第4話:新しいお風呂と買い物と帰宅
観光旅行も終わりに近づき、妹たちは全員で一緒に入浴することの心地良さを実感したようです。
旅行最終日は、テレーゼ姉妹はいろいろな買い物を行いますが、それは同時に、日常生活への回帰のための準備でもあるようです。
1月18日 台詞を一部修正しました。
温泉宿では、昨日に続いて女将さんが出迎えてくれた。夕食は昨日と同じ19時にお願いして、6姉妹は昨夜と同じ部屋に向かい、部屋で服を脱いで露天風呂に入る。
「ワーちゃん(ジンベエザメのぬいぐるみのこと)、イーナと一緒にお風呂に入れないかなぁ?」と、イーナ。今日水族館でテレーゼに買ってもらったジンベエザメのぬいぐるみに、早速名前を付けて可愛がるイーナである。
「ワーちゃん」とは「ワールファイ」(ドイツ語でジンベエザメのこと)に因んだ名前であるが、これは滑舌が成長途上中のイーナに、発音で舌を噛まないようにテレーゼが提案したもので、他には、水族館のジンベエザメに代々付けられる名前に因んで「ユウちゃん」が候補だった。
イーナはドイツ語に因んだ、ワーちゃんという呼び名が気に入ったようだ。あと、イーナの中ではワーちゃんは女の子らしい。
「流石にワーちゃんが温泉のお湯で煮えてしまうから、止めたほうが良いわね」と、テレーゼ。ぬいぐるみの中の詰め物が痛んでしまうことを、イーナに解りやすいように伝えるテレーゼである。
「そっか・・・煮えちゃったら可哀想だから、ワーちゃんはお部屋でお留守番しててね。今日はテレーゼお姉ちゃんの身体をごしごしするんだもん!イーナ、頑張るの♪」と、イーナ。
「テレーゼ姉さん、アタシも背中を流すからな!イーナ、半分ずつだぞ!」と、テレーゼのそばにいたアデリナ。彼女も、テレーゼの背中を流す気マンマンのようだ。
「2人ともありがとうね」(イーナ、お母さんの分もテレーゼさんを洗ってあげてね)(うん!ティアナお母さんの分まで、イーナ頑張るの♪)と、テレーゼ、ティアナ、イーナ。
テレーゼの背中を流してくれたイーナとアデリナは、2人で髪と身体を洗って、湯船でテレーゼのそばに寄ってきた。
「2人とも、今日は泳がないの?」「明日からみんなで一緒にお風呂に入ることができなくなるから、今日はテレーゼ姉さんと一緒にいたいんだ」「イーナも!」と、テレーゼ、アデリナ、イーナ。
「私も姉さんと一緒にいる」「みんな、ずるいです!私もテレーゼお姉さんと温泉を楽しみたいです!」と、ヘレナとカトリナもテレーゼたちのそばに近寄ってきた。
「みんな、そんなにみんなで一緒に入る温泉が気に入ったの?」「温泉もだけど、それよりもみんなで一緒に風呂に入るのが良いんだよ」「アデリナに同意」「みんなと一緒、イーナ楽しいな♪」「みんなと同意見です。テレーゼお姉さん、私たちギルドの依頼を頑張りますから、いつかみんなで入れるお風呂を作りましょう!」(もし完成したら、今以上に毎日お風呂が楽しくなりますね。テレーゼさん、私からもぜひお願いします)と、テレーゼ、アデリナ、ヘレナ、イーナ、カトリナ、ティアナ。
(浴槽を作る材質や建物さえどうにかすれば、できなくはないわね・・・可愛い妹たちのために、私が何とかしてみようかしら・・・)(テレーゼさん、その計画、凄く期待していますよ)「テレーゼお姉ちゃん、お風呂できそうなの?イーナすごくうれしいな♪」テレーゼが思索を巡らしていたことが、心の繋がりのあるティアナやイーナも知るところとなり、イーナの口から残りの3人にも伝わる。
「テレーゼ姉さん、風呂作りはアタシも頑張るから、何でも言ってくれ!」「私も頑張る!」「テレーゼお姉さん、本当にできそうなんですか?流石です」と、アデリナ、ヘレナ、カトリナ。
