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6人の継承者と時を超えた復讐  作者: 羽畑空我
第一章 彼の元を目指して
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第二話 出会い

自分以外の声がしたことに驚いていると、私の方に向かって人が歩いてきた。メガネをかけた、私と同い年くらいの男の子。


その子は私の前で立ち止まると、涼しげな表情でこちらを見やった。風が吹いて、その子の美しい白茶の髪と首に巻き付けられた透き通る水色のマフラーを躍らせる。それらは太陽の光を受けて、少し輝いた。若々しい草原をそのまま閉じ込めたような若緑の瞳は少しつっていて、片手には瞳と同じ色のムチを持っている。そして、背中には純白の天使の羽が生えていた。


って、え!?羽!?噓でしょ!?


「は、羽が生えてる?天使…?」


思わず思っていることをそのまま口にしてしまった。


「そうだけど?」


男の子は当たり前のことのようにさらっと答える。


浮いているし、確かに天使かな。と納得する自分と、天使なんて昔話とか小説に出てくるような架空の存在、いるわけない!! と納得できない自分がせめぎ合ってパニックを起こしている私を見て、男の子はすこしきょとんとした後納得したように、ああ、と言ってこう言った。


「そういえば人間界では俺たち天族の存在は記憶に残っていないんだったな。まあ、生きているうちに天族に出会う人間なんて一握りくらいしかいないから仕方ないか。」


「あの、天族って?」


「お前たち人間でいうところの天使だよ。お前の中の常識をひっくり返すようで悪いが、天使っていうのは死んだ人の魂とかじゃなくて天族っていう一つの種族なんだ。ほら、人間の世界でもその人が住んでいる国とかでなんとか人、って分けたりするだろ。あれと同じだ。お前達の世界では人間と魔族しか知られてないと思うが、もう一つ天族っていうのがあるんだよ。」


「そうなんだ。天族っていつも地上にいるの?」


「いや、普段は天界っていうお前達人間にわかりやすくいうと……そう、あれだ。空の上の世界にいる。」


「いつも、その、天界?っていうところにいるなら、どうしてわざわざ地上に?」


「俺の大事なやつがさ、人を探しているんだよ。詳しいことは知らないけど。」


「じゃあ、その人は?」


「あそこの大きい木の下で俺が一瞬目を離したすきにさらわれた。アイツは回復魔法とか補助魔法をよく使うから、一人だと弱いんだ。俺がアイツについてきた理由の一つはそれなんだけど。」

「そうなんだ。」


「それで今探してるんだけど、あっちの方の森に連れていかれてさ。そこに向かっている途中に魔物に絡まれてるお前を見つけたから助けたっていう。」


「なるほど。」


「こんな感じかな。お前は?」


「私は友人のお願いであっちの森にホワイトベリーを取りに来たんだけど……って、目的地同じじゃない。一緒に行かない?」


「確かにお前の戦力じゃあ、この先に進むのはキツイかもな。」


「うるさいわね。それにあれは、油断していたからで……って、あなただって人のこと言えないでしょ?森はあっちで大きな木はこっちなのに、どうしてそのどちらでもない場所から来たわけ?絶対土地勘ないでしょ?」


「うっ、確かにそうだな……。さっきはマヌケとか弱いとかいってすいません。ついてきてくれると嬉しいです……。」


「急に口調変わったわね。普通にため口でいいわよ。私はカレン。あなたは?」


「俺の名前はユウトだ。よろしく。」


こうして私達は、襲ってくる魔物を倒しながらノーズスノー密林へと向かった。


ノーズスノー密林につくと、思っていたよりも人の手が加えられていて、道もちゃんと整備されていた。こんなところにも魔物って住みつくんだ。


ユウトによると、こういうところに住んでいる魔物は昼間は大人しくしているけど、夜になると活動が活発化して人を襲ったりするらしい。道なりに進んでいくと、開けた場所に出た。


それにしてもおかしいな。パン屋のあの子に昔きいた話によると、今のこの時期はホワイトベリーの旬で、森はおやつを求めてベリーを採りに来る生き物でいっぱいらしい。だというのに、全く生き物の気配がしない。そればかりか、夜の訪れを待ってひそんでいる魔物も付近にいないみたいだ。


改めて広場に目をやると、最深部であるはずなのに木を美しく彩っているはずの白い実は見当たらなかった。その理由は二つ。やはり森の奥だったので、霧がかかっていたこと。そして……。


「ねえねえ、アタシ達と何して遊ぶ?」


二つの人影が木の周りにあって、視線がふさがれていたこと。人影の近くには、誰かが倒れていた。


「レイカ!!」


ユウトが叫ぶ。どうやらその人がユウトの大事な人であるレイカさんらしい。


「ん~?」


気づかれた。いや、ユウトが叫んだから当たり前なんだけど。


二人のうち片方の、低い位置でくせ毛を二つにくくった女の子の姿をした子がこちらに視線を向けた時、全身に凍るような緊張が走る。その子が放つオーラでなんとなく相手の力量はわかる。


この子、絶対強い。まともに戦ったら確実に負ける。


どうしよう……。


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