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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第11章:誕生会とボードゲーム
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第3話:誕生会準備と妹たちの紹介と模擬戦

 テレーゼ姉妹の頑張りで誕生会の準備はつつがなく進んでいきます。誕生会の前日、テレーゼは自宅にやって来たギルドの2人に妹たちを紹介します。

 そして、本話では新キャラクターが登場しますが、彼女はテレーゼにあることを提案します。


 4月22日 一部表記揺れなどを修正しました。

 誕生会用料理の一部メニューに関して、テレーゼが妹たちに手料理を振る舞った翌日から、姉妹で手分けして料理の準備を開始した。誕生会当日まで数日あるが、完成した料理は、その都度テレーゼが空間魔法で保存しており作りたての状態を保てるため安心である。

 姉妹全員が準備を頑張った結果、料理と飲み物に関しては、姉妹全員と両親とギルドの2人(先日ジークリットには娘さんの追加での参加を歓迎する旨を伝えていたので、もしかしたらあと1人増えるかも知れないが・・・)という参加者全員が、余裕で飲食可能な量を誕生会前日の夕刻までに用意できた。

 なお、誕生会は家の中で一番広い空間である、以前の接骨院で機材を片付けて行う予定である。そこで、料理や飲食物の準備に目処が付いたところで、まず姉妹総出で接骨院の機材を一時的に倉庫に運び出してから掃除を行った。そして、テレーゼが市内のホームセンターから、当日使用する折りたたみ式の椅子とテーブルとテーブルクロスを人数分購入した。あとは部屋の飾り付けを含めて当日会場の設営を行うだけである。


 そんな中、ギルドのジークリットとマーヤが、ただ参加させてもらうだけでは申し訳ないと、明日の誕生会の準備があれば何か手伝わせて欲しいと、ギルド業務が終了した後で自宅にやってきた。ギルドの中心的な存在である2人と余人を交えず話ができる機会など、今後も含めてそうそうないであろう。テレーゼは、意を決して2人を屋外の農場まで連れ出し、ティアナとイーナとペルレのことを紹介することにした。


 「ジークリットさん、マーヤさん、初めまして。テレーゼさんのすぐ下の次女ティアナです。とは言っても、テレーゼさんを通してあなた方のことは以前から知っていました。いつも私たち姉妹に良くしていただき、ありがとうございます。私は元々キラーグリズリーだったのですが、肉体的に命を落とした後、縁があってテレーゼさんの心と身体の中に受け容れてもらって、新たな命をお姉さんにいただきました。そんな私も含めて娘のイーナや妹たち全員は、自分のことを一切省みず、いつも自分の全力で私たちのために行動してくれるテレーゼさんのことが心から大好きです。お2人にも、私と文字通り一心同体の存在であるテレーゼさんのことを助けて欲しいと心から思っています。これからも姉のことを何卒よろしくお願いします」


 「イーナだよ♪イーナはティアナお母さんがいなくなってお腹が空いていたときに、お母さんみたいなあったかい気配を持ったすごく優しくて強いテレーゼお姉ちゃんに出逢えたの。そのときにお姉ちゃんの妹になったの。お姉ちゃんはイーナとお母さんを一緒に森から連れて帰ってくれて、お姉ちゃんがお母さんの魔法を使ってイーナを人間にしてくれて、その後にお母さんも生き返らせてくれたの。イーナはそんなすごくあったかいテレーゼお姉ちゃんが大好きなの!だから、イーナはこれからもお姉ちゃんのお手伝いをいっぱいしたいし、これからもテレーゼお姉ちゃんたちやお母さんとずっと一緒にいたいの!」


 「初めまして。私は、ペルレフォンニュルンベルクという植物の精霊で、末妹のペルレと申します。先程ティアナ姉さまとイーナ姉さまが説明したように、私たち全員にとって、姉さまがいない日々なんて考えたくないくらい姉さまが大切ですし、日々一緒に生活して一緒の時間を過ごす・・・そんな姉さまとの何気ない日々の積み重ねを何より幸せだと感じています。隠し事なく話をさせてもらうと、姉さまの技術や知識や魔法の力は、今ですら権力者たちに知られれば、到底無視できないものだと思います・・・ですが、私たち妹全員の願いは、唯々姉さまを中心に平穏に日々を幸せに過ごしたい・・・そう強く願っています。ですから勝手なお願いで本当に申し訳ありませんが、これからもぜひお2人やギルドの力を貸していただきたく切にお願い申し上げます」


