第2話:温泉への招待と通信魔法
テレーゼは、完成したばかりの温泉に両親を招待します。
また、実験が上手く行った通信魔法を両親にも使えるように手配します。
温泉を農場内に取り込んだ翌日のこと。テレーゼは妹たちに両親を温泉に招待したい旨を伝えると全員から賛成してもらえたので、早速実家に電話を行うテレーゼである。剛史とテレージアの両者ともいつでも構わないとのことだったので、実家まで迎えに行くことにした。同行者を誰にするのかで少し議論になったが、今回はテレーゼと一緒に日本からやって来たペルレはともかくとして、全く日本に行ったことがないエーファ、アリーナ、マーヤ、アンナのうち、アリーナとアンナの母娘に同行してもらうことにした。着ていく服や靴は、体格がほぼ同じであるカトリナとイーナが快く貸してくれた。折角なので、外出用の服や靴を持っていない妹の分を含めて購入してから実家に行くことになり、自宅に置いてある車まで2人を案内するテレーゼ。
「この馬車みたいなものをテレーゼお姉さんが操るんですか?凄いです」
「お母さん、イーナちゃんが言ってたけど、「じどうしゃ」って言うんだって」
「2人とも乗った?私がシートベルトを着けるわね。両親のところに行く前に、まずあなたたちの他所行き用の服や靴を買いに行きましょう」と、アリーナ、アンナ、テレーゼ。車を発進させて5キロほど離れたショッピングモールに向かう。そして、ギルド勤務で同行できなかったマーヤの分を含めて他所行き用の洋服やインナー、靴などを購入して実家に向かう。
「テレーゼちゃんとティアナちゃん、迎えに来てくれたのね。ありがとう♪あと、アリーナちゃんとアンナちゃん、いらっしゃい♪」
「テレーゼ、わざわざすまないな。あと、3人とも我が家へようこそ」
「お父さん、お母さん、少し上がるわね」(失礼します)「失礼します」「おじゃまします」と、テレーゼと一心同体のティアナにも挨拶するテレージアと剛史に、ティアナを含めて実家に着いた4人は両親と挨拶を交わして家の中へ。
「テレーゼちゃん、温泉を見つけたって聞いたけど、凄いわね♪」
「農場のすぐそばに、たまたま温泉が湧いている場所があったから、農場内に取り込んでからお風呂まで引いたのよ。あと泉源のすぐそばには温水プールくらいの温度の池があったから、それも露天風呂として使えるように手を加えたわ」
「お湯を配管で引くのは一苦労だったんじゃないのか?」
「配管を設置するよりも、その準備として塩ビパイプを買い揃えるのに市内のホームセンター1軒では足りずに3軒回ったんだけど、何とかなって良かったわ」
「テレーゼちゃんたちが頑張って作った温泉、楽しみだわ♪」
「あと、お父さんとお母さん、以前2人に渡した魔石を貸してもらえるかな?つい最近通信魔法を作ったんだけど、姉妹全員でいろいろ試したら特に不具合もなく上手く行ったから、私が2人の魔石に魔法を付与しておくわね」そう言って、その場で通信魔法と紛失防止の魔法を魔石に付与したあと、魔石の容量一杯まで魔力を込めてから2人に返すテレーゼ。
「テレーゼちゃん、通信魔法って、テレーゼちゃんが今渡してくれた魔石を持っていれば、携帯電話のように会話ができるの?」
「そうです。こんな感じです」と、アリーナがテレージアの頭の中に話し掛けてきた。
「アリーナちゃん、これ凄いわね♪自分が伝えたいことを声に出さなくても娘たちに伝わるなんて便利だわ♪」
「アンナもテレーゼお姉ちゃんやイーナちゃんやヘナフたちと離れていても、いつもお話できてうれしいの!」と、アンナも会話に加わる。
「お父さん、お母さん、改めまして、ティアナです。以前テレーゼさんの身体を借りて挨拶させてもらったのですが、通信魔法を使ってより簡単に話ができるようになりました。今後よろしくお願いします」
「ティアナちゃんの声ってテレーゼちゃんに似て優しい声なのね。これからよろしくね♪」
「ティアナ、いつもテレーゼを助けてくれて本当にありがとう。こちらこそこれからよろしく頼むよ。あとテレーゼ、この通信魔法は魔石を持っている娘たち全員に、自分の考えを声に出さなくても伝えられるようだな。娘たちといつも会話ができるのはとても便利だと思うのだが、例えば少し前まではマーヤに、テレーゼや私たちが日本から来たことや若返ったことを黙っていたけど、そういう伏せておきたいことまで考えた途端に伝わってしまうのは正直厳しいと思う。だからこの魔法は、当面我々と娘たちだけで使うようにしたほうが良いだろうな」と、テレーゼがかつて憂慮した、魔法の運用面での問題点を指摘する剛史である。
