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6人の継承者と時を超えた復讐  作者: 羽畑空我
第二章 諦められない存在
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第二十三話 旅立ち

前半はサヤカ視点です。

私に名前を呼ばれた彼は、読んでいた本を閉じ、あの時とは違う大人っぽい微笑みを浮かべると、私に恭しい態度で返事をした。


「はい。なんでしょう、お嬢様。」


昔とは違って距離が遠くなってしまったことを実感して寂しくなるが、それを無視して私は彼にいう。


「あんた、よく本読んでるわよね?」


「え、はい。まあ読んでいる方だとは思います。」


「それで、あのね。」


「はい?」


アユムは優しげな笑顔を浮かべて私の言葉の続きを待つ。


やっぱり素直にすぐには言えなくて、逃げ出してしまいそうになったけど、後ろの方で見守ってくれているカレン達の存在をチラリと確認して、言葉を紡ぐ覚悟を決めた。


「その、道を歩いてたらたまたま黄色のヴィオリアを見つけたからね?たまたまよ?探しに行ってなんかないからね?」


「わかりましたから続けてください」


「それで、アユムが好きな花だってことを偶然思い出して。偶然よ? ちょっと気が向いたから、黄色のヴィオリアを一輪摘んで、しおりにしたの。」


ああ、結局素直にはなりきれなかった。

でも、ここまで伝えられたのだから、私にしては上出来だ。


私はそっと手に握っていた黄色のヴィオリアのしおりをアユムの前に差し出した。


「受け取ってくれる?」


「……。」


しおりを見ながら硬直しているアユムを眺めながら、緊張してアユムの言葉を待つ。

こんなに緊張するなんて、いつぶりだろうか。


やっぱり歪だったかな? アユムはもっと綺麗な方が好きかも。

だけどこれ、最後の一輪だし……。


いろんな言葉がぐるぐると頭を回って、そわそわして落ち着かない。


緊張して心臓の音が最高潮に達した時、私の手に軽く温かいものが触れて、しおりの感触がなくなった。


ぱっとアユムの方を見ると、彼は私が一生懸命作ったしおりを大事そうに手にしながら、なんだか懐かしく感じる、私に黄色のヴィオリアをくれたあの時のような優しい眼差しで、こちらを見つめていた。


あの時より低くなった声でアユムは告げる。


「ありがとうございます、お嬢様。」


あ、この流れなら言えるかもしれない。

ずっと喉の奥に引っかかって、どうしようと思っていた、あの言葉。


今回のプレゼントの、一番の目的。


「こちらこそ。いつもありがとう、アユム。」


少し照れながら私がそういうと、彼はしばらく目を見開いて、優しく目を細めた。



*****



サヤカとアユムさんの表情から、上手く行ったんだなってことがわかって安心する。


後ろを振り返ってみれば、レイカやプディン様はもちろん、なんだかんだユウトもほっとしたような表情を浮かべている。

この前は別に見たければ見れば、って感じだったのに、ちゃんと心配してたんだと思って頬が緩むのがわかった。


ふふっとつい笑みをこぼした私に、ユウトはなんだよ、と言ってきた。


「ユウトってツンデレよねぇ……。」


私が思っていたことを代弁したレイカのおでこにユウトはデコピンを喰らわせたが、その表情は優しかった。


「それでは、サヤカとアユムの件がひと段落ついたところで、我らも出発するか。」


プディン様の言葉に私たちが頷き、歩き始めようとしたその時。


「お待ちください!!」


アユムさんが声をかけてきた。


「どうかしましたか、アユムさん。」


「呼び捨てとタメ口で結構です。このしおりの件なのですが……。」


そう言ってアユムは少し声をひそめると、こういった。


「黄色のヴィオリアは貴重な花でございます。道をたまたま歩いていたら見つかるような代物ではございません。この花、お嬢様に付き添ってあなた方が一緒に採りに行ってくださったのでしょう?」


「アユム、それは……。」


「ご安心ください。お嬢様にこのことを話すなんて野暮なことは致しません。私は何年もあの方のお側にいるので、あの方が照れて強がっていることや、それを指摘されることに羞恥を感じるということは充分にわかっているつもりです。」


「そうなんだ。」


「はい。それで、お嬢様のいないところであなた方にお礼を言いたかったのです。何から何まで、本当にありがとうございました。迷子になられたお嬢様を助けてくださったり、お嬢様がこの花を採りに行かれたときに手助けしてくださったり。本当に、どうお礼をすれば良いのか……。」


申し訳なさそうに苦笑するアユムを見て、私たちは対応に困る。

ここはアユムやサヤカのためにもお礼をしてもらった方がいいんだろうけど、特にしてほしいこともないし……。


戸惑う私たち3人を見て、プディン様が何かを言いかけた時、サヤカのよく通る明るい声が響いた。


「ちょっとアユム、何コソコソしてるの?抜け駆けはよくないわよ!!」


「抜け駆け……?」


よくわからないという顔をしているアユムを放置して、サヤカはこちらに声をかける。


「みんな!!お願いがあって、いや、ありまして。」


サヤカがタメ口で話そうとするも、アユムの顔を見て敬語に直す。


「お嬢様」


「な、何……?」


「この方々がいいとおっしゃられるなら、タメ口でもいいのですよ?慣れてない人たちではないのでしょう?」


アユムの言葉を聞いて、サヤカはぱあっと顔を輝かせるとタメ口で私たちに話しかける。


「みんな、お願いがあるの!!」


「お願い……?」


「私たちも、あなた達の旅に連れて行ってほしいの!!」


え、とみんなが驚きの声をあげる。

アユムも驚いた顔をしていたので、彼にも事前に話していなかったのだろう。


「お、お嬢様、流石にそれは……。」


アユムがサヤカを制止しようとした時、プディン様が私たちに声をかけた。


「カレン、ユウト、レイカ。」


「「「はい?」」」


「アユムは紫の天魔石を持っている。つまり、我ら四天王か魔族の協力者のどちらかに関係があると考えられる。そして、そのアユムが忠誠を誓っているサヤカという少女も、何か我らとの関係性があると我は予想している。そして我は、あの二人と我らの関係性に心当たりがあるのだ。」


「え……。」


「お主らが良ければ、あの二人には旅に同行してもらいたいのだが……。」


「私は構いません。二人は?」


「私は全然いいけど……。ユウト、大丈夫?」


「ああ。あの二人は悪い奴らじゃないってことが今回の件でよくわかった。」


「満場一致ね。」


私たちはそうコソコソ話し合うと、なんとかサヤカを説得させようとしているアユムと、愛らしい表情でしゅんとしているサヤカに声をかけた。


「私たちはみんな大丈夫よ。でもその代わり、私たちの目的に付き合ってもらうことになるんだけど、大丈夫?」


すると、サヤカは瞬く間に嬉しそうな表情を浮かべて上機嫌に返事をする。


「私は平気よ!!」


アユムは一瞬きょとんとした顔を浮かべていたが、すぐにいつもの大人っぽさを感じる微笑みに戻ると、こう言った。


「お嬢様の御心のままに。皆さんが大丈夫とおっしゃるのならば私は構いません。」


「じゃあ決まり!!お互いの旅の目的については次の目的地のライクファイト王国に行く途中で話すってことで!!」


「ライクファイト王国?わかった!!」


「それでは、宿からチェックアウトしてからこの町を出ましょうか。」


こうして私たち6人は、ライクファイト王国に向けて旅立った。

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