第2話:みんなでカレー
エマが人化魔法で人間になったあと、全員でカレーを作り、エマ&エーリカとの懇親会的な昼食を行います。
エマが人化魔法で人間になったあと、一度エマを家に連れ帰って、体格が近いアリーナの服に着替えてもらう。その後、テレーゼ姉妹は昼食の準備を始めることにした。今日は屋外で昼食を作って食べようということになり、早速農場で採れたばかりの野菜をふんだんに使った野菜カレーを作る準備を始める。
エマとエーリカも食事作りの手伝いを申し出てくれたが、料理作りは特に人間になったばかりのエマには流石に荷が重いので、2人には農場で採れたばかりの野菜などを洗ってもらうことにした。
2人に洗ってもらった野菜やスパイスを、手際よく包丁で切って大鍋に入れていくテレーゼ姉妹。慣れていることもあり、正午頃には農場で採れたての美味しい野菜をふんだんに使った、甘口の野菜カレーが出来上がった。あとご飯も炊いたので、一緒に平皿に盛り付け、日本のスーパーで購入した福神漬を添える。これで昼食の準備は終わりである。
料理の途中でも、今まで嗅いだことがないような、強く食欲をそそる美味しそうな匂いに、次第に期待が膨らむエマとエーリカであったが、白い平皿に盛られたカレーを見て、そしてスプーンで一口目を口にした途端、スプーンの動きが速くなる2人。初めて口にしたその美味しさに興奮したようだ。炊きたてのご飯も口に合ったようで何よりである。
ところで、エマは人間になった直後からの二足歩行もだが、初めてのスプーンを使っての食事であるにも関わらず、上手にスプーンを使っているところを見ると、流石は20年以上生きたあと猫の亜神として現世に戻ってきたという彼女の、能力や今までの努力の一端を垣間見たようなテレーゼである。
「このカレーという料理は、添えてあるお漬物を含めて初めて食べました・・・少し辛いですが、今まで食べたことがないくらい美味しいです・・・」
「異世界にはこんな美味しい料理があるのかい・・・コイツは驚いたね・・・」
「もし良ければ、帰るときにカレーのスパイスと、作り方を書いた紙をお土産に渡すわよ」と、エーリカ、エマ、テレーゼ。
「テレーゼさんたちには、家に来てもらったときにもたくさんのお土産をいただいているのに、申し訳ないです・・・」
「エーリカ、折角テレーゼがこう言ってくれるんだから、遠慮するのは逆に失礼だしここは有り難くもらっておこう。というか、テレーゼ、こんな今まで食べたことがないような美味しい料理の材料をアタシたちがタダでもらえるなんて、アタシを人間にしてもらった魔法もだけどホントありがとうよ」
「エマお姉ちゃんを人間にしてもらっただけでなく、こんな今まで見たことも聞いたこともないような美味しい料理まで食べることができて、本当にうれしいです・・・」
「喜んでもらえて何よりだわ」と、改めて今日のことを2人から感謝されるテレーゼである。
「みんなで食べるカレーは美味しくてあったかいからイーナも大好きなの♪それに、今日はエマお姉ちゃんやエーリカお姉ちゃんも一緒だからイーナ楽しいの♪」
「アンナも、イーナちゃんやお母さんやテレーゼお姉ちゃんたちと食べるカレーは大好き!」と、イーナとアンナが話に加わる。
「アンタ、イーナって言ったね。さっきティアナから聞いたけど、アンタも人化魔法とやらで人間になったクチだろ?」
「うん♪イーナは元はキラーグリズリーだったんだけど、森でテレーゼお姉ちゃんと出逢ったあとティアナお母さんと一緒に森から連れ帰ってくれて、魔法で人間になって、そのあとずーっとみんなで一緒に楽しく暮らしてるの♪」
「イーナちゃん、キラーグリズリーだったんですか!?どう見ても人間にしか見えないんですけど、凄くびっくりしました・・・」
「次期猫神のアタシが言うのもなんだけど、テレーゼのそばにいると、ホント驚くことに事欠かないねぇ・・・」と、とても可愛らしい姿のイーナが、実はセフィロトで最強の魔獣とされるキラーグリズリーが人化魔法で変身しているということに驚くエーリカとエマ。
「エマ、驚くことに事欠かないのはむしろあなたの方よ。人間になって普通に二足歩行しているだけでなく、エーリカと同じようにスプーンを使って、一緒にに食事できているじゃない。初めてのことなのに凄いわ」と、テレーゼ。
「アタシはエマやその母親のエルナのそばに20年以上一緒に居たんだから、それだけ永く一緒にいれば流石に人間の身体の動きを見て学べることも多いからね。そのことが今役に立ってるんだろうよ」
(これは、まさにテレーゼさんが娘や妹たちに時々話している「見取り稽古」(作者注釈:第6章第1話参照)ですね)と、テレーゼの頭の中に語りかけるティアナ。
「エマお姉ちゃん凄い!もし私が猫から人間になっても、多分同じようにはできないと思う」
「イーナが人間になったばかりの頃は、エマお姉ちゃんみたいには上手にできなかったからビックリなの・・・」
「エーリカ、イーナ、誉めてくれてありがとうよ。アタシも自分で思っている以上に、人間になったばかりの身体が動くことに驚いているのさ。だから今後上手く行かないことがあったときは、アタシに教えてもらえないかい?特にイーナやエーファは、アタシより先に人間になった先輩だからね」
「うん♪イーナも、これからもいっぱい猫の神様とお話をしたいの♪」
「我が人間として不自由なく暮らせているのは、テレーゼ姉者とティアナ姉者の人化魔法の力が凄いのだと思うが、そんな我の拙い経験で良ければ」
