第3話:再会
マルクトの街で、テレーゼたちはアンナとその母親に再会します。
そして、全員で近々アンナとその母親の家に訪問することが決まります。
テレーゼの回復魔法により、アデリナとヘレナが魔法が使えるようになるという、これ以上ないくらいの強烈なインパクトから落ち着いた6姉妹は、ようやくマルクトの街の入り口に到着した。
テレーゼたち4人は門番に身分証を提示した。幼児のイーナは、まだ通行税は不要(必要になるのは10歳になってからとのこと)だったので、そのまま街に入る。
マルクトの街の中心部手前にあるギルドに向かうテレーゼたち。
カトリナの説明では、元々は街の入り口付近にギルドの建物があったとのこと。冒険者たちが討伐の成果物を持ち込むには、街の入り口に近いほうが移動が短いため冒険者的には都合が良いらしいのだが、マルクトの街の入り口付近が元々あまり広くないため、冒険者の持ち込みが多いとその分他の人が街に入るときに混雑を助長するという理由から、数年前に老朽化したギルドの建物が解体され建て替えられた際に、街の中心に近い今の場所に移転したとのことである。
(だから街の入り口付近は門番の詰め所以外の建物がなく、その分混雑が少なくてゆとりがあるのね・・・)と、納得するテレーゼである。
「あっ、テレーゼお姉ちゃんだ」
「先生、先日は本当にお世話になりました」
以前肘内障の整復を行ったアンナとその母親に声を掛けられた。先日のテレーゼのアドバイス通り、母親が道路の馬車が通る側を歩いていて、アンナが母親に護られる形でその隣を歩いていた。
「アンナちゃん、あれから左の腕は痛くない?」
「うん。テレーゼお姉ちゃんが治してくれたからアンナ、全然痛くないよ」
「アンナちゃん、ちょっと腕を見せてくれるかな?」
そう言ってテレーゼは、以前整復した左肘を確認する。幸い、回復魔法で完治させたあとは、肘内障の再発はしていないようだ。あと、アデリナやヘレナのように、魔力が滞って魔法が使えない原因にもなっていないようなので、その点も一安心である。
「テレーゼお姉ちゃん、後ろの人たち誰なの?」アンナが尋ねてくる。
「私の妹たちよ」テレーゼはティアナ以外の妹たちを紹介する。
「私、アンナ。カトリナお姉ちゃん、アデリナお姉ちゃん、ヘレナお姉ちゃん、イーナちゃんよろしくね」
「イーナとお友達になってくれるの?アンナ、ありがとう♪」
4人の妹の中で、特に見た目が同じくらいの年頃のアンナとイーナは、すぐに友達になったようだ。
(そういえば、イーナとティアナって何歳なの?)
(イーナは1歳半くらいですね。私はだいたい8歳くらいだと思うんですけど、人間みたいにはっきり年齢を数えていませんのでよく解らないんですよ)
(わかったわ。人間の年齢でいえば、イーナが6歳くらいで、ティアナが40代前半くらい、といったところかしら?)
テレーゼとティアナが頭の中で会話する。
因みに2人の人間換算の年齢は、イーナは外見から、ティアナはイーナの出産が、他のキラーグリズリーよりもかなり遅かったそうなので、そこからの推測である。
「先生、みなさん、もし良ければこれからうちに遊びに来ませんか?」と、アンナの母親が誘ってくれる。
「今日はこれからギルドに行く用事がありますので、また別の日で良いでしょうか?」と、テレーゼ。
「わかりました。それでしたらギルドの受付嬢のマーヤってご存知でしょうか?」
「はい。ギルド登録の時には、彼女にとてもお世話になりました」
「彼女は私たちの家の2軒隣に住んでいますので、彼女に言伝して下されば、その時に私たちの家を教えてもらえると思いますよ。場所が少し解りにくいので、説明が上手な彼女に案内をお願いしておきますね」
「わかりました。都合の良くない時間とかありますか?」
「午前中は家を空けていることが多いですが、午後であればほぼ大丈夫だと思います。マーヤにはほぼ毎日出会うので、午後で用事があるときは彼女に伝えておきますね」
アンナの母親とテレーゼとの間で訪問の打ち合わせを行った。
「それでは、先生、みなさん、失礼します」
「テレーゼお姉ちゃん、イーナちゃん、お姉ちゃんたち、またね」
アンナとその母親と別れ、テレーゼたちはギルドに向かった。
「テレーゼお姉ちゃん、アンナも妹なの?」
「少し前にアンナちゃんが怪我してしまったのを助けたのよ。さっき、怪我した子に出会った話をしたでしょう?その子がアンナちゃんなのよ」と、イーナ&テレーゼ。
「アンナの家に行くのってアタシたちも一緒に行って良いのかな?」
「みんなで一緒に行きましょう」
「楽しみ」
「アンナちゃん、テレーゼお姉さんが怪我を完治させて、元気そうで良かったですね」
「イーナもアンナの家に遊びに行くの♪」
(テレーゼさん以外の人の家に行くのって初めてなので興味深いですね)
アデリナ、テレーゼ、ヘレナ、カトリナ、イーナ、ティアナたちもアンナの家への訪問が楽しみのようである。
「せっかくだから、みんなで日本に行って、そこで何かお土産買ってから行こうか?」
「それ良いな。テレーゼ姉さんの故郷、どんな所なんだろうな?」
「イーナも日本?に行くのが楽しみなの♪」
「きっとアンナちゃんも喜ぶと思いますよ。あと、私も日本に行くのがとても楽しみです」
「姉さん、ところで向こうに行ったら、ご両親に会うの?」とテレーゼ、アデリナ、イーナ、カトリナ、ヘレナ。
「今両親は、母親の故郷に里帰りしてるから、しばらく戻って来ないのよ」
「そうなんだ。姉さんのお父さんとお母さんに会ってみたかったけど・・・」
「今度みんなに両親を紹介するわね」
「うん、わかった。楽しみにしてる」と、テレーゼ&ヘレナ。
「まあ、見た目が30歳も若返ったことをどう説明すれば良いのか・・・それは正直なところ思案中なのよ」
「確かにテレーゼお姉さんが若返った話って普通ビックリしますね。でも案外何とかなると思いますよ」
(テレーゼさんのご両親だったら大丈夫じゃないでしょうか?)
「そうね。少なくとも全く話も聞かないような両親じゃないはずだから」
自分が若返った状態で両親に会うことについて、テレーゼ、カトリナ、ティアナが話をする。結局は今考えても仕方のないことなので、テレーゼはケ・セラ・セラと割り切ることにした。
(近いうちに、日本に妹たちを連れて行って、その後アンナちゃんたちの家に行くためにも、今日のギルドの復命をきちんと終わらせないと・・・)
そう思い、改めて気を引き締めるテレーゼである。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
アンナちゃんが肘内障の再発がなかったようで、良かったですね。
専門的な話になりますが、関節の脱臼に関しては、治癒後も「外れ癖」(反復性脱臼)がつくことが、残念ながらゼロとは言い切れません。
例えば、未だに大横綱と名高い今は亡き有名人が、現役時代に重篤な肩の外れ癖を抱えていて、それを長年のトレーニングで克服したというのは有名な話ですが、大人のアスリートですらそうなのですから、もしアンナの受傷時にテレーゼが居合わせなければ、肘内障が再発しやすい状況を後遺障害として抱えていた可能性は十分に考えられますので、本当に幸運な話でした。
次回は、ギルド依頼調査の復命の話になります。




