表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第3章:4人パーティーと出逢い
16/84

第4話:みんなで帰宅

 テレーゼたち5姉妹の心温まるひとときのあと、彼女たちはイーナのお母さんとお話をします。

 その後、全員で自宅へ帰宅しますが、テレーゼには、帰宅後にもうひと頑張りする理由があったようです。


 10月26日 一部表記揺れなどを修正しました。

 「みんな、本当にありがとう」


 テレーゼが妹たちへの感謝を口にすると、アデリナが近付いてきて、テレーゼの頭を両腕で自分の胸元に優しく抱き寄せる。テレーゼほどではないにしても、なかなかの大きさと形の良さである。

 そして、「テレーゼ姉さん、もう少しこのままでいてくれ」と、テレーゼに伝える。


 つい先日、テレーゼがプレゼント後にアデリナの嬉し泣きを、気持ちが落ち着くまで受け止めてくれた事へのお返しらしい。


 「アデリナ、まだ私を泣かせたいの?」「好きなだけ泣いて良いからな」「バカ・・・」


 テレーゼとアデリナのところに「私も」「アデリナ、ズルイですよ。私もテレーゼお姉さんを抱きしめたいです」「イーナも!」と、ヘレナが後ろから腰を、カトリナが左腕を、イーナが右腕を抱きしめている。


 「みんな、ありがとう・・・」しばらくの間、テレーゼの周辺は妹たちで密集状態だった・・・






 「みんな、もう大丈夫だから・・・本当にありがとう。みんなが私と一緒にいてくれて、心も身体も暖かくて凄く幸せで気持ち良かったわ・・・」


 「テレーゼ姉さんって、サラッとアタシたちの心が震えるようなこと言えるんだから敵わないよ・・・また必要ならいつでもアタシの胸貸すからな。まあテレーゼ姉さんには物足りないかもだけど・・・」

 「私も」

 「アデリナ、ヘレナ、今度は私がお姉さんを抱きしめるんですから」

 「イーナもおねえちゃんをギューってするんだもん!」


 (アデリナ、あなたは十分過ぎるくらい包容力があると思うわ。あと、私は一人っ子だったからセフィロトに来るまで知らなかったけど、凄く仲の良い真友、いいえ姉妹ね。これって本当にかけがえのないものだわ。絶対に喪わないように、恩師の言葉じゃないけど妹たちは私が全力で護るわ・・・)


 4人の大事な妹たちの優しさに、改めて深い感謝と決意を新たにするするテレーゼだった。






 しばらくしてイーナが、(テレーゼおねえちゃん、おかあさんのところにいってもいいかな?)と、テレーゼの頭の中に話しかけてきた。


 「イーナ、どうしたの?」(「・・・」)「これから私たちと一緒に付いて行くから、その前にお母さんとお別れしたいのね」(「・・・」)「場所は、ここから見えてる森の中にある大きな水たまり(池かしら?)、そのそばにある大きな木のそばなのね。わかったわ」

 他のメンバーにも伝わるようにイーナの気持ちを言葉にするテレーゼ。


 「ねえ、みんな、イーナと一緒に、彼女の母熊のいた場所に行って良いかな?」とテレーゼは3人に尋ねる。


 「テレーゼ姉さん、みんなで行こうぜ!可愛い妹、イーナの頼みなんだし」

 「当然。というかアデリナ、すっかりお姉さんになってる」

 「テレーゼお姉さん、みんなで一緒に行きましょう。あと、もし良ければこれからも、私たちにイーナの気持ちを通訳して下さいね」

 3人が当然のように、みんなで行くことを賛成してくれる。


 「みんな、ありがとう。イーナ、みんな一緒に行ってくれるそうよ。良かったね」

 (テレーゼおねえちゃん、おねえちゃんたち、ありがとう♪)と、テレーゼ&イーナ。


 「イーナが3人にお礼言ってるわ。あと、イーナに3人の名前教えるから、彼女に自己紹介してくれるかな?」と、テレーゼ。3人の協力でイーナへの自己紹介を済ませる。


 (アデリナおねえちゃん、カトリナおねえちゃん、ヘレナおねえちゃん、よろしくね♪)

