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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第14章:初めての遠出と出逢い
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第2話:イェソドへの旅路

 パーティー編成を終えたテレーゼたちは、ボアの大群により対応に追われているイェソドのギルドを支援するため、彼の地に向かいます。

 イェソドに旅立つ当日の朝、テレーゼ、ティアナ、アデリナ、マーヤ、ヘレナ、ペルレは妹たちに送り出されて家を出る。すっかり姉妹の恒例の行事となった火打ち石を使っての厄除けのおまじないは、アデリナとヘレナが持っている火打ち石を借りて留守番役の4人が、庭鳥であるため儀式ができないヘナフの分まで行った。


 マルクトの街の門番に身分証を提示(但し、門番に目視できないティアナやペルレは身分証を持っていないが)して街中に入り、ギルドへ。ギルドの正面玄関前には2頭立ての大きな幌馬車が待機しており、程なくジークリットや本日出勤している全職員がやってきて出発式が行われた。


 「苦境の只中にあるイェソドギルドを支援するため、この度マルクトギルドの最大戦力とも言えるツンフトマイスター代理のテレーゼが率いるパーティーを彼の地に送り出すこととなった。結果に関しては正直なところ全く心配はしていないが、必ず全員無事にマルクトまで帰ってきて欲しい」と、ジークリットがテレーゼたちに声を掛ける。


 「先程ツンフトマイスターより紹介を受けたテレーゼです。イェソドで自分たちにできることを少しでも多く実行して、問題解決の手助けができればと思っています。そして自分たちの家であるマルクトまで必ず全員無事に帰って来ます。皆様には私やマーヤがいない間のギルドやマルクトをどうかよろしくお願いします」と、返礼の言葉を述べるテレーゼである。


 そのあと、ジークリットからイェソドの街の門番とイェソドのギルドマスター宛の手紙を受け取ったテレーゼたちは馬車に乗り、マーヤが御者台に座って馬車を発車させる。彼女は小さい頃から馬車の操縦を練習していたとのことで、イェソドまでの往復に関してもこれまでも幾度か経験があるとのことなので実に頼もしい。


 旅程的には多少余裕があるのと、流石にマーヤ独りの操縦では申し訳ないので、道中他の姉妹も馬車の操縦を覚えることにした。マーヤの教え方が上手なのと、2頭の馬たちが従順な性格なのも相まって、夕刻までにテレーゼ、アデリナ、ヘレナも直進させるだけであれば何とか操縦を行えるようになった。






 日没前になり、初日の野営を行うことにした。馬車を引いてくれた2頭の馬に水と飼葉かいば(馬が食べる飼料のことで、牧草以外も含む)を与え、回復魔法を掛ける。得手不得手はあるにせよ、いざという時に回復魔法を姉妹全員が使えることは本当に心強い。馬の手入れを行うマーヤ以外のメンバーで野営の準備を行う。本来であれば野営は外敵に備えて一晩中交代で見張りを立てる必要があるが、メンバーの中でテレーゼとペルレが全攻撃に対しての自動防御や隠蔽魔法を使えるため、馬車全体に馬ごとそれらの魔法を掛けておけば、馬も含めて全員がゆっくり休むことができるのがとても大きい。


 そして、何事もなく2日目の午後にはイェソドの街の領内に入る。マルクトの領内とは違い、早速ボアの小さな集団と遭遇したが、戦闘にはならず、ボアたちはすぐにいなくなった。


 「テレーゼさんの中に私がいることを、ボアたちも察しているのだと思います。大きな群れのリーダークラスならともかく、普通のボアであれば、キラーグリズリーだった私の気配から戦っても勝てないと感じるでしょうから。もっとも、テレーゼさんがボアと戦っても余程のことがない限り傷一つ負うことはないはずですよ」と、ティアナがテレーゼの身体を借りて、パーティーの全員に状況を伝える。


 「セフィロトで強者中の強者だったあなたがそう言ってくれるのは本当に心強いわ。ティアナ、ありがとう」


 「姉さんであれば、自動で発動する全攻撃への防御があるから、ティアナ姉さんの言うとおりボアは姉さんに向かってきても何もできないはず」と、テレーゼ、ヘレナ。


 「テレーゼお姉さんが全攻撃への自動防御を使えることは知っていましたが、全ての攻撃を跳ね返してくれることがここまで凄いとは・・・それにペルレもお姉さんとほぼ同じ力を持っているんですから、2人が味方にいてくれればこの上なく心強いですね・・・」


 「ペルレは姉さまほどの広い範囲を護ることはできませんが、パーティーの役に立てているのなら良かったです」


 「ペルレやテレーゼ姉さんは自分にもっと自信を持って良いと思うよ。ペルレの使う魔法はパーティーの中では姉さん以外には使うことができないものばかりだし、ホント凄いよ」


 「アデリナ姉さま、励まして下さってありがとうございます。今回のメンバーでは、攻防全てに長けたパーティーリーダーの姉さまとティアナ姉さま、近接戦闘に長けたアデリナ姉さま、索敵と遠距離物理攻撃に長けたヘレナ姉さま、回復・補助系魔法に長けたマーヤ姉さまと控えめに言っても戦力が揃っているので、出発前に姉さまが話していたように余程のことでも切り抜けられるはずですが、これだけのメンバーの中で私ができることをしっかりやっていきたいです」


 「ペルレの言う通りね。もちろんあなたのことも戦力として強く頼りにしているわ。だけどあなた1人が無理しちゃ駄目。あなたのことを含めて、妹たち全員のことは必ず私が護るから安心して」


