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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第4章:人化魔法と覚悟
19/84

第3話:イーナの服と姉たちの心遣い

 テレーゼ&ティアナとヘレナが手分けしてイーナの服を買いに行きます。

 そして、テレーゼとティアナは、ある重大なことを行います。


 11月30日 一部表現を修正しました。 

 (これから、テレーゼさんが住んでいた場所に行くんですね、楽しみです)


 ティアナが頭の中に語りかけてきた。改めて感じたことであるが、魔石ティアナを身に付けている間、五感や思考を共有できることと、ティアナが他人への会話を、テレーゼの身体を借りる形で行えるようだ。先ほどの名付け以降、明らかにその結びつきが強くなったように感じる。


 (今なら・・・彼女を私の中に受け容れられるかも知れない・・・)テレーゼは何としてでも、ティアナとイーナがこれからも同じ時間を永く幸せに過ごして欲しいと心底思っていた。これはティアナを森から一緒に連れて帰るときに強く決意していたことである。意を決して、ティアナに自分の身体や心の中で一緒に生きていこうという気持ちを伝える。


 (それはとても嬉しいのですが・・・本当に良いんですか?私がテレーゼさんに移動するのは多分大丈夫だと思うのですが、その後に私が生きたまま魔石に戻るというのは、おそらく無理かも知れません・・・)


 (ティアナさん、父の田舎の言葉に、「泣こよかひっ飛べ!」(何もせずにくよくよ悩むよりも、失敗を怖がらず、まず行動しなさい!という意味の言葉であり、思い切りや決断が大切だという局面で使われることが多い)という言葉があります。私はあなたとイーナがずっと一緒に幸せに過ごして欲しいと思っていますので、あなたがいついなくなってしまうかも知れない今の状況を、何もしないでそのまま放置するのがたまらなく嫌なんです。私はあなたがこれからずっと生きていけるのなら何でも試してみたいと思いますし、私の中にあなたがずっと一緒にいることになっても、後悔なんて微塵もしないと思います)


 (わかりました・・・やってみますね・・・)ティアナがそう言った途端、テレーゼの心と身体の中に、力強く暖かい何かが入ってきて、自分にそっと寄り添ってくれるような感覚を覚えた。


 (上手くいったようですね。テレーゼさん、これからもよろしくお願いしますね)

 (こちらこそ。気付いたと思うんですけど、私は元々セフィロトの人間ではないので、妹たちもですけど、傍らにあなたがいてくれることはとても心強いんですよ)

 (こちらこそ、イーナもですけどテレーゼさんに出逢えて本当に良かったです・・・でも、今更ですけど・・・テレーゼさんは、私に自分の全てを知られることって、怖くなかったんですか?)

 (怖いと思うくらいなら、最初からティアナさんを受け容れたりしないと思います。正直な話、他の妹たちにも同じことをしても構わないと思っていますから)

 (本当にテレーゼさんは懐が大きいというか、豪胆というか・・・娘や他の妹たちではないですけど、私もそんなテレーゼさんが大好きですよ)

 (ありがとう、ティアナさん。私も、あなたを含めた妹たち全員を、心底愛おしく思っているんですよ)と、頭の中で会話を行う2人である。


 これは、東北地方に存在するとされる、「口寄せ」(霊を自分の身体に憑依させて、霊自身の気持ちを自分の身体を使って話してもらう術のこと)を行える「イタコ」と同等か、それ以上のことをやっていることになる。このことは妹たちに、きちんと説明する必要があるだろう。


 いずれにしても、上手く行って良かったという思いはあるものの、今はイーナの買い物が先である、とテレーゼは気持ちを切り替えた。


 「子供服を売ってる場所が家の近くにあるので、そこに行きましょう。赤ちゃん用の服が多いんですけど、イーナくらいの大きさの子供服も売っていたはずですから」と、テレーゼがティアナにこれからの予定を説明する。


 自宅から徒歩20分ほど離れた所にあるショッピングモールの2階テナントの一角にある、乳幼児関連の専門店にテレーゼはやって来た。そこで以下の物をまとめて購入した。

 ・パステルカラーの柔らかい色使いのワンピース

 ・インナーの上下、Tシャツ、ストッキング、靴下、ハンカチ(各3組ずつ)

