第4話:ペルレのギルド登録と通信魔法の実験
テレーゼの魔法を付与したアクセサリーで、任意で人間と同じ大きさに変身できるようになったペルレの冒険者登録を行います。また、以前試作していた通信魔法の実験も行います。
農場の農作物を姉妹全員で収穫してギルドに出荷したあと、昼食を済ませるテレーゼ姉妹。昼食後、以前から考えていた通信魔法の実験を行うことにした。雛形となる魔法は既に作成済みであり(第11章第3話参照)、その後若干の改良を加えたものである。
具体的な運用方法は、姉妹の多くが現在持っている紛失物を見つける魔法(第2章第1話参照)を付与した魔石に通信魔法を付与するというものであるが、いつも農場にいるヘナフと一緒に暮らすようになって間もないエーファはまだ持っていないため、今回彼女たちにも魔法付与を施した魔石を渡し、その使い方も教えることにした。庭鳥のヘナフには、魔石をはめ込み防水性を施したアクセサリーを作成して、普段は着脱をしないことを前提に翼の邪魔にならない部分に取り付けることにしたのだが、テレーゼ(ティアナ)、イーナ、アンナ、ペルレ以外の姉たちとも、新たに会話ができるということをとても喜んでくれたので何よりである。
あと、日本にいる剛史とテレージアには、今回の姉妹による実験を行い、魔法をある程度改良してから魔石への魔法付与を行おうと考えている。
妹たち全員に通信魔法を付与した魔石を渡した後で、早速実験開始である。テレーゼ作成の通信魔法は、頭の中で考えていること、または発音した言葉であれば、魔石を身につけることで妹全員に頭の中での会話として即座に伝えることができる、というものである。
これは、テレーゼと強固な心の繋がりを持っているティアナ、イーナ、ペルレ、ヘナフ、エーファは、物理的な距離やセフィロトと日本という世界の違いすら無関係に、頭の中でお互いの意思疎通が可能であるが、他の妹たちには、頭の中の会話を誰かがその都度「通訳」する必要があるため、現状で姉妹の半分に留まっている頭の中での会話という「言葉の壁」を、何とか魔法の力で乗り越えられないだろうか?というのが、テレーゼが今回この魔法の運用を考えた動機である。
但し、基本的に個人情報管理やプライバシーの配慮にデリケートな日本出身のテレーゼは、自分が相手に伝えたいことと伝えたくないことの切り替え機能、つまり通信のオンオフが必要だと思っていたのだが、妹たちに確認したところ、切り替え機能に関しては基本的に全員不要とのことだった。
テレーゼ(&ティアナ)とイーナ、ペルレ、ヘナフ、エーファとの会話は自分が思っていることがダイレクトに相手に伝わる(但しテレーゼは、自分に話しかけられない限りは妹たちの思考に触れることは極力避けている)ため、ある意味今更のことなのかも知れない。あと、アデリナ、カトリナ、ヘレナ、アリーナ、アンナ、マーヤもそれで構わないと言ってくれるとは、正直なところ思っていなかったのであるが、これは、自分の想いを他の姉妹に全て知られても構わない、というのと同義である。そのくらい強固な信頼関係が姉妹間にあることは素直に嬉しいのだが、切り替え機能に関しては、暗号の言葉で容易に切り替えが可能になるよう魔法を構築しているので、妹たちにはそのキーワードを教えた上で、最終的な判断に関しては魔法を使う本人に委ねることにした。
今日は、通信魔法の使い勝手を確認する意味からも、例えば自宅とマルクトの街、自宅と日本といった物理的な距離や異なる世界でも使えるかどうかの確認、いわゆる携帯電話でいう「圏外」がどのくらいになるのかをある程度正確に確認するため、マーヤと最近拡大魔法により人間と同等の大きさで過ごす機会が増えたペルレを連れてマルクトの街に行き、ギルドで冒険者登録を行うことと合わせて、街の各所で姉妹間での魔法実験を行うことにした。
前述のようにテレーゼはペルレ、マーヤを伴って冒険者ギルドに向かう。ペルレは本来の大きさでテレーゼの左肩に止まり、彼女の顔を両腕で抱きしめるようにしていた。テレーゼはペルレの着替えが入った手提げを持ち、左肩をなるべく動かさないように歩いている。なお、今日までテレーゼとマーヤはギルド勤務が休みである。
ギルドに到着して、職員用の更衣室を借りて、ブレスレットの拡大魔法で人間サイズに大きくなったペルレが用意してきた服などを身につける。そのあと、ジークリットのいる部屋に行き、冒険者登録により身分証を発行してもらうことにする。
「やあ、テレーゼ。今日はどうしたんだい?あと隣の娘さんは、もしかして魔法で大きくなったペルレかな?」
「はい。ペルレが今後私たちと同じ大きさで過ごす機会が増えると思いますので、彼女の冒険者登録と身分証発行をお願いしたいと思います。昨日に引き続きですが、お手数を掛けて本当に申し訳ありません」
「それは全然構わないよ。というより人間と同じ大きさなら、ペルレも立派な戦力だから登録は大歓迎だよ。マーヤ、今日まで休みの所をすまないが登録の書類などを持ってきてくれないか?」と、ジークリット、テレーゼ。マーヤは登録のための書類と道具を取りに行き、すぐに戻ってきた。ペルレはセフィロトの文字の筆記は普通に可能であるが、これまでのイーナとエーファのときと同じくテレーゼが書類を代筆した。
代筆の最中、以前テレビで見たプロ野球選手の入団会見で、チームの監督が新加入の選手にユニフォームの袖を通してあげるシーンのようだとふと感じたが、自分の今の心境を日本由来のことになぞらえているのは、ペルレが自分と一緒に日本から転移して、自分の目の前に植物の精霊として現れてくれた妹だからかも知れない。ペルレの書類を代筆していて、テレーゼのパーティーへの加入と、改めて彼女を護ることを対外的に宣言する儀式のように感じた。
(姉さまのパーティーに正式に加入できて、ペルレは本当に幸せです♡)
(ペルレ、これからも末永くよろしくね)
(はい♡姉さま、こちらこそ、末永くよろしくお願いします♡)
ペルレとテレーゼが頭の中で会話する。ペルレは書類の代筆をテレーゼがしてくれたことを含めて本当に嬉しそうだ。
(ペルレ、改めてこれからよろしくおねがいしますね)
(良かったな、ペルレ)
(よろしく、ペルレ)
(ペルレ、これからもみんなでパーティーを盛り上げましょう)
(イーナもペルレと一緒にがんばるの♪)
(アンナもイーナちゃんやペルレやヘナフたちと一緒なの!)
