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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第9章:農場運営の開始と両親の来訪
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第4話:両親と娘たちとの交流

 テレーゼ姉妹とその両親である剛史&テレージアが、いろいろな話をします。その中で、主にテレーゼと妹たちとの出来事における当時の彼女の心情や、彼女の名前の由来などが明らかになります。


 2月13日 一部誤字などを修正しました。

 「お母さん、こんないい歳をした私を、久しぶりに心ゆくまで甘えさせてくれて、本当にありがとう。そして、お父さん、私たち姉妹のことを心から受け容れてくれて本当にありがとう」


 テレージアの膝の上に抱かれてたくさんの涙を流したテレーゼは、ようやく落ち着いてテレージアの脚から名残惜しくも顔を離して、彼女と父の剛史に心からの感謝の意を伝えた。


 「テレーゼちゃん、そんなの当たり前じゃない!いくつになってもテレーゼちゃんは最愛の娘なのよ。礼には及ばないわ。これで私の膝や脚を濡らしたとか申し訳なく思ったりしたら、逆にお説教するんだからね!」


 「そうだぞ、テレーゼ。私たちの自慢の娘が、目の前で何人もの娘たちから姉と呼ばれて心から慕われているんだ。親として、娘がたくさん増えたことを含めてこれほど幸せなことはないよ。もしかしてテレーゼは、私やテレージアが、テレーゼの他所の世界の妹たちを敬遠するかも知れない、と心配したんじゃないのか?私たちはそこまで狭量ではないつもりだよ。それに、他所の世界にいきなり飛ばされても自分を見失わず、新しく得た力に溺れず、地に足をつけて為すべき事を為し、これだけ強固な人間関係を作り上げてきた。そのことが並大抵のことでないことくらいは私たちにも理解できるつもりだし、そんなテレーゼを心から誇りに思うよ」


 「お母さん、お父さん、私、2人の娘で心の底から幸せだと思うわ。本当にありがとう・・・」


 テレージアと剛史の言葉に、心底安堵し感謝するテレーゼである。






 「テレーゼ姉さんの母さんって、テレーゼ姉さんと全く同じことを言うのには、ホントびっくりしたよ・・・」


 「アデリナちゃん、どういうこと?」


 「テレーゼ姉さんがアタシに洋服をプレゼントしてくれたとき、姉さんの胸で嬉し泣きしたんだけど、アタシの涙で服を一杯濡らしてさ・・・それを姉さんに謝ったら、気にするなって叱られたんだ。服なんてすぐに乾くからって・・・」と、アデリナがテレージアにテレーゼから服をプレゼントされた時の話をして聞かせた。


 「昔の怪我の影響で、魔法が使えなくなっていた私やアデリナを、姉さんが魔法で治してくれたときも、2人で姉さんの胸をたくさん濡らした。でも服はそのうち乾くから(気にしないで)とか、私たちが姉さんに掛ける迷惑はないくらいに思って良いとか私たちに言ってくれただけでなく、姉さんに私たちが魔法が使えない原因や魔法が使えないことを、内心凄く気にしていたことに気付けなかったと逆に謝られた・・・

 自分にはどこまでも妥協せず厳しいのに私たち妹にはどこまでも優しい、そんな姉さんが私は本当に好き。自分も姉さんを見習いたいと強く思うし、姉さんに一生付いて行きたいと心の底から思ってる」と、アデリナに続いてヘレナが、回復魔法でヘレナやアデリナを魔法が使えるように治したときの話をテレージアに話した。


 「そんなことがあったのね・・・テレーゼちゃんらしいわ・・・」と、アデリナとヘレナがテレージアにテレーゼのエピソードを話して聞かせた。そばで聞いていたテレーゼは顔を赤くしてうつむいており、少し恥ずかしそうだ。




 「ところで、さっき、テレーゼお姉さんのお母さんは、テレーゼお姉さんとは殆ど同じ名前だと話されていましたけど、どういうことでしょうか?」


 「剛史さん、元々あなたが私に教えてくれたことなんだから、カトリナちゃんに説明してくれるかしら?」


 「テレーゼとテレージアは、どちらもドイツ系女性の名前なんだが、元々はギリシアと言う国のテレシアという女性の名前が由来で、それは「収穫する(人)」という意味を持っているらしいんだ。ギリシアは日本と同じように神様や神話が数多く存在する国だから、これは私見になるが、昔ギリシア神話の本などで調べた限りでは、娘や妻の名前は元々、作物などの実りに関係する神様からの由来だと思っているんだ」


 「それって・・・つまり、豊穣に関わる女神様である地母神様のことですよね・・・実際お姉さんは、成長魔法という、とても他に同じ魔法の使い手がいるとは思えないような凄い魔法で、私たち妹が見たことも聞いたこともないイチゴや唐芋という野菜を、それもお姉さんから話に聞いた日本のものとも完全に別物というレベルにして、いとも簡単に生み出しました。そんな魔法の使い方なんて、もちろん教会でも見たことも聞いたこともありませんし、お姉さんの魔法の力と名前の由来が、世界は違ってもただの偶然とは私には思えません・・・」


