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6人の継承者と時を超えた復讐  作者: 羽畑空我
第二章 諦められない存在
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第三十七話 魔力結晶

殺気を放つアユムとサヤカの前に立ちはだかるのは、限られた場所にしか出没しないライガーという大型の魔物だ。ライガーは絶大な魔力を持つ魔物で、それなりに魔物使いとしての腕前を持つ俺でも服従させることはほぼ不可能に等しい。


服従させることができないのならばまあ撃破するしか方法はないのだが、正直殺傷能力がそれほど高くないムチで戦うのは分が悪いので、2人がこいつを狩ってくれるのはありがたい限りである。


グルルルル……。と唸り声をあげながら、ライガーは戦闘体制に入る。

それをみたサヤカが、王女らしい威厳を放ちながら自身の従者に指示を出した。


「アユム、私がこいつの注意を惹きつけておくから、その間に攻撃を加えてちょうだい?」


「かしこまりました。お嬢様の腕前は存じておりますので大丈夫だとは思いますが、決して無理だけはなさらないように。」


「わかってるわよ!!」


アユムの言葉にそう返したサヤカは、ニヤリと笑って悪魔の羽を羽ばたかせて飛び立つ。

すると、煽るような声でライガーを挑発した。


「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」


そう言ってぱんぱん手を打ち鳴らしながら小学生男子のようなことを言うサヤカは確かにムカつく。

魔物が怒ってしまうのも無理はないだろう。


案の定ライガーは怒って、サヤカのいる方へ向かって突進していった。

ライガーが目の前に迫った時、サヤカはふふっ、と怪しげな笑みを浮かべてこう言う。


「背後には要注意、戦場の鉄則ですのよ?」


サヤカに気を取られていたライガーは、自身の後ろで戦闘狂のような笑顔を浮かべながらレイピアを振り上げるアユムに気が付かなかった。


木々の隙間から注ぐわずかな光を反射したレイピアは、その持ち主によって容赦なくライガーに振り下ろされる。


アユムの腕力と丁寧に手入れをされた剣先によって甚大なダメージを受けたライガーは、そのまま消滅した。


「うふふっ、私に気を取られすぎではなくて?その様子ではすぐに倒れちゃいますわよ♪」


もう既に倒れているのでは。


「一匹やりぃ!!あ、お嬢様。口調が変わっておりますよ?」


「え?ほんとだ!!魔物と戦うとどうもお嬢様口調になっちゃうのよねぇ。」


アユムも大概であるように感じるのだが。


もうお分かりだろうか?


