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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第6章:魔法の練習と旅行準備
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第4話:旅行&農業の準備と試着会

 旅行の宿泊先に温泉宿を選んだテレーゼは、妹たちにそれを提案します。

 その後、新しい取り組みに関する多少の思索を経て、イーナが洋服の試着会を行います。


 11月10日 農業関連の記述を若干追加しました。

 食事が終わってから、テレーゼは今度の観光について、温泉宿への宿泊を考えていることを話した。丁度テレビでも、芸能人が出演する旅番組の中で、テレーゼが宿の候補として考えている地元の温泉旅館の紹介をやっていたため、話が早かった。


 特にアデリナとイーナは、テレビに出て来た、海が見える泳げるくらいの大きさの温泉というところに強く興味を惹かれたらしく、2人して温泉で泳ぐということで話が盛り上がっていた。


 カトリナは、温泉に入浴することで美容効果が得られるというところに興味津々で、ヘレナは海の幸をふんだんに採り入れた料理が出るというところに目が釘付けになっていた(食事に関しては、ティアナも相当楽しみにしているようだ)。


 テレビ番組の紹介があまりにもインパクトが大きかったためか、宿に関しては誰からも異論が出ることなく紹介されていたところに決まった。早速パソコンで宿の予約を行うと、シーズンオフの平日だったからなのか、幸いにも明日から2泊3日で5人部屋を押さえることができた。


 もちろんテレビ番組で紹介されていた海が見える貸し切り温泉付きで、アデリナとイーナがもの凄く喜んだのは言うまでもない。


 予約直後に温泉宿から電話があり、飛び込みの予約が取れた理由が判明した。何でも宿泊する筈だった団体客の子供さんがコロナで入院してしまい、今日になってキャンセルを連絡してきたらしい。話を聞くと、その団体客に出す予定だった上質な料理が宙に浮いた状態らしく、宿泊中はその料理を出させてもらえないかという相談だったので、そのまま自分たちに出してもらえるよう、温泉宿の人と打ち合わせを行い電話を終える。


 差額不要で海の幸尽くしの上質な料理が出るということを妹たちに伝えると、良い温泉宿を予約できたことも含めて全員が大喜びだった。本当に幸先の良い話である。






 テレーゼは宿泊先の説明を終えた後、ギルドで手に入れた調査の報酬を、両替魔法を使って日本円に両替することにした。魔力は必要になるものの、通常の両替のように両替手数料で目減りするようなことはなく、残ったお金はまたセフィロトのお金に戻せば良いのだから気が楽である。


 加えて、受け取った報酬が、姉妹全員で数日観光を行って、その後2~3ヶ月は慌ててギルドの依頼を受けなくても良さそうなのは本当に有り難い。太っ腹なマルクトの街の領主や、それと同じ以上に、報酬の増額を即決してくれたマーヤや、ツンフトマイスター(ギルドマスター)のジークリットといった、ギルドの人たちに感謝である。


 しかし、姉妹全員で食べていく為の余裕は少しでも多い方が良いので、テレーゼは食費の手助けに、自宅の裏庭で家庭菜園というか、ちょっとした農場を行うことを考えている。大学で農学を専攻しており、父方祖父の果樹園にも時々携わっていたこともあって、栽培も経営も一通り心得はある。


 テレーゼがセフィロトで柔道整復師としての実力をあまり公にできない(第2章第2話参照)という理由から、それを業としたお金稼ぎが困難な現状では、新しい収入源として日本で改良された野菜(特に果菜)の出荷は、競合相手が少なく、かなり期待できるはずである。


 さし当たっては、日々の食事で使う野菜を賄うために、種や肥料、農具などを日本で大量に仕入れたいと思っている。農薬は極力使いたくないので、成長魔法を使って播種した当日に収穫すれば、魔力は消費するものの、農作物の病気や食害はほぼ完封できるうえ、魔法の効果で品質は目に見えて向上する。


 尤も、良いことばかりではない。今の日本で売られている種苗の大半はF1(エフワン)と呼ばれる交雑種である。


 専門的な話になるが、このF1は、動植物の交雑を行う上で有名な「雑種強勢」(同一種内の特定の両親間の交雑により得られた一代雑種(F1) は、両親の特性よりも優れた形質を示す)という現象を利用して生み出されたものである。


 そのため、買ってきた種苗を育てて収穫して、その種を採って蒔いても、メンデルの分離の法則(優勢と劣勢の形質が現れる割合はおよそ3:1になるという、中学3年の理科で習う事柄である。なお、「優れた形質」が、遺伝の「優勢」とは限らないので注意)により、売られている種苗の形質は永続せず、種苗の交配に使った親の形質が発現する(いわゆる「先祖返り」してしまう)ことが多いため、2回目以降に収穫した野菜の品質にバラツキが生じる。


 種苗の初期投資はともかくとして、継続的な農業を営むためには、毎回購入を余儀なくされるF1種苗ではなく、なるべく原種に近い形質が一定した種苗を選んで導入する必要があるだろう。また原種ではないものの、イチゴのような親株から子株を殖やすタイプの種苗は、いわば親のクローンであり、親株の形質がそのまま子株に受け継がれるので、これも有力な候補になるだろう(候補と言えば、親芋や親芋から出た苗で増える芋類も時期が合えば考えたいが、残念ながら日本での植え付け時期は終わっている頃で種苗の入手が難しいので、今後販売されていたら導入したいと思う)。


