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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第13章:農場での新たな取り組み
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第3話:雛鳥の成長と従魔魔法

 農場に庭鳥の雛たちを迎え入れたテレーゼ姉妹。

 イーナとアンナを中心に姉妹全員で手厚く育てられた雛たちはすくすくと成長します。

 昨夜自宅に泊まったマーヤは、朝食をテレーゼたちと一緒に食べてからマルクトの街に帰って行った。彼女にはもし良ければ、これからも庭鳥の雛たちの様子を見に来て欲しいと伝えると、テレーゼや妹たちとこれまで以上にプライベートでの交流ができることを含めて快諾してくれたので何よりである。


 テレーゼが昨日農家から譲り受けた庭鳥の雛たちは、大きな四角いお盆のような飼育箱に入れられて、早速イーナとアンナが餌と水を与えていた。成長魔法を雛たちに使えば一瞬で親鳥になるのだが、妹たちには、雛たちのお世話をすることでたくさん思い出を作って欲しかったため、今回は成長魔法を使うことはしないつもりである。但し、雛たちは親鳥に比べるとかなり弱いので、極端な話、絶対に病気や怪我になどさせないように、日々鑑定魔法、消毒魔法、治癒魔法、体力回復魔法などを自重せずに使うつもりである。






 「ひよこさんたち、おはよう♪」「わー可愛い!」


 イーナとアンナは、毛玉のように固まって可愛く鳴く雛たちにすっかり心を奪われ、雛たちの保護者というよりは姉を任じているようだ。テレーゼが昨夜急遽用意した飼育箱の予備に雛たちを優しく移動させ、餌箱や水の入った箱を取り替え、今まで雛たちが入っていた飼育箱と餌箱、水の入った箱を屋外の外流しに洗いに行く2人。12羽の雛がいるため、飼育箱は毎日排泄物の掃除が必要なのだが、それを全然厭うことがない2人の健気さがテレーゼにはとても嬉しかった。それに応える形で、毎日2人の作業前後に防汚魔法や消毒魔法を掛けてあげるのが雛たちが成長して親鳥になるまでの日課になるだろう。


 因みに排泄物は折角毎日手に入るのだから、早速農場の耕作を休ませている畑の土に混ぜて、しばらく寝かせておいて(発酵していない取れたてであるため、これをすぐに作物に使うと最悪作物が枯れてしまう。そのため、作物を植えるまで最低でも1ヶ月は欲しい)から作物を育てる助けにしようと思う(もっとも飼養規模が小さいので、肥料の代わりにするというよりはちょっとした実験的な試みである)。






 庭鳥の雛たちを飼い始めて3ヶ月ほど経過した。かつての雛たちはすっかり成長して立派な親鳥になった。テレーゼは成長魔法こそ使っていないものの、その他の魔法は自重せずに使ったため雛たちは非常に健康状態が良く、結果的に成長魔法と同等の効果とまでは行かないものの、相当成長が早まったようである。


 庭鳥たちは、昼は農場周辺で餌をついばみ、夜は姉妹全員で作った、新たに用意された鳥小屋で休んでいる。成長した庭鳥は、特にイーナとアンナが庭鳥の飼われている場所にやってくると、2人の後を付いて回るくらい懐いている。農場周辺には元々防御魔法や隠蔽魔法を施しているが、万一にも放し飼いの庭鳥が野獣などに襲われるといけないので、もし何か護りに問題があるようなら根本的な対策を行おうと思っている。


 そして庭鳥が卵を産むようになり、産んだ卵は、テレーゼが鑑定魔法で無精卵であることを確認した上で日々の食事で有り難く使わせてもらっている。


 オスも飼っているとはいえ、全部が有精卵というわけではなく、無精卵の方がかなり多いようだ。単純にオスが少ないからなのか、庭鳥の受精確率が低いからなのかは解らないが、抱卵させればひよこが孵る有精卵を料理に使うのは心情的に避けられるのなら避けたいので、現状はむしろ有り難い。あと産卵は1日1個が精一杯だが、10羽のメスが産む卵は、元々庭鳥が強健なうえにテレーゼが使う各種魔法の効果などで健康状態が極めて良いせいか、日本で市販されている鶏卵のLLサイズよりもよりかなり大きい(1個100グラムほどもある)ので、姉妹が食べる分としては大助かりである。


 有精卵は、間違って料理に使わないように卵に印を付けた上で庭鳥たちに抱卵してもらったのだが、最初に農場に迎え入れた数と同じく12羽(更にこれも偶然ではあるが、孵化した雛はオスが2羽とメスが10羽で、最初に迎え入れた数と同じである)が孵化し、主にイーナとアンナが世話しているが、2人だけでなく姉妹全員が庭鳥の雛の飼育を覚え世話をした結果、姉妹全員に今の親鳥を含めた雛たちが懐いている。


 同じく庭鳥から毎日生み出される排泄物は、土に混ぜて十分に発酵させてから作物を育てるための土として有効に活用している。農地全体から見るとごく一部であるが、堆肥として広く用いられる牛の排泄物に比べ、肥料成分が多く含まれ速効性が期待できる庭鳥のそれは、成長魔法を使わない作物に対して特に成長促進の効果が期待できるようだ。


