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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第6章:魔法の練習と旅行準備
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第1話:活法と攻撃魔法防御の練習

 ギルドから自宅に戻ってきた6姉妹。

 魔法の練習は、セフィロトの魔法体系についての説明回も兼ねています。

 ギルドから自宅に帰る途中、マルクトの街にある店で、アデリナ、ヘレナ、イーナの3人に魔法使い用の杖を購入して自宅に戻ってきた6姉妹。


 全員が昼食を済ませたあと、テレーゼはジークリットから聞いた、マルクトの街における名前の由来に関して、自らの考察を妹たちに話した。既にティアナとイーナが知っていることと同じ内容である。


 「間違いなく、テレーゼお姉さんの考えた通りのことが事実だと思います。それと私たちの名前は、お姉さんと同じ由来を持っていたんですね」

 「知らなかった・・・姉さんのお母さんが住んでいた場所から、ギルドマスターの祖先がやってきたなんて・・・」

 「テレーゼ姉さんと出逢う前からアタシたちと名前の繋がりがあったのって、何か嬉しいな。但し姉さんの言うように、このことは黙っていたほうが良いな」

 と、カトリナ、ヘレナ、アデリナ。3人とも、自分たちの名前に纏わる知られざる歴史背景に、相当驚いているようだ。






 名前に関しての妹たちへの説明が終わり、気絶をした際に回復する活法の練習を開始する。


 最初にテレーゼがアデリナにやって見せて、次にアデリナがテレーゼに、その後はテレーゼとアデリナの2人が全員の練習相手になった。


 元々それほど難しいものではないため、程なくして全員ができるようになった。


 ところで、練習の最中に、小さな地震があった。妹たちはあまり経験したことがなかった(10年単位でやや久しぶりのことらしい)ようだが、地震大国日本、特に火山性地震が頻発する地域に暮らしていたテレーゼにとって、この程度は問題にもならないモノで、実際のところ人的・物的被害は全くなかった。テレーゼは怖がる妹たちを優しく慰めるのであった。

 





 次に、魔法と攻撃魔法防御の練習を行う。まず、テレーゼは妹たちに、詠唱を唱えることに力を入れるよりも、物事の事象を明確に頭に思い浮かべることの重要性を説いた。

 口頭での説明だけでは妹たちに伝わりにくいと考えたテレーゼは、急遽イメージの参考例や自分が実際に行った中で気付いたポイントなどを紙にまとめ、それをプリンターのスキャン機能で読み込み、コピーをしたものを妹全員に配った。

 但しイーナに関しては、人間になってまだ間もないため、練習時にはテレーゼがマンツーマンで対応することにした。


 具体的なイメージとして、まず物理的に放出する魔法について以下のように説明した。但し、セフィロトの文字がまだ殆ど読めないイーナがいるため、ゆっくり時間を掛けての説明である。

 ・火魔法は、山火事やたき火が燃えているイメージ。

 ・風魔法は、施術室に置いてある扇風機の風が全身に当たるイメージ。

 ・土魔法は、子どもの頃に遊びで使った粘土が形を変えるイメージ。

 ・水魔法は、井戸から水をくみ上げたり、濡れ雑巾を絞るイメージ。

 ・雷魔法は、豪雨のとき落雷が遠くの場所に落ちるイメージ。


 次にそれ以外の魔法の説明である。

 ・光魔法は、夜に家の灯りを点けて周囲が明るくなるイメージ。物理&魔法攻撃強化は、明るくなったことによる安心感で味方が強くなるイメージ。これに関しては詠唱ではなく魔力を込めて唄を歌い、その間は士気を高め続けるバトルソング的な使用方法もある。

 ・闇魔法は、寝る前に部屋の灯りを消して周囲が暗くなるイメージ。敵の弱体化は、暗闇で相手が怯えて弱くなるイメージ。また、イメージ次第では即死系の攻撃魔法にも使えるが、これは事故が怖いため妹たちに今日の練習はしないように伝えた。

 ・回復魔法は、自分や他人の怪我や病気が治っていくイメージ。物理&魔法防御に使うときは、施術室と待合スペースの間に設置された透明なアクリル板の間仕切りが、一瞬で周囲に広がって自分達を護る目に見えない盾のイメージ。植物に用いるときには、作物が生長して実るイメージ。

