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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第4章:人化魔法と覚悟
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第4話:2人の覚悟

 テレーゼは、自らの心と身体の中に、ティアナの魂が強く結びついて生きられるようになったことを妹たちに話します。

 そして、そのことに関して2人は、強い覚悟を妹たちに示します。

 「それから、みんなに話しておきたいことがあるんだけど・・・」と、テレーゼは切り出した。


 ティアナがいついなくなってしまうかも解らないという不安定な状況を解決するために、テレーゼの心と身体を依代よりしろにして、ティアナと永続的に一緒にいることを決意しそれを実行した結果、それが上手く行ったことを妹たちに話した。


 その結果、ティアナがテレーゼの心と身体を、いわば共有する形でテレーゼと同じ体験ができたり、ティアナがテレーゼの身体を使って、ティアナ自身が話すことができることを、さっき買い物に行っている間に実際に確認したことも説明した。


 「流石、テレーゼ姉さん。キラーグリズリーだったティアナの魂を受け容れることができるなんて、懐がホント大きいよ!」

 「でも、姉さん、いきなりもう1人の姉さんが、身体や心の中に住み着いても大丈夫なの?」

 「テレーゼお姉さん、それって、もの凄く負担が大きいことだと思うんですけど・・・」

 「ティアナお母さんが生き返るのはうれしいけど、テレーゼお姉ちゃん、無理しちゃやだ!」

 妹たちが、テレーゼを凄く心配してくれている。


 テレーゼは、自分が心底納得して今の状況を受け容れたことと、ティアナとして話がしたい時以外はテレーゼに行動を委ねてくれているため、決して人格や身体がティアナに乗っ取られたり、テレーゼが無理をしていないことを改めて説明した。

 そして、日本でもごく一部ではあるが、今のテレーゼとティアナの関係のように、他人の魂を受け容れることのできる人がいることを話した。

 

 「テレーゼさんは、娘と私を助けてくれて迎え入れてくれた大切な恩人なんです。そんな人を裏切ろうなんて娘共々絶対に思えませんし、私が一緒に居ることで、テレーゼさんに手助けできることがあると思うんです。もし、テレーゼさんの負担になったりテレーゼさんが嫌がるようなら、自分からテレーゼさんの身体を出て行きますから」


 ティアナが妹たちや娘に、テレーゼの身体を借りて、自分の思いやテレーゼのためならいつ命を落としても構わないという覚悟を示した。


 「ティアナさん、いえ、ティアナ。今日1日私の心と身体の中にあなたが一緒にいるけど、私は何ともなっていないよ。むしろあなたがそばにいてくれて、あなたがずっといなくならないことが、私は心の底から嬉しいんだよ。ティアナ、お願いだから自分から出て行くなんて、そんな寂しいこと言わないで!せっかく私の心や身体の中で生き返ってくれたあなたがいなくなるなんて、そんなの私が絶対に許さないから!!」


 テレーゼはティアナの覚悟に対して、こちらも絶対に別れるつもりがないという覚悟を妹たちの前で示した。そして

 「今日、一緒に買い物をしているときに、これからずっと一緒に、楽しい思い出を増やして行こうと話したじゃない。あれ、私は本気で一生そうしたいと思ってるんだから」と、ティアナにこれから2人で一緒に幸せになろうと語りかけた。


 「テレーゼ姉さんが人一倍懐が大きくて、女のアタシたちでも惚れ惚れするくらい凄く良い女だっていうのは解ってるんだし、テレーゼ姉さんたちがそれで良いんだったらアタシは良いと思うよ」

 「それに姉さんは、私たちのために一度決めたことは絶対に曲げない。そんな姉さんの決めたことなんだから私は従うだけ」

 「テレーゼお姉さんとティアナが決めた事であれば異論はありません。それに生き返ったティアナとは、今後いろいろ話してみたいです。冒険者として、集団でまともに戦って欠片も勝機が見いだせないような、キラーグリズリーのティアナから話が聞けるなんて、これ以上ない有益なことですから」