(ペルレ、テレーゼお姉さんを一緒に支えましょう)
(ペルレおねえちゃん、よかったね)
(同じパーティーになったということで今後よしなに頼む)
(ペルレ、今後よろしくお願いしますね)
(ティアナ姉さま、アデリナ姉さま、ヘレナ姉さま、カトリナ姉さま、イーナ姉さま、アンナ姉さま、アリーナ姉さま、ヘナフちゃん、エーファ姉さま、マーヤ姉さま、本当にありがとうございます。これからよろしくお願いします)
テレーゼと、ペルレの頭の中での会話が終わるのを待っていたかのように、ティアナ、アデリナ、ヘレナ、カトリナ、イーナ、アンナ、アリーナ、ヘナフ、エーファがペルレのギルド登録を心から歓迎してくれて、そのことがペルレには心底嬉しかったようだ。あと、頭の中での会話に関して全員不具合はないようで何よりである。
ペルレの冒険者としての職業は「弓術士」である。これは、彼女が心底敬慕するテレーゼは冒険者としては格闘が不得手とされる「医者」でありながら体術にも長け、単騎でも十二分に戦える希有な存在であるが、彼女が安心して戦えるようにその背中を護る職業として、遠距離攻撃として有効な弓や魔法の扱いに長けたこの職業を熱望したことによる。元々威力抜群の雷撃を扱うことができる上に、ヘレナが持っている弓を試射したところ狙いも正確であるため、弓術士として十分すぎるほどの適性はあると思われる。彼女の武器に関しては、このあとマルクトの街の武器屋に買いに行き、強化のための魔法付与を行おうと思う。
ペルレの冒険者登録が終わり、身分証を受け取った。テレーゼ、ペルレ、マーヤはジークリットにお礼を言ってギルドを出て、街の武器屋に行き、大きくなったペルレにとって使いやすそうな、小さめの弓を矢と手の保護のためのグローブと合わせて購入した。
そのあと、街の一番外れまで行って姉妹で会話を行ったが、問題なく会話ができることを確認して帰宅する。ペルレの弓とグローブに魔法付与を施す。特に、弓弦(弓に張ってある糸のこと)を軽く引けるようにしたところ、とても喜んでくれたので何よりである。早速弓の試射を行うペルレ。実際に矢を放って使い勝手を確認した後、今度は矢を番える代わりに雷撃の魔法を弓弦に乗せるイメージで放ったところ、元々の魔法よりも飛距離や威力が上がっていた。
「姉さまの魔法のおかげでこの弓がとても使いやすくなりました。ありがとうございます♡」
「使っているときに何か気付いたことがあったら遠慮なく言ってね」
「はい、姉さま♡」
ペルレの弓を使った練習に付き合った後、テレーゼは自宅の勝手口から日本側に出て、家の外から妹たちに話しかけると、問題なく頭の中での会話会話ができた。テレーゼが考えていたように、違う世界でも通信魔法は使用可能であるのは何よりである。
今回テレーゼが考えていた通信魔法の実験はこれで全て終了であるが、細かい部分の使い勝手に関しては今後魔法を使う中で改良して行けたらと思う。姉妹間の心の距離が今まで以上に近くなったように感じて嬉しく感じるテレーゼである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ペルレの冒険者登録が無事に終わって、また、通信魔法の実験が上手く行って良かったですね。
通信魔法に関して、姉妹全員がお互いの心中を他の姉妹に知られても構わないくらいに強固な心の繋がりを構築していることは本当に偶さかで凄いことだと思います。今後も姉妹全員や他の人たちも加わった砂糖菓子のような幸せな話はまだまだ続きます。
これで第15章は終わりです。いつも熱心に読んで下さる皆様には感謝の言葉もありません。次章は以前テレーゼが浴槽への給湯で検討していた温泉に関しての取り組みを行います。また、いくつかの出来事が発生します。ここまで熱心に読んで下さった皆様であれば、きっと楽しんでいただけるのではないかと思います。
次章も一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。