 ・女の子用の寝間着上下セット

 ・他所行き用の靴と運動靴

 ・幼児用の低刺激石鹸、シャンプー、リンス、歯磨きセット

 ・女の子用のカトラリーセットと食器セット


 (可愛い服ですね。それに新しい食器も使いやすそうで、イーナはきっと大喜びでしょうね)と、ティアナ。

 彼女は、森近くの街道で野営する旅装の親子連れが着ていた服を見たことがあったそうだが、今日購入した服はそれよりも明るい色合いで、きっとイーナに似合うだろうと自分のことのように喜んでいた。


 今のティアナには、人間と同様の感情が芽生えつつあるようだ。

 もちろん、テレーゼの思考を共有しているという部分は大きな助けとなっている。


 次に同じモール内の階下にある薬屋で、子供用の虫下しの薬を購入して店を出る。イーナが人間になったため、キラーグリズリーの時に使うグルーミング用の道具は、当面は不要であろう。


 イーナへの買い物のあとフードコートで、お好み焼き、焼きそば、ジュースを5人分購入する。

 往路は徒歩でも良かったが、荷物が多かったのでショッピングモールが始発になっている路線バスで帰宅する。座席に座れたのは幸いだった。


 (ティアナさん、帰ったら買ってきた物を一緒に食べましょう。きっと驚くと思いますよ)

 (それは楽しみです。テレーゼさん、私のことも気遣ってくれてありがとうございます)

 (ティアナさん、これからずっと一緒に楽しい思い出を増やしましょう)

 フードコートの買い物が終わり、バス移動中、頭の中で会話する2人。


 2人は五感を共有しているので、一緒にいる限りテレーゼが食事すればティアナも食事を楽しめる。

 それを心底嬉しいと感じるテレーゼであり、そんな彼女の気遣いにティアナも心がとても暖かく感じた。

 テレーゼとティアナの会話は、お互い丁寧な口調ではあるが、既に仲の良い姉妹のそれである。






 「「ただいま。今帰ったわ」」と、テレーゼ&ティアナ。


 「テレーゼ姉さん、ティアナ、お帰り。美味そうな匂いがするけど、また何か買ってきてくれたのか?」

 「姉さん、ティアナ、お帰り。イーナの普段着買ってきた」

 「テレーゼお姉さん、ティアナ、お帰りなさい。お疲れ様でした。今日も荷物がたくさんですね」

 「テレーゼお姉ちゃん、ティアナお母さん、お帰りなさい。イーナ、楽しみにしてたんだ♪」

 4人が勝手口まで迎えに来て荷物を運んでくれる。


 「イーナね、今日カトリナお姉ちゃんとアデリナお姉ちゃんと3人で、一緒にテレビ?見たんだ♪服を着替える女の子たちが出てきて、悪い人?と戦うの。お姉ちゃんたちと応援していたら、女の子たちが悪い人をやっつけたの。イーナ、すごく楽しかった♪」

 イーナが自分たちが留守の間のことを楽しそうに話してくれた。


 どうやら、イーナがカトリナ&アデリナのお姉ちゃんたちと一緒に、可愛い女の子たちが戦闘時に変身するアニメを、一緒に応援しながら見て楽しんでいたようだ。


 「カトリナ、アデリナ、それと服を買いに行ってくれたヘレナ、みんなありがとうね」

 「皆さん、イーナのためにありがとうございました」と、テレーゼとティアナ。


 「テレーゼお姉さん、ティアナ。イーナちゃんと一緒にテレビを見て、とても楽しかったんですよ」

 「イーナと一緒にテレビ見て、一緒に楽しめたし面白かったぞ。テレーゼ姉さん、ティアナ、ヘレナも今度一緒に見よう」

 「姉さんたちにお礼言われるのは嬉しいけど、妹のためなんだから当たり前」

 テレーゼたちが買い物で留守中のことを3人は聞かせてくれた。


 イーナの微笑ましさと、カトリナ、アデリナ、ヘレナの良いお姉さんぶりを聞いていて、ほっこりした気持ちを感じるテレーゼでである。






 「みんな、お昼ご飯まだでしょ?お腹空いたんじゃないの?食べ物を買ってきたからみんなで食べようか?」


 イーナの話が一段落した後、テレーゼが全員に買ってきた物を配る。あと、イーナには、人間の食べ物が食べられないようなら無理しなくても良いということと、冷蔵庫にまだたくさんのンベの果実があることも伝える。