 ・空間魔法は、みんなで一緒にテレビで見た、大きな物でも楽に入るポケットや、一瞬で他所の場所に行ける扉のイメージ。

 ・無属性魔法は、紛失物発見を強く願ったり、お金を両替したり、魔石に隠蔽魔法の効果をくっつけたり、魔物に仲間になって欲しいと強く願ったり、重い物を動かしやすいように軽くしたり、知らない物の名前や効果を知りたいと強く願うなど、自分が強く願うことを叶えるイメージ。


 3つ目に、テレーゼは、イメージを強化していけば、例えば火+風で火炎放射魔法や爆発魔法に、水+風で濃霧魔法や吹雪魔法や氷魔法に、風+無で飛行魔法に、という内容の「合成魔法」ともいうべき魔法の説明を行った。


 テレーゼ的には、実際に全部の属性の魔法を使ってみて、中でも空間魔法は格段に難しいと感じていた。空間をイメージするので、もし漠然としたイメージで使うと必要な魔力が膨大で、セフィロトに来て強力な魔力を得た彼女であっても、試しに使ったときに前述のイメージが不明瞭で魔力が枯渇しそうになり、相当気分が悪くなったからである。

 以前の日本での買い物の際に使う機会はあったものの、そのときは結局使わなかったのだが、改善のため少しずつ練習を行うようにしている。何れにしても現時点では、空間魔法の練習は妹たちの中で一番魔法が達者なカトリナでも難しいように思えたので、前述の即死系魔法と同じく今日は練習しないように伝える。


 即死系魔法と言えば、先程の地震を魔法で再現して、討伐魔物の生き埋めに使えば同様の結果にはなるが、それを行うと魔物から素材が得られないか、得られても素材が激しく痛んでしまうなど使い所が難しく、テレーゼは当面封印することにした。また、水魔法で大きな水の塊を作り討伐魔物の顔面に貼り付けて窒息させる方法もあるが、魔物を仕留めるのに時間がかかり、その間に魔物の生命力や魔力が急速に枯渇して魔石や素材が目に見えて劣化するため、こちらも当面封印である。


 最後に、これまで例を挙げたイメージはテレーゼが実際使っているものであるが、魔法使いにとって想像力は無限の武器で各人のイメージが違ったとしても当たり前であり、妹たちが違うイメージがしっくり来るのであればそちらを優先するように、何より楽しんで練習するようにと妹全員にアドバイスして説明を終える。






 余談であるが、セフィロトで全属性とは、「火」「風」「土」「水」「光」「回復」「無」の7属性を指すが、加えてテレーゼは、自分でそれを自覚しないまま「雷」「闇」「空間」という、本来セフィロトでは存在しない3つの属性魔法も使用できる。


 また7属性に含まれるものの、光魔法を込めて唄を歌って物理&魔法攻撃の効果を高め続けたり、回復魔法を植物の生長に使うということは、有限の魔力を変則的に使うという発想自体、魔力の無駄遣いだと忌避されるセフィロトにはこれまで存在しないものである。


 加えて、蘇生魔法をテレーゼが使用できる可能性について以前ティアナが触れていたが、(テレーゼ自身気付いていないものの)実は空間魔法と同じく明瞭なイメージと膨大な魔力は必要であるが、彼女には現時点でも使用可能である。


 最後の合成魔法であるが、いわば自然現象を再現する為に複数魔法の同時使用が必須である合成魔法は、魔法同時使用のために魔法の個数分以上の膨大な魔力が必要で、セフィロトでは机上の空論的な理論はあっても実際に使う人がほぼ皆無に近いレベルであり、故にいわば新機軸の魔法といえる。


 テレーゼは試しに火炎放射魔法や吹雪魔法や飛行魔法を使ったところ、妹たちは見たことも聞いたこともない魔法に心底驚嘆していた。


 活法の練習と魔法の説明で開始から結構時間が経っていたため、ここまでで全員で休憩を取ることにした。吹雪魔法を使って雪を大量に発生させたものを皿に集め、それに蜂蜜をかけてかき氷にして妹たちに振る舞ったところ、雪の降らないセフィロト出身の妹全員に大好評であった。






