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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第16章:温泉と新魔法
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第4話:転移魔法と変身魔法

 温泉に両親を招待した翌朝、母親のテレージアが、これまで様々な新しい魔法を作成して使いこなす娘のテレーゼから見ても驚きの魔法を開発して、その場で実験まで行います。

 テレーゼ姉妹や両親にとって、本当に有意義な時間を共有できた昨夜の夕食会から一夜明け、両親を交えて朝食を済ませて寛いでいるときのこと。


 「テレーゼちゃん、そういえば転移魔法って作れないかしら?以前テレビのアニメで見た、魔法を使うと、あっという間に遠く離れた場所に行くことができるというのは便利で良いわね♪」と、テレージア。


 「お母さん、それは前に考えたことがあるのよ。収穫した農作物をギルドに出荷するときに物質転移魔法(第8章第2話参照)を使うんだけど、その時に使う魔力がかなり大きいから、人間を転移させる場合は魔法を発動してきちんと成功させることができるのか、もっと言えば、自分が移動する途中の空間から無事に出てこられるのか心配なのよ」と、テレーゼ。転移魔法は漫画やアニメや小説でも良く出てくるものであるが、物質はともかくとして、現状では魔法を妹たちに使う場合の安全性が確認できていないことを危惧するテレーゼである。


 「テレーゼちゃん、こういうのは思い切りが大切よ♪さっき頭に浮かんだ転移魔法が使えそうな気がするから、私が試してみるわね。自分の家の居間をイメージして・・・」そう口にした途端、テレージアの姿が目の前から消えた。テレージアと同等以上に肝が据わっている剛史は、ある意味思い切りが良すぎるテレージアの行動を目の当たりにしても全く動揺する素振りは見られないが、テレーゼを含めた娘たちは、テレージアがいきなり消えてしまったことに大騒ぎである。


 「今、(自宅の(テレーゼ的には実家の))居間にいるんだけど・・・駄洒落じゃないわよ。テレーゼちゃんに最初にもらった魔石には今まで魔力が一杯だったけど、半分くらいなくなっているみたい。新しい魔石のほうには魔力がそのまま残っているわ。もう1回やれば戻って来られるかしら?」テレージアから剛史たちの頭の中に会話が届く。どうやら1回の転移魔法で魔石に蓄えられた魔力の約半分という、大量の魔力が必要ではあるものの、魔法自体は無事に発動したようだ。そして「今からそっちに戻ってくるわね」という言葉のあと、姉妹と剛史がいる部屋に戻ってきたテレージア。目の前でテレージアの転移魔法の実験を見ていたテレーゼたちは、無事に彼女が戻ってきたことに安堵していた。


 「上手く行ったみたいね♪」「テレージア、ぶっつけ本番だと流石に危ないだろ。魔法の実験をしたいのなら、私も一緒に付き合うから独りでやるのは止めておきなさい」と、テレージア&剛史。


 「それなら、次は剛史さんがさっきの魔法を使ってみて。私が使った魔法のイメージは、さっき話した通りだけど、行く場所のイメージをしっかり思い浮かべたら良いみたいよ♪」と、剛史の右腕を両腕で抱きしめているテレージア。テレージアのアドバイスに従って魔法のイメージを思い浮かべる剛史だが、折角なのでより具体的なイメージで実験することにした。空想でどこにでも繋がるドアを思い浮かべて、それを開けるとすぐに居間に到着するイメージで魔法を発動させた。そして、無事に居間に到着した。


 「2人とも居間に無事に辿り着いたのなら、魔法は成功したようだな。テレージアのイメージをヒントにして、更にイメージを明確にして消費する魔力が少なくなるように、昔見た漫画やアニメに出て来た、ドアを開けると目的地に到着するというイメージで魔法を試してみたんだ。魔石の魔力は、追加でテレーゼに渡されたほうには全部残っていて、最初に渡された魔石には、まだ9割程度残っているようだな」


