが起こってるんだから仕方ないよな!」
このチャンスを逃す訳にはいかない。
相手に隙を与えずに連撃を喰らわせる。
田中も刀で受けるが普段は武器を使わないからなのか、押されている。
意外と簡単に勝ててしまうのでは無いか。
そう思ってしまう程に俺の調子が良い。
「俺達が今見ているのは次元の違う戦いだ。」
「えぇ。あの中に入っていける自信がないわ。」
「足手纏いになってしまいますよね。」
他の3人は唖然としていた。
転生者同士の戦いは常人に入れるものでは無い。
だからこその苦悩がある。
仲間として魔王討伐に参加出来ないという悔しさ。
今まで一緒に旅をして来たからこそ、隣に立ち戦いたかったと思う。
「足手纏いにならないで戦う方法を教えてあげようか?」
悪魔の囁きだった。
魔族であるコイツの提案が良い物のはずが無いと分かっている。
だけど、この場にいる3人はその提案を静かに聞いていた。
「これを君達に。」
渡されたのは3錠の怪しい薬。
言いたい事は理解した。
これはきっと前の奴らが使っていた強制覚醒薬の錠剤。
飲めば苦痛を伴うが、それ相応の力を得る。
3人は顔を見合わせた。
自分以外の2人はどうするのか。
それが気になるからだ。
「どうしたんだい?それを飲めば神にでもなれるはずだ。」
そうだ、俺は力を欲している。
だから、今すぐにでもこの薬を飲むべきだ。
分かっているけど、本当にそれで良いのか。
偽りの力に手を染めて、それで勝った時両手を上げて喜べるのか。
貰った薬を地面に落とし踏みつける。
こんな物は必要無い。
俺は自分の力で強くなる。
「俺達も参加するぞ。」
「でも、あの中に入るのは。」
「3人の魔素を合わせて、イリミの魔法スキルを使う。一瞬の攻撃なら邪魔にもならないし、問題ないだろう。」
「わ、私ですか。出来ますかね?」
「心配するな。俺達がいる。」
3人の意思は固まった。
「あり得ない。まさか、君達の地力であの戦いに参加しようと?馬鹿も休み休み言ってくれ。」
「誰が馬鹿だ。良いから黙って協力しろ。」
「え?僕も?」
「当たり前だ。魔王を倒したいなら、少しは協力するんだよ。」
「良い勝負だ。こんなヒリつく戦い久しぶりだ。」
何故こんなにも楽しそうに戦うのか。
俺には理解出来ない。
死が隣り合わせの状況で笑っていられる理由はなんだ。
「なら、負ける苦しみで絶望しろ。」
「それは楽しみだ。そんな事が出来るなら僕が1番味わってみたい。」
チラッと田中の後ろを見ると4人が何やら動いているのが見える。
その様子を見ただけで理解する。
イリミに魔素を集めて破壊力のある一撃をお見舞いするつもりだろう。
なら、俺との戦いに集中させる。
一瞬でも4人に気が向いてしまわない様に。
「最強ってのがどう言う事か教えてやるよ。神の使いよ。我に力を与えよ。天命はここにあり。"真神鬼鋭"」
鬼丸が真っ赤に染まる。
それは血を喰らう本物の鬼の様に異様な光景だった。
俺のチートスキルで少しでも傷をつけたい。
しかし、そん何思いとは裏腹に荒ぶる連撃を涼しい顔で対処する田中。
普通だったらここで心が折れてしまう。
だけど、本当の目的は時間稼ぎだ。
「これでも涼しい顔が出来るかよ!」
「それぐらいなら簡単に止められるさ。」
「残念、俺の方の話じゃねーよ。」
「八重発動『水魔法』"デッドアクア"」
海を連想させる程の水が田中を襲う。
一瞬、逃げ出しそうになっていたが、俺がそれを止めた。
腕を力強く掴む。
これでそう簡単には逃げられない。
「このままでは一緒に死ぬ事になるんだぞ!」
「だから、どうした。俺達は元々死んでる身だ。ただ、正しい秩序をもたらす。それだけの事だろ。」
息も出来ない海の中。
田中と一緒に巻き込まれたせいで俺も死に掛けている。
あぁ、まさかこんな事になるなんて。
この世界は楽しかった。
もっと3人で旅をするのかと思っていた。
こんな所で終わるなんて嫌だ。
だけど、俺がどれだけ拒んでも死は免れない。
あの世界がどうなったのか。
最後にそれだけでも良いから知りたかった。
◇◆◇
『おい、お前。力が覚醒してすぐ死ぬなんて情け無いな。』
死んだ奴に掛かる言葉じゃないだろ。
『俺が甘い言葉を掛かるとでも思ったか?』
いや、ないだろうな。
自分には厳しく。
それが昔の俺のスタイルだから。
『どうやら田中も死んだみたいだ。こんなにあっさりと死ぬとは思ってもいなかったけどな。普通、魔王なら第二第三の形態があるもんだろ。腑に落ちない所が多すぎる。』
どうして田中が魔王になろうと思ったのか。
どうして魔族が田中を慕っていたのか。
分からない事は多い。
だけど、あいつにはあいつの物語があったのだろう。
出来る事ならその物語も読んでみたいものだ。
それしても、死ぬ直前の田中の顔。
少し嬉しそうな顔をしていた。
そこだけ切り取れば、死にたがっていた様にも見える。
『このまま終わりってのも寂しいもんだな。』
いや、これで良い。
俺の冒険で誰かが幸せになるなら。
『ケッ、くだらない言い訳だぜ。死んだら、何も残らないだろ。』
俺はそう思わない。
あの世界で残した痕跡はきっと誰かに語り継がれるさ。
◇◆◇
「おい、遅れるぞ。」
「分かってるわよ。この日だけはちゃんとした格好しないといけないでしょ。」
「もう行っちゃいますからねアイリスさん。」
彼等はどこへと向かっていた。
イリミは大きめのバスケットを持ち、エルマードは花束を。
アイリスは何も持っていないけれど、精一杯の正装をしている。
その足で辿り着いたのは、墓石が並ぶ広場。
ここは元々王城の立っていた場所である。
今は跡形も無くなって、あの時亡くなった人々を埋葬した墓地に変わっている。
3人は1つの墓石の前に立つ。
そして、手を合わせる。
「お前が亡くなって3年か。俺達ようやくA級のパーティになったんだぞ。」
「本当にアンタがいたらすぐだったのに。」
「もうアイリスさん、そんな事言ったらダメですよ。」
イリミがバスケットから食事を取り出す。
そして、飲み物とサンドイッチを墓の前へ。
「「「ありがとう、リューマ。」」」
グラスの鳴る音が微かに広場へと広がった。
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