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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第15章:同居と魔法あれこれ
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第3話:剣術と盾術と従魔魔法の本質

 エーファ、イーナ、アンナは、手に入れた盾を使っての攻防についての鍛錬に取り組みます。一方テレーゼは、学生の時に一時期取り組んでいた武道に関しての練習を開始します。

 エーファがギルド登録を終えた翌日の早朝のことであるが、テレーゼ姉妹は、今朝も毎朝日課の鍛錬を行っていた。今日からは人間になったエーファも一緒である。基本的に全員が自分の主武器に沿った練習を行うのだが、今朝のテレーゼは、日頃の柔道の練習ではなく木刀を手に素早く前後に跳躍しながら、主に「面」の素振りを行っていた。昨日自分専用の盾をテレーゼに作ってもらったイーナ、アンナ、エーファは主に盾の練習である。


 また、エーファには回復・防御魔法に強い適性があるようだ。身体の頑健さやこれ以上ないレベルで護りに特化した隙のないスキル構成、自分の率いる群れや家族に対する強い想いを自らの力に変えるかのような、後ろに護るものがいるときにこそ真価を発揮する彼女の本質は、何れもギルド登録時の彼女の職業である「守護者」向きのものであるらしい(カトリナに教えてもらった)。テレーゼはそんな妹のことを改めて興味深くかつ頼もしく感じた。


 「テレーゼお姉さん、独特な形の剣の素振りですが、以前どこかで剣術を修練していたのですか?」と、カトリナ。


 「ずっと昔、剣道という武道をやっていたのよ。但し、セフィロトの剣術のように魔物と戦うためのものではなく、基本的には対人戦の武道だから、その意味では柔道と共通しているわね」と、テレーゼ。彼女の中学時代の部活は3年間剣道部だった(第9章第1話参照)のだが、柔道に比べると相当ブランクが長いため、以前の模擬戦でジークリンデと手合わせして以降、今後長剣を使う可能性も考えて今朝の練習に採り入れたというわけである。因みに安全の観点から中学までの剣道では「突き」が禁止されているため、テレーゼが素振りで行っているのは「面」、「胴」、「小手」のみである。


 「体術だけでなく剣術にも長けているなんて凄い。流石姉さん」


 「テレーゼ姉さんが前に出るときに剣を振り下ろし、後ろに下がるときに剣を振り上げる動作が、スムーズに足さばきと連動しているから、普通に上手いと思うよ。剣でも十分戦えるんじゃないか?」


 (テレーゼさんはこんなこともできるんですね。あなたには本当にいつも驚かされてばかりです・・・)


 「流石に30年以上前のことだから、いろいろ勘が鈍っていることを実感するわ。あなたたちも気付いたことがあったら遠慮なく教えて欲しいわ」と、ヘレナ、アデリナ、ティアナ、テレーゼ。






 自分の盾を手に入れたイーナ、アンナ、エーファは、盾を構えての基本的な動きを、主にカトリナから教わっていた。但し、幼児のイーナとアンナには、敵の攻撃を自分に引き付けて他のメンバーが攻撃するという囮役と盾を使っての攻撃であるシールドバッシュは、身体の大きさや体力の関係で流石に無理があるため、2人には、盾で接敵するときに相手の衝撃を逃がすように身を護る盾の使い方を覚えてもらうことにして、エーファには前述の囮役と、盾を相手に叩き付けるように攻撃するシールドバッシュ、そして防御に徹して相手の攻撃を完全に耐えるような防御的な動作の練習である。


 イーナとアンナにはアリーナと大きくなったペルレ(人間サイズの洋服などは、昨日姉妹で手分けして購入した)が攻撃役として、体当たりして向かってくるような相手に対応する練習で、エーファには丸太(テレーゼが自宅裏の林の硬い木を伐採して、魔法で良く乾燥させて表皮を剥がし、木のささくれを魔法で磨いて取り除き、軽量化や防腐の魔法を掛け、長さ4m、直径30cmほどの破城槌のようなものを作成した)を持ったアデリナが攻撃役であるが、エーファのシールドバッシュやアデリナの丸太での攻撃は、お互いの身体の頑健さと、盾や丸太の堅牢さも相まって、初心者同然の現時点でも破壊力抜群で危険なため、今日は攻撃は控えめで、防御的な動作の練習が中心である。


 「イーナちゃん、行くわよ」「うん♪」


 「アンナ姉さま、行きますよ」「アンナ、イーナちゃんと一緒に頑張るの!ペルレ、お願い!」


 「エーファ、行くぞ!」「承知!」


 アリーナとイーナ、ペルレとアンナ、アデリナとエーファのペアで盾の練習を開始した。カトリナは3組の練習を見ながら、それぞれのペアに適宜指示を出し、ヘレナは、鏃に布を厚く巻き付けてから色を付けた矢を不意打ち的に発射(矢が当たるとそこに色が付着するため、矢が身体に当たらないようにするという練習である)することで、盾の練習の初日にしてはかなり実践的なものとなっている。






