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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第18章:日常生活でのあれこれ
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第1話:サメ?ぬいぐるみ?の精霊

 ここしばらく何かと慌ただしかったテレーゼ姉妹は、1日お休みを取ることにしました。

 テレーゼは、年少者たちに誘われておままごとに参加します。

 商店街や駅ビルで買い求めた腕時計とサングラスは、これまで持っていなかったアリーナ、アンナ、エーファにプレゼントして、合わせてそれぞれの使い方を教えてあげたところ、その場ですぐに時間の確認ができることや日差しを避けられることは、農作業や冒険者稼業だけでなく日々の暮らしの中でも非常に有益であるため、3人ともとても喜んでくれた。加えて、他の姉妹全員とお揃いであるため、姉妹の繋がりを感じられて余計に嬉しかったようだ。






 テレーゼたちが商店街と駅ビルに出掛けた翌日であるが、姉妹全員の農作業や冒険者稼業やギルド勤務が、ちょうど良い具合に全員が休むことが出来そうだったため、姉妹全員で1日お休みを取ることにした。


 妹たちには1日ゆっくりするように伝えていたのだが、テレーゼはイーナ、アンナ、ペルレ、ヘナフからおままごとに誘われたので、彼女たちと一緒に遊ぶことにした。


 今日のおままごとのメンバーであるイーナは、去年テレーゼの故郷に観光旅行に行ったときに買ってもらったジンベエザメのぬいぐるみに、「ワーちゃん」と名付けて大事にしている。一緒におままごとをして遊んだり、一緒にテレビを見たり、同じ毛布で一緒に休んだりしている。特にイーナにとっては、自分で名付けを行ったこともあり、「妹」と「娘」の中間のような、半ば被保護者的な存在という感覚であるため、もちろん今日も一緒である。


 因みにイーナ的には、アンナは仲の良いほぼ同じ年頃の友人で、ペルレは妹ではあるものの、どちらかと言えばしっかり者の姉に近く、ヘナフはアンナと一緒に雛鳥の頃から慈しんだ妹ではあるが、実際には産卵可能な成鳥であるため、ペルレに近い位置付けであるようだ。


 そのため、ワーちゃんのおままごとでの役柄としては、イーナが子供のときはその妹、母親のときはその娘、という場合が多いことをおままごとの役割を決めるときにイーナが教えてくれた。今日の配役は、それらの関係性を踏まえてテレーゼが祖母、ペルレが母親、ヘナフはみんなと同居している母親の妹(叔母)、イーナが長女、アンナが双子の次女、ワーちゃんが末妹というものであった。


 おままごと関連の余談になるが、少し前に姉妹全員で見たあるアニメ番組で、とても現実的なおままごとを主人公たちがやっているシーンが出て来たので、イーナたちは一度試しにやってみたらしい。


 ところが、おままごとというよりはある種の昼ドラを再現するかのような、義理の母娘の仲が険悪だったり、旦那がギャンブルで借金を作ったりと、端的に言い換えると非常に殺伐とした内容であったため、普段とても仲の良い姉妹であるテレーゼたちからは果てしなく縁遠い話で、イーナたちが日常生活の中における前述のシチュエーションを全くと言って良いほど想像ができなかったため、その手のお題でのおままごとで遊ぶことは全くなくなったとのことで、それを聞いて、心の中で安堵したテレーゼである。






 「「「テレーゼお婆ちゃん、ペルレお母さん、ヘナフ叔母さん、ただいま」」」(イーナ&アンナ。ワーちゃんの台詞はイーナが代読)


 「3人ともお帰り。今日はどこに遊びに行ってたんだい?」(テレーゼ)


 「イーナ、アンナ、ワーちゃん、お帰り。テレーゼお婆ちゃんがお風呂を用意してくれたから早く入ってきなさい」(ペルレ)


 「みんなおかえりなさい。きょうも3にんでいっぱいあそんできたんだね。おふろのあとはゆうごはんにしようね。こんやはみんながだいすきなはんばーぐだからね」(ヘナフ)


 「今日はみんなで近所にあるきれいなお花畑を見に行ったの♪夕ご飯はハンバーグなの?わーい♪ワーちゃん、今日もイーナやアンナと一緒にお風呂に入ろうね♪」(イーナ)


 と、イーナたちが遊びから帰ってきてお風呂に入り、夕食を食べて全員で一緒に就寝するまでのおままごとである。






 「ワーちゃん、身体をごしごししたから、一緒にお風呂に入ろうね♪ぬるめのお湯でワーちゃんが煮えたりはしないから、全身お湯に浸かってあったまろうね♪ワーちゃん、湯加減はどう?」と、イーナ。サメだからいつも海水に浸かっていないと生きていられないのでは?などというツッコミは無粋というものであろう。テレーゼが以前試作したお風呂の模型(第10章第1話を参照のこと)でワーちゃんを入浴させるイーナ(なお、おままごとなので模型にお湯は入れていない)。


