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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第16章:温泉と新魔法
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第3話:みんなで一緒の夕食と模擬戦

 温泉を堪能した剛史とテレージアは、テレーゼ姉妹たちとの夕食で歓迎を受けます。

 そこで、エーファは剛史に強い関心を抱いたようです。

 両親たちの入浴が終わったあと、テレーゼ姉妹も入浴を行い、その後全員で夕食の準備を行った。メニューは全員楽しめるように農場内でバーベキューである。


 バーベキューの材料は、農場内で収穫した果菜を含む野菜や、マルクトの街の市場で購入した家畜の肉、あとは、ヘナフたちが日々頑張って産んでくれる卵のうち無精卵を温泉のお湯で温泉卵に仕上げたものなどがメインである。


 現在元々の大きさよりも小さくなっているエーファの群れや、ヘナフの仲間たちも一緒にいてくれることになったので、唐芋の焼き芋(エーファの群れ用)やスイートコーン(ヘナフの仲間用)なども合わせて用意した。小さくなったとはいえ、300頭余りのエーファの群れや数十羽のヘナフの仲間たちが一箇所に集まるのは初めて見る人には相応のインパクトがある筈であるが、テレーゼ姉妹との生活で人慣れしているうえに、テレーゼの両親が来てくれたことを歓迎してくれており、和やかな異種族交流が行われた。






 「そういえば、あなたは大きくなってるけどペルレちゃんよね♪いつ大きくなったの?」


 「お母様、ペルレだと解ってもらえて嬉しいです。姉さまがエーファ姉さまやその群れを、馬車で3日近く離れた場所から馬車に乗せてここまで連れ帰るために拡大魔法と縮小魔法を作ったんですけど、その魔法を私が身に着けているブレスレットに付与して下さったんです。お陰で、自分が好きなときに拡大と縮小の魔法を使えるようになって、とても幸せです♡」と、テレージア&ペルレ。今日はペルレは人間と同じサイズに拡大魔法で大きくなっているのだが、テレージアに自分のことを気付いてもらえて嬉しいようだ。






 そして、姉のテレーゼと同じ武道を修めているという剛史に強い興味を持ったエーファが模擬戦を希望(本能的に、剛史が身に纏う武の雰囲気的なものを感じたようだ)した。剛史がそれに応じたことから急遽テレーゼを審判に模擬戦が行われることになった。そして剛史は素手で、エーファは模擬戦用にイーナから盾を借りて、農場内の姉妹がいつも早朝訓練を行っている場所で向かい合う剛史とエーファである。


 「テレーゼ姉さん、父さんって戦えるのか?」


 「ええ。控えめに言っても私よりも相当強いわ。ただ、エーファも最近の練習で相当盾を使いこなせている筈だから、この勝負がどうなるかまでは解らないわ」


 「テレーゼお姉さん、流石に守護者であるエーファの構える盾の防御を抜くのは難しいと思うのですが・・・」


 「もし私なら、エーファと模擬戦とはいえ戦うのは少なからず怖いです」


 「どっちもがんばれ、なの!」と、どちらかと言えば剛史のことを心配するアデリナ、テレーゼ、カトリナ、アリーナ、アンナ。


 ところが、勝負は良い勝負か、エーファがやや有利なのではないかという予想に反して一瞬で決着した。武器を持たずに接近してきた剛史の両腕の構えを見て、上半身への攻撃を意識して、両脚に力を入れて踏ん張るように盾を構えたエーファの左足首を、剛史が瞬時に内側から自分の左脚の足裏で手前に引くように刈り、エーファがバランスを崩して尻餅をつきそうになったところを、盾ごと身体を素早く抱き留める。剛史が何もしなければエーファが臀部を強打していたことは明らかなので、ここで模擬戦終了である。


 剛史が今回用いた技は、組み手こそ使っていないものの、小内刈こうちがりという足技である。体さばきの中で相手の下半身に力が入っているところを、逆に狙い澄ましたように相手の脚を刈るのは彼の得意技であり、テレーゼの大外刈と比べるとモーションが小さく素早いため、両脚で問題なくこの技を繰り出せるという練達の域にある彼の技を防ぐことは、初見では相当厳しいだろう。


 模擬戦直後、念のためエーファの身体全体に強い回復魔法を使う剛史。

 

 「テレーゼに教わった回復魔法を使ったが、エーファ、どこか身体を痛めたとか気になる部位はないか?」


 「流石テレーゼ姉者の父君だけのことはある。加えて、我に回復魔法を使ってくれて感謝する。お陰でこれまで時折痛みがあった古傷を含めて全く痛みはない。さっきの技だが、父君に倒されるまで我の身に何が起きたのか、皆目理解できなかった」


 「剛史さん、エーファちゃん、大丈夫?どっちも怪我がなくて良かったわ。剛史さんが前に道場での乱取りで今の技を見せてくれたことがあったけど、テレーゼちゃんと同じように、前よりも強くなったんじゃないの?」


 「お父様の足技は初めて見ましたが、ここまで柔道が強かったなんてペルレは本当に驚きました・・・」


 「父さん、姉さんと同じくらい凄い・・・エーファがいつも使う大きな盾ではないことを差し引いても、普通は盾を構えて隙が殆どないはずなのに、ほんの僅かな隙を突いて倒すなんて・・・母さんと一緒に私たちのパーティーに是非入って欲しい」


 「剛史さんやテレージアさんは、恐らくですけど、テレーゼお姉さんと同じく「導師」の適性持ちですよね・・・それに加えてこの体術の強さ・・・最強と言っても過言ではないお姉さんと同等以上に強いのは明らかですし、正直な話、今見たことが信じられないくらいです・・・」