「イーナ、エーファ、ありがとうよ」
「イーナちゃん、エーファさん、ありがとうございます。エマお姉ちゃんをよろしくお願いします」
「うん♪」「我がエマ殿に役に立てることがあるのなら何なりと」と、エマの願いを了承してくれたことに感謝するエーリカに答えるイーナとエーファ。
昼食後、エマとエーリカは、テレーゼ姉妹とリバーシ(以前レクリエーション用として作ったもの。第11章第1話参照)を楽しんだ。ルールが比較的簡単で、2人はすぐにゲームを楽しむことができたようだ。
「エーリカ、初めてにしては上手いじゃないか」
「アデリナさん、とても上手いです。このゲーム、テレーゼさんたちとよくやってるんですか?」
「アタシたちはみんなで時々遊ぶんだけど、今いる中ではテレーゼ姉さんとペルレがダントツに強いな」
「姉さんとペルレは間違いなく強い。でもアデリナは前と比べるとかなり上手くなった。以前は私が殆ど勝ってたけど、今はアデリナとは勝ったり負けたりしている」
「ペルレが強いのはアタシも実感しているさ。最初は大きく勝っていたはずなのに、いつの間にか逆転してるからねぇ」
「エマさんは、今日が初めてということですし、これから遊んでいくうちに上手くなりますよ」
「前にペルレ姉さまに話を聞いたのですが、強い人たちの対戦を見学して学んだり、楽しく遊んでいるうちに自然と強くなったそうですよ。ですから、エーリカさんもエマさんもきっと強くなれると思います」
(エーリカおねえちゃん、エマおねえちゃん、がんばって、なの♪)と、アデリナ、エーリカ、ヘレナ、エマ、ペルレ、エァト、ワーちゃん。和気藹々とした時間をみんなで過ごすことができて何よりである。
エマとエーリカにリバーシで楽しんでもらったあと、以前農場に設置した露天風呂に2人を案内するテレーゼ姉妹。露天風呂に入ったことがないという2人に、温泉の心地良さを体感してもらおうと思ったのである。せっかくの機会なので、テレーゼ姉妹だけでなく農場にいる庭鳥やボアたちの仲間も一緒に入ることになった。入浴前にテレーゼが全員に浄化魔法を使い、合わせて仲間たちには、温泉内でのトイレをしないようにヘナフやエーファから伝えてもらって、全員で露天風呂へ。
「テレーゼさんの家に到着したばかりのときにも感じましたが、こんなにたくさんの庭鳥やボアがいるのは驚きですね。でも、みんなお湯に入って気持ち良さそうにしていて、私も一緒に居てとても楽しいです・・・」
「庭鳥は、ヘナフちゃんたちが雛のときに農場にやって来ましたが、テレーゼお姉さんと一緒に、マルクト郊外にある知人の農家まで雛を迎えに行った(作者注釈:第13章第1話参照)ことを思い出します」
「お姉さんたちが指名依頼を引き受けるためにイェソドに行ったのですが、依頼を達成して、エーファと一緒に300頭ほどのボアの群れを連れ帰ってきた(作者注釈:第14章第4話参照)ときには、身体は小さかったんですけど数が多かったので驚きました」
「エーファが自分の意志で、お姉さんの人化魔法を使って人間になったのは、その翌日(作者注釈:第15章第1話参照)でしたね」と、エーリカの感想に、ヘナフやエーファたちが一緒に暮らすようになったときのことを話すマーヤ、カトリナ、アリーナ。
「テレーゼ、これは温泉って言うのかい?猫の姿で身体が汚れたときにお日様で温められた水たまりに入ったことがあったけど、これはその水たまりどころか、家にある風呂以上に温かくて気持ちが良いものだね・・・」
「農場の外の森でお湯が湧き出ていたから、温泉が誰にも使われていないことを確認して、この露天風呂の近くにある泉源ごと農場に取り込んだのよ。ここなら農場の仲間たちを含めて、みんな一緒にお風呂に入って過ごすことができるから、今日貴方たちが喜んでくれたことを含めて本当に良かったわ」と、エマ、テレーゼ。全員で露天風呂を十分堪能した。
エマとエーリカの帰宅時間である日没近くになってきたので、エマの人化魔法を解除するテレーゼ。そのあと、転移魔法でダアトまで2人を送り届けた。
「テレーゼ、みんな、今日はありがとうよ。人間になると、猫よりも色々なことができるようになるから、なかなかいいモンだね」
「テレーゼさん、みなさん、本当に有り難うございました。明日はマルクトの街を案内してもらえるとのことなので、楽しみにしています。明日もよろしくお願いします」
「どういたしまして。明日も今日と同じくらいの時間に迎えに来るけど、それで大丈夫?」
「はい。それで大丈夫です」と、エマ、エーリカ、テレーゼ。明日は全員でマルクトの街の観光案内である。
(そう言えば、以前お父さんとお母さんにマルクトの街を案内したことがあったけど、明日はぜひ2人にマルクトの街を楽しんでもらいたいわ・・・)と、思うテレーゼである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この話を綴っていて、作者が学童のとき、地域の子供会で他所の市の子供会を迎えたとき、手作りのカレーで親睦を深めたことを思い出しました。数年後に進学先で、そのときのメンバーの1人と同級生として再会したのですが、相手も当時のことを覚えていたことを思い出します。一緒にカレーを食べたというのが大きかったのかな?と感じますが、今回、昼食後のゲームや入浴を含めてテレーゼたちとエマ&エーリカ姉妹と親睦が深まったのは何よりです。
次話は、エマが新たな能力に目覚める話です。