「今日明日中じゃないけど、土魔法で浴槽を作って、建物は風魔法で自宅近くの森の木を切って乾燥させてから大工さんに頼めば良いかな。
但し、全員で入れるくらい大きなお風呂って、お湯の確保をどうしようかしら?水道を引いて魔法で沸かすか、いっそのこと私が全部魔法で賄うのも手よね・・・
排水は施術室の床に排水管が通ってるから、勾配に注意してそこまで排水管を繋げば、さほど難しくないわね。
最後に、これだけではシャワーを使ったり洗面器にお湯を溜めることができないから、プロパンガスで使えるガス瞬間湯沸器とガスボンベを買ってきて設置すれば、温泉じゃないけど割とすぐにできると思うわ。
灯りは全員光魔法を使えるから、これは問題ないわね」と、テレーゼ。大雑把ではあるが、計画が頭の中でまとまりつつあるようだ。
「やっぱりテレーゼ姉さん、ホント凄いよ!難しいことはよく解らないけど、建物も土魔法で作れないのかな?」と、アデリナ。やはりいざというときの頭の回転の速さは、姉妹の中でもテレーゼと同等以上に抜きん出ている。
「それも考えたんだけど、建物ほど大きいものになると、できなくはないかも知れないけど、何かの理由で崩れてしまったら、みんなが生き埋めになりそうで怖いのよ」「そうか・・・今日見た土に埋まった鳥居?みたいに、みんなが埋まってしまったら怖いもんな・・・何にしても姉さん1人だけに絶対苦労させないからな」「アデリナ、ありがとう」と、テレーゼとアデリナ。温泉入浴中に新しいお風呂のことを考えるというのも、何か変な話であるが、この話は、家庭菜園や将来的には耕種部門以外も視野に入れた農場と並んで、なるべく早く形にしたいと思うテレーゼである。
賑やかな露天風呂の入浴が終わって、夕食に。昨日女将さんから聞いていたように、島に隣接する市にある酒蔵の高級芋焼酎と、魚介類の肴が用意された。また、イーナの夕食は、何とお子様ランチ仕様になっていた。ハンバーグや、爪楊枝の日の丸の旗が立った海鮮ちらし寿司や、乳酸菌飲料や、デザートのプリンなどにイーナは大喜びだった。旗はイーナがいたく気に入っていたので、女将さんに断りを入れてイーナにプレゼントした。
「テレーゼ姉さん。今日買った切子?使っても良いかな?」と、アデリナ。
テレーゼは包装を解いて、2つのお猪口とも魔法で消毒を行ってから、赤いお猪口をアデリナに渡したところ、「姉さん、お酒を注がせてくれ」と、テレーゼに切子を渡してお酌をしてくれた。
そのあと、カトリナとヘレナからも青いお猪口でお酌をしてもらった。
「みんな、ありがとう」と、テレーゼは3人にお礼を言う。
酒は年齢や性別相応以上には強いテレーゼ(元々の素質もあるが、前職の懇親会で彼女の出身地を知る職場の同僚から、向こうの出身だからお酒は強いだろうと勧められることが何かと多く、その結果、相当に飲酒を鍛えられたことによる)であるが、妹たちからのお酌はとても嬉しくて、二日酔いにはならないだろうが、普段よりも早く気持ち良く酔いそうだった・・・
翌朝、テレーゼたちは温泉宿を後にした。また予定が合えば、ぜひ姉妹全員で泊まりたいと強く感じさせてくれた宿だった。
島のカーフェリー乗り場の手前にある自動車料金所で運賃を支払い、フェリーに乗る。15分ほどの船旅の後、対岸の港に着いた。フェリーと言えば、今回の観光では合計4回乗船したが、偶然ながら全て違う船だった。最後に乗船した船は愛称に妖精の名を冠されたあと1隻の電気推進船で、これで現在運航されている4隻全てに乗船したことになる。
船を下りた後、新幹線の始発&終点になっている駅まで向かう。駅周辺には駐車場がたくさんあるので、平日であれば車を停められないことがほぼないのが有り難い。
「テレーゼ姉さんが選んでくれた腕時計?猫の瞳よりもよっぽど確実だよ!大事に使うから!」
