第065話 食事会は探り探り
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まず最初に聞かれたのはランクの事だった。
冒険者の1番分かりやすい指標として挙げられるのは理解している。
アイリスとエルマードはすぐに自分のランクを申告した。
A級と元B級。
経歴としては申し分無い。
だからこそ、イリミと俺は口を噤んだ。
勝手な解釈をしてもらって構わないが、自分からF級なんですとは口が裂けても言えない。
「で、エルフの方とリーダーさんは?」
・・・これで返事をしないのは流石に不自然でしょうか?
2人で顔を見合わせて答えるかどうかに悩む。
俺の実力を国王が見た以上はF級だからと蔑まれる事は無いと信じたい。
どちらにせよ、どうしてこのランクで強者と渡り合える実力があるのか、根掘り葉掘り聞かれる事になりそうだな。
「冒険者ランクを提示する必要は無いだろ?この2人も俺達と同等、いや、それ以上の力がある。」
「お気分を害されてしまったら申し訳ございません。ただ、雑談に花が咲けばと思い聞かせていただきました次第です。」
この言葉が本当なら、こちらを値踏みする様な意図は無いらしい。
雑談しようと思ったら、偶々気まずいトークテーマだっただけ。
ならば、空気を変える為に俺が会話を振るか。
「美味しいですね、この食事。」
今、会話変えるのは下手って思ったあなた。
これが意外と良いんですよ。
大抵の人に通用する会話と言えば食事の話だって、俺の父親が言っていたので間違い無い。
残り数人は諦めて沈黙を受け入れろとも言っていたけど。
「はい、とても美味しい食事です。普段はこれ程の食事はいただけないので貴重な経験をさせてもらっています。」
受け答えをしてくれるのは先程から喋っている青髪の女性だけ。
どうしてなのかと思い様子を伺うと黙って食事をする騎士団員がほとんどだ。
テーブルマナーとして私語厳禁なんてのは聞いた事が無いけど、もしかするとこっちの世界ではそれが当たり前なのかも知れない。
「今日はみんな元気が無いね。私との食事はあまり気分が乗らないかな?」
「いえ!国王様との食事は身に余る光栄なのですが、何分緊張と今日の事で上手く会話を盛り上げられない者がほとんどなのです。」
国王もこの沈黙の食事に耐えられなかったらしく、問いかけてみる。
すると、先程の青髪の女性が答えを返した。
どうやら、緊張してるのが理由だった様だ。
それならそうと言ってくれたら、俺達も気を遣わずに黙って食事をしたのに。
「あっ、そうだ。昨日、ダンジョンが攻略されたって話は知ってますか。」
背丈の小さい恐らく男の騎士団員が話題を切り出し来た。
知っているも何も張本人達である。
そんな事とは露知らず、口が止まらない男。
あのダンジョンが攻略されるというのは相当な偉業らしく、少し興奮混じりに語っている。
「今朝、街をランニングしてたら王都へ商品を卸しに来た商人がそんな噂をしているのを聞いたな。確か攻略したのはリッドナーブルの冒険者だったか。」
この話題には食い付く茶髪の細マッチョ男。
やはり話題性は抜群の様だ。
「アンタらも冒険者なら何か情報を持ってないか?一度で良いから会ってみたいと思っていて、ダンジョンを攻略した冒険者を探しているんだ。」
「そいつら探しているなら運が良いみたいだな。」
「おっ、情報でも持っているのか?」
「いや、違う。俺達4人でダンジョンを攻略した。」
鎮まる空気。
国王さえも口に運んだフォークを止めた。
ダンジョン攻略をした功績のある人物には見えなかったか。
そう思われたとしても否定はしない。
今回は奇跡的な偶然が重なって攻略に至った。
もう一度同じようにダンジョンに潜入して、攻略が出来るかと言われたら首を縦には触れない。
「ほ、ほ、本当かい!?」
1番最初に取り乱したのはまさかの国王だった。
その驚き様は国王の威厳や貫禄とは掛け離れている。
だけど、国王の様子に気付いている者はいなかった。
話の中心は完全に俺達4人。
幼いネムリでさえ、食い入る様に耳を傾けている。
「本当かどうかで言えば本当ですね。」
「じゃあ、アーティファクトも。」
この質問の意味は分かっている。
国の中にあるギルドの冒険者達がアーティファクトも持ち帰ったとなれば、国交を大きく有利にさせる。
抑止力としても、武器としても十分過ぎる効果が期待出来るのはどこの国でも知られている事だろう。
だからこそ気まずい。
勿論、腕を治した事について後悔がある訳では無い。
ただ何というべきなのか。
これだけ期待の眼差しを向けられて、素直に答えるのは難しい。
「残念ながら、アーティファクトの回収は。」
「どうして?攻略したならアーティファクトがあったはずだ。」
「俺達が行ったアルカナ獣の祭壇というダンジョンの12階層でエルマードが腕を失った。そんで、説明は省くけど、最下層で遭遇した本物のアルカナ獣にエルマードの腕かアーティファクトのどちらを選ぶかを迫られたんだ。」
「んー、その話が本当なら確かに仲間の腕を選んでも。うーん。」
信じるかどうかは別としてもそれが事実だ。
アーティファクトの秘めている無限の可能性よりも仲間が大事だった。
ただそれだけの事。
「ねぇねぇ、リューマ。さっきのアルカナ獣の話、本当?」
小さなお姫様は、俺達の実力やアーティファクトの行方よりも、別の事に興味があるみたいだ。
「本当だよ。俺だけじゃなくて、この4人全員で見たんだ。」
「すごい!やっぱりいるんだ!アレンテはね、空想上の生き物だって言ってたけど、私はぜっ〜たいいると思ってたんだ!」
目をキラキラと輝かせながら、アルカナ獣を語るネムリ。
前の世界でもユニコーンやペガサスは子供に好かれる傾向があったけれど、それと似た様な現象かもな。
「アーティファクトが無いにしろ、ダンジョンの攻略者というのは事実みたいですよ。流石は国王陛下、慧眼の持ち主ですね。」
「これは心強い協力者だ。安心して娘を任せられるよ。」
「お任せください。ご期待に添える様、全力を尽くします。」
このダンジョン攻略の話は後の食事会を大きく変えた。
初めは俺達にまるで興味が無かった騎士団のメンバーも積極的に会話をしてくれる。
大半が、スキルや戦闘についての話だったのだけ気になるけど。
顔と名前を一致させられただけでも儲けと思う事にしよう。
「早速で悪いけど、4人に加えてアレンテには直接娘の護衛を。騎士団の奇襲対策部隊は、交代で王城内と周辺の警備に入るように。そして、残された騎士団は私と再度会議をした後に、明日に備え十分な休息を取る事。以上。」
これはずっと思っていた事だが、やはりこの国王は名ばかりの国王では無い。
統率力、指揮能力、知力や決断力。
どれを取っても優秀だ。
権力や金銭などを全く感じさせない、なるべくしてなった国王という感じがする。
騎士団が深い忠誠を誓っているのも頷けるな。
「リューマ!もっと詳しくアルカナ獣の話を聞かせて!」
俺の手を引っ張り、自分の部屋まで案内するネムリ。
最初はあんなに人見知りをしていたのに、こんなに懐かれる事になるとは思ってもいなかった。
前の世界では子供と接する機会が無かったので、どんな対応をすれば良いのか分からない。
しかし、悪い気がしないのはここだけの話。
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