 「だからアタシ何回も言ってるじゃん!テレーゼ姉さんは地母神様の化身じゃないのか?って」と、テレージア、カトリナ、剛史、アリーナ、アデリナ。特にアリーナとアデリナは、テレーゼの名前の由来を聞いたときの食いつきが凄まじかった。それだけ姉であるテレーゼに心酔しているのだろう。




 「ちょっと、アリーナ、アデリナ、落ち着いて。確かに私はセフィロトで強い魔力を手に入れたけど、豊穣の女神様の化身ってちょっと大げさよ」


 「でも、姉さんみたいに何でもできる人って、有能だと噂されるマルクトの街の領主や野心家の王都ダアトの国王だって、個人の能力では全然姉さんに及ばないと思う。私が目の前で見てきただけでも、姉さんは、医術、全属性の魔法、狩り、体術、書類仕事、私たちが知らない乗り物の運転や操縦、農業、料理、帳簿の付け方、算盤や暗算のやり方・・・それらを全部完璧にこなすけど、これって姉さん自身の努力で手に入れたことは、セフィロトの文字を数日間の猛勉強でモノにしたことも含めて凄く解るつもりだし、そんな何事にも努力を惜しまない姉さんを、私たち妹は全員心底尊敬しているし強く見習いたいと思ってる」


 「イーナも、すごく何でもできてすごく優しい、頑張り屋さんのテレーゼお姉ちゃんが大好きなの♪」


 「いつも文字通り一緒にいる私から見ても、本当にテレーゼさんの能力の底って全然見えません。というか、何をどうすればここまで凄い人になるのか・・・テレーゼさんには本当にいつも驚かされっ放しです・・・」と、テレーゼ、ヘレナ、イーナ、ティアナ。特にヘレナとティアナは、姉のテレーゼのあまりの多才ぶりに、畏敬といって良い感情を抱いているようだ。




 「そういえば、テレーゼ。接骨院を廃業したのは本当に辛かったな。一度に生活の糧と生きがいの両方を喪ったことになるが、大丈夫なのか?」


 「テレーゼちゃん、もし良ければ、また私の膝の上を貸すわよ。胸でも良いけど」


 「お父さん、私を心配してくれてありがとう。お母さんも、私を甘えさせてくれてありがとう。今は気持ちだけもらっておくわね。今の私には、妹たちもいてくれるから大丈夫よ。それに今だから言えるけど、アデリナが最初に私の胸で泣いてくれた時って、市役所に接骨院の廃止届を出した当日だったんだけど、アデリナが私の辛い気持ちを、あなたの涙で全部洗い流してくれたようで、私は凄く救われたのよ。アデリナ、本当にありがとう」


 「大切な娘を心配するのは親として当たり前のことだが、それを感謝してもらえるのは本当に嬉しく思うよ」


 「剛史さんの言う通りだわ。あとテレーゼちゃん、別に遠慮しなくても良いのに・・・また甘えたくなったときはいつでも言ってね」


 「テレーゼ姉さん、アタシの胸で良ければいつでも言ってくれ。少し物足りないかもだけど」


 「アデリナ、あなたは十分すぎるくらい包容力があるわよ。それは、イーナやティアナと出逢った日に、あなたの胸の中で盛大に泣いて心と身体を心ゆくまで暖めてもらった私が、一番よく解っているつもりだから」


 「テレーゼ姉さん、アタシの嬉し泣きのことも含めてそう思ってくれてたなんて、ホントに嬉しいよ。というか、サラッとアタシたちの心が震える台詞が言える姉さんって、ホント惚れ惚れするくらい良い姉さんだし、アタシは心底大好きだよ」


 「テレーゼお姉さん。アデリナだけじゃなく、私たち妹は誰だって、いつだって、いくらだって、お姉さんのことを喜んで受け容れますから」


 「アンナも、テレーゼお姉ちゃんが大好きなの!アンナやお母さんを何度も助けてくれて、今も毎日いろいろ教えてもらって助けてもらってるの!」


 「ペルレが鉢植えのエケベリアとして施術室にいたときも、姉さまに身体を癒やされた人たちが、姉さまにたくさんお礼を言っているのを見ていました。そんな姉さまがセフィロトにやってきて2週間ほど経った日の早朝、私にお水をかけるときに、どこか寂しそうにしていたことがあったんですけど、そんなことがあったんですね・・・でも、これからは姉さまに寂しい思いは絶対にさせません!ペルレがずっと姉さまのそばに居ますから・・・」

 と、剛史、テレーゼ、アデリナ、カトリナ、アンナ、ペルレ。接骨院廃業のことをテレーゼより聞き、ペルレの話が終わった途端、妹全員がテレーゼの近くに寄ってきて、自らの温もりを分け与えてくれるように、身体に触れてくれたり抱きしめてくれた。そんな健気で心優しい妹たちが、テレーゼには心底愛おしく感じた。