 「剛史さん、一緒に仕事をしていたときからだけど、私が伝えた漠然とした事柄を、はっきりと形に出来る想像力が凄いわ、改めて惚れ直したわ!イッヒリーベディッヒ!」「テレージアが最初に魔法を成功させたことが凄いんだよ、イッヒアオ」(「イッヒリーベディッヒ!」と「イッヒアオ」は第9章第3話を参照のこと)と、自分の工夫を追加しての剛史の魔法行使に興奮気味のテレージア&最初に意を決して魔法を成功させたテレージアの胆力を称える剛史。そして再びテレーゼたちのいる部屋に戻ってきた。目の前で両親が共同で新たな魔法を作り上げ、立て続けに成功させたことにテレーゼたちは心底驚嘆していた。


 その後、両親の魔法成功に意を強くしたテレーゼがペルレ(どちらも物質転移魔法が使える)とペアで、両親が見つけてくれたイメージで魔法を発動する。実験中、同行する人数を増やしたり、最後は以前エーファたちと出逢ったイェソド近郊の森まで数人で転移するなど、いろいろ実験した結果、しっかりイメージが固まってさえいれば、魔法そのものはほぼ確実に成功した。失敗しても魔法そのものが発動しないだけなので、転移中の空間に取り残されるようなことはないようだ。


 それと、魔力の消費は移動距離よりも同行する人員に左右されるようだが、テレーゼたちが魔法の行使に慣れてくると、消費する魔力が目に見えて減少した。現状でこの魔法は「導師」(全属性持ちのこと。テレーゼ、剛史、テレージアと、つい最近ペルレも条件を満たしている)のみ使えるようだ。あらゆる魔法に通じていること、即ち使う魔法を明瞭な形でイメージできる力を養うことが、転移魔法行使のいわば必須条件だと思われる。


 セフィロトで導師の適性持ちが非常に少ない(第10章第4話参照)という現状を鑑みるに、転移魔法の開発者やその関係者以外の魔法行使は、たとえ他人に転移魔法の概念を教えても現状ではかなり厳しいと考えられるが、先日実用化できた通信魔法と並んで非常に有用な魔法であることは言うまでもない。現状では一度行った場所でないと使えないようだが、その条件を満たせば距離に関係なく、もっと言えばセフィロトと日本のような違う世界への往来さえも可能である。その有用さ故に、権力者たちに知られると間違いなく軍事利用すら危惧されることは火を見るより明らかなので、これらの魔法のことはテレーゼ姉妹と両親だけの秘密にしておくことにした。






 転移魔法の行使で魔石の魔力を相当消費した剛史とテレージアは、魔石に蓄える魔力を回復(概ね1日セフィロトに滞在することで、2つの魔石一杯分の魔力が回復できるようだ)させるため、もう1日テレーゼたちと一緒に過ごすことになり、テレーゼ姉妹は大喜びだった。両親のことを姉妹全員が娘として強く慕っているというのもあるが、剛史からは柔道(体術)に関して、テレージアからは魔法に関して、現状ではこれ以上望むべくもないほどの優秀な先生たちから、テレーゼ姉妹が学ぶことができるこの上ない機会だったからである。彼女たちの数多くの熱心な質問に対して、2人は惜しげもなく快くかつ丁寧に教え続けた。全員のスキル向上の糧になったであろうことは疑いない。


 ところで、両親による娘たちへの「集中講義」での出来事であるが、「そういえば、ティアナちゃんって、テレーゼちゃんと一緒になる前はどんな姿だったの?多分、イーナちゃんやエーファちゃんに使っている人化魔法をテレーゼちゃん自身に使ったらティアナちゃんの姿になれるんじゃないかしら?」と、テレージアがティアナとテレーゼに物凄いことを提案してきた。


 「私の生前の姿は大きな熊でした。それとは別に、前に人化魔法を自分で使ったときの姿をお見せできれば良いのですが・・・」と、ティアナ。そしてテレーゼの頭の中に明瞭なティアナのイメージが伝わってきた。そのイメージを自らに付与するようにテレーゼは魔法を発動させた。


 その結果、全体的にはイーナを大人にしたような、白銀色の腰付近まで伸びたストレートの艶やかな髪、夜空を思わせる深い碧色の瞳(テレーゼがいつも大切にお守り袋で胸元に着けている、ティアナの魔石の色によく似ている)、白人に近い肌色、若返ったテレージアとほぼ同年代の柔和かつ容姿端麗な、テレーゼとほぼ同じくらいの体格の女性に変身した。イメージ的には、ティアナ(テレーゼ)の固有魔法である人化魔法をテレーゼ自身に使用したという感じであるため、変身魔法は人化魔法から派生した魔法と言えるかも知れないが、何れにせよセフィロトでは転移魔法と並んで前例のない魔法の完成である。これには、他の妹たちも相当驚いたようだ。