 アデリナ、ヘレナ、カトリナがテレーゼとティアナの覚悟に同意する。


 「テレーゼさん、皆さん、イーナのこともですけど、私たち母娘を受け容れてくれて本当にありがとうございます・・・」

 テレーゼやティアナの強い覚悟に賛同してくれた妹たちに、ティアナは強く感謝しているようだ。


 「テレーゼお姉ちゃん、ティアナお母さんを生き返らせてくれて、本当にありがとう。お母さん・・・」

 そう言ってイーナは、ティアナがテレーゼの心と身体の中で生き返ったことで、これまで我慢していた気持ちがこらえきれなくなったのか、テレーゼの身体にしがみついて激しく泣きだした。ティアナとテレーゼはその場に腰を下ろし、イーナを膝の上に優しく抱き寄せ頭を撫で続けた・・・






 「ティアナお母さん、テレーゼお姉ちゃん、2人がずっとぎゅってしてくれて、頭を一杯なでてくれて、あったかくてすごくうれしかったよ。えへへ・・・」

 イーナが泣き止んでくれたようだ。まだ少し目に涙がにじんでいるものの、可愛い笑顔である。


 「テレーゼさん、そしてみなさん、イーナだけでなく私を受け容れてくれて本当にありがとう・・・」

 ティアナが姉妹たちに再度感謝の気持ちを伝える。


 娘や妹たちには、口調でどっちが話しているのかすぐ理解してくれるようなので、その点も一安心である。


 「テレーゼ姉さん、今夜は6人姉妹で、ティアナやイーナの歓迎会をやろう!」

 「賛成。アデリナもたまには良いことを言う」

 「良いですね。テレーゼ姉さん、ぜひやりましょう」

 「お姉ちゃんたちやお母さんと、みんなで一緒にご飯、楽しみ♪」


 アデリナ、ヘレナ、カトリナ、イーナが歓迎会を提案してくれた。テレーゼも、もちろん大賛成である。その後、夕飯をみんなで用意して、ささやかではあるが心温まる宴が開かれ、6姉妹は心ゆくまで楽しんだ。






 宴の終了後、妹たちが眠りについているそばで、テレーゼは物思いに耽っていた。


 (そういえばティアナ、今のあなたは魔石ではなく私の中にいるんだよね。今の状態で私が寿命やその他の原因で命を落としたら、あなたも巻き込まれてしまうの?私の巻き添えで命を落とすなんてあんまりだから、その時はティアナだけでも何とか魔石に戻れないかな?)


 自分が命を落とすようなことになったときのティアナが心配になったテレーゼは、「独り言も何か変よね・・・」と思い、ティアナに心の中で尋ねる。


 (魔石は私の身体の一部でしたが、今の魔石は生きた身体とは違いますので、生きたまま魔石に戻ることはできそうにありません・・・私が自分の身体の命がなくなったあと、魔石と私の心との繋がりは、元々相当に無理をして維持していました。そのことが私の心の生命力を徐々に削っていましたので、このままだと、そう遠くないうちに私は消えていたと思います。ですから、その時が来たらイーナを皆さんに託して逝くつもりでした・・・

 そんな私を、テレーゼさんは自分の身体や心の負担を全く気にせずに助けてくれました・・・ですから、これからは私にテレーゼさんを少しでも護らせて下さい。2人で一緒に楽しく生きて、娘や妹たちとたくさんの思い出を作りましょう。そしてテレーゼさんがこの世からいなくなるときには、お願いですから私も一緒に連れて行って下さい・・・)

 (わかったわ、ティアナ。あなたの気持ちや覚悟を全部受け容れるわ。これから長い付き合いになるだろうけど、末永くよろしくね)

 (テレーゼさん、こちらこそよろしくお願いしますね)


 テレーゼの問い掛けに、ティアナが自分の現状と、今後テレーゼと一緒に生きて、みんなと楽しく暮らしたいという夢を、そして最後までテレーゼと一緒にありたいという願いを伝え、それにテレーゼが同意する。