 前述のイチゴや芋類以外では、日本各地で「地野菜」と呼ばれているものの多くがこれに当たるが、基本的には地域農業振興の観点から、地域外の人への種苗頒布を行っていない。


 但し、大学時代の同じ学部の同級生が実家を継いで農業を営んでいるので、その子を頼ろうと思う。出荷するにしてもセフィロトだけだし、加えて当面は、成長魔法の熟練度の向上を目的とした家庭菜園だけ行う予定なので、彼女に迷惑を掛けることもないだろう。テレーゼ的に大体の方針が固まったので、妹たち全員に近々農業を始めたい旨を伝えたところ、全員が賛成してくれた。


 そこで、早速同級生の農園のホームページから、果菜を中心に数種類の地野菜について種苗の手配をメールでお願いして、インターネット銀行で代金の支払いを行った。種苗が届いたら早速家庭菜園を行ってみたいと思う。






 テレーゼの思索が一段落した頃に、「テレーゼお姉ちゃん、明日から着ていくお洋服を着てみたいんだけど、いいかな?」と、イーナが洋服の試着をおねだりしてきた。


 もちろん賛成である。明日の旅行当日に、慣れない洋服で手間取るよりは事前に練習しておいたほうがずっと良いし、何よりイーナの気持ちを尊重してあげたかった。


 イーナがワンピースを着るのは初めてなので、姿見がある自室でテレーゼが手伝ってあげる。テレーゼの見立て通り、柔らかい色のワンピースは、イーナの可愛らしさをより引き立てている。


 「イーナ、お洋服似合う?」

 「よく似合っていて可愛いわ。明日はその洋服を着て遊びに行きましょう」

 「テレーゼさん、イーナにぴったりの服を用意して下さってありがとうございます。ただ、娘が少し羨ましいです・・・」

 「イーナ似合ってる?テレーゼお姉ちゃん、ティアナお母さん、ありがとう。うれしいな、えへへ・・・」

 と、イーナ、テレーゼ、ティアナ。ティアナは娘の洋服姿が羨ましいようだ。


 「ティアナ、明日は私も妹たちみたいに他所行きの服を着るから、一緒に服やアクセサリーを選んでくれる?ティアナと私は一心同体なんだから、ティアナもファッションを楽しみましょう」と、テレーゼ。


 「テレーゼさん、本当にありがとうございます。テレーゼさんと一緒にいると、姉というか母親にいつも護られている感じがして、とても嬉しくて心が暖かいです・・・」


 「私とティアナって人間の年齢で10歳も離れていないとは思うけど、そう言ってもらえると嬉しいわ。これからも遠慮しないで自分がしたいことや思ったことを教えて欲しいな。あなただって、私の大切な妹なんだから、その想いは絶対に無下にはしないわ」


 「私、テレーゼさんと一緒になれて本当に良かったです・・・」


 「イーナ、自分でこのお洋服を着られるようになりたいな♪」と、イーナが目標を口にする。以前ヘレナが買ってきてくれた普段着のほうは、間もなく1人で着られるようになりそうなので、そう遠い話ではない筈である。


 3人が居間に戻ろうとすると、アデリナ、カトリナ、ヘレナも部屋に入ってきた。


 「イーナ、可愛いな。カトリナはどこかのご令嬢様だったけど、同じようにお嬢様という感じだな」

 「確かに、私がテレーゼお姉さんにもらった服とどことなく似ていますね。イーナ、よく似合ってますよ」

 「流石姉さん、イーナの雰囲気にぴったり」と、アデリナ、カトリナ、ヘレナ。


 「お姉ちゃんたち、ありがとう♪イーナ、明日からのお出かけが楽しみなの♪」と、イーナ。


 それからしばらく賑やかな試着会は続き、他の3人も自分の洋服を着て試着会に加わった。


 (旅行や遠足は前日の夜が一番楽しいと言うけれど・・・もし妹たちが寝不足とかになっていたら、回復魔法を使ったほうが良いかも知れないわね。というか、逆に私が羽目を外して、回復魔法のお世話になったら本末転倒だわ・・・)などと、妹たちの試着会を一緒に楽しみながら、明日からの観光のことに思いを巡らすテレーゼである。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 旅行に関しては、シーズンオフとは言っても温泉宿があっさりと決まり、幸先の良い話で何よりです(先に予約を入れていた団体客はお気の毒でしたが・・・)。


 農業は第1章にもあるように、自然が好きなテレーゼが、セフィロトにやってきた当初から考えていたことですが、作者の分身かつ愛娘のテレーゼの万能ぶりには、作者も本当にびっくりです。

 基本的に、作者の経験に基づいたことを、テレーゼには数多く受け継いでもらっているのですが、作者がセフィロトに行ってもここまでできるかといえば、正直自信がありませんw


 そして、イーナの試着会は、姉と母親の全員にとって本当に可愛らしく、作中でもありましたが、他の姉たちも試着会に飛び入り参加するくらいに、明日からの旅行のテンションを爆上げするものでした。


 これで第6章は終わりです。次章は6姉妹全員で、テレーゼの故郷で観光を満喫する話がメインになります。作者的には、拙いながらも相当に内容の濃い話に仕上げていますので、ここまでお付き合い下さった皆様であれば、次章もきっと楽しんでいただけるものと自負しております。


 次章も一生懸命頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

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