第001話 転生する前に轢かれるのはあるある
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「リュウマー!あんた、新学期始まるわよー!初日から遅刻とか恥ずかしいからやめてよね。」
リビングから2階に向かって声を掛ける母。
今日は高校3年の新学期。
初日から遅刻となると悪目立ちをしてしまうと気遣ってくれているのだろうか。
そんな優しさは脳で理解しても、心が余計なお節介だと拒む。
親の心、子知らずなんて言葉があるけれど、正しく今のような状態を指し示しているよな。
俺は自室に置いてある時計を寝ぼけ眼で見て3秒間固まった。
そして、ようやく状況を理解すると慌ただしく部屋を飛び出す。
折角、クリーニングに出したブレザーを乱雑扱いながら袖を通し、片手でしっかりと鞄を持つ事を確認する。
「もうちょっと早く起こしてくれよ母さん!」
スニーカーの靴紐を結んでいる僅かな時間に文句を垂れた。
「何言ってんのよ。何回も何回も起こしたじゃない。起きなかったのはあんたでしょ?」
「やべ、遅刻する!いってきます!」
そんな事は分かっている。
遅刻しそうな焦りから母に当たってしまっただけ。
一刻も早く学校へ向かわないといけない俺は、見送ってくれる母の方を振り返らずに玄関を飛び出した。
天気は憎いくらい快晴。
まだ4月だというのに日差しで暑さが目立つ。
新学期は式典などと同様で必ずブレザーを着用する様に義務付けられている。
まさか、そんな決まりが今の俺を苦しめる事になるとは。
前のボタンを閉めると動き辛くなるので、一切閉めていない。
だから、動きやすくなった分ブレザーが風に揺られてマントの様になっている。
ピンチの時に駆けつけるヒーローみたいだな。
遅刻しそうな現実から目を背ける為に、そんなくだらない妄想をしていた。
やっとの思いで後少しで学校に着く所まで来たというのに、目の前は赤信号。
今日はつくづく付いていないなと思いながら、仕方なく信号が変わるのを待つ。
余裕が無い時の信号はこうも変わるのが遅い物か。
何も考えずに信号灯を眺めていると、横から1匹の猫が飛び出しくるのが見えた。
毛並みは黒色のシュッとした猫。
赤信号なのに横断歩道を渡ろうとしたから、気付いていない車が接近している。
この時、俺はどうしてなのか分からないが、漫画の主人公の様に勝手に体が動いて猫を守ろうとしていた。
「キャーーー!」
「あぶねぇーぞー!!!」
周りの人の声がスローになり鮮明に聞こえる。
これではまるで、死ぬ直前見たいじゃないか。
それに何でだろ体が熱いや。
視界もハッキリせず、ボヤけて見える。
「・・・ニャーン。」
でも、抱き抱えた猫は無事そうだ。
俺の顔ペロペロと舐めて情け無い鳴き声を出している。
それで謝っているつまりだろうか。
謝罪は良いから、今度からはちゃんと信号守れよ黒猫。
おかしいな、眠くも無いのに段々と瞼が閉じていく。
そう言えば、さっきの事ちゃんと母さんに謝らないとな。
でも、それは帰ったらで良いか。
「・・・ください。起きてください、黒沢竜真様。」
母さん、まだ寝てても良い時間だろ?
起こさないでくれよ。
・・・いや、待て待て待て!
この声は、母さんの声じゃない。
そもそも、俺さっきまで何してたんだ。
思い出そうとすると、黒い猫が俺の膝に座ってくる。
そうだ!俺はあの時コイツを助ける為に車に轢かれて・・・。
「俺は死んだはずじゃないの!?」
「黒沢竜真様、貴方は確かに死んでしまいました。それも私のペットであるフェイを助けていただいたが為に。」
フェイってのは多分この膝上で気持ち良さそうに欠伸している黒猫の名前だろうな。
てか、目の前にいる女の人が言ったように死んだとするなら、ここは良く転生系の物語で見る死者を異世界へ送るゾーンか?
となると、目の前にいるのは女神様って感じか。
いやいや、そんな訳無いよね。
マジで無いよね?本当は生きてましたー!みたいなドッキリだよね?
じゃないと、頭がパンクしそうなんですけど・・・。
いくら、転生物好きな俺でも実際に起こっていると信用出来ないんですけど。
「お前は人の気も知らないで、呑気に寝ようとしやがって!」
フェイの顔を目一杯愛てやる。
助けてやった命の恩人なんだから、それくらいの権利はあって然るべきだ。
「ちょっ、おい小僧、やめろニャ!」
ん?誰だ、任侠映画に出て来そうなぐらいドスの効いた声で猫語喋る奴は。
「それよりお前のせいで俺は死んだんだからな!うりゃうりゃ!」
もう一回今度は顎で触ってみる。
「おまっ、悪かったニャ!吾輩が悪かったニャ!」
「・・・。猫が喋ったー!!!」
「今更、そっちかニャー!」
喋る猫なんて現実世界にいるはずがない。
ってことは、やっぱりここは死後の世界。
おいおい、どうなってんだよこれー!
情報不足過ぎて思考が宇宙に飛んでいきそうだよ!
「ふふふっ。フェイは運命を司るアルカナ獣、普通の猫とは違うのですよ。そして、私は天界等級第3位の女神・アルミストです。以後お見知りを。」
なんだこの展開は。
喋る猫に、綺麗な白髪と整った容姿を持つ女神。
この状況全てが俺の黒歴史を疼かせてしまうからやめて欲しい。
一旦、深呼吸してチルタイムに入る。
このままだと興奮と混乱で脳が焼き切られて死んでしまいそうだっつーの。
いや、まぁ実際死んでしまってるからこの表現はややこしいんだけど。
「死んだって事は、やっぱり天国に連れて行かれるのか?」
「いいえ。運命に愛された貴方様には、勝手なお願いではございますが、異世界テルストロンに行っていただきたいのです。そこには同じく私の手によって送り出されてしまった日本人、田中倫太が魔王として存在しています。私の不手際で起こってしまった事ではありますが、私は女神故に直接は下界に介入出来ないのです。どうか、お頼み申し上げます。」
女神の深い謝罪。
しかし、悪いが俺にはそんなのは頭に入らない。
今考えているのは、異世界して魔王と戦う事への楽しみだけである。
そして、やはり異世界転生と言えばチートスキル。
田中倫太って日本人が異世界で魔王やってるのが本当なら99.9パーセントの確率でチートスキルを貰っているはずだ。
となるとここからは俺もおねだりタイムと行こう。
「あのー、やっぱりー、異世界に行って魔王討伐するなら、ちょっと強めのスキルみたいなのが必要なんじゃないかなーって思うんですけど。」
「ご安心ください。私が黒沢様の力を最大限に発揮できるスキルをご用意しておりますから。」
「詳しくお願いします!詳しく!めっちゃ気になります!」
「え、えぇ。スキル名は『妄想具現化』と言い、貴方の妄想を一部具現化する事が出来ます。強大なスキル故、色々な制約がありますが貴方ならきっと上手く使えるでしょう。」
妄想を具現化だと。
こんな思春期真っ只中の男に渡して良いスキルですか?
そんなの渡されたらムフフな事に使っちゃいますけど。
あんな事やこんな事を想像しちゃいますけど。
「どうやら、死者に関与出来る時間が終わろうとしているみたいです。魔王を屠らんとする者、黒沢様。どうか貴方様の旅路が良き物でありますように。」
「ありがとう、アルミスト。そして、いってきます!」
こうして、俺の冒険は突然始まるのだった。
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