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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
プロローグ:「知らない場所」と若返り!?
3/84

プロローグ3:私、一体どうなってるの!?

 まず最初に・・・この話以降、作者は覚悟を決めて、登場人物に対する「思い入れ」に関しての自重を完全に外しています。


 テレーゼの身に、あまりにも不可解なことが発生します。完全に内面的かつ重く濃い話ですが、彼女を語る上で外せないと判断して投稿します。「怪異」に戸惑いながらも自らを鼓舞し、現状に膝を屈することなく前を向く、そんな赤裸々な彼女の描写には、戸惑いすら感じられる方がいるかも知れませんが、平にご容赦下さい。


 なお、この話以降は、基本的には、登場人物に甘い話が多くなると思いますのでご理解下さると幸いです。


 6月7日 元々の話を2分割して、両方を第1章からプロローグに移し替えました。これは前半部分になります。

 昨夜から「知らない場所」に自分がいる。

 流石にこれらが夢だった・・・という現実逃避は、難局打開のための手段を何ら生み出さない。

 逃げたいのなら布団を頭から被って、何なら飢えて息絶えるまでそのままでいれば良いのかも知れないが、流石にそこまで自分が落ちぶれたつもりは一切ない。

 昨夜までは、「知らない場所」の人たちに会えることを、むしろ楽しみとすら感じていたのに、普段では考えられない自分自身の取り乱しぶりに対し、(ふざけるな!!)というくらいの腹立たしさすらある。

 そもそも、今まで斯様に惰弱であれば、激務でも十二分に食べて行けた前職を転職して、接骨院開業などという、己の技量を世に問う勝負師に近しい厳しい稼業に身を投じるなど、夢想だにしなかったであろう。


 これ以上ないレベルの怪異が自分に重ねて降りかかるという、理不尽さにも程がある状況に少なからず唖然としたテレーゼであるが、今まで自分がどんなに格好悪くても、積み重ねてきた人生への自負に加えて、朝食を済ませてお腹がいっぱいになったことで、テレーゼは「自分の身に降りかかった理解不能な数々の怪異の全て」を、何とか受け容れられる落ち着きを取り戻しつつあった。






 今回の事の発端といえる、テレーゼが自分の身体の変化を自覚したのは、自室で目が覚めた後、起き上がるときの身体が「もの凄く軽い」ことを実感したことである。

 もっと言えば、寝ている間に古い身体を交換して、新しい身体に生まれ変わったかのような感覚すらある。


 彼女の年齢は現在丁度50歳である。


 腹蔵なく彼女の略歴を再掲させていただくと、彼女が四年制大学卒業後、全国勤務の総合職の職場で正確には20年間勤務、そこを退職後は専門学校3年間+独立前の修行的期間3年間(正確には、専門学校入学直後の国家資格取得前からアルバイトをさせてもらっていたため、ほぼ6年間の勤務である)+独立後2年余り経過(まだ51歳の誕生日は迎えていない)である。


 たとえ前職の勤務期間を伏せていたとしても、曲がりなりにも転職可能な蓄えを得るために要した期間を考慮すると、ここまでプロローグを読んで下さった賢明な諸兄であれば、彼女が相応の年齢であることは、自ずと察することが出来るというものであろう。


 彼女自身の正直な気持ちとしては、できるならば、年齢はあまり公にしたくないと思う今日この頃である。


 あと、彼女の婚姻歴であるが、27歳で恋愛結婚したものの、5年後に相手を急な病により喪ってしまう。

 2人の間には子供がおらず(転勤絡みで夫婦で一緒に暮らせた期間が、実質半分以下だったことによる)再婚もしていないため、それ以来独身である。


 それ故に逆に考えれば、平均寿命的にはほぼ折り返しの時期に、残りの人生全てを賭けるような転職が可能だったとも言える。


 柔道整復師としての業務は身体を動かして患者様を施術するという体力勝負の面が多々あるため、日頃から時間があればジム通いをするとか、(昨夜は無理だったが)極力毎日夕食後にウォーキングや体操をするとか、規則的な食事に加えて効果が少しでもあるとされるサプリメントや栄養剤やプロテインなどを取り寄せて口にするといった、人並み以上に涙ぐましい努力で体力・筋力の維持に努めている。


