第4話:妹たちとの商店街散策
テレーゼ(ティアナ)は、これまで市内を訪れたことがないマーヤとペルレを連れて、鉄道駅や近接する商店街周辺を散策します。
11月25日 文中の誤字を修正しました。
ソフィアがイェソドへの帰途に就いた翌朝のこと、今日はテレーゼとマーヤの両方ともギルド勤務はお休みである。
そこで、今まで日本に行ったことがないマーヤと、日本からやって来たものの、精霊になってからはまだ日本に行ったことがないペルレを、商店街の散策に連れて行くことにした。平日なのでそれほど人通りは多くないだろう。2人に確認したところ、とても喜んでもらえたので何よりである。また他の妹たちは、今回のことを自分のことのように賛成してくれた。本当に健気で心優しい妹たちである。
なお、ペルレは流石にそのままだと人間ではないことが解ってしまうので、マーヤ共々髪の色を栗色や黒色に見せる魔法(第7章第1話を参照のこと。魔法の効果により、ペルレの長い耳は髪に隠れているように見える)と、サングラス(マーヤはカトリナから、ペルレはヘレナから貸してもらった)を掛け、以前テレーゼが街で購入した他所行き用の洋服を背中の羽の上から着用(洋服で羽をしまっても、問題なく飛翔が可能である。第8章第4話を参照のこと)した。
それと街中では普段のように空中を飛翔するのではなく、猫型のロボットが主人公の有名なアニメを参考にした脚の動きで、一見すると歩いているように見える、地面すれすれの飛行を行うことにしたようだ。身支度を調えたあと、ティアナを含めた4人は勝手口から住宅街に出た。
「姉さまと一緒に街にお出かけできるなんて、ペルレは今から凄く楽しみです♡」
「テレーゼお姉さん、今日はどこに行くんですか?」
(テレーゼさんと行く場所なら、どこでもきっと楽しそうですね)
「せっかくだから全員への買い物と、あと、日本で初めて街中に設置されたピアノが2台あるそうだから、それを見に行きましょう。そこのピアノは、午前10時から夕方5時までは誰でもピアノを弾いて構わないそうよ」と、ペルレ、マーヤ、ティアナ、テレーゼ。
「それは凄いですね。セフィロトでピアノと言えば、王城以外では、王都ダアトにある大教会の祭壇の近くに置いてあるくらいで、それも誰でも触れるようなものではありませんから」
「そうなのね。折角だから、2人とも触ったり弾いたりしてみたら?」
「ペルレはせいぜいテレビの演奏会を見たくらいで触ったことがありませんので、楽しみです」
(どんなピアノでしょうか?見るのが楽しみですね)
テレーゼと一心同体のティアナを含めて4人は、会話をしながら団地から歩いて電停まで行き、そこから路面電車に乗る。そして一度途中下車して別系統の路面電車に乗り換え、目的の商店街に到着である。
目的のストリートピアノは、2台とも鮮やかな色に塗装されていて、「ラッキーピアノ」という愛称で呼ばれているようだ。そのうちの1台が誰も弾いている人がいなかったので、マーヤとペルレが物珍しそうに触ったり、椅子に座って鍵盤を叩いたりしていた。
「姉さまは、何か弾いたりしないんですか?」
「そうね・・・あまり上手じゃないけど、やってみるわね」と、ペルレに答えるテレーゼ。椅子に座って深呼吸を1回してから、ドイツ在住時にグルントシューレ(ドイツの初等教育で日本の小学1~4年生に相当。プロローグ4を参照のこと)の同級生で、ピアノがとても上手だった隣家のイギリス系ドイツ人一家の長女に教えてもらい、一生懸命練習して覚えた後も時折弾いていた曲を弾き始めた・・・そして2分足らずの曲を弾き終えたとき、妹たちだけでなく通りすがりの通行人からも拍手をしてもらえたり、母親に連れられた姉妹と思しき小さな子供たちが、途中から演奏に合わせて歌ってくれていた。立ち上がって、その場にいた人たちに一礼するテレーゼである。
「姉さま、この曲は「猫踏んじゃった」ですね・・・楽譜を見ない暗譜で丸々1曲ミスなく弾けるなんて、本当に素敵です♡」
「お姉さん、ピアノまでこんなに上手に弾けるなんて本当に凄いです・・・」
(テレーゼさんって、こんな事までできるんですね・・・あなたにはいつも驚かされてばかりです)
「本当に久しぶりだから指の動きが全然良くなかったけど、何とか暗譜(自分が演奏する曲を全て覚えた状態で楽譜を使わずに弾くこと)できて良かったわ。あと、私がこの曲を覚えたドイツでは、猫ではなく何故か「ノミのワルツ」と言うのよ」
「そうなんですね・・・さっき姉さまの演奏しているところをペルレが携帯電話で動画撮影しましたので、他の姉さまたちにもぜひ見て聴いてもらいたいです♡」
「少し恥ずかしいけど・・・私の今の精一杯だから構わないわよ」