 「イーナ、ものすごくびっくりしたの・・・」


 (テレーゼさんの柔道とは少し違いますけど、隙を見逃さずに素早く技を仕掛けるところはテレーゼさんによく似ていますし、流石父娘ですね)


 (おとうさんがこんなにつよいなんて、あたしたちのそばにいてくれて、とてもあんしんできるしうれしいの)と、剛史、エーファ、テレージア、ペルレ、ヘレナ、マーヤ、イーナ、ティアナ、ヘナフ。模擬戦で明らかになった誰が見ても解るくらいに卓越した剛史の実力に、心底驚愕する妹たちである。また、エーファの群れたちは、剛史に近寄って行き、彼に身体をこすりつけて懐いているようだ。自分たちの群れのリーダーであるエーファと互角以上の力を持つ剛史を、集団の一員として頼もしく感じてくれている様子が窺える。


 「エーファは盾を構えるとき、もう少し自分の現在の身体の状態を心に留めるようにしたほうが良いだろうな。あと相手の攻撃を耐えるために脚に力を入れて踏ん張るのは大切なことだけど、それがさっきのように自分の動きを妨げることもあるから、相手との距離や状況に応じての切り替えができればもっと強くなれると思う」


 「父君、我に解りやすく指南してくれて本当に感謝する。人間になって間もない我にとって、得がたい経験をさせてもらったことも合わせて、糧にできるよう今後一層精進する所存」と、剛史とエーファ。特に人化して間もないエーファにとっては、今回の模擬戦は得るものが多かったようだ。






 「父君、我はテレーゼ姉者とティアナ姉者の魔法で人間にしてもらえて、率いていた同胞まで姉者たちが護ってくれる。我らは時として人間に追われ、食べるのにも苦労していたことすらあったのに、今は唐芋という美味しい芋を日々腹一杯食べられる。我らはどうやって姉者たちにその恩義を返せば良いんだろうか?」と、模擬戦が終わった後でエーファは剛史に話し掛けてきた。今の平穏で幸せな生活をいわば与えられているという現状に、何らかの葛藤があったのかも知れない。


 「エーファ、テレーゼの心情は、縁があって自分の妹になってくれたエーファたちをずっと護りたいという、ただそれだけだと思う。そしてエーファたちと仲良く幸せに暮らせる今の生活が心から嬉しいんだと思うし、そこに義務的なものは何一つ求めていないだろう。だから、エーファたちがみんなといつまでも幸せに暮らすために、できることをすれば十分じゃないのかな?あと、今後何かあったら遠慮なく私たちに話してもらって構わないし、相談にも乗るから」と、知り合って間もないものの、既に大切な娘の一人だという認識で言葉を選びながら話す剛史である。


 「剛史さんの言う通りよ。テレーゼちゃんは、他の妹たちもだけど、エーファちゃんやその仲間たちが元気で幸せにいてくれることが何より嬉しいことだと思うわ♪それに、エーファちゃんもみんなを護るために盾を手に取って頑張りたいと思ったのよね。その気持ちはみんなにも伝わってると思うわ。でもね、みんなのために独りだけ犠牲になっても構わない、なんて思わないでね。何かあったとき、みんなで頑張れば必ず何とかなるんだから、独りだけ頑張りすぎたら駄目よ。もちろん、私や剛史さんも可愛い娘であるあなたたちが困っているときは喜んで手を貸すわよ♪」と、エーファを励ますように会話に加わるテレージア。


 「エーファ、私の気持ちは、今お父さんとお母さんが話してくれた通りよ。あなたがいつも頑張ってくれるのは本当に嬉しいわ。だけどお願いだから無茶はしないで」


 (エーファ、あなたたちがここに来てくれて、みんなで畑を耕してくれたり、草を抜いてくれたりと私たちは本当に助けられることが多いんですよ。だから自分たちが何もできていないなんで、そんなことは絶対にありませんから)と、テレーゼ&ティアナ。


 「父君、母君、テレーゼ姉者、ティアナ姉者、我らを励ましてくれて本当に感謝する・・・」そこまで口にして、エーファは自分でも気付かないうちに目に涙を浮かべていた。そこにテレーゼが近寄って来て健気なエーファを優しく抱きしめる。これまで伴侶の助けがあったとはいえ、大きな群れを率いて責任感や情愛が強いゆえに重圧に押しつぶされそうになっていたエーファは、そんな自分を心底心配して護ってくれる人たちの存在を嬉しく感じていた・・・


 (今後、間違っても、エーファ独りに何もかも責任を背負わせるようなことはさせないわ。これからはみんなで助け合って、彼女が独りで思い悩むようなことが少しでもなくなるようにしたいわね。もちろん、私も今まで以上に頑張るわ・・・)(テレーゼさん、及ばずながら私にも、あなたやエーファたちの手助けをさせてください)と、これまで独りで頑張ってきたエーファを今後精一杯支えていこうと思うテレーゼ&ティアナである。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 テレーゼ姉妹たちと両親とのバーベキューと、その後の模擬戦がとても有意義なものとなったことは何よりです。特にエーファにとって、剛史との模擬戦で新たな学びを得たことは、自分の冒険者としての職業である守護者としての成長を強く促すものとなったようです。


 そして、エーファは、群れのリーダーとしてこれまで抱え続けていた責任を喜んで分担して助けてくれる両親や姉たちの存在は、この上なく有り難く大きなものだったようです。本当に良かったですね。

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