この二人は、戦闘を始めると口調と性格がガラッと変わるのだ。

いや、サヤカに関しては性格はあまり変わらないかもしれないが、アユムはいつもの穏やかさはどこへやら、戦闘狂になる。


忠誠心が非常に高く、戦闘狂である……。

そんなアユムの特徴に俺は覚えがあるが、おそらく偶然であろう。


だって、魔界に存在していたあの民族は、10年ほど前に欲にまみれたとある強豪国家によって滅ぼされたはずなのだから。

それに、アユムは常時戦闘狂というわけではなく、戦闘が始まるとテンションが上がるだけであって、しょっちゅう無駄な争いを生み出しているわけではない。


頭に浮かんだとある考察を打ち消しながら、俺はアユムとサヤカに声をかけた。


「二人とも流石だな。ムチじゃライガーには勝つのは難しいから、二人がいてくれるのは本当に助かる。」


「いえいえ。しかし、急な戦闘となるとやはり私とお嬢様のタッグになってしまいますね。慣れているからつい……。」


「確かに、俺も急な戦闘だったらレイカとタッグを組みそうだな。まあ、ムチで勝てる範囲の魔物なら、の場合の話だが。」


「ムチは魔物が複数いるときは強いけど、単体での戦いは少し不利だもんね。」


「そうなんだよなあ……。でも服従できそうな魔物とかだったらムチで服従させれば無駄な戦いを防げるんだけどな。」


三人でしばらくムチの特性について話していると、魔力の探知に集中していたレイカが声を上げた。


「みんな!!魔力結晶っぽい反応を見つけたわよ!!」


「お、ナイス!!どっちの方角だ?」


「うーん、あっちの方かしら?」


そう言ってレイカが指さしたのは、東の方だった。


「西の方角ですね。わかりました。」


あれ。


「あっちって西なの!?北だと思ってたわ!!」


「え?私は南だと思ってたのだけど……。」


「あちらは西です。みなさん、混乱してしまうのでこれ以上方角の名前を言わないでください……。」


「むむむ……。」


ぷるりんがジト目でこちらを見る。

いや、俺はあっちは東だなんて決して思っていなかった。


……だって、太陽見えなかったんだよ。

太陽さえ見えていれば俺は、方角だけは間違えないし……。


「と、とりあえず魔力結晶がありそうなところに行きますか。レイカさん、危なそうだったら私が引き留めるので、気配がする方に向かっていただいてもよろしいでしょうか?」


「わかったわ!!」


「あ、くれぐれも寄り道はなさらないように。」


「は、はい……。」


アユムの指導の下俺たちはなんとかレイカが探知した場所にたどり着く。

辺りを見渡すと、そこには確かに様々な色の結晶が大量にある広場が広がっていた。


「ねえねえユウト、魔力結晶ってこれであってる?」


サヤカの問いかけに対して、俺はしばらく足元の石を拾って観察し、魔力結晶であることを確かめた。


「ああ。これは間違いなく魔力結晶だな。どれを持って帰ればいいのやら……。」


数えきれないほど地面から生えている魔力結晶の中からどれを持ち帰るべきか決めかねていると、後ろからふわふわ飛びながらついてきていたぷるりんが、急に広場の中に飛び出した。


「ぷ、ぷるりん!?」


そのままぷるりんはしばらく広場を飛び回ると、とある一点で止まり、ぴょんぴょんと空中で跳ねた。


「むむむむむー!!」


「『この魔力結晶がいいと思うよ』? そうなのか、ぷるりん?」


「むー!!」


どうやらぷるりんは自身の足元にある魔力結晶がおすすめらしい。

よくわからないが、俺たちはカレンの目を覚まさせることができればあまりこだわりはないので、特に何も考えずにその魔力結晶を持ち帰ることにした。


「魔力結晶は回収できたから、次は解呪の魔草か覚醒の聖花よね。日光が当たるところかあ、どうやって探せばいいかな?」


「日光が当たる場所か……。」


俺は自分の頭の中の基礎知識を組み合わせながら考える。


あたり前だが、太陽は東からのぼり、南の空を通って西に沈む。

よって、日光が当たる場所はおそらく霊峰の南側。


この霊峰に入山する直前、霊峰側から仲間たちを見たとき、霊峰から一番離れた場所から霊峰の方向を向いていたアユムの表情は逆光で見えにくかった。


つまり、アユムが立っていた方向に太陽があったということになって、俺らが霊峰に立ち入ったのは朝であるはずだから、あのとき太陽は東側にあったと考えるのが妥当であろう。


「俺の記憶では、多分霊峰に入ったとは霊峰の東側だと思う。日光がよく当たる場所は霊峰の南側にあると思うんだが……。アユム、霊峰の南側に行くにはどうしたらいいかわかるか?」


「えーっと、太陽があそこにあって今はお昼時ですから、おそらくあちらの方向に向かえば南側に近づくことはできるのではないかと。帰宅する際は地図を見ればなんとかなるでしょうし、南側へ向かうのでよろしいですか?」


「ああ。俺たちが向かうと絶対に迷子になると思うから、アユム、道案内頼んでいいか?」


「もちろんでございます。」


俺は、南側に向かって歩き始めたアユムについて足を動かす。

その俺に向かってレイカがたたたっ、と駆け寄ってきて、俺の隣で駆け足から普通のスピードに戻る。


サヤカは、ちょっとアユム、置いてかないでよ!!と叫びながら彼の隣に向かって走り出す。

走り始めた自身の主を振り向いて、アユムが笑みをこぼす。


そんな俺たちに追いつこうとスピードを上げたぷるりん、もといプディン様は、なんだか寂しそうだ。

ただ、俺は女心とか全くもってわからないから、気のせいである可能性も十分にある。


チラッと後ろを振り向いた俺は、足りない人数に少し不安を募らせた。


カレン、早く戻るといいんだけど。

そのためにも、俺たちは指定された素材を集めてこないといけない。


もしかしたらそれは、どこぞの人騒がせな魔族も望んでいることかもしれない。

まあ、俺の仮説が正しければ、であるが。


珍しくぼーっとしている俺を不審に思ったのか、レイカが声をかけてくる。

それに適当に返事を返しながらレイカと話していると、彼女がポツリと呟いた。


「そういえば、覚醒の聖花って甘い匂いがするし美味しい蜜が採れるから魔物たちの大好物なのよね。魔物、集まってないといいんだけど。」


レイカ、それを世間一般ではフラグと呼ぶのだが?

急に感じた嫌な予感に、こいつフラグ立てやがったな? と思いながら、俺は先を行くアユムについて行った。

みなさんお久しぶりです。羽畑空我です。

気がついたら前回の更新からだいぶ時間が経っており、1人で読者の皆さんすみません!と心の中で謝罪の嵐をしていました。この前もこんなことあったような。


それはともかく、前回の更新から相当時間があいたというのに見にきてくださった皆さん、本当にありがとうございます。リアルの用事の間を縫ってできるだけ早く読者の皆様に続きをお届けできますよう努力いたしますので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。誠に申し訳ございません。

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