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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第5章:リーダーとして
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第2話:活法の説明と魔法の発現

 ギルドに向かう道中で、テレーゼは妹たちに魔法を使わない気絶からの回復方法を紹介します。

 そして、テレーゼの物事を深く観察する力が、アデリナとヘレナにある奇跡を起こします。

 姉妹での話し合いが終わり、全員で揃って家を出てマルクトの街に向かった。


 「そういえばテレーゼお姉さんは、この前ギルドに向かう途中、怪我をした女の子を助けたんでしたよね。また似たようなことがあるかも知れませんね」と、カトリナ。


 「日本には「一度あることは二度ある、二度あることは三度ある」という諺があるの。本当にありそうで心配だわ」と、テレーゼ。


 「テレーゼ姉さんなら余程のことがない限り余裕だろ?」


 「というか、少なくともマルクトに姉さんより上手な医者や教会の回復魔法使いはいない」


 「テレーゼお姉ちゃん、すごい♪」


 (テレーゼさんの身体にある底の見えない魔力量を考えれば、極端な話、死者でも蘇らせることができるかも知れませんね)

 と、アデリナ、ヘレナ、イーナ、ティアナ。


 「流石に余裕じゃないし、医学が発達した日本でも、一度完全に死んだ人を蘇生できる人なんていないわ。そう言えば、柔道とかの武道の練習や試合をしていると、技によっては息を止められて気絶することがあるんだけど、そのまま放置すると、本当に死んでしまうこともあるから怖いのよ」


 「そんなときに、相手の上半身を起こして自分の膝を相手の背中に当てて、相手の両肩を両手でしっかり持って一気に後ろに引っ張るようにして胸郭を広げて、膝を当てている部分から相手に力を伝えるようにするの。これを「活を入れる」と言うんだけど、気絶の状態を目覚めさせることができるわ」


 「同じ効果を持つやり方には、他におへその辺りに両手を置いてギュッと力を込めるというのがあるけど、これは正直された人は苦しいかも。あとは仰向けで上半身を動かさずに、両脚を伸ばしたまま持ち上げて、少しそのままにしておく方法もあるわ。どの方法をやっても良いんだけど、大事なことは、3つとも相手の身体から力が抜けていることを確認してから行うこと。力が入ってるのは、気絶じゃない可能性が高いから」


 テレーゼが柔道の練習中に気絶したとき自身が体験した、気絶から回復させるための「活法」(活法については、プロローグ1を参照のこと)について、具体的に3種類の方法を紹介する。


 「ただ、実際は回復魔法の方が有効だと思うから、セフィロトでは使う機会は、そんなにないと思うわ。身体に力が入ったままのときも回復魔法のほうが良いわ。もちろん魔法なしで使えるから使い所はあると思うけど」

 と、テレーゼは活法についての話をまとめる。


 「それなら魔法が使えないアタシでもできそうだな。そういえば、マルクトの騎士団員が街中で訓練中に気絶したとき、他のヤツが顔に水をぶちまけてたのを見たな」と、アデリナ。


 「それって本当はかなり危険なのよ。何故なら、水が鼻や気管に入ったら息ができなくなってしまうわ。それをやるくらいなら、まださっき話した活を入れる方法がずっと効果的だし安全だわ。アデリナが覚えたいのなら今度教えるわ」

 と、テレーゼ。


 「テレーゼ姉さん、アタシにぜひ教えてくれ。少しでもテレーゼ姉さんの助けになりたいからな」


 「姉さん、私にも。そういう手当てを数多く知ってる姉さん、やっぱり頼りになる」


 「同感です。少なくとも今の話って、初めて聞きましたから。私も知りたいです」


 「イーナも覚えるの!あと、テレーゼお姉ちゃんたちと一緒にいると、イーナすごく安心できるの♪」


 (テレーゼさんの治療のやり方って、柔道?に根ざしたものが多いみたいですね。私も実際に見て覚えたいです)

