表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第4章:人化魔法と覚悟
17/84

第1話:5姉妹の夕食

 森から自宅に帰ってきて入浴を済ませたテレーゼたち5姉妹。

 イーナにとっては、テレーゼたちと一緒に過ごす最初の夜です。

 本話はテレーゼがイーナとの入浴で頑張った後の夕食~就寝までの内容ですが、合わせて姉妹の紹介をさせていただます。

 (大変な目に遭ったわ・・・身体が若返ってるのにこの疲労なんだから、これが元々の50歳の身体だったら今日だけでなく、当分の間、慢性疲労や全身筋肉痛から回復しないのは確実だわ・・・)


 テレーゼにとっては、率直な話、患者様への施術以上に重労働なイーナとの入浴だった。






 イーナは、キラーグリズリーという強力な熊の魔物の女の子なので、自分で身体を洗うことができない。


 そのため、テレーゼが一緒に入浴したときに、彼女が柔道整復師のスキルを活かして、毛皮に付いた垢を取り除くことも含めて、マッサージよろしくイーナの全身をシャンプーしたのである。


 彼女は今日まで野生の小熊だったので、当然ながら今までシャンプーをしたことがなく、シャンプー直後の洗い場には相当な量の抜け毛と汚れが発生した。ゴミ袋にそれらを集めたあとで、すぐにデッキブラシと洗剤で洗い場の床掃除をする必要があったが、魔力で白銀色に輝くイーナのモフモフした柔らかそうな毛並みを見ると、頑張って全身くまなく(熊だけに・・・)シャンプーしたことは、世紀末神拳使い4兄弟の長兄ではないが、我がシャンプーに一片の悔いなし、である。






 (こういうとき、自分に回復魔法を掛けたら疲労が取れるかしら?)


 回復魔法を今まで自分自身に使ったことがなかったテレーゼは、試しに使ってみることにしたが、効果覿面だった。


 カフェインがたくさん含まれた次の日の元気を前借りするような缶入り飲料や、茶色の小さいガラス瓶に入った栄養ドリンクなど、全く比較にもならないくらいの素晴らしい魔法の効果である。


 但し、疲れたからといって、回復魔法に安易に頼るのは止めておこうと思う。


 終戦後の混乱期に、開戦直前に開発されていた、疲労がポンと飛ぶという触れ込みの薬物が軍から大量に放出され、これが全国に蔓延して薬物中毒者が大量に発生するという社会的問題となった話をふと思い出した。


 因みにドイツでは日本より開発が早く、大戦中に蔓延したうえ、相当数の精神病の原因にもなったとのこと。


 往々にして物事は楽な方に流れたらロクなことにならない、という典型例であろう。


 何よりも魔法で疲労を回復させた場合、本来疲労回復の過程で生じる筋組織の回復や肥大が行われず、筋肉や筋力などの廃用性萎縮はいようせいいしゅくが起こりかねないため、イーナとお風呂に入るときの労力軽減の工夫を検討したほうが余程建設的である。


 (作者補足:廃用性萎縮とは、使わない筋肉や関節などが痩せて以前の力が出せなくなったり、以前より身体が動かしにくくなることを指す。例えば、寝たきりの人や、骨折してしばらく患部を固定していた人の、身体や患部の筋肉が痩せることはその典型例である。リハビリテーションは、これらを回避するための技術・手法といえる)






 入浴のあと、末妹(「五女」なのは間違いない筈だが、具体的な年齢は、本熊(?)のイーナに聞いても、よく解らなかった。もしかしたら、イーナのお母さんが知っているかも知れない)のイーナを連れて居間に行く。


 既に3人の妹たちが夕食を用意してくれていた。もちろんイーナ用の夕食(帰宅途中、姉妹全員で大量に採ってきたンベの果実)も、一緒のテーブルの上に置かれた大きな平皿に盛られており、全員一緒に夕食である。


 大きな平皿が何の皿なのかと一瞬思ったものの、テレーゼが接骨院開業時に、ささやかではあるが関係者を招待して開業パーティーを開いた際に、近くのスーパーで注文購入したオードブルが盛られていた、プラスチックでできた直径40センチほどでほぼ凹凸のない朱塗りのテイクアウト容器だったことを思い出した。


 (何かに使えるかと思って、丁寧に洗ってビニール袋に入れて保管していたけど、まだあったんだ・・・)