テレーゼの演奏をきっかけに、通行人の中でピアノを弾き始める人が現れたので、その演奏を聴きながらテレーゼたちはピアノの前を離れ、商店街を歩くことにする。商店街と言えば、高校時代の同級生の親御さんが商店街に出店していたのだが、残念ながら今は営業を止めてしまったらしく、別の店が営業していた。それ以上に、テレーゼが母に連れられて初めて商店街を訪れたのは、今から40年以上前のことであるが、当時の記憶にある店(主に服屋さん)は、殆どなくなっていた。当時の個人商店の服屋さんはクーラーがないところが多く、夏の店内は暑かった記憶があるが、今日は店の入り口からエアコンの冷気を感じる。こんなところにも時代の流れを感じるテレーゼである。
商店街を通過して新幹線の始発・終点となっている駅ビルに到着した。
(以前ここに来たときは自動車に乗って来ましたけど、こんな感じで歩いて来ると何となく景色が違って見えますね)
「この建物全てが、鉄道という乗り物に乗るための場所なんですか?」
「基本的にはそうなんだけど、駅舎以外にもいくつもの建物と繋がっていて、建物の中には100軒とは言わないくらい数多くの店があるわ」
「ペルレ、迷子になりそうですから、姉さまから離れません♡」
「私もテレーゼお姉さんの近くを歩きたいです」
「解ったわ。あと、2人とも腕時計やサングラスを持っていなかったわね。アリーナ、アンナ、エーファの分を含めて、以前の旅行で購入したものとお揃いの腕時計やサングラスを買いましょう」
「姉さまとお揃いの時計で、ペルレは凄く嬉しいです♡」
「この腕時計はとても便利ですね。正確な時間が手軽に解るのは本当に有り難いです」
テレーゼたちは、以前腕時計を購入した時計店で、10気圧防水で耐衝撃性に優れた、お揃いのソーラー式デジタル腕時計を5個購入した。ペルレとマーヤは、時計店内で腕時計のベルト調整をしてもらい、早速テレーゼとお揃いの腕時計を左腕に着けてとても嬉しそうだった。時計の読み方は、ペルレがマーヤに教えてあげていた。購入時に他の3人分の腕時計はベルト調整は行っていないが、テレーゼの自宅にベルト調整用の工具があり、彼女自身、過去に少なくとも100回以上は調整をした経験があるため手慣れたものである。帰宅後に妹たちの腕に合わせてベルトを調整してあげようと思う。
次に、別の店で今日のような変装以外にも、冒険者稼業や農作業などにも使用可能なサングラスを、まだ持っていない妹たちに5個購入したところで正午を少し過ぎた時間だったので、地下1階の食堂が並ぶエリアで和食の店に入り魚料理を注文した。そして、折角なので、別の店で姉妹がまだ口にしたことがない全員分のうな重を購入し、タクシーに乗って帰宅するテレーゼ姉妹である。
(久しぶりに演奏したけど、何とか格好が付いて良かったわ・・・あと、うな重はみんな美味しく食べてくれると良いな・・・と、車内で帰宅後の妹たちのことを考えるテレーゼである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます
商店街や駅ビルを訪れて、愛娘のテレーゼたちがとても楽しめたようで、何よりです。
ピアノの話ですが、正直な話、作者は経験が本当に乏しいのですが、「猫踏んじゃった」ほか簡単な数曲は、オルガンやピアノで一時期相当練習したことがあります。というのも、小学校5・6年の担任の指示で、教室に置いてあるオルガンを朝礼で日直が自分で曲を選んで弾き、その曲をクラス全員が合唱するということがクラス内での課題とされていたからです。
そのため、日直の相当前の日から実家の2階に置いてあった姉の電子オルガンを使って、自己流ですが練習をしていました。楽譜を見ながら弾くということが正直苦手で、全て暗譜できるまで練習を行いました。基本的に家族がいないときに練習していたのですが、それを家に帰ってきた母が聴いていて、弾き終わった後で拍手してくれたことを今でも思い出します。同じく小学生の頃に練習した珠算や剣道もですが、少し休むと自分が思ったように指や身体が動かなくなるため、それらの経験を通じて、こまめに練習を行うことの大切さを学童の頃に痛感したように思います。
あと、腕時計のベルト調整の話については、作者が一時期機械式腕時計を趣味にしていたことから、家族やかつての職場の同僚や上司などからベルト調整を頼まれたり、自分が購入した腕時計のベルトのコマを早ければ数日おきに調整したりして少なく見積もっても100回以上の経験を積んでいますので、海外製の余程特殊な形状のものでない限り自力で調整が可能です。
この話で第17章は終わりです。次章は、テレーゼ姉妹の日常で起こった穏やかな?出来事に焦点を当てた話がメインとなります。ここまで読んでいただいた皆様であれば、次章もきっと楽しんでいただけるのではと思っています。
次章も一生懸命頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。