 ティアナとイーナとペルレの自己紹介と、3人が語る内容、特にテレーゼに対する強い想いは、海千山千のギルドの2人にとっても心底驚愕するに足ることだったようだ。


 「テレーゼ、君が私たちを信じて3人の妹たちのことを紹介してくれたこと、そしてここにいない他の妹たちも同じだろうけど、3人の君へのこれ以上ない熱い想いを重く受け止めるよ。もちろん、それを未来永劫口外するつもりはないことを、自分の誇りである先祖から引き継いだ苗字に懸けてこの場で誓う。明日出席する可能性がある娘のジークリンデは、カトリナと同じく魔法にも通じる魔法剣士(魔剣士)だから気付くかも知れないが、もちろん絶対に口外はさせない。

 あと、ティアナとペルレだったかな。君たちがイーナを含めてテレーゼを強く慕っているのは、自己紹介を聞いていて良くわかった。正直な話、ギルドにとっても君たちの姉であるテレーゼは、絶対に私たちの前からいなくなってもらっては困る大切な存在だ。だから、今後何かあったらギルドやツンフトマイスターの私が後ろ盾となることをここで約束するよ」と、ジークリットは秘密の厳守だけでなく、テレーゼ姉妹の後ろ盾となることを約束してくれた。


 「私の気持ちも、たった今ギルドマスターが話したことと同じです。テレーゼさんは、今まで私たちが見たことも聞いたこともないことをいくつも見せて下さいました。そんなテレーゼさんには期待しかありません。

 それだけではなく、私にとって大切な友人であるアリーナさんとアンナちゃんの一家を助けて下さいました。特にいつも苦しそうにしていたアリーナさんの重い病を完治させたのは、医者であるテレーゼさんですよね・・・私にとってテレーゼさんは、仕事に関係なく本当に大切な友人だと思っていますから、これからも末永く良い関係でいたいと強く願っています」と、マーヤ。アリーナの病気を完治させたことや、アリーナとアンナの母娘の住む場所がなくなる危機を救ってくれたことを深く感謝してくれているようだ。


 「2人とも、本当にありがとうございます・・・」と、テレーゼは2人への心からの謝意を口にする。


 「礼には及ばないよ。私には娘がいるんだが、誰に似たのかは知らないが物の考え方が型に嵌まってしまいがちで、それが時として視野狭窄を招いて自分自身の桎梏になることがあるんだよ・・・だから、柔軟な思考の持ち主である君と出会うことで何か得るものがあれば、と期待しているんだ。もし良ければジークリンデとも友人になってくれると嬉しいよ」


 「私で良ければ、喜んで」


 「それは有り難い。というか、君と話していると母親のような包容力とでもいうのかな?自分よりも年長者と接しているような心持ちになることがままあるのだが、不思議だな」


 「ギルドマスター、それは私も同感です。失礼を承知で言わせていただけるなら、正直な話、テレーゼさんが実は妖精族で、年齢も50歳くらいと言われても納得できますよ。但しそう考えてもテレーゼさんの生み出すことって、私たちにとってはいろいろ規格外なんですけどね」と、ジークリット、テレーゼ、マーヤ。


 「明日の誕生会の準備はほぼ終わっていますので、当日会場の設営を手伝っていただけると助かります。それと、もし良ければお二人とも、前夜祭というほど大仰なことはできませんが泊まって行きませんか?」と、テレーゼ。


 「本当にありがとうございます。喜んでそのお誘いをお受けしますね。アリーナさんやアンナちゃんもですが、他の人たちとも仕事を離れたこの機会にいろいろ話したいです。」


 「良いのかい?それは嬉しいな。できれば、一度街まで戻って、ジークリンデを連れて来たいんだが構わないだろうか?」


 「ええ。大丈夫ですよ。お待ちしていますね」と、マーヤ、ジークリット、テレーゼ。ジークリットは娘のジークリンデを迎えに行くようだ。


 「早速ジークリンデを迎えに行ってこよう。多分今日は午後から家に帰ってきているだろうし。それでは、行ってくるよ」そう言って、ジークリットは足早に街道のほうに歩いて行った。テレーゼはマーヤとイーナとペルレを連れて(もちろん、文字通り一心同体のティアナも一緒に)家に戻ることにした。






 (テレーゼさん、流石にギルドのお二人はあなたの本質を見抜いていますね。年齢をほぼ正確に言い当てていますし・・・)


 (イーナもびっくりしたの!)