 「イーナちゃん、ちょうどいいゆかげんだよ♪」と、ワーちゃんのいる辺りから可愛らしい声で返事があった。


 「アンナ?ワーちゃんの代わりにお返事してくれたの?」


 「アンナ、お返事してないよ。イーナちゃんがしゃべったんじゃないの?」


 「イーナじゃないよ」


 「ちょいとお待ち。今の声って・・・もしかしてワーちゃんが喋ったのかい?」


 お婆さん的口調のテレーゼの言葉に応えて、「そうだよ♪」とばかりに、自分の身体であるぬいぐるみの尾びれを動かすワーちゃん。


 「ワーちゃんがしゃべってうごいてるの。いつのまにせいちょうしたのかな?」と、自分の身体よりも体長が大きなワーちゃんの突然の変化に驚くヘナフ。


 「テレーゼお婆ちゃん、じゃなく姉さま。ワーちゃんのぬいぐるみに精霊が宿っていますね・・・」


 「ペルレお母さん、じゃなかったわね・・・ペルレ、それ本当なの?」


 「間違いないと思います。おそらく、いつもイーナ姉さまがとても可愛がっていたので、心が宿ったんだと思います。古くから、大事にしている物や人形などには心が宿ると言いますから。そして、セフィロトで姉さまの発する強力で居心地が良い魔力が、ワーちゃんが精霊になるのを助けたんだと思いますよ」


 「それなら、元々どこかにいた違う霊がワーちゃんのぬいぐるみの身体に憑依したということではないのね。ワールファイ(ジンベエザメ)の精霊、という事で良いのかしら?」


 「今見た限りでは、サメ、もしくは水の精霊と言えるのかも知れませんね。サメは水棲生物ですから母なる海というか、水の魔力の影響を強く受けやすいからでしょう。加えて、多くの陸上生物のように風の魔力も感じますが、これは元々の身体がぬいぐるみであることが強く影響しているためでしょう。その意味ではぬいぐるみ、もしくは風の精霊とも言えるのかも知れません。


 あとは水と風の両方の魔力を全身に纏っているため、新たに身体全体に、深海に潜っても問題のない程の防水性を獲得しているようです。そのため、全く水のないところでも、逆に水中であっても問題なく生きていけるようですね。現在は精霊ですから変温動物である魚類のように、寒くなって動きが鈍ったり動けなくなるようなことや、私たちと一緒にお風呂に入っても、ぬいぐるみの身体が傷むようなこともないでしょうね。


 最後に、ワーちゃんが普段生きていくためのエネルギーは、持ち主のイーナ姉さまと元々繋がりが強い姉さまが持つ潤沢な魔力を糧にしているようです。そのため彼女が魔力不足で消えてしまうようなことは、まず考えられませんので安心ですね」


 「ペルレ、色々教えてくれてありがとう。イメージ的には、魚類から両生類や爬虫類を通り越して、哺乳類相当に進化しているのね・・・」


 「ペルレ、テレーゼお姉ちゃん、ワーちゃんは、これからはイーナたちと一緒にお風呂に入れるの?」


 「イーナ姉さま、その通りです。ワーちゃんと一緒のお風呂では、身体を必要以上に強くこすったりしなければ、大丈夫だと思いますよ」


 「わーい♪これからはワーちゃんもみんなと一緒にお風呂に入れるの♪」


 「イーナ、良かったわね。ワーちゃんが精霊になれたのは、ペルレの時と同じように本人の強い想いがあったことに加えて、テレーゼさんの強い魔力があってこそでしょうね。あなたにはいつも本当に驚かされてばかりです・・・」と、新たな妹の誕生を目の当たりにして驚きを隠せないティアナ。


 「イーナちゃん、アンナちゃん、テレーゼおねえちゃん、ティアナおねえちゃん、ペルレちゃん、ヘナフちゃん、これからよろしくね♪」と、ワーちゃんが挨拶する。


 テレーゼやティアナ、イーナ、ペルレ、ヘナフから、他の妹たちにもワーちゃんが精霊になったことが伝わり、他の妹たちもおままごとをしている場所に集まってきて、口々にワーちゃんに話し掛けていた。


 なお、その日の入浴後の夕食はハンバーグ(おままごとの内容を近くで聞いていた今日の料理当番のヘレナが、頑張って作ってくれたようだ)だったが、おままごとに参加したイーナとアンナはワーちゃんの精霊化に加えて二重に嬉しかったようだ。


 基本的には元々のぬいぐるみの持ち主であるイーナと強い心の繋がりがあるワーちゃんであるが、そのイーナが元々テレーゼと強い心の繋がりがあるため、イーナ以外にテレーゼとの心の繋がりが強固なティアナ、ペルレ、ヘナフ、エーファとも頭の中の会話が可能なようだ。いずれにしてもワーちゃんにも通信魔法などを付与した魔石のアクセサリーを、なるべく早く作成してプレゼントしてあげようと思うテレーゼである。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 イーナがいつも大切にしているワーちゃんに心が宿り、みんなの前に精霊として現れてくれたことは、テレーゼ姉妹にとって驚き以上に大きな幸せをもたらしてくれる出来事になりました。本当に良かったですね。


 次話は、この話の翌日に農場で起こった出来事です。

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