 と、アデリナ、ヘレナ、カトリナ、イーナ、ティアナ。妹全員が自発的に活法を覚えたいようだ。テレーゼには、妹たちの前向きな気持ちがとても嬉しく感じた。






 「わかったわ。ギルドの復命が終わって家に帰ったらみんなに教えるわ。そう難しくないからすぐ覚えられると思うわ。私もティアナから攻撃魔法防御のやり方を教えてもらおうと思うから、その練習と一緒にしましょう。それから、カトリナ。魔法が使えない人って魔力がないわけじゃないわよね。上手く言えないけど、アデリナやヘレナやイーナにも、カトリナほどじゃないけど、身に纏った気配っていうのかな?それっぽいものを感じるから。まあイーナはお守りで抑えているせいだろうけど」


 「テレーゼお姉さん、解るんですか!?」と、心底驚愕した様子のカトリナ。


 (そういえば、利き腕に杖を持たないと魔法は使えないと、以前カトリナが言ってたわね・・・)「ただ、右腕のところかな?アデリナは右肩で、ヘレナは右肘なんだけど、そこから先が気配が薄いように感じるのよ。イーナはそういう所がないから、多分使えるようになると思うんだけど。そういえば、2人とも今までに右腕を怪我とかしなかった?」


 「そういえば・・・アタシは小さいときに村の中でかくれんぼしていて、大きな倉庫に隠れていたんだけど、一緒に遊んでいたヤツに、強く倉庫の扉を閉められた途端、振動で積んであった薪がいきなり右肩に落ちてきたんだ。それで何日か肩が腫れたんだけどその後は何ともなかったよ」


 「昔、近所の子供と棒を持って遊んでたときに、その子から右肘を強く叩かれた。かなり痺れたけど、数日経ったら痺れがなくなってた」


 アデリナとヘレナは、それぞれ幼少の頃に、利き腕の肩と肘を打撲したとのことだった。今まで見ている限りは身体的機能に影響はないようだが、これが魔法が使えない原因だとしたら・・・


 「わかったわ。2人には右腕に強く効果が行くように回復魔法を使ってみるわね」

 そう言って、テレーゼは2人の右腕の受傷したと思しき部位に、強い念を込めて回復魔法を掛けた。すると、それまで2人とも右腕の途中で滞っていた目に見えない力のようなものが、今は右手の指先まで行き渡っているように感じられた。


 「2人とも、ライトの魔法の呪文を覚えているかな?もし覚えているなら今使ってみて?」と、テレーゼは2人を促す。


 「結局使えなかったけど、昔カトリナに呪文を覚えさせられたんだよな・・・カトリナの杖を借りて・・・「暗闇を照らせ、ライト!」えっ!?ウソだろ・・・」

 昼間だから少し解りにくいが、アデリナの持つ杖の先には確かに光が灯っている。


 「私もやってみる!アデリナ、杖を貸して!「暗闇を照らせ、ライト!」魔法の光!?今まで全然使えなかったのに・・・」

 ヘレナの持つ杖の先には、アデリナの時と同じように光が灯っている。


 「2人とも、幼少期の利き腕への受傷が原因で、魔法を使うための魔力が受傷箇所でせき止められていたのね・・・」

 テレーゼは、今回のことをそう結論付けた。彼女は仕事柄というよりは幼少の頃から、他人の気配や雰囲気のようなものに敏感であった。つまり元々素養があったものが、日々の接骨院の仕事で患者様の容態を正確に把握するために更に研ぎ澄まされているのだが、セフィロトではこのことが、他人の魔力の存在を察知することに大きく貢献した形である。


 「テレーゼ姉さん・・・」

 「姉さん・・・私・・・」

 2人がテレーゼに抱き付いて激しく泣き出した・・・魔法が使えないということに知らないうちにコンプレックスを抱いていた2人であるが、表面的には諦めようとしていた魔法が使えたことの嬉しさも相まって感極まったようだ・・・テレーゼは2人が落ち着くまで優しく頭を撫で続けた・・・






 「テレーゼ姉さん、アタシたちが魔法を使えるようにしてくれてホントありがとう・・・」


 「姉さん・・・私とアデリナは姉さんに一生付いて行く・・・あと2人で姉さんの服をたくさん濡らした。ごめんなさい・・・」


 2人は、テレーゼに心底感謝しているようだ。


 「2人とも、大げさよ・・・あと、服なんてそのうち乾くんだし、あなたたちが私に掛ける迷惑なんて、全然ないくらいに思ってくれて構わないわ。それよりも、私の大事な妹たちがこんなに苦しんでいたのに、今まで気付いてあげられなくて本当にごめんね・・・」