 「ところでテレーゼ姉さん、せっかく姉さんの、いやアタシたちの父さんと母さんが来てくれたんだから、歓迎会をやろう!」


 「賛成。アデリナは、たまには良いことを言う」


 「ヘレナは、どうしてアタシにそんな毒舌なんだよ・・・」


 「今にして思えば、私の右肘を棒で叩いたのってアデリナだった。もし姉さんに逢えなかったら、私は一生魔法が使えなかった」


 「ヘレナ、ホントこめん。でもそれを言うなら、アタシがかくれんぼで倉庫に隠れていたとき、力一杯倉庫の扉を締めたヤツがいて、その振動で積んであった薪が右肩に落ちてきたんだけど、倉庫の扉を閉めたのってヘレナじゃないか!」


 「そうだった・・・アデリナ、ごめんなさい・・・」


 「ヘレナ、アデリナ。そんなことがあったのね。でも仲直りしてくれて良かったわ。あなたたち2人もだけど、もし今後妹たち全員に何かあったら、私が全力で回復魔法を掛けるからね」と、アデリナ、ヘレナ、テレーゼ。2人が魔法が使えなくなった裏事情(作者注釈:2人の魔法に纏わるエピソードは、第5章第2話を参照のこと)が解ったが、2人が仲直りしてくれて何よりである。そのあと、テレーゼたち9姉妹とテレーゼの両親で、心温まる夕食のひとときを過ごした。


 そこで、姉妹の農場で収穫されたテレーゼ謹製の超大型イチゴには、実家がどちらも農家で、農業にも通暁する両親も相当驚いたようだ。


 あと、両親が母の故郷のドイツに2人一緒に帰省した際に、ツークシュピッツェに行った話を話してくれたが、とても楽しかったようで何よりである(但し、以前テレーゼが予想したように、大半がテレージアによる両親のノロケ話だった)。


 加えてツークシュピッツェへの再度の旅行に関しては、「テレーゼちゃんのおかげで、凄く若返ったから今度は剛史さんと徒歩で山頂まで行きたいわ!」と、テレージアが嬉しそうに話していたが、その場合は、パスポートの顔写真が、若返った現在と殆ど別人のはずなので、何らかの理由で新しく作り直さないといけないのでは?などと思うテレーゼだった。


 もっともそのようなことは、テレーゼが言及せずとも、娘のひいき目抜きでも自分よりも遙かに人生経験が豊富で、自分が生涯を懸けても追いつけるかも解らないような、永年文字通り世界を股に掛けて生き抜いてきた両親には、既に強く認識されていることだろう。






 テレーゼたち9姉妹は、2人に泊まっていくように勧めたが、両親は明日所用があるとのことで、また近いうちの再会を約束して姉妹全員で勝手口にてお見送りである。あと、お土産に、超巨大イチゴを50個ほど(丁度10キロ程度である)渡したところ、2人とも凄く喜んでくれたので何よりである。今度は、テレーゼたちが両親にセフィロトの観光案内をすることになったので、2人には日本とは違う世界を心ゆくまで楽しんでもらおうと思う。






 (正直な話、私が若返った状態で両親に逢うことや、妹たちを両親に逢わせることについて、心配が全くないとは思えなかったけど、取り越し苦労だったわね・・・というか、娘の私が、両親の度量を低く見誤っていたなんて、本当に恥ずかしいわ・・・)と、反省しきりである。そのお詫びというわけではないが、近々行う予定の両親とテレーゼ姉妹全員とのマルクトの街観光については、心底楽しんでもらえるよう頑張りたいと思う。そのために、どこを案内しようかと今から思索に耽るテレーゼである。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 長姉ということで妹全員のことをある意味一手に引き受けていたテレーゼは、剛史&テレージアという、妹たちとは違う意味で心底安心できる両親の登場で、本人も知らないうちに張り詰めていた気持ちを強く癒やされました。そして、アデリナとヘレナの関係が改善したようで何よりです。

 メインキャラとしては登場が遅かった剛史とテレージアですが、今後も物語に度々登場する予定です。


 あと、補足になりますが、本文では国名と神話名の記述を便宜上ギリシアで統一していますが、国名はギリシャという記述が用いられることが多いようです。あと、テレシアの由来は複数の異説があるようですので、申し添えます。


 この話で、第9章は終わりになります。次章は、テレーゼが以前の観光旅行で妹たちからリクエストされていたものを作る話や、セフィロトに来て最初の新年を迎える話がメインとなります。


 この話をもって40話となりました。連載当初は、一応プロットは多少事前に用意していたものの、年も越せずに話が行き詰まってしまい連載できなくなってしまうのでは?と内心心配でしたが、読んで下さる皆様のお陰で、ここまで何とか続けられました。読んで下さる皆様への深い謝意と、次章も精一杯頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

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