第074話 神を殺す方法
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イリミの攻撃に少しだけ動揺を見せたが、対処する為に動き出す方が早かった。
自分の弱点となる穴の空いた心臓部を塞ぎながらも防御系のスキルを発動させている。
ここまでの一連動作を瞬時にやって見せるのも奴の強さの1つ。
「安易な発想だ。その速さの水魔法が俺に効くはずもないだろ。」
ここまでは想定している。
イリミの技は良い点として威力が挙げられるが、発動するまでに時間が少し掛かるという致命的な弱点が存在する。
だから、これは本命の一撃では無い。
「だが、厄介なのも事実。まずはアイツから倒すとしよう。」
もう一度五重発動されるのを恐れてイリミから潰しに来た。
口ではどうとも無いと言っていたが、やはり脅威ではある証拠だ。
「簡単にイリミまで辿り着けると思わないでよ!『斧術』"天地鳴動"」
アイリスがイリミのカバーに入る。
そうなると迂闊には攻められない。
少しだけ苛立ちが募るマホン。
どれだけの実力があるかは知らないが、俺達の連携を前にして勝てるはずが無いだろ。
「チッ。『ギャンブルバトラー』"イカサマアタック"」
懐に納めるていた剣を取り出して、斬撃を飛ばす。
武器を使った攻撃は始めてだったので、どんな攻撃なのかと身構えたがこれくらいならアイリスは余裕で対処出来る。
単調な斬撃は着々と距離を詰め、アイリスの目の前まで来た。
イリミの下まで辿り着かせない様に、斧を構えて対抗しようとする。
しかし、この攻撃は俺達の想像とは違っていた。
受け止めようとした斧をすり抜けて、イリミの下まで一直線。
どういう仕組みか分からないが、何度止めようとしても無駄だった。
「二重発動『土魔法』"マッドウォール"」
イリミも抵抗する。
地面に手を付き土壁を生成していく。
これなら止められるかも知れない。
そんな願いも虚しく、土壁さえもすり抜けた攻撃はイリミに直撃する。
あの攻撃がどんな効果を持っているのか。
それが分からないとアイツに好き放題されてしまう。
「まだ立てるみたいだな。もう一度喰らわせてやるよ。『ギャンブル・・・」
「隙だらけだ。」
エルマードが牽制する。
負傷したイリミは自分で回復魔法が使える。
だから、連続して負傷しなければ問題は無い。
「今だ。全員、攻撃態勢へ。」
沈黙を続けていた騎士団がようやく動き出した。
失礼な言い方をすれば邪魔でしか無い。
このタイミングまで何もしなかったのだから、こちらに任せて欲しかった。
連携の小さなミスでも命取りになると分かっているはずなのに。
「魔法スキル用意、放て!」
確かにイリミの四重発動レベルの魔法スキルが飛び交っている。
だが、スキルの強さが己の強さに直結はしない。
今までの戦いを見て、魔法スキルではどうにもならないと理解していないのか。
騎士団は敵では無いから一々火種になる様な発動はしないが、少しは考えてから動いて欲しい。
「それが効くと思っているなら愚かだ。」
騎士団の攻撃は全て無効化される。
どんな方法で無効化されたかは分からないが、遠距離からの攻撃は防がれると思って行動した方が良い。
「何ッ!まだ諦めるな!近距離での戦闘に移るぞ!」
何故、急に戦闘へ参加して来たのか。
その理由は何となく分かっている。
俺達の活躍している間に、何も出来てないという自責の念があったからだろう。
国王に深い忠誠を誓っている身として他人が活躍しているのに、自分達が何も出来ないのは歯痒い。
だけど、それはお前らの事情だ。
戦いには持ち込まないで欲しかった。
「数でどうにかしようとは。厄介な雑魚達だ。仕方ない。不本意だが、アレを使うとしよう。」
あの時にも見た注射器を掲げて、勢い良く腕に刺す。
これだけ強いコイツでも例に漏れる事なく苦痛で顔を歪めている。
激痛の走る物だと分かっていても使用するのは、得られる効果が良いから。
人工で作り出したは言え固有スキルと遜色の無い力を発揮する。
まだ分からない事が多いけれど、もしも俺が似たような立場にいたら躊躇う事なく使うだろうな。
「お前らとの格の違いを見せてやる。『偽りの神』」
また神と同等を自称する力か。
ダンジョンでも似たような力を作り出した奴がいたが、どいつもこいつも神になりたがるのはどうしてだ。
力を欲するのが悪いとは言わないが、神には神のストーリーがある。
それを無視して、急に神へなろうとするなんて愚の骨頂。
厨二病が聞いて呆れるわ。
「破壊と再生。俺好みの力だ。さぁ、雑魚共、死ぬ覚悟が出来た奴から掛かってこい。」
「その余裕打ち砕いてやる!!!」
騎士団の1人が斬り掛かる。
勇敢である事は褒め称えるべき所だが、無謀であるのはどうにかすべきだ。
功績に目が眩んで状況の把握を怠っている。
アイツがどんな効果のスキルを手に入れたのか。
それが分からないのに攻め入れば当然、
「『偽りの神』"破壊と破壊"」
攻撃も虚しく、片手で顔を掴まれる。
勿論抵抗はしてみるが、あまり効果は無い。
掴む力は徐々に増している。
表情は見えないが、バタバタと抵抗している様子からも苦しいのが伝わる。
最終的には風船の様に簡単に顔を潰されてしまった。
「貴様ーーーー!!!」
感情的になり、もう1人の犠牲者が出そうになった時だった。
「騎士団長として命令する。ウスムス、下がれ。」
感情的になっていた男は騎士団長の言葉で下がる。
何度かは目にする事があったが、声を聞くのは始めてだ。
普段は腕組みをして、沈黙を貫き通す男のイメージがあった。
しかし、この惨劇には流石に黙っていられなかったか。
「冒険者の4人。邪魔をして済まなかった。私は、私抜きでどれだけ統率が取れるのか試して見たかったのだがこの有様だ。私は絶望した。我が騎士団はここまで衰退していたのかと。戦況を荒らしておいて申し訳無いのだが、後は君達に任せても良いだろうか。」
深く頭を下げる騎士団長。
良いも悪いも最初からそのつもりだった。
途中で邪魔されたから中途半端に終わったが、俺達ならこの状況からでも勝てると確信している。
「任せろ。俺達は必ず勝ってくる。」
「余裕そうな態度が気に食わないなー!」
怒り狂うマホン。
それもそうだ。
敵を目の前にして悠長に会話をするなんて。
しかも、必ず勝つとまで宣言しているのだから。
「自分が挑発されると簡単に怒るんだな。自分で単細胞って証明している様なもんだろ。」
「まずはお前からぶっ殺す!」
「『怒れる闘牛の目覚め』"強制弱体化憤怒"」
感情の昂ぶりが抑えられず、動きが制御出来なくなる。
しかし、相手が我を忘れている時間も長く持たないだろう。
だから、俺はここで決めに行く。
「"映像模倣"」
ここで一度見たイリミのゴッドアクアをイメージする。
そして、可能な限り近付いて穴の空いた所を直接手で触れて発動させる。
いくら、コイツの身体能力が高くてもこの距離なら外さない。
「チェックメイトだ。」
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