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6人の継承者と時を超えた復讐  作者: 羽畑空我
第二章 諦められない存在
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第四十一話 「わからない」

 自分を2人の攻撃が襲おうとしていることに気がついた人形は、目を見開いて、しまった、と言わんばかりの表情を浮かべながら攻撃を避けようと試みるが、その行動さえも予測したアユムにまず一撃目を入れられてしまう。

 サヤカの攻撃はダメージを半分に抑えることができたようだが、それでもそれなりの攻撃は喰らったようだ。


 人形は一瞬よろけるが、すぐに持ち直してまた魔法の詠唱を開始する。

 まあ、弱体化されたものとはいえツバサだし、そうすぐには倒せないようだ。


 試しにもう一度気配を消してみたが、人形がこちらを見てその瞳を赤く染めてしまえば、たちまち集中が切れて失敗してしまう。

 こいつ、一体どんな魔法を使っているんだ。


「困ったわね……。彼の持ち直し方と動きの鈍り方から考えると、さっきの攻撃で削れたのが大体彼の体力の3分の1程度だから、あと2回は彼に攻撃しなくちゃならないし……。」


「ユウトがさっきやってた混乱させる作戦はもう使えないんだろ? だとしたらスピード勝負かアイツの動きを一瞬止めるか……。スピード勝負はできないこともないけど、あの人形、攻撃加えれば加えるほど本気出してきてるカンジするからオレが本気でスピード勝負して勝てる可能性があるのはやっぱ最初の一回ってトコだろーな。」


 紫色の瞳を力強く光らせて戦闘狂を発揮しながらも冷静な分析をするアユムの話を聞いたサヤカが、それに応える。


「あなたのあのスピードでも可能性があるだけってアイツ何者なんですの。それはともかく、スピード勝負を仕掛けるにしてもやはりタイミングというのは大事ですわよね。一体どうすれば良いのやら……。」


「タイミングに関してはオレが判断できるから心配無用。問題なのは3回目にアイツにどう攻撃を加えるかってコトだけど……。」


 ぶつぶつと考えていることを口にしながらタイミングを見計らっているアユムと三つ目の作戦を考えているサヤカ。

 人形に攻撃対象としてロックオンされている俺は炎魔法を避けるのに精一杯で思考を開始してもすぐ途切れてしまう。

 迫り来る火の玉を避けながらどうしたもんかなと思っていると、視界の端に唇を引き結んで俯くレイカが目に入った。あのままでは、次攻撃対象がレイカになった場合やられてしまうのでは。


「おい、レイカ……」


 俺がそう呼びかけようとした時、「今だっ!!」というアユムの声が聞こえて、それに応じたサヤカも一緒に人形に攻撃を加える。

 人形は盛大によろけ、体勢を立て直すのも先ほどよりは時間がかかったが、まだだ、とでもいうように左目を紅蓮に染めて俺たちに攻撃を仕掛けてきた。

 今度のターゲットはアユムらしい。


 とある誰かに集中してしまうという彼の性質を利用して攻撃には十分警戒しつつレイカに声をかけようとすると、急に彼女が立ち上がって言った。


「私は、攻撃ができない」


「急にどうした? 確かに攻撃は苦手だけどお前の専門はそこじゃないだろ」


 そう言いながらレイカの顔を見ようとすると、「見ないで」と言ってうつむかれてしまった。

 いや、見るなって言うなら見ないけど。

 少し怪訝に思いながら「わかった」と言って俺が目を逸らすと、彼女は更に続ける。


「戦闘に直接参加できないから、いつも誰かに守ってもらってばかり。今も4人で協力しなきゃいけないのに私は何もできていない」


「回復役の身の安全確保は戦闘の最優先事項なんだから気にしないでいいと思うけど」


 俺が思ったことをそのまま口にして慰めようとしてみても、レイカには全く響いていないみたいだ。


「回復役はアユムとかサヤカみたいな攻撃役の力を上げたり、相手のスピードを下げたりする補助魔法を使えるものなのに、私は昔からそれが苦手だったし、今も少ししかできない」