 「そんなことない!姉さんは私たちをこれ以上ない形で救ってくれた・・・」


 「テレーゼ姉さん、アタシ、いやヘレナも含めて魔法が使えないのを無理矢理諦めようとしてた。でも本当は使える人が凄く羨ましかった・・・そんなアタシたちを姉さんが・・・(ぐすっ)」 と、テレーゼ、ヘレナ、アデリナ。


 「テレーゼさんの魔法、特に人を癒やす力は本当に別格ですね。カトリナ、もしかして他にこんな人がいたりしますか?」


 「ティアナ、国王のお膝元にあるダアトの教会にいる大司教や、国の筆頭宮廷魔導師でも絶対に無理ですね。もしできるのなら、自分たちの権力を伸ばすために必ず公にしますから。もちろん冒険者たちも、言うまでもなく不可能です。つまり、セフィロトというよりこの世界で、魔法が使えなかった人を使えるようにするなんて、おとぎ話にすら出てこないくらいあり得ないことなんですよ。本当にテレーゼお姉さんは凄いですし、そんな凄い人が私たちのお姉さんなんて本当に幸せです・・・もちろん私も、お姉さんに一生付いて行きますから・・・」


 そう言って、いつも沈着冷静なカトリナが、目に涙を浮かべていた・・・彼女はアデリナとヘレナとは幼なじみであるが、2人が魔法が使えないことに強いコンプレックスを抱いてことを薄々察していた。それ故、今目の前でテレーゼが2人に存在する魔力を見抜き、回復魔法で魔法を使用可能にしたことをティアナ共々心底驚嘆するとともに、長年一緒のパーティーの自分がどうすることもできなかったことを、テレーゼが最良の形で解決したことに、深い感謝と改めて姉への強い尊敬の念を抱いていた。

 

 「テレーゼお姉ちゃん、イーナも魔法を使えるようになるの?」


 「イーナは大きくなれば、間違いなく魔法を使えるようになると思うわ」


 「イーナもみんなみたいに、魔法が使えるのならうれしいな♪魔法を頑張って覚えるの♪そしてテレーゼお姉ちゃんやみんなとずーっと一緒にいるの♪」


 イーナも姉たちの奇跡を目の当たりにして自分もそれに続きたいと、強くやる気を触発されたようだ。テレーゼから見て、イーナの場合は仮に今魔法が使えなくても、成長すれば確実に魔法を使えるだろうと思える。むしろ魔力を表面上は隠蔽・抑制させるために、お守りを身に付けているくらいなのだから。


 「あと、今回の回復魔法のことは、他人に簡単に話せる内容じゃないから、黙っていた方が良さそうね」


 「そうですね。テレーゼお姉さんの杖なしかつ両手で使える全属性の魔法だけでも、当世で並ぶ者がいないレベルなのに、魔法が使えない人を使えるように治してしまうなんて、大騒ぎになること間違いないですから」


 テレーゼとカトリナが今回のことは6姉妹だけの秘密にすることを決め、全員そのことに同意する。


 今日はまだ調査依頼の復命が残っているが、借り物の力とはいえ、妹たちの苦しみを取り除いてあげられたことを、姉としてとても嬉しく思うテレーゼである。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 柔道の活法は使わないならそれに越したことはないのですが、いざというときに覚えておいて損はないと思います。もっとも柔道の経験者であればかなりの人が、身を以て知っていることだとは思います。


 そして、アデリナとヘレナが魔法が使えるようになって本当に良かったですね。イーナはキラーグリズリーの特性として成長すれば間違いなく攻撃魔法防御や魔法が使えますから、6姉妹全員が魔法を使えることになります。これはパーティーとしてとても大きな底上げです。そして、今回のことで、只でさえ強かった妹たちのテレーゼに対しての敬慕の情は、間違いなく限界突破しています。


 次回は、テレーゼのことをセフィロトで初めてお姉ちゃんと呼んだ人物と再会します。

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