 しかし、どうしても寄る年波には抗えず、少しずつ全盛期に比べると落ちていることを痛感させられていた。


 昨夜も業務終了後、就寝するまで相当に疲労しており、翌朝は疲労が少なからず残ることを覚悟していた彼女であるが・・・


 そんな彼女は、つい今し方、久しく味わうことのなかった、体力・気力充実の状態で起床した。


 何気なく手に目が行くが、すごく血色が良く瑞々しい。


 常日頃、患者様各人への施術前後に頻回実施する手指消毒が、「さかむけ」や「あかぎれ」といった手荒れ発生の原因となり、それが着ている白衣に引っ掛かり、チクチク嫌な思いをすることに地味に悩まされていた。

 実のところ、1日に多いときは数十回も、手洗いやアルコール消毒をやっていれば、接骨院の時間外などに高級ハンドクリームを塗っていても、手指のケアがまるで追いつかず役に立たないことは自明である。


 そんな自分の手が全く荒れておらず、というより一夜で手荒れが完治?して、まるで自分の手ではないみたいである。

 中学の国語の教科書に載っていた、石川啄木が「一握の砂」で詠んだ有名な短歌ではないが、思わずじっと手を二度見したくらいである。


 ここまでは、極論すれば、「元気になった」「手荒れが治った」などと、無理矢理言い切れる話だった。

 ところが、まだまだ甘かった。

 テレーゼに降り掛かった身体的変化は、こんな生易しいモノではなかった。






 顔を洗うため、寝間着のまま、自室横にある洗面所に行き、洗面台に設置されている鏡を確認すると、どう少なく見積もっても、30歳程度は若返ったような(ぶっちゃけ、18~20歳と言っても普通に信じてもらえるような)瑞々しいすっぴんの顔がそこに映っていた。目尻とかにあった、地味に気にしていたしわなんて欠片もない。


 髪は黒々かつ艶々としており、「天使の輪」まで光り輝いている。

 髪の状態は色艶に比例して当然ながら枝毛や切れ毛などが皆無で、何なら洗髪料のCMに出てくる、髪の手入れに余念のない女優とかにすら、現状で普通に勝てそうである。


 極めつけは、鏡に映る胸部が昨日までよりも明らかに「豊か」になっていた。

 これには年相応に社会の荒波に揉まれ、常在戦場、冷静沈着の心構えをモットーとするテレーゼも心底驚愕した。


 蛇足ながら前述のモットーであるが、これは、どんな容態の患者様の前でも、取り乱すようなことがあってはならず、あまつさえ接骨院の院長を名乗っているのだから、できて当たり前のレベルまで精進したい、という彼女の強い願いである。


 というか、若返るのは百歩譲って認めるにしても、である。

 (何で胸が、どこかのグラビア女優以上(接骨院の待合スペースに置いている雑誌の表紙に載っていた。)に大きくなるのよ・・・)と、自分の身体のことなのに、突っ込みどころ満載であった。

 因みに、昨日までの状態は、加齢で若干小さくなったとはいえ、同年代の友人知人が羨むレベルで(母方の遺伝により)「大きかった」・・・


 接骨院の待合スペースの雑誌などについて補足する、施術者が院長のテレーゼ1人であるため、患者様の待ち時間が思った以上に長くなることがあり、日刊紙や男性・女性向け週刊誌、子供向けのコミック雑誌や単行本、幼児向けの絵本などがあると望ましいと個人的に思っており、購入している。

 患者様が待ち時間のストレスが軽減し、少しでもリラックスした状態で施術を受けてもらえれば、施術効果の向上が見込めるからである。


 閑話休題。「知らない場所」にやってきたからなのか、昨夜接骨院の外で見た謎の光線が身体に当たって作用したからなのか、その理由はサッパリ不明である。

 もし若返りの理由やメカニズムが再現可能なレベルで解明できれば、

 ・「「知らない場所」若返りツアー」

 ・「謎の光線美容法」

 とかで一儲けできないだろうか?などと、あまりにも現実逃避的な下らないことを、つい考えてしまったテレーゼである。


 さし当たっては、患者様や友人知人や特に両親に会ったとき本人だと解ってもらえるだろうか?ということが最大の問題だと思うのだが、どうしたものだろうか?


 などと思ったものの、現状に関しては、自分ではどうしようもないことなので、その時になってから考えようとテレーゼは割り切ることにした。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

 次話は、テレーゼが現状を受け容れて「知らない場所」での行動を開始します。

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