 「改めまして。あなたがティアナちゃんね♪いつもテレーゼちゃんと一緒にいてくれて、いつも助けてくれて本当にありがとう♪」と、テレージア。


 「ティアナお母さんが、人間になった姿で逢えて本当に嬉しいの・・・」と、イーナは大切な記憶としてずっと忘れずにいた、生前に人化魔法で変身した母親と寸分違わぬティアナの姿を見て、目に涙を浮かべながらぎゅっと身体に強く抱きついてきた。この魔法で変身すると驚くべきことに、変身前のテレーゼではなく、完全にティアナ(の身体)になることができるようだ。加えて、発音される声もテレーゼに近い優しい声質ではあるが、通信魔法で頭の中に聞こえるティアナの声に変化していた。


 魔法の効果により、テレーゼは文字通り完全にティアナに「変身」しているのだが、イーナには母親が姿や声を含めて生き返ったことが心底嬉しく感じたのだろう。まだ少し目に涙が滲んでいるものの、心から嬉しそうな顔をしたイーナをしっかり抱きしめながら優しく頭を撫でるティアナとテレーゼ。


 あと鑑定魔法を併用して気付いたことであるが、有り難いことに魔法行使による身体への悪影響はなく(それどころか、かつてのキラーグリズリーの姿にも変身可能のようだ)、かつ自分の好きなタイミングで魔法を解除できるようなので、今後もイーナのために時々この魔法を使おうと思うテレーゼとティアナである。イーナが母親から離れたくなさそうにしているので、今日1日はティアナの姿で過ごすことにした。


 「テレージアさん、テレーゼさん、お二人のお陰で人間の姿でイーナに出逢うことが出来ました。本当にありがとうございます」


 「私は何もしていないわ。全てテレーゼちゃんとティアナちゃんが頑張ったからよ♪」


 「お母さん、そんなことないよ。転移魔法もだけど、魔法を使うために大切なヒントをお母さんからもらったことが本当に大きいわ」


 「テレージアお母さん、ティアナお母さん、テレーゼお姉ちゃん、本当にありがとう♪人間になったティアナお母さんに逢えて、イーナは本当に幸せなの♪」と、ティアナ、テレージア、テレーゼ、イーナ。変身の様子を間近で見ていた他の妹たちも近寄ってきて、ティアナの姿をじっと見たり、変身後の身体や顔にそっと触れたりしていたが、自分たちの腕の中にいるイーナは、大好きな母親ティアナテレーゼに抱かれて本当に幸せそうな顔をしていた。それを見ていると、改めて良い魔法を生み出せたことを心底嬉しく感じるテレーゼとティアナである。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 前話では剛史の柔道の強さが明らかになりましたが、本話ではテレージアの魔法に関する豊かな素養(想像力や感受性)により、変身魔法の提案を含めて、物凄い魔法を2つも生み出しました。これには作者も本当にびっくりです。


 テレーゼが魔法行使に関して、想像力は無限の武器だと以前妹たちにアドバイスしていましたが、彼女の柔道に関する素養が剛史から強く引き継いでいるのに対して、魔法に関する素養は明らかにテレージアから強く引き継いでいます。テレーゼは自分を高めることに関して、作者から見ても元々求道者的な頑張り屋さんですが、それに加えて、特にセフィロトに転移して以降、両親から強く引き継いだ素養にも助けられているようです。


 そして、テレーゼの心と身体の中で母親のティアナが生き返ったとき、イーナはいろいろな気持ちがこみ上げてきて号泣していました(第4章第4話参照)が、今回の母親の人間としての姿が再現できたことを、それと同じ以上に嬉しく感じたようです。本当に良かったですね。


 この話で第16章は終わりです。次章は、テレーゼたちの尽力により、街周辺でボアが跳梁跋扈するという危機的状況を脱したイェソドのギルドマスターであるソフィアがテレーゼたちの所にやって来ますが、ある問題が発生したことから、それを解決する話がメインとなります。ここまで読んでいただいた皆様であれば、次章もきっと楽しんでいただけるのではと思っています。


 次章も一生懸命頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

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