 「みんな、凄いわね。私も頑張らないと」


 (テレーゼさんはずっと素振りをやっているのに、全然動きが鈍くならないですね。流石です)


 「ありがとう、ティアナ。でも、かつての自分のイメージと比べるとまだまだだから、もっと練習しなくちゃいけないわね」


 「テレーゼお姉さん、私は長剣を操る剣術が今ひとつ不得手ですので、一緒に練習をお願いできないでしょうか?」


 「わかったわ、マーヤ。一緒に頑張りましょう」と、テレーゼ、ティアナ、マーヤ。しばらく全員で汗を流し、充実した早朝練習を行ったテレーゼ姉妹である。






 「そういえば、テレーゼお姉さんの使う従魔魔法のことですけど、他の使い手が使っているものとは本質的に違うように感じます」と、朝食が終わった後でカトリナが話しかけてきた。


 「それはどういうこと?」


 「普通、従魔魔法というのは、相手が術者に服従する意思があるにせよ、本質的には「魔物を(半ば強制的に)従える」という性質のものです。ですから、極端な話、魔法を掛けられた魔物や動物は、魔法を掛けた相手から隙あらば逃れようとするイメージがあるのですが・・・テレーゼお姉さんの場合、イーナ、ヘナフ、エーファの3人とも、お姉さんや私たちと絶対に離れたくないと感じられるくらいに、お姉さんと非常に強い心の繋がりを持っています。そう考えると、お姉さんの魔法は、主従関係を結ぶ元々の意味での従魔魔法というよりは、家族や姉妹として対等な関係で終生の契りを結ぶという本質のもので、全く別物の魔法のように感じます」


 「それは、私も同感です。エーファに魔法を使うときに感じたのですが、自分と友達に、もっと言うと家族になって欲しいというテレーゼお姉さんの強い想いが魔法に反映されているのではないでしょうか?詠唱の文言も友達になって欲しいという内容ですから、元々の従魔魔法とは全く違う、いわばお姉さんの固有魔法と言っても過言でないと思います」と、マーヤが話に加わってきた。


 「そうなのね・・・私が彼女たちに従魔魔法を使ったのは、今後ずっと彼女たちと仲良くしていきたいと本心から思ったからなんだけど、その願いが魔法にも反映されているのなら嬉しい話だわ。念のため確認したいんだけど、彼女たちとの心の繋がりは魔法によって強制されたものではないのよね?」


 「それは大丈夫です。というのも、たとえ普通の従魔魔法でも、相手がその気にならなければ絶対に成功しません。相手にその気が無いのに魔法を使っても失敗するというのは、大昔から時の権力者の意向で断続的に行われていたキラーグリズリーの従魔化という、ある意味無謀と言い切れる試みが、これまで全く成功しなかったことからも明らかですから」と、カトリナがテレーゼの疑問に答える。


 「テレーゼさんが度々私たち妹に話してくれる、「想像力は無限の武器」という言葉の意味を改めて実感しました・・・あなたはいつも自分の精一杯で、私たち妹に深い愛情をもって接してくれますが、そんなあなたの想いや情愛の強さはまさにあなたの本質そのものですから、唱える魔法も使い手の想像力や想いの強さを反映して強力無比なものになるのはむしろ当然のことだと思いますよ」と、ティアナ。いずれにしても、妹たちとずっと仲良く幸せに暮らすためであれば、今後も自分の魔法を自重なく使って行こうと思うテレーゼである。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 テレーゼ姉妹全員に言えることですが、エーファもリーダーとして慕われてボアの群れを率いていたのですから、そんな彼女の懐の深さや情愛の強さは折り紙付きです。彼女にとって冒険者としての職業である「守護者」は、まさに天職と言っても過言ではありません(因みに、戦士系の「守護者」に対して、魔法使い系の場合は「賢者」です。違う世界線(短編小説)に登場するクヌートは「賢者」であり「導師」でもありますが、導師を名乗るといろいろ面倒事が多い(第10章第4話参照)ことから賢者で通しています。どの職業を名乗るのかに関しては、第1章第4話でマーヤが説明してくれている通りです)。


 そして、テレーゼが使う従魔魔法が、いわば彼女の固有魔法レベルであることが明らかになりました。いかにも情愛の深い愛娘らしい魔法だと改めて感じます。


 次話は、大きくなったペルレのギルド登録を行いますが、合わせて以前テレーゼが試作を行っていた魔法の実験を行います。

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