 (あと私の魔石ですけど、身につけておけば私の魔力がまだ残っていますし、テレーゼさんの魔力も意識しなくても自然と蓄えることができますから、今日みたいにテレーゼさんの故郷に帰ったときに、本来魔法が使えない日本でも魔法が使えると思いますよ)


 ティアナから凄いことをさらっと指摘される。


 (最後にもう1つ。ご存知の通り私たちには、攻撃魔法の反射と罠を察知するという2つの能力があるんですけど、私がテレーゼさんの中にいる限り、その能力は自動的に発揮されます。どちらも種族的特性なんですけど、少なくとも攻撃魔法と罠からテレーゼさんを完全に護ることができます。そして人化したイーナにも同じように、攻撃魔法反射と罠察知の能力がそのまま残っています)


 これも考えてみれば、いくら日常的に魔法が存在するセフィロトといえども、十二分に破格と言える能力である。つまり現状でテレーゼは、反則的とも言えるキラーグリズリーと同じ魔法防御と罠察知能力を持っていることになるが、これはセフィロトの魔法的優位を完全に喪失させるものであり、彼女はまさに「魔法使い殺し」そのものである。


 加えて自力で物理攻撃に対しての強力な防御魔法を使えることから、全属性の魔法や素手ですら強力な魔獣に比肩するほどの格闘能力(テレーゼがイーナとの遭遇の際に推測したように、「謎の若返り効果」が身体能力を大きく底上げしているため)も相まって攻守ともに全く隙がなく、罠による絡め手も無効となれば、間違っても敵対したくない存在であろう。


 (えっ!?それって・・・絶対に妹たち以外の他の人に知られちゃまずいことよね・・・当然魔石も他の人の手に渡らないようにしないと。でも魔石を絶対なくさないようにすること以外は、今考えても仕方ないことよね・・・)


 とりあえずテレーゼは割り切ることにした。

 「明日の朝食もまだ食べていないのに、明後日の夕食のことを考えても仕方ない」

 これは、前職の激務のときに得た、テレーゼの処世術的な思考である。






 (今日は、イーナの人化、ティアナに名前のプレゼント、イーナの服選び、ティアナとの身体の共有・・・いろいろあったけど、みんなが楽しく過ごせて良かったわ・・・明日はギルドへの復命だけど、どう話を持って行けば良いんだろう?よく考えないと・・・)

 今日のような楽しい時間をずっと続けていくために、それと妹たち全員を護るのは、長女である自分の役目である・・・改めてそう強く決意する。


 (テレーゼさん、何もできないかも知れませんが、私がずっとテレーゼさんと一緒にいますので、少しでも一緒に役目を背負わせて下さい・・・)

 と、ティアナが申し出てくれた。自分には強者中の強者の魔物である、キラーグリズリーだったティアナが一緒にいて助けてくれることを凄く心強く感じたテレーゼである。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 10話に続き、何とか20話まで辿り着くことができました。読んで下さる方々あってのものだと感謝しています。次は30話を目標に一生懸命頑張りますので、これからもよろしくお願いします。


 本来、1人の身体に2人分の魂が入り込んだら、考えるまでもなく相当な精神的負担になると思います。「口寄せ」を行える巫女さんも長時間の降霊術は難しいようですが、テレーゼの懐や情愛の深さは、これまで話を読まれてきた皆様であればお気付きかと思いますが、半端ではなくまさに筋金入りです。


 これは、魔石に自らの魂を心の力で現世に縛り付けてまで、イーナと一緒にいることを選んだティアナと、魂を受け容れる媒体は違えどもやっていることは同じであり、本当に似たもの姉妹です。


 第4章はこれで終わりになります。イーナを伴ってギルドに行くための準備がもう少し残っていますので、次章ではそれを解決したあとでギルドに向かう話となります。次章も一生懸命頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

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