「テレーゼお姉さん、この腕時計は、みんなお揃いで可愛いだけでなく、冒険者の仕事でも役に立つなんて、本当に素敵です」
「アデリナ・・・流石に猫の瞳よりは腕時計の方が正確だと思うけど、いざというときに、知っていたら役に立つかも知れないわよ。知っていることが大切なことって確実にあるものよ」
「姉さんに同意。以前教えてもらった活法と同じ。猫の瞳で時を知る方法は、必ず役に立つと思う。ところで姉さん、私の服、姉さんに選んで欲しい」
「イーナのお洋服も、テレーゼお姉ちゃんが選んでくれるとうれしいな♪」
(テレーゼさんの、何かを選ぶセンスって間違いないですから。それにお姉さんが自分のために選んでくれたということが、私たちにはこの上なく嬉しいんですよ)と、アデリナ、カトリナ、テレーゼ、ヘレナ、イーナ、ティアナ。アデリナは、腕時計に対して、昨日一生懸命のぞき込んだ猫の瞳以上の有用性を実感しているようだ。
駅ビルの中で、妹たちの他所行きの服や、腕時計を購入した。妹たちは、全員自分で服を選ぶよりも、テレーゼに選んでもらうことを強く望んでいたので、頑張って選ぶことにする。因みに腕時計は、10気圧防水かつ耐衝撃性に優れた、全員お揃いのソーラー式デジタル時計にした。日本とセフィロトの時差は体感でほぼゼロなのと、アナログ式よりも解りやすく使いやすいと思ったからである。他所行き用の洋服と靴と帽子を選び、次にアンナの家とギルドへのお土産として、地元名物の軽羹詰め合わせを購入した。また折角なので、同じ物を姉妹用にも購入した。
あと、日本初のストリートピアノが2台設置されている、電車で1駅離れた商店街に行くことも考えたが、流石に2日間一杯はしゃいでいたイーナにあまり無理をさせたくなかったため、今回は見送ることにした。焦らなくてもまたみんなでショッピングなどの折りに遊びに行く機会はあるだろう。
帰宅途中のドライブスルーの牛丼屋で、妹たちが今まで食べたことがない牛丼を汁物と一緒に人数分購入したあと、最後にホームセンターで農具、肥料、リヤカー、唐芋の苗を購入した。妹たちには旅行前夜に、近々農業を行いたいということを伝えていたのだが、全面的に賛成してくれていた。
リヤカーは組み立て式だったので、2列目と3列目の片側の座席を倒して積み込み、箱のまま持ち帰ることにする。
唐芋に関しては、地元の特産品とも言える有力な地野菜であり、加えて塊根(から生えた苗)で増殖するいわば親のクローンであるため、一度購入すれば基本的に再度の苗購入は不要であるのが大きい。加えてセフィロトには存在しない「甘い芋」という、いわばイチゴと同じくデザートとして重宝される野菜であるため十分需要は期待できる。但し、今は時期的に植え付け時期よりも遅いため今年は苗の入手を諦めていたのだが、苗が屋外の売り場に運良く1束(10本)だけ残っていたので、迷わず一緒に購入することにした。
また、同じホームセンターにて、元祖プレミアム芋焼酎をギルドと姉妹用に2本ずつ購入した(他都道府県であればまず考えられない話ではあるが、他の芋焼酎と同様に価格の上乗せなしの金額で売られていた)。
作者補足:参考までに、芋焼酎の原料となる唐芋と青果用の唐芋は基本的に品種が違う。例えば、芋焼酎原料用唐芋の代表的な品種である「黄金千貫」は、現在青果用として出回っている唐芋に比べると甘味がやや少ない(但し、現在でも青果用として用いられることは普通にある)。逆に、青果用の唐芋を焼酎の原料に使うことは比較的例が多く、フルーティな芋焼酎に仕上がることが多いが、芋焼酎に使うには前述の原料用の唐芋に比べて比較的割高なため、総じてグレードの高い個性的な芋焼酎に使われることが多い。