 (姉さま、ペルレもびっくりしました・・・数多くの冒険者たちと日々接しているのは伊達ではないということですね)


 (そこは妖精族という種族がセフィロトにいるからイメージしやすいのかも知れないわね・・・ところで、ペルレも言葉を使わなくても私やティアナと話せたのね。イーナとも言葉を使わずに会話できるのは有り難いわね)


 (会話に関しては、ペルレも最近そのことに気付きました。おそらく、姉さまから名前をいただいた私と、ティアナ姉さま、イーナ姉さまは、姉さまとより強い心の繋がりがあるので、それが可能なんだと思います。加えて私たちの会話は、これまで確認した限り、携帯電話や無線機みたいにある程度距離が離れていても、極論すれば日本とセフィロトのように世界が違っても可能ですから、その意味でも使い所は多いですね)

 と、家への移動中にティアナ、ペルレ、テレーゼの頭の中での会話である。ギルドの2人にほぼ実年齢を言い当てられたのは流石である。それはともかく、ティアナやイーナだけでなく、ペルレも言葉を使わなくても意思疎通ができることにテレーゼは嬉しさを感じていた。


 (他の妹たちにも、魔法でこれを再現できないかしら・・・)と、今回のことを踏まえて新しい魔法の試作を考えるテレーゼ。程なくして雛形とも言えるオリジナル魔法が完成した。上手く行けば、自宅以外では使えない携帯電話(自宅の外に出ると「圏外」になってしまう)以上の利便性が得られることは確実である。この魔法は近いうちに妹たちと試してみたいと思う。






 ジークリットがテレーゼの家を出て1時間も経たないうちに、娘のジークリンデを伴ってテレーゼの自宅にやってきた。どうやら身体強化魔法を使ったらしい。現役の冒険者であるジークリンデもだが、母親のジークリットも現役の冒険者と同等以上の能力を持っていることが窺える。


 「ジークリットの娘のジークリンデです。冒険者で魔剣士をやっています。母が日頃からとても世話になっているうえに、この度は私まで誕生会に招いていただき本当に有り難く思います。母共々今後よろしくお願いします」


 「テレーゼです。こちらこそよろしくお願いします。今日はジークリンデさんに会えて嬉しく思います。大したことはできませんが、明日まで楽しんでいって下さいね」






 ジークリット、マーヤ、ジークリンデの3人とテレーゼ姉妹で、ささやかではあるが、前夜祭的な宴が行われた。

 

 「テレーゼは流石に言葉遣いが丁寧だが、ジークリンデが丁寧に会話するのは久しぶりに聞いたぞ。ぶっきらぼうな会話しかできないと思っていたよ。ただ、2人はこれから友人になるんだから、敬語は要らないんじゃないのか?」と、ジークリット。


 「ジークリンデさん、普段通り話して構いませんよ」


 「そうさせてもらえると有り難い。テレーゼも普段通り話して欲しい。魔力の放出をほぼ完全に抑えているみたいだけど、逆に自分とは比べものにならないくらいの実力の持ち主だと解るつもりだ。そんな相手に下手に出られると逆に辛い。もしフリーなら私のパーティーに欲しいくらいだよ」


 「わかったわ、ジークリンデ。あと、申し訳ないけど私は一応パーティーのリーダーだから、賞賛だけ受け取っておくわね」


 「それは残念だな。それと、テレーゼは見たところ攻撃魔法を抜きにしても相当戦えるように思えるな。もし良ければ一手模擬戦をお願いしたいのだが、どうだろうか?」と、手合わせを提案するジークリンデ。


 「それは構わないけど、私は医者だから多分ジークリンデが望むような模擬戦の相手はできないんじゃないかしら?」と、テレーゼ。


 「ジークリンデ、流石に今からやるのは遅いですし、飲酒もしていますから日を改めた方が良くないですか?」と、マーヤ。


 「私が立会人をやろう。模擬戦は明日の早朝、テレーゼもジークリンデも攻撃魔法は使わず、剣術または体術で立ち合うものとする。テレーゼには申し訳ないが、攻撃魔法を認めるとテレーゼがジークリンデを文字通り瞬殺してしまうこと請け合いだからな・・・それと剣は、ジークリンデに練習用の木剣を貸してもらえるかな?」と、模擬戦の立会人を買って出るジークリット。