「……いつも言ってるけど別に周りの声なんか気にしなくてもいいだろ。」


 いつも通り俺がそう答えると、彼女が普段よりテンションが低いようななんだか見覚えのある笑い方をした気がしたあと、俺の知るレイカとは違う少し冷めた口調で続けた。


「……そうよね。ユウトはそう言うわよね。急にごめんなさい、戦闘中なのに。」


「俺は別にいいけど……。」


 なんだかレイカの様子がおかしい。

 強すぎる魔力に晒され続けて心が疲弊しているのだろうか。

 不安になるしどうにかしてやりたいと思う。

 わかりやすいようで大事なことはいつも黙ってるこいつの、役に立ちたい。

 でも、どうすればいいのかわからない。


 ツバサを模した黒い人形の倒し方とか、結局クロトとアカリは何者なんだとか、一連の出来事の黒幕のこととか、カレンとツバサのこととか、アユムの出自のこととか、プディン様がたまに見せる暗い表情のこととか、目の前にいるこいつのこととか。

 最近は考えることが多すぎて、たまに頭の中が散乱する。


 そんなことを考えていると、人形の様子が少し変わった。


『俺は、何がしたいの? あの方のために生きたいの? なのに、どうしてあの女を殺せない? ただ単にアイツが邪魔をしてくるからなのか、それとも……。』


 今までずっと黙りこくっていた人形が、急にツバサの声を発して喋り始める。

 ぶつぶつと何かを言っている相手は、何やら相当混乱しているらしい。

 もちろん、先ほど俺が姿を急に消した時よりも、ずっと。


 ふと外に目をやると、ライが元々丸いつぶらな瞳をもっとまんまるにして広場の中を見つめていた。

 何か驚くことでもあったのだろうか。


『わからない、わからない、わからないっ……!!』


 人形がそう繰り返すと、急に広場の温度が上昇してから下降する。

 何事かと思って上を見上げれば、戦闘開始時に彼が放った矢が無数に生み出されていた。

 しかし、それは炎だけではなく。


 炎はもちろん、氷、風、雷、緑……そして、闇。

 光以外の全属性の攻撃魔法を、彼は矢の形に変形して編み出していた。


 本来戦闘用の魔法を扱う魔法使いというのは、自分の得意な属性を1、2個ほど持っていて、それに付随する魔法を自由自在に扱う。

 レイカが回復魔法が特に得意なのはそういうことだ。


 アユムの場合は彼あるいは彼の師匠が編み出した独自の方法で周りの物質を利用しているだけなので、彼はあくまで優秀な剣士であって魔法使いとは言わない。

 カレンのように闇以外の全ての属性が戦闘に使えるというのは実はかなりすごいことであるが、彼女は光属性の魔法が特に得意なようなので村では光属性の魔法使いという認識だったのかもしれない。


 そもそもほぼ全属性の攻撃魔法を扱えるだけでもかなりイレギュラーな存在であって、いろんな天族や魔族と接してきた俺でもカレンとミヤビ兄、そしてツバサくらいしか知らないのだ。

 その中でもツバサは、攻撃魔法も自由に扱えるし、結界を生み出す魔法だとかカレンを強制的に眠らせる催眠魔法だとか、攻撃魔法以外の魔法も使いこなす。


 ミヤビ兄に匹敵する、あるいはそれ以上の魔法のレパートリーだ。

 流石にその魔法の質は、ミヤビ兄の方が高いけど。


「この量は流石のアユムでも多分無理ですわ、どうしろっていうのかしら。」


 サヤカがそう呟いた時、俺の隣に立っていたレイカがぶつぶつと何かを言う。


「私だって役に立ちたい。ユウトや他のみんなに守られるだけのお姫様なんて……。」


 内容は彼女の声が小さすぎてよく聞こえなかったが、彼女が何をしようとしているのかはわかった。

 だって、ずっと近くにいたから。


「おいレイカ、お前あの魔法を連続で使うのは、」


 あの魔法を連続で使うのは嫌だって、疲れるって言ってたじゃないか。

 レイカはまだ回復魔法や補助魔法を練習している最中で、高位の魔法を連続で使うのには慣れてない。

 もし、それで何かあったら。


 俺のそんな不安を気付いていないのか無視しているのか、多分後者だが……彼女は言った。


「私はユウトと会ったばかりの時の、あなたにただただ守られているだけの自分じゃ嫌なのよ。」


 彼女は息を吸い込んで、連続で使うのは嫌だと言っていたあの魔法を使用した。


「プロテクティア」


 たちまち白い光のヴェールが俺たちを覆い、空から降ってくる無数の矢を全て防ぐ。

 人形は少し顔を顰めて、更に多くの矢を放った。


 戦闘開始時から高位の炎魔法を延々と使用していて魔力がかなり減っている人形と、何かに追われて焦っているような僧侶見習いの女の子の、完全なる体力勝負。


 俺は魔力探知がそこまで得意ではないから、どちらに軍配が上がるのかは、わからない。


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