 閑話休題。テレーゼの説明とアドバイスを念頭に置いて、十分休憩も入れたあと妹たちは練習を開始した。


 テレーゼとイーナは、ティアナから教えてもらった魔法防御を広範囲に広げる練習を開始した。前述の通りテレーゼは自力で物理と魔法の両方に効果がある防御魔法が使えるが、ティアナの持っている常時発動型の魔法障壁&罠察知に物理防御を加えて、その効果を妹たち全員が護れる広範囲に広げられれば更に効果的だと考え、ティアナと一緒に練習を行った。そしてあれこれ試した末に、常時発動型で罠察知効果のある物理&魔法障壁を、半径10メートルほどまで広げることに成功した。


 (テレーゼさん、うまくいきましたね。しかも私の能力を更にパワーアップさせているのは流石です)と、ティアナ。


 (テレーゼお姉ちゃんすごい♪お姉ちゃんを見てたら、イーナも魔法を跳ね返せる気がするからやってみるね♪)


 そう言って、イーナが「えい♪」という可愛らしい掛け声とともに、諦めずに何十回何百回と試行錯誤を繰り返していたが、その頑張りが実を結び、テレーゼほどの広範囲ではないが、それでも6姉妹が一箇所に集まれば、攻撃魔法から十分全員を護ることができる魔法障壁を発動していた。

 テレーゼが感じる魔力の強さから、罠察知の効果も間違いなく付与されていることが感じられる。加えて、攻撃魔法の範囲防御は放出系の魔法の一種なので、イーナは基本的な術理が同じである攻撃魔法についても、魔法の種類による得意不得意はあるにせよ、魔法の発動方法自体は確実に習得したことになる。


 「イーナ、よく頑張ったわね。でもあまり無理しちゃ駄目だからね」

 (イーナ、ずっと練習していて身体はきつくない?)

 テレーゼとティアナはイーナの頑張りに対して、思わずイーナを抱きしめて優しく頭を撫でてあげた。人間で言えば6歳相当の幼女が大人顔負けの練習をこなしたのだから、長女や母親としては心配で仕方がなかったのだ。


 (えへへ・・・イーナ無理してないよ♪テレーゼお姉ちゃんを見ていたら、何となくだけどやり方が解ったの♪あと、お姉ちゃんとお母さんにぎゅーっとされて頭をなでられるのって、暖かくてすごく気持ちが良くてうれしいな♪)と、イーナ。


 範囲を広げた魔法障壁の成功は、心の繋がりを持ったテレーゼという、これ以上ないお手本が身近にいることがとても大きかったが、それを加味しても、いくら魔法的な才能溢れるキラーグリズリーとはいえ容易ではなく、何よりもイーナの努力あってのものである。


 (これもテレーゼさんのお陰です。さっきまでイーナがした練習は、テレーゼさんが常日頃やっている「見取り稽古」ですよね。イーナも、テレーゼさんがいなかったら、たとえできるようになったとしても、もっと後になった筈ですから)と、ティアナ。


 見取り稽古とは、テレーゼが平素からストイックに磨き続けている柔道を含む柔道整復師としての技術や、今回の攻撃魔法防御の習得に限ったことではなく、また単純に形だけ上手い人の真似をすれば良いということでもない。

 「上手い人は自分とは何が違うのか?」という「気付き」を得て、言い換えれば「押さえるべきポイントを見抜く眼力を養う」ことで、そこから得たものを自分のスキル向上の糧にするという、実生活の全てにおいて、とても効果的かつ重要なトレーニングの手法である。


 テレーゼは、末妹イーナの頑張りを、姉として心の底から誇らしく感じていた。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 イーナが攻撃魔法の範囲防御を発動できて本当に良かったですね。


 あと、セフィロトの魔法体系については、何を以て全属性というのか?魔法属性にはどんなものがあるのか?など、以前カトリナに教えてもらったことを、テレーゼが咀嚼して自分なりの解釈を加えた上で妹たちと読者様に説明しています。


 次話では、新たに魔法が発動できるようになったアデリナとヘレナが、そしてカトリナがテレーゼが使って見せた合成魔法の練習を頑張ります。

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