 あと特筆すべきは、成長した庭鳥たちには、幼児と同等レベルの知能が芽生えたようである。明らかにイーナやアンナの呼びかけの言葉に意味を理解した上で反応している節が多々見受けられる。鳥と言えば、「鶏は三歩歩けば忘れる」、「鳥頭」といった物忘れが酷いおバカなイメージがあるが、本質的には動物の中でも頭が良いというのがテレーゼの実感である。そうでなければ、(本能的な行動である「刷り込み」があるにせよ、本当に物忘れが酷いのなら)孵化した直後に目にした親や飼い主の後を付いてきたり懐いたりするということ自体出来ないはずである。もっともそれを差し引いても、農場内で餌をついばむ賢い庭鳥たちを見ていて、(こっちの庭鳥は、地球の鶏よりも知能が高いのかしら?)などと不思議に思うテレーゼである。


 因みに鶏の生物的に卵を産むことが可能な年数は大体8年弱とされており、庭鳥は以前雛を分けてもらった農家の話ではそれよりもやや短いみたいだが(もっと言えば、減価償却の計算における採卵鶏の耐用年数は13ヶ月である。つまり普通の養鶏では、主に採算が合わないという理由で、卵を産むようになってから1年程度で順次新しい採卵鶏に更新が行われるということを意味する)、もし可能であれば、そして庭鳥たちが望むならば、その前に若返りの魔法を使うことも考えている。現状で姉妹全員に懐いており、日々頑張って卵を産んでくれる賢い庭鳥たちを更新するのは、偽善かも知れないがテレーゼ的には極力避けたいと考えているからである。その考えを妹たちに伝えたところ、全員が賛成してくれた。小さい雛鳥の頃から手塩に掛けて大切にしてきたこともあり、既に庭鳥たちは、家族の一員に近しい存在と考えているテレーゼ姉妹である。






 ある日のこと。庭鳥の中で、特にテレーゼに懐いてくれている庭鳥たちのリーダーと思しきメスが、何かを訴えるような仕草をしていたので、ティアナ、イーナ、ペルレ経由で妹たち全員と話をして彼女に従魔魔法を使うことにした。合わせて彼女にはドイツ語の雌鶏+リーダーを意味する「ヘナフューラー」という名前をプレゼントしたが、やや長いため普段は「ヘナフ」または「ヘナフちゃん」と呼ぶことにした。従魔魔法と名付けにより彼女と強く心が繋がったことを実感するテレーゼである。


 (テレーゼおねえちゃん、おなまえつけてくれてありがとう)


 「ヘナフ、これからよろしくね。あと、他のみんなもだけど、いつも頑張って卵を産んでくれて本当にありがとう」


 (ヘナフたちも、いつもおねえちゃんたちがだいじにまもってくれてありがとう)


 驚いたことに、ヘナフに従魔魔法を使ってみて、幼児と同等以上の知能があることが改めて解った。あと、ヘナフは鳥なので、鳴き声は別としても、発音よりは頭の中での会話のほうがスムーズなようだ。


 「ヘナフちゃん、イーナだよ♪妹とお話できてうれしいな♪」


 「ヘナフちゃん、イーナちゃんとお話しできるの?すごい!あと、妹が増えてアンナうれしいよ!」


 (イーナおねえちゃんとアンナおねえちゃんが、いつもヘナフたちのそばにいてくれてあたしたちはおっきくなれたの。ありがとう)


 テレーゼのそばにいた心の繋がりのあるイーナや、イーナと一緒に農場の手伝いをしてくれていたアンナが新たな妹の誕生を歓迎してくれる。それに対してヘナフは主に自分たちを一生懸命世話してくれたイーナやアンナへの謝意を伝えてくれた。彼女のことは、ティアナ→ペルレ経由ですぐに妹全員の知るところとなり、農場内で作業をしていた他の妹たちも全員近くにやってきて、口々にヘナフに話しかけていた。テレーゼ(&ティアナ)やイーナやペルレが聞き取った会話を理解できるのは、テレーゼがこれまで従魔魔法や名付けを行った妹たちと同じであるようだ。


 加えて、今後はヘナフを通じて庭鳥の健康状態や、庭鳥たちの気持ちを深く把握できることでより丁寧な飼育が可能になるうえ、農場内のちょっとしたことを庭鳥目線でも知ることができるのは今後の農場運営で大きなプラスになる筈である。


 (庭鳥を育て始めた当初は思いもよらなかったけど、新しい妹が誕生するとは思わなかったわ・・・それはともかく、他の妹たちも喜んでいるようだし、何よりだわ・・・)と、庭鳥の飼育を行って本当に良かったと感じるテレーゼである。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 庭鳥が無事に成長して新たな命を育むようになり、そしてヘナフという妹が誕生しました。人間に換算すると、ヘナフを含めて最初に農場にお迎えした庭鳥たちは20歳を超えているのですが、彼女たちは特にイーナとアンナに献身的にお世話されたことから、テレーゼ姉妹の末妹のポジションになりました。2人の頑張りが実を結んで本当に良かったですね。


 次話は、ヘナフとの会話をきっかけとして、テレーゼ姉妹全員で農場内の護りを強化します。

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