 イーナが3人に挨拶して、それをテレーゼが通訳する。






 しばらくイーナと会話をしてきたが、ここまできちんと意思疎通が成立することを考えると、イーナには、やはり人間の子供と同等かそれ以上の知能があるようだ。


 因みに、キラーグリズリーの成獣は、熟練した冒険者数人がかりでも全く歯が立たない強力な魔物で、魔力を帯びた白銀色の毛皮が攻撃魔法を完全に反射するため、基本的に格闘戦でしか戦えないが、毛皮が丈夫で動作も機敏であるため、剣や槍や弓矢で手傷を負わせることが相当に難しく、遭遇して逃げ切れなければ、即パーティー全滅も覚悟するべき絶望的な相手である、というのが冒険者や騎士団員が最初に教わるくらいの共通認識である。


 逆に倒せる可能性がある多人数のパーティーだと、戦闘ではなくすぐ逃走を選び、また罠もほぼ確実に察知してしまう(そのメカニズムは未だに解っていない)など、魔物随一というよりは人間並みの戦術眼を持つと言って良い知能の持ち主でもある。


 これは子連れの母熊では特にこの傾向が強く、もし仮にこのような状態で戦闘に入ると、母子共々文字通り命が尽きるまで死に物狂いで戦い、絶対といっていいほど相手に服従はしない。


 しかし前述の通り極めて強力な魔物であるため、もし奇跡的に従魔化できたならば、その有用性は計り知れない。

 当然ながら従魔化は何世紀も前から、主に為政者の野望を満たすべく、数多の試行例があるものの、まず相手を服従させることが限りなく不可能に近いため、マルクトは言うに及ばず、王都ダアトですら、従魔化の成功例は口伝レベルですら皆無である。


 今回のテレーゼたちのように、辛うじて従魔化の可能性がある子熊が母熊と離れて単独で出没し、かつ服従させることができる戦闘技量の持ち主がいて、最後に只でさえ稀少な従魔士がいる状況が一度に揃うのは、偉業という言葉すら生ぬるい「奇跡」である・・・






 閑話休題。5姉妹は、末妹イーナの母親がいた場所に向かうべく森に入った。


 森から5分ほど奥に入った場所に、湧き水らしい清水が水たまりと言うには大きい池を作っている。

 そばに1本の大木があり、そこにイーナの母親のものらしい、夜空のような深い青色の魔石が落ちていた。


 「おかあさん・・・」イーナがその魔石を拾おうとするが、イーナの熊手では無理なのでテレーゼが拾い上げる。

 母親の魔石を拾い上げた瞬間、母親の強い想いのような感情をテレーゼは感じたような気がした。

 テレーゼはイーナと左手で手を繋ぐようにして、彼女の右掌に母親の魔石を触れさせてあげるようにした。

 突然、全員の頭の中に優しい声が聞こえてきた・・・


 (テレーゼさん、皆さん、はじめまして。イーナの母です。イーナに名前をいただいて、そしてお姉さんになってくれてありがとうございます。イーナをよろしくお願いしますね)


 「お母さん、初めまして。テレーゼです。イーナは私たちが必ず幸せにしますから安心して下さい」


 (ありがとう・・・あとテレーゼさん、今あなたが持っている私の魔石には「人化」の魔力があります。もしイーナがそう望むのなら魔力を使ってあげて下さい。私はこれからは魔石の中でイーナのことを見守っていますね・・・イーナ、お姉さんたちと一杯幸せになりなさい・・・)


 (うん、わかった。おかあさん、ありがとう・・・)

 イーナが母熊にお礼を言った後、頭の中の優しい声は聞こえなくなった・・・


 (おかあさん、つかれちゃったのかな・・・)

 (イーナ、私がずっと、いや私たちがずっとそばにいるから・・・)

 悲しそうなイーナを、テレーゼが優しく抱きしめ頭を撫で続ける・・・


 (テレーゼおねえちゃん、ありがとう。もうだいじょうぶだよ・・・)

 イーナの声を聞いて、テレーゼは彼女の身体をそっと離した。






 「イーナの母さんのお墓、作ってやろうぜ」「賛成」「早速作りましょう。大木のそばに池のほとりの石を積んで・・・これで良いと思いますよ」


 直径50センチほどの半球状のお墓を作った。近くに咲いていた母熊の魔石を思わせる青い花と、さっき取ったンベの実をお供えして、その後母熊への祈りを捧げた。


 「テレーゼおねえちゃん、アデリナおねえちゃん、ヘレナおねえちゃん、カトリナおねえちゃん、おはかつくってくれて、おかあさんのためにいのってくれてありがとう・・・」

 イーナの気持ちをテレーゼが通訳する。


 「そんなの当たり前じゃない・・・みんなでお家に帰りましょう」

 「イーナ、途中でンベの実たくさん取って帰るからな」

 「私もたくさん取ってアデリナにもってもらう」

 「ヘレナ、イーナのご飯なんだからみんなで運びましょう」

 「おねえちゃんたちありがとう♪(テレーゼが通訳)」


 テレーゼは妹たちの会話を耳にしながら、イーナの母熊の魔石を道中落とさないように、大事にハンカチに包んで懐に入れて一緒に連れて帰ることにした。魔石をお墓に置き去りにするなど、想像すらしたくないテレーゼである。