 「母さん、それでいい」「わかりました」と、ジークリンデとテレーゼ。






 そして翌日早朝。姉妹全員による日課の早朝鍛錬の時間に行われる模擬戦であるため、妹全員も姉の試合の観戦である。


 「テレーゼ姉さん、頑張れ!」

 「姉さんなら、たとえ攻撃魔法がなくても何の問題もない」

 「テレーゼお姉ちゃん、ファイトっ、だよ♪」と、アデリナ、ヘレナ、イーナ。完全にアウェイのジークリンデには気の毒であるが、妹たちが見ている前で無様な立ち合いはできないと思うテレーゼである。いつもの短剣メッサーの代わりに、その場で短剣サイズの木剣を作成し、腰の鞘に収めて準備を終える。一方のジークリンデもテレーゼに借りた木刀を構える。


 「それでは、始め!」ジークリットの掛け声で模擬戦開始である。


 ジークリンデは自分の脚に身体強化魔法を掛けてテレーゼに素早く向かってきた。テレーゼは、自分の両眼に動体視力向上の魔法を掛ける。人と戦うのに必要以上の破壊力は不要であるため、動体視力以外は魔法で強化しても意味がないと思ったからである。ジークリンデの鋭い斬撃を最低限のたいさばき(柔道技を仕掛ける前の下準備的動作のこと)だけで躱す。

 そしてテレーゼの体さばきにより、ジークリンデが剣を振り下ろした直後にほんの一瞬だけ生じた隙(テレーゼの体さばきは「崩し」の効果も生んでいる)に乗じて彼女の左後方に身体を移動し、セフィロトの人にとっては殆ど初見殺し的な必殺技といえる大外刈を掛ける。

 なお今回の相手は右手に木刀を持っているため、イーナの時とは逆に相手の左側から技を仕掛けている。両利きのテレーゼは平素から右組みと左組みの両方とも鍛錬しているため、左右どちらからでも技を繰り出すことが可能である。

 今まで見たことも聞いたこともない体術をいきなり受けたジークリンデは、後頭部こそ強打しなかったものの尻餅をつき、そこに彼女の首筋にテレーゼが木の短剣を当てて模擬戦は決着である。但し、初見殺しとも言うべきテレーゼの大外刈を受けてなお、反射的な受身により後頭部や背部の強打を免れたジークリンデは流石の反応といえる。


 「やっぱり何の問題もなかった。しかも剣を持った相手に対して、大外刈を前回とは違って左右逆に掛けている。流石姉さん」

 「そもそもテレーゼお姉さんの相手のジークリンデは、マルクトでも屈指と評判の魔剣士で、初撃の鋭さから見ても剣の技量が相当高いのは間違いない筈です・・・ところがお姉さんは、そんな難敵ですら持ち前の体術で一瞬にして倒してしまいました・・・お姉さんの「強さ」は、卓越した魔法や知識の力だけではなく、日々の鍛錬で研ぎ澄まされた技術や土台と言える身体能力も合わさったものであることを改めて実感しました・・・」

 「テレーゼお姉ちゃん、こんなに強かったの!?すごくすごい!」

 「攻撃魔法を一切使わなくてもこれほどの強さを持っているなんて、お姉さんは本当に凄いです・・・」

 「姉さま♡・・・あんなに一瞬で鮮やかに技を決めるなんて本当に素敵です♡」

 (テレーゼさんの大外刈は、見ていて惚れ惚れするくらいに一撃必殺の技ですね)と、ヘレナ、カトリナ、アンナ、アリーナ、ペルレ、ティアナ。妹たちに何とか面目を保つことができたことを安堵するテレーゼ。


 模擬戦の決着がついた後で、テレーゼは念のためジークリンデの身体全体に強めの回復魔法を掛ける。魔法により今までの彼女の古傷も全部完治してくれたようで何よりである。

 (大外刈は、キラーグリズリーだったイーナとの遭遇時に使って以来ね。左右両方で組み手を行えることは、流派によっては片方に固定を余儀なくされてできない場合もあるけど、やはり有益だわ・・・)と、平素の鍛錬の重要性を再認識した今回の模擬戦である。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 ギルドのジークリットとマーヤに、ティアナとイーナとペルレが好意的に受け容れられて何よりです。


 ジークリットの娘であるジークリンデは作者が一番最初に投稿した短編に登場するキャラクターです。母親のジークリットが物語に登場した時点で、作者的には母親としての描写を綴る過程で再登場の運びとなりました。模擬戦に関しては、ジークリンデの本来の実力を考えればもっと良い勝負になったはずですが、パーティー戦で真価を発揮する魔剣士であるジークリンデにとって、魔法使いでありながら単騎での接近戦にも長けたテレーゼは、初見の相手としては相性が良くなかったということになります。


 次話は、誕生会の話がメインとなります。

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