「お父さん、それは全く同感だわ。元々は私と心の繋がりがあるティアナ、イーナ、ペルレ、ヘナフ、エーファと、他の妹たちとの会話の垣根を取り除きたいという理由で作った魔法だから、他所に広めるつもりはないわ。この魔法は1時間であれば魔石から自分自身に移したり魔石に戻したりすることができるから、そのパスワードと、声に出した言葉だけ伝えるためのパスワードをこの紙に書いているから渡しておくわね。あと、魔石の紛失防止のアナウンスが私の声で頭の中に流れるように魔法を付与しているけど、1時間以上経つと自動的に通信魔法は魔石に戻るから、魔石の紛失や置き忘れのには気をつけて」
「剛史さん、この魔法はお風呂とかで魔石を身に着けていない間も使えるのね。とても便利だわ♪それともう1つのパスワードは多分使わないわね」と、テレーゼが想定した魔石から魔法を切り離して使うシチュエーションを口にするテレージア。先程の剛史の指摘もだが、流石は人生経験豊富でテレーゼと同等以上に聡い両親である。
「そうだな。娘たちに隠すことなんて特にないからな」
「お父さん、お母さん、私たちを心から信じてくれて本当にありがとう・・・」
「テレーゼちゃん、自分たちの可愛い娘たちを信じるなんて親として当たり前のことよ。新しい魔法を魔石に追加してくれて本当にありがとう。これで、ますますアニメとかに出てくる魔法少女以上にリアルな魔法使いになれるわ♪」と、魔石への通信魔法や紛失防止対策の付与により、今後より魔法を便利に使えるようになったことを喜ぶテレージア。
「お父さん、お母さん、向こうでは他の妹たちも待っているから、そろそろ行きましょうか」と、テレーゼが両親たちを促して実家を出て自宅に向かう。
自宅に帰ってきたテレーゼたちは、勝手口から自宅に入る。そして、玄関から自宅を出て、農場内にある浴室のある建物まで両親を案内する。
「見たところ泉源のほうが浴室よりも高い位置にあるから、改めて揚水の必要はないんだな。それを利用して打たせ湯を設置したのは良い工夫だな」
「源泉掛け流しのお風呂だけでなく打たせ湯まであるなんて素敵だわ♪剛史さん、テレーゼちゃんたちが一生懸命作ってくれた温泉に早速入らせてもらいましょう♪」と、剛史&テレージア。
「テレーゼ姉者の父君と母君、お初にお目にかかれて光栄の至り。我はエーファと申す者。姉者の魔法で人間にしてもらった身。今後我の同胞共々何卒よろしくお願い申し上げる」
(テレーゼおねえちゃんのおとうさん、おかあさん、はじめまして。ヘナフだよ)と、浴室の建物の近くにいたエーファとヘナフが両親に話し掛けてきた。特にヘナフは通信魔法が使えるようになって初めて姉妹全員や両親の間で会話が出来るようになったため、以前よりも会話ができる相手が増えたことが嬉しそうだ。
「エーファちゃんとヘナフちゃんね。テレージアよ。これからよろしくね♪鳥さんともお話ができるなんて、本当にこの魔法凄いわね♪それとそばにいるのはエーファちゃんの子供たちなの?可愛いわね♪」と、そばにいたエーファの子供たちを代わる代わる優しく撫でるテレージア。ヘナフの仲間たちも寄ってきて、ちょっとしたもふもふ集団に囲まれる形になったテレージアは嬉しそうだ。
「テレーゼの父で剛史という。他の娘たちもだが、私たちにとっては全員が大切な娘たちと思っている。こちらこそ今後よろしく頼むよ」と、初めて逢った妹たちに挨拶をする剛史。
妹たちへの挨拶の後、両親たちはテレーゼたちの力作である温泉を心ゆくまで堪能したようで何よりである。この温泉は弱塩泉の飲用可能なもので無論健康にも良いので、両親を実家に送り届けるときにお土産として温泉水を一緒に持って行こうと思うテレーゼである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
温泉を両親が堪能できて、また、新しく妹になったエーファやヘナフとの交流も上手く行ったようで何よりです。温泉が自宅にあるというのはとても良い環境だと思いますし、もちろん健康増進にも寄与するうえ、柔道整復師であるテレーゼにとっては、魔法と並んで相乗効果を得られるのではないでしょうか。