 そう思いつつ、夕食の用意をしてくれた3人に声を掛ける。






 「みんな、ありがとう」


 「テレーゼお姉さん、イーナとのお風呂大変だったんじゃないですか?」


 「テレーゼ姉さん、明日からはイーナの風呂は全員で交代にしよう」


 「姉さんばかり大変だと妹の立場がない。それに姉さんが日本で買ってきてくれたインスタント?があるから、食事の準備は楽」


 テレーゼのお礼の言葉に、「次女」のカトリナ、「三女」のアデリナ、「四女」のヘレナが、それぞれお風呂での苦労をねぎらってくれる。


 (おねえちゃんたちといっしょのごはん、うれしいな♪)と、イーナからテレパシーのように意思が伝わってくるので、3人に通訳する。






 「それでは、みんな、いただきます」「「「「いただきます」」」」


 自分が生きるために食べ物を、命をいただくという概念は、姉妹全員でご飯を食べるとき、テレーゼが食事を前に手を合わせることに疑問を感じた妹たちが、テレーゼからその意味を教えてもらったのである。以降は姉と一緒に食前食後での挨拶を行うようになった。


 日本と違い、セフィロトには元々その概念や習慣がなかったようだが、魔物を倒して生活の糧を得る冒険者の妹たちには受け容れやすい概念であったようで、問題なく習慣となった。


 今日から妹になったイーナには初めてだったが、テレーゼがその意味を説明し、食物連鎖のほぼ頂点であるキラーグリズリーのイーナにもあっさりと受け容れられた。


 今日は2食続けてンベの果実だが、同じ食べ物ばかりでは可哀想なので、明日以降は、母親と一緒に暮らしていたときに食べていたものをイーナに聞いて、可能な限り対応したいと思う。






 「ごちそうさまでした」「「「「ごちそうさまでした」」」」


 食前と同じく、食後も最初の声かけは長女のテレーゼの役目である。


 食後、全員で夕食の後片付けを済ませ、姉妹5人でテレビを見る。イーナはテレビの映像と音に当初ビックリしていたが、すぐにテレビに慣れて他の姉たちと一緒に楽しんでいた。






 「ところで、今日からイーナも一緒に寝るけど、みんなも一緒に寝ましょう」と、テレーゼ。


 今までは4人だったのでテレーゼ以外は施術室のベッドを使ってもらっていたが、今日からは、居間と隣の自室を間仕切りしているカーテンをずらして大部屋にして、母親がいなくなって寂しい思いをしていたイーナも含めて全員で一緒に寝ようと思ったのだ。妹たちも、全員で一緒に寝ることに賛成してくれた。


 毛布と敷きパッドとマットレスは幸い全員分以上あるのと、セフィロトは四季がほぼなく年中温暖である(以前カトリナに教えてもらった)ため、何なら毛布で1年中就寝することも可能である。それと、2つの部屋は可動式の間仕切りカーテンをずらせば床には段差がないので、真ん中の人が仰向けになったとき、背中が痛いということはないのが幸いである。






 (おねえちゃんたちといっしょにねるの?たのしみ♪)と、イーナがテレーゼに伝えてきた。


 みんなで話し合いの結果、今日の毛布配置はイーナが部屋の真ん中、その左右に4人の姉たちとなり、イーナの両隣は毎日交代することに決まった。


 寝る前に歯磨きを行う。テレーゼ以外は元々歯磨きの習慣がなかったが、テレーゼに新品の歯ブラシと歯磨き粉を渡され、歯磨きする習慣が身についた。


 イーナは今日はテレーゼが磨いたが、明日以降は風呂と同じく、全員で交代してイーナの歯磨きをすることにした。






 「おやすみなさい」「「「「おやすみなさい」」」」テレーゼが部屋の電気を豆球にして妹たちに声を掛け、全員横になった。


 特にイーナは、姉たちと一緒に寝るのが、喩えるならば修学旅行で友達と過ごす夜みたいに思えて嬉しかったのか、隣のテレーゼに身体を寄せて本当に嬉しそうな寝顔だった。






 (近日中にギルドに行って、調査依頼の復命をしなくては・・・)


 そう考えるテレーゼであるが、イーナを従魔登録することは、種族は違えどもれっきとした妹なのだから、何か違うと思うのだ。


 そうなると、イーナのお母さんの魔石の力を借りて「イーナの人化」を行った方が良いかも知れないが、そこは何よりもイーナの気持ちと、イーナのお母さんや3人の妹たちも合わせた全員で、明日しっかり考えようと思うテレーゼだった。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 テレーゼがイーナとのお風呂で疲労困憊になってしまったのはきつかったと思うのですが、彼女に生まれて初めて全身を綺麗に洗ってもらったイーナが、白銀に輝く柔らかいモフモフになって良かったですね。

 あと、お母さんと別れて寂しい思いをしていたイーナが、初日の夜から幸せそうで何よりです。


 次話は、イーナの立場を憂慮したテレーゼが、イーナのお母さんを含めた妹たち全員にある提案を行います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