 「みんな、いただきます」「「「「「いただきます」」」」」食前の挨拶の後、みんなでご飯を食べ始める。

 「テレーゼ姉さん、この「お好み焼き」だっけ?これだけでもお腹いっぱいになりそうだな」

 「姉さん、焼きそば?温かくて美味しい」

 「テレーゼお姉さん、いつもありがとうございます。日本の食べ物ってどれも美味しいですね」

 「イーナ、こんな美味しいの食べたことなかった♪このジュース?も、すごく甘くて美味しいよ♪」

 (テレーゼさん、みんなで一緒の食事って、凄く暖かくて美味しくて幸せなんですね)


 アデリナ、ヘレナ、カトリナ、イーナ、ティアナが買ってきた物を美味しそうに食べてくれるのを見て、セフィロトに来て慌ただしいことが多いけど、みんなに出逢えて本当に良かった・・・と幸せを噛みしめるテレーゼだった。






 食事が終わり、イーナには念のため薬屋で購入した、子供用の虫下しの薬を飲んでもらった。次は10日後くらいに再度飲んでもらえば大丈夫だろう。一息ついた後、午後からはイーナに買ってきた服の試着会となった。


 但し、6歳くらいの子供が服を取っ替え引っ替えするのは、大人が思っている以上にきつくて可哀想なので、今回はヘレナが買ってきてくれた服をそのまま着てもらうことにした。

 テレーゼたちが買ってきた服は、日本への観光に行く当日にイーナに着せてあげることになった。


 別室でイーナがヘレナに服を着せてもらう。それが終わり、残りの4人のいる居間へ。


 ヘレナが選んだ服は、トップが厚めの生地のシャツで、ボトムが紐で腰に縛るタイプの巻きスカートで、どちらも落ち着いた色で永く着られそうである。また靴もスリップ・オン・シューズで、着脱が易しいものだった。

 昨日まで服や靴を身につけたことのなかったイーナのことを考えて、着脱のしやすさを第一に考えた、思いやりの深い彼女らしい選択と言える。

 

 「テレーゼお姉ちゃんたち、どうかな?」

 イーナが少し恥ずかしそうにみんなの所にやってきた。


 「イーナ、凄く似合ってる。あとヘレナ、流石お姉さんだね。これだったらすぐに自分で着られるようになるだろうと思うわ」

 「ヘレナが妹想いなのがよく解る服ですね。明日はこれを着てギルドに行きましょう」

 (イーナ、とても可愛いですよ。良かったですね)

 「イーナ、よく似合ってるぞ。良かったな」

 テレーゼ、カトリナ、ティアナ、アデリナがヘレナの選んだ服にとても好意的である。


 「テレーゼお姉ちゃんたち、お母さん、ほんと?えへへ・・・」みんなから誉められてとても嬉しそうなイーナ。


 イーナは服を着ることを嫌がっていないことが、その上で、楽しそうにしていたことが何よりである。






 イーナのことが一段落したのを見て、テレーゼは妹たちに、今日の外出中にティアナに関して自分たちが行ったことを話すことにした。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 洋服を着る習慣のなかったイーナが洋服を問題なく受け容れられて良かったですね。今日の彼女は人間になって服を着るという人生で初めての経験をしていますが、それを無事に終えることができたのは、カトリナやアデリナやヘレナという妹想いの姉たちがいるからこそです。誰一人として欠けてはならない大切な存在といえます。


 次回はテレーゼの心と身体に、ティアナが永続的に存在することができるようになったことを、妹たちに説明する話から始まります。

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