第2話:魔法の練習
今日初めて魔法が使えるようになったアデリナとヘレナは、テレーゼの合成魔法に強い衝撃を受けたと同時に、自分も使えるようになりたいと努力します。そしてその気持ちはカトリナも同じだったようです。
10月27日 一部句読点などを修正しました。
イーナが攻撃魔法の範囲防御を発動させることに成功したことを見届けてから、今度はテレーゼは初めて魔法を本格的に練習するアデリナとヘレナ、そしてサポートに付いていたカトリナのところにイーナと一緒に向かう。
カトリナは、アデリナとヘレナの2人に、基本的には、自分が使いたい属性の魔法がやる気が出て覚えやすいことを伝えていたため、アデリナは火魔法を、ヘレナは水魔法を練習していた。2人の当面の目標としては、テレーゼが見本で見せた火炎放射魔法と吹雪魔法を、それぞれ使えるようになりたいようだ。そして、カトリナは姉のテレーゼ以外には、当世に使い手がいない飛行魔法に強い憧憬を抱いたようだ。
テレーゼは、まずアデリナの魔法発動の様子を見ていたが、今ひとつイメージが固め切れていないようだったので、自宅裏の森から枯れた木の枝と落ち葉を拾ってきて実際に焚き火をしてアデリナに見せた。
「テレーゼ姉さん、ありがとう。ちょっとやってみるよ」
アデリナはそう言って、気持ちを集中させた後で「火!」と唱えると、杖の先から小さな火球が出た。
次に「炎で消毒だ!」と唱えると、風魔法を併用するテレーゼの火炎放射魔法ほどではないが、杖の先から十分魔物への攻撃に使えそうな威力の炎が出た。魔物への攻撃以外にも、素材を回収した後の焼却や現場の消毒にも十分使えるだろう。
加えてアデリナには、詠唱短縮の才能があるようだ。
その後、アデリナは風魔法を練習していたが、火魔法ほど簡単ではなかったようだ。それでも練習を繰り返して風魔法に成功すると、気合いを込めて「紅蓮の炎で燃え尽きろ!」と唱えると、テレーゼの火炎放射魔法に引けを取らない威力の炎が出た。
「できた!姉さんのお陰だよ!ホントありがとう!」そう言ってアデリナはテレーゼに満面の笑みを見せてくれた。今日まで魔法を使ったことがなかったことで蓄積された魔力が潤沢なのか、魔法を連発してもまだ少し余裕があるようだが、あまり無理しないように彼女に伝えた。
「姉さん、私もやってみる」
そう言って、ヘレナが「雪!」と唱えると、杖の先から雪が出た。
イメージは、先程テレーゼが使った温度を下げた水魔法が雪や氷になる、というイメージが強く印象に残っていたので、改めてテレーゼが実演しなくても良いようである。
次に風魔法を成功させた後、気持ちを集中させて「吹雪よ、吹き荒れろ!」と唱えると、テレーゼが使ったような吹雪魔法に成功した。こちらはテレーゼと同じく2つの魔法を併用するという術理で発動しているので、こちらも魔物への使用には十分であろう。あとヘレナも何気に詠唱短縮ができているところに、妹たちの才能とやる気が強く感じられる。
雪が降らないセフィロトでは当然雪という単語もないため、テレーゼがヘレナに雪という単語を教えた。そのとき「姉さんのお母さんの言葉では何というの?」とヘレナに聞かれたのだが、詠唱で使わないようにという話をした。
流石にドイツ語で「シュネー」という単語を使うのは、昔のドイツからセフィロトにやってきた女性の末裔が、マルクトの街のギルドマスターであるため、後述の吹雪を意味するドイツ語の「シュネーシュトゥルム」という単語を含めて、テレーゼの出自を悟られかねないという理由である。
もっとも、ヘレナ的には「姉さんが教えてくれた、誰も知らない言葉のほうがテンションが上がる」とのことで、実際に威力もそっちのほうが目に見えて上がったため、「姉妹だけしかいないのなら使っても良いわ」というテレーゼの言葉に、普段表情があまり変わらないヘレナが凄く嬉しそうにしていた。
敵に吹雪をぶつけてもダメージは少ないんじゃないの?と思う人もいるかも知れないが、テレーゼは特に攻撃のための下準備として侮れない効果を持つと思っている。