 「姉さま・・・ペルレは姉さまと一緒に居られて本当に幸せです♡」






 その後も道中にボアの数匹単位の集団と遭遇したが、テレーゼ姉妹とは戦闘にすらならず(これは、キラーグリズリーだったティアナの存在が大きい)、日没が近くなったところで2日目の野営を行う。そして、3日目の午後にはイェソドの街に到着した。門番にジークリットから預かった手紙を渡すと、イェソドのギルドから事前に今回の指名依頼に関しての話が伝わっていたらしく、すぐに入門を許可された。街は国境のマルクトに比べると街の規模こそやや小さいようであるが、なかなかの発展ぶりのようだ。そのまま街中に入り、先に馬宿に向かう。馬宿はイェソドのギルドにより事前に部屋が確保されていたので、馬車を宿の従業員に預けて宿のチェックインを済ませてから全員でギルドに向かう。


 イェソドのギルドの受付嬢にジークリットから預かった手紙を渡すと、程なくしてイェソドのギルドマスターのいる部屋に案内された。部屋にはジークリットとほぼ同じくらいの年齢と思しきブロンドショートヘアの女性がいた。


 「初めまして。私はイェソドのギルド支部を預かるソフィアよ。ジークリットには良く「ソフィーア」と言われるんだけど、何故かしらね?まあそれは置いといて、あなたがテレーゼさんね。ジークリットに送った手紙のとおり、今イェソド領内でボアの被害が多発して本当に困っているのよ。ボアの群れへの対応は、方法は全てお任せするからよろしくお願いするわね」


 「(ジークリットが彼女のことを「ソフィーア」と呼ぶのは、間違いなく同じ綴りのドイツ系女性の名前が由来だと思うわ・・・)ソフィアさん、わかりました。精一杯できることをやってみます。今後よろしくお願いします」


 その後、パーティーメンバー全員の挨拶が行われ、ソフィアよりメンバー全員分のイェソドのギルドの身分証を渡される。そして、最近のボアの目撃情報を一通り確認してギルドを後にする。今からボアが目撃された現地に行くのは日没まで時間があまり残っていないため、依頼は明日から行うことにして全員で馬宿に向かう。到着後、全員が旅装を解いてから馬宿の客室(全員一緒の大部屋である)で、今回の依頼について、パーティー全員で話を行うことにした。


 「明日からの依頼だけど、とりあえずボアの群れがどのくらいいるのか、そして何より群れのリーダーの所在を確認しないと先に進めないわね」と、集団の現状把握を提案するテレーゼ。


 「テレーゼ姉さんの言う通りだな。手当たり次第に駆除して回るなんてあまりにも面倒だからな」と、テレーゼに同意するアデリナ。


 「群れを率いるリーダーの所在を調べるのは、姉さん、何か方法があるの?」


 「視力向上の魔法を全員に使ったあと、目撃情報があった周辺を全員で丹念に捜して回るしかないわね。それで見つけたら私とティアナがリーダーに近づいて、おそらく力比べをすることになるでしょうけど、上手く行ったら従魔魔法を使ってみるわ。あとボアの群れは極力討伐しない方針で行こうと思うの。以前も話したけど全滅させるのは無益な殺生だし、そもそも群れが人に害を及ぼさないのなら討伐の必要はないわ。あまつさえ討伐できても後片付けが大変だから」と、ヘレナの質問に答えるテレーゼ。


 「従魔魔法はともかく、群れのリーダーに勝てるんですか?」


 「流石にボアを相手に大外刈は無理だから、相手が突っ込んで来るのに合わせて全攻撃への防御と相手への軽量化の魔法を発動させて、相手がこちらの防御に突っ込む衝撃を利用して相手を跳ね飛ばす、という状況が作れたらそれほど面倒ではないと思うわ」


 「猪の突進による運動エネルギーは相当強いようですから、それが一番簡単だとペルレも思います」


 (相手の力を利用して技を掛けるというのは、テレーゼさんが柔道で日頃から実践している「柔よく剛を制す」に通じるものがありますね)と、マーヤ、テレーゼ、ペルレ、ティアナ。ティアナの頭の中での会話は、心の繋がりのあるペルレから全員に伝えられる。


 「明日からみんな忙しくなると思うから、今日は夕食を済ませて早めに休みましょうか」と、テレーゼが全員に提案して、妹たちもそれに賛同してくれたので馬宿の1階に併設された食堂に行き、そこで夕食を済ませるテレーゼ姉妹である。






 「明日のボアの群れやリーダー捜しは、ソフィアにボアの目撃情報を聞いたけど、まずは範囲が重なっている地点を重点的に調べたほうが良いわね。もっともそれで絞り込める場所だけでも5カ所くらいあるから、なかなか大変ね・・・」と、明日からの指名依頼開始に対して気を引き締めるテレーゼ。


 (私も精一杯頑張りますから、なるべく早く依頼を達成してみんなで妹たちや娘のところに帰りましょう)と、ティアナ。今回の依頼でキラーグリズリーだったティアナの存在は間違いなく依頼成否の鍵を握る存在なので、そんな彼女が協力してくれることを本当に有り難いと感じるテレーゼである。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 イェソドへの道中、テレーゼたちが何事もなくて何よりです。

 あと、イェソドギルドのギルドマスターであるソフィアとジークリットは前話で触れたように、数少ない女性のギルドマスター同士でお互い仲も良いのですが、流石に相手の名前をしょっちゅう言い間違えるジークリットのアバウトさに、作者は思わずツッコミを入れたくなりましたが、その理由さえ確認しないほどのソフィアの大らかさも、なかなかのものだと思います。


 次話は、テレーゼ姉妹は依頼達成のために行動を開始しますが、そこで新しい出逢いが待っています。

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