 魔石をイーナが身に着けられる何らかの工夫をしようと思うが、頭の中に、「母親の胸に抱かれているような気がするわ・・・」という優しい声らしい言葉が聞こえたような気がしたのは何だったのだろう?


 肉体的に若返っているとはいえ、イーナとの力比べを含めて、今日1日で相当疲れていたテレーゼであるが、もし自分に可能であれば、何とか母熊とイーナを改めて再会させてあげたいと強く決意する。


 ンベの果実を道中でたくさん採取して自宅に帰宅する。何とか日没までに帰り着いた。自宅の入り口はイーナも入ることができたので何よりである。






 帰宅後、テレーゼはいつものように風呂を沸かす。3人に先に入ってもらい、そのあとイーナを連れて入浴する。


 全身をシャワーのお湯で濡らし、イーナの身体全体をひたすら優しく洗ってあげる。

 動物にありがちな、シャンプーやお湯に濡れることを嫌がらないのが幸いである。


 全身を洗ってあげると、鮮やかな白銀色のモフモフした柔らかい毛並みになった。重ねて幸いなのが、イーナが身に纏う魔力のお陰なのか、ダニやノミが全然寄生しておらず、駆虫の必要がなかったことである。

 但し、体内寄生虫がいる可能性があるため、用心のため日本で虫下しの薬を速やかに購入して、イーナに飲ませてあげたいと思っている。


 2人とも身体を洗ってから一緒に湯船に入り、よく暖まってから浴室を出る。


 そして脱衣所で、バスタオルでイーナの身体を拭いて、その後ドライヤーで身体全体を完全に乾かす。

 イーナは全身が毛皮なので流石に一苦労であるが、全身が白銀に輝き、シャンプーのいい香りがする。


 最後にベビーパウダー(テレーゼがスキンケア用に使用するため、買い置きがあった)を身体中に付けて、イーナのお手入れの完成である。


 見るからに触り心地の良さそうなモフモフのイーナを見て、仕上がりに満足するテレーゼだった。


 但しイーナとのお風呂は、身体がおよそ30歳若返ったとはいえ、本当に洒落にならないきつさだったので、近いうちに、日本のホームセンターか薬屋で、グルーミング用の大型ブラシと動物用シャンプーを、忘れずに買おうと考えているテレーゼである。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 イーナのお母さんの娘への想いや情愛の強さは、それ自体奇跡といっても過言ではありません。

 魔獣は命を失うと、魔石がくっついたままの身体は魔石を除いて程なく消滅し、魂はすぐ輪廻転生の輪に入っていきます。そうなると、再度現世に戻るのに最低でも100年単位の時間が必要になりますから、我が子が生きている間には現世に戻れないことになりますが、お母さんは自分の心の力で魔石に心を縫い付けるようにしてでも、イーナと共にあり続けたいと願いました。


 いわば魔石という生き物としてお母さんは生きています。テレーゼは、魔石を手に取った時点で、そういったお母さんの頑張りを強く認識していますので絶対に放っておけないはずですが、現状をどうにかするためには、お母さんの魔石が相当消耗しているため、テレーゼがセフィロトで得た力だけでなく、彼女自身の本質である、懐の深さや情愛の強さといった強い心の力が必要になります。


 何らかの形で身体を得て母娘が再会するためには、もう少しだけ時間が必要です。


 いろいろありましたが、第3章はこれで終わりになります。次章当初は妹のイーナのために、姉であるテレーゼたちが行動します。また、テレーゼの懐の深さや情愛の強さが、ある奇跡を生み出します。


 今後も、1ヶ月に4~5話投稿させていただければと思っています。遅筆かつ拙い話で申し訳ありませんが、一生懸命頑張りますので、ここまでお付き合い下さった方々への深い感謝とともに、次章もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