変温動物的な特性を持つ蛇や竜や巨大昆虫といった魔物は、温暖なセフィロトでは温度を下げられた途端に動きを鈍らされ、下手をすればそのまま死んでしまうだろう。大型爬虫類である恐竜が絶滅したのが急激な寒冷化が原因だというのは、日本やドイツであれば小学校やグルントシューレで習うレベルの一般常識であろう。
また恒温動物でも、温暖なセフィロトでいきなりの吹雪を受ければ、視界を遮られたり凍えたりして、普段より防御力が落ちることは請け合いである。
攻撃以外にもテレーゼのように雪を製造してかき氷にしたり、強烈な冷気を討伐魔物の冷凍加工品製造に用いたり、家の中で冷気だけを出してクーラー代わりに用いたりと、ヘレナの想像以上に使い所は多いだろう。
蛇足であるが、例えば収獲(この場合「収穫」は誤りである)した水産物を、何も手を加えず丸ごと凍らせただけでも、農林水産省が取りまとめて公表している「水産加工統計調査」における統計上は、れっきとした「加工品」扱いである。
何故なら、加工品製造の大きな目的の1つに保存性を高めるということが含まれており、冷凍させた水産物は「保存性を高めることを目的として、「冷凍」という加工手法を用いて作られた加工品(生鮮冷凍水産物)」という解釈である。
内陸部に主要な街があるセフィロトで殆ど出回っていない水産物を例に挙げたが、セフィロトのロジスティクス(物流の成熟・最適化)が発展途上中であるため、魔力を多く含み滋養強壮に優れる新鮮な魔物の精肉は、常態的な供給不足であり、討伐魔物の冷凍加工品は必ず需要があるはずである。
閑話休題。(それにしても、アデリナが火炎放射魔法でヘレナが吹雪(冷凍)魔法か・・・、感情豊かで燃えるような赤髪のアデリナと、クールで深い碧髪のヘレナがそれぞれの魔法の使い手というのは何か不思議ね・・・)
アデリナとヘレナの好みの魔法を見ていて、性格や外見と使う魔法の好みが一致していることをとても興味深く感じたテレーゼである。
「テレーゼお姉さん、私にも飛行魔法を教えて下さい」と、カトリナ。
そこで、テレーゼは重い物を軽くする無属性魔法で、自分が空中に浮くくらい軽くなったイメージを作り、そこに風魔法で方向性を持たせることで移動ができるという術理の説明を行い、次に自分の身体を無属性魔法で浮かび上がらせる。そして紙を風で飛ばすように、軽くなった自分が風で飛んでいく様子をカトリナに再現して見せた。
あと、浮遊魔法は魔力切れや失敗したときのことを考えて、あまり高く浮き上がらない方が良いとアドバイスする。
カトリナが「我が身よ、空気のように軽くなれ!」と無属性の浮遊魔法を唱えると、その場で彼女の身体が3mほど浮かび上がる。先程のテレーゼの浮遊魔法や、最近イーナたちとテレビで見た、可愛い女の子たちが戦闘開始時に変身するアニメの浮遊シーンが、強く印象に残っていたようだ。
次に風魔法を難なく成功させる。これはカトリナが元々習得済みの魔法なので、あくまでも確認のためである。そして、「軽くなった我が身よ、前に進め!」と、唱えると3mほどの高さまで浮かび上がった彼女が、ゆっくりと50mほど先まで飛んで、そこからUターンしてテレーゼのいるところに戻ってきた。
「テレーゼお姉さん、私、お姉さんの魔法が使えました。凄く嬉しいです・・・」と、カトリナ。元々パーティーの中で魔法を使えていた彼女であるが、セフィロトに存在しない新魔法を使えたことは、彼女の魔法的な才能を強く感じさせる。
(3人とも合成魔法が使えるようになって良かったわ・・・)3人の頑張りに、姉として嬉しさと誇らしさを感じるテレーゼである。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
アデリナ、カトリナ、ヘレナの魔法選択とその習得ぶりは、まさに「好きこそものの上手なれ」を地で行くものです。
あと、水産加工品の分類に関しては、相当昔に作者自身が仕事の関係で調査要綱や手引などを読み込んで学んだことですが、案外忘れないものですね。本文でも触れた「水産加工統計調査」は、「水産物流通調査」という「承認統計調査」(「統計法」に基づき、総務大臣の許可を得て実施する調査)に含まれる3調査のうちの1つで、調査結果は農林水産省のホームページに掲載されていますので参考までに。