買い物を終えて、自宅に戻ってきた。車から妹たちが降りるとき、全員かなり名残惜しそうにしていた。
「また、みんなで遊びに行きましょう。今回は会えなかったけど、次回は私の実家の両親を紹介するから」と、テレーゼ。
「姉さん本当?姉さんのお父さんとお母さんにぜひ会ってみたい」「イーナも会いたいの♪」「アタシも、テレーゼ姉さんの父さん母さんに会うのが楽しみだよ」「テレーゼお姉さんのご両親ってどんな人たちですか?」(テレーゼさんの親御さんに私のことをお話したほうが良いんでしょうか?)と、ヘレナ、イーナ、アデリナ、カトリナ、ティアナ。
「両親は、まだドイツから帰国していないけど、今度会うときに、私の大切な妹たちを紹介するわ。もちろんティアナ、あなたもよ。あと、娘の私から見て、悪い人たちじゃないと思うわ」(ありがとうございます、テレーゼさん・・・)と、テレーゼ&ティアナ。
妹たちは、テレーゼと一生物の楽しい思い出を一杯作った日本に再度来られることや、彼女が全員を彼女の両親に紹介すると約束してくれたことが、妹たちには、彼女が自分たちを心底大切に思ってくれていることが実感できて、とても嬉しかったようだ。
(そういえば、日本に来る前に、大学の同級生に地野菜の種苗を頼んでいたのは届いたかしら?)
そう思いつつ、勝手口に妹たちと一緒に向かうと、勝手口そばの人目に付きにくい日陰に、段ボール箱が置き配されていた。箱の伝票を見ると、間違いなく注文した地野菜の種苗である。注文品に苗が入っていることを考慮して、どうやら速達便で送ってくれたようだ。
「テレーゼお姉さん、それがさっき話していた野菜の種と苗ですか?」と、カトリナ。
「ええ、そうよ、明日はゆっくり休んで、明後日から早速野菜の栽培を試してみましょう」「美味しい野菜、イーナ楽しみなの♪」「テレーゼ姉さん、アタシに手伝えることがあったら何でも言ってくれ」「姉さん、私も頑張る」(日本のような美味しい野菜や果物が食べられるのは、とても楽しみです・・・)と、テレーゼ、イーナ、アデリナ、ヘレナ、ティアナ。
「みんな、本当にありがとう・・・」
妹たちは、全員テレーゼの新しい取り組みを応援してくれて、また、一緒に手伝ってくれるようだ。そんな健気で優しい妹たちの気持ちが心底嬉しく、また、心強いと感じるテレーゼである。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
テレーゼは、妹たちのために、新しくお風呂を作ることにしました。また、彼女が観光旅行前に考えていた農業についても、旅行前に注文していた種苗が届いたため、こちらの計画も進めていきます。そして、テレーゼが、セフィロトで強固な縁を結んだ妹たちを心底大切に思っていることを、改めて実感できたことは、妹たちにとって何よりも嬉しいことだったようです。
この話で第7章は終わりとなります。少し早いですが、年内の投稿はこれで終わりです。
ここまでの間、遅筆にも関わらず、熱心に読んで下さる方々の存在はとても心強く、本当にありがたく思っています。話を綴るうえで何よりも励みになります。
次章では、旅行のお土産を持ってテレーゼ姉妹がギルドや友人である母娘宅を訪問するのですが、母娘がいろいろ難儀していることを知り、テレーゼたちが問題を解決する話がメインとなります。あと、テレーゼ姉妹、特にイーナが登場を切望していた人物?の登場や、農業に関して、テレーゼが持ち前の知見を基に実験を行う話など盛りだくさんの内容で、ここまでお付き合い下さった方々であれば、きっと楽しんでいただけるのでは、と思っています。
次章も一生懸命頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。




