第4話:プレゼント
自分の後半生の全てとも言える接骨院を廃業せざるを得なかったテレーゼは、気を取り直して、セフィロトで夕食を用意して自分の帰りを待ってくれている3人の真友のため、商店街で洋服などを選びます。
市役所を後にしたテレーゼは、すぐにアーケード街に向かう。両者の距離は停留所3つ分で1キロも離れていないが、すぐに電車が到着したので、買い物の時間を無駄にしないために乗っていくことにする。
電車に乗って、今日の目的地である港に比較的近いアーケード街に行くことにした。
因みに、今日は行く予定はないが、市内有数の商店街である駅横のアーケード街は、日用品に強い傾向の店が伝統的に多く、個人的には普段着などを肩肘張らずに選ぶのに向いているように思う。
テレーゼも幼少の頃から、母親の洋服選びに度々連れられて行ったことを思い出す。
あと、アーケード街には日本初となるストリートピアノが、10年以上前に2台設置されているので、今度3人を連れて行くのも良いかも知れない。
閑話休題。最初にアーケード街の外れにあるファッションビルに入り、そこで3人に良さそうな他所行き用の上下を購入する。
そのため、昨夜3人と一緒に急遽テレーゼが持っている服を使って、サイズ確認のための「試着会」を行い、サイズは念入りに確認した。サイズ選びは前述の通り、幼少時から母親の洋服選びに付き合っていたため得意である。
ヘレナにはポニーテールに似合うボーイッシュさをコンセプトにしつつ他所行きでも通用するようなものを、アデリナには落ち着いた色のベロアツーピースを、カトリナには3シーズンで重宝しそうな明るい色のワンピースをそれぞれチョイスした。
その後、インナー上下、Tシャツ、ストッキング、靴下をそれぞれ3組ずつと、自分のブラジャーも一緒に購入した。4人の中で一番カップサイズが大きかったのは、3人には内緒である。
購入直後に試着室を借りて、その場でサラシと交換する。やはりサラシよりは、身に付けるのも付け心地も数段楽である。
最後に服に合わせる形で他所行き用の靴と、冒険者稼業でも重宝するであろう運動靴を3人分購入した。昨夜服と同じく3人の足のサイズを確認していたため、比較的すんなり選ぶことができた。
もっとも、3人の真友への初プレゼントとあって、自分が服を選ぶとき以上に念入りに選んだことも相まって、一通り買い物が終わったときには4時間ほど経過しており、正直少し疲れたものの、最後にファーストフードの店で間食としても食べられるセットメニューを4つ購入した。
これで今日予定していた買い物は全て終わりである。
買い物を終えて帰宅することにしたのだが、流石に往路のように電車に乗るには荷物が多すぎる。
満員電車で潰れそうだし、何より電車を降りてから自宅まで大量の荷物を抱えて長々と歩くなど、正直な話気が遠くなりそうだったので、アーケード街を出て「付け待ち」のタクシーを拾って帰宅した。
大量の荷物を抱えつつも勝手口から自宅に入る。3人がどんな反応を見せてくれるか楽しみである。
「ただいま」
両手一杯に紙袋とビニール袋を抱えてテレーゼが帰宅する。
「「「お帰り(なさい)」」」
3人が勝手口の所まで走ってくるようにやってきた。
「とても多い荷物ですね。部屋まで持って行きますね」
「重かったでしょ」
「アタシたちのためにありがとうな。夕飯には早いから材料は下ごしらえしたけど、まだ作ってないんだよ」と、カトリナ、ヘレナ、アデリナ。
「昼食がまだなら食べるものを買ってきたから、とりあえずそれを食べようか?」と、テレーゼ。
「アタシたちが昼をまだ食べてないって何でわかったんだ?」
「そりゃわかるわよ。あなたたち今日の夕食作りのために、森とかで材料集めから精一杯やってお昼食べる暇がなかったんでしょ?あと、ギルドで依頼を受けてきたんだろうし、あなたたちこそ本当にお疲れ様」と、アデリナの問いに答えるテレーゼ。
「そんなことはないですよ。テレーゼさんに夕食を用意するつもりだったんですけど・・・」
「逆に気を遣わせた。ごめんなさい・・・」と、カトリナとヘレナ。
「夕食はみんなで一緒に作ろうか?とりあえず買ってきたものを食べよう。はい、これ」
そう言って3人に、ハンバーガーのセットメニューを渡すテレーゼ。
「おっ、まだ暖かい。こっちは冷たいな」
「美味しそうな匂い」
「テレーゼさん、いただきますね」
3人は生まれて初めてハンバーガーセットを口にするが、特にアデリナは、ハンバーガーを慌てて口に入れてしゃっくりし始め、冷たいシェイクを1口飲んでその冷たさにビックリし、フライドポテトを口にしながら「芋なのか?揚げてあるだけなのに美味いな」などと、見ていて微笑ましさすら感じる賑やかな昼食だった。
「ごちそうさま。テレーゼ、美味かったよ」
「また食べたい」
「テレーゼさん、凄く美味しかったです、ありがとうございます」
3人に大好評のファーストフードだった。
「次はこっちの洋服と下着一式と靴をプレゼントするね。上手く選べたか判らないけど、もし良ければ着てくれると嬉しいな。あと服を着るのは、手を洗ってからにしてね。隣の部屋で服を着替えてもらって、もし着られないときは無理せず待っててね」
そう言って3人に荷物を渡すテレーゼ。
「こんな服着たことないから・・・下着は何となくわかるんだけど・・・」
「私のはそんなに難しくないから、何とかなりそう」
「私の服は昨夜テレーゼさんに貸してもらった服とほぼ同じなので、1人で着られそうですね」
色々賑やかな3人である。
「終わった?アデリナは着せてあげるね。 (中略) これで完成だよ。ヘレナとカトリナは、きちんと着られたみたいね。3人とも、そこの姿見の鏡で確認してね。」
「アデリナ、何か格好良い」
「ヘレナの服って、動きやすそうで似合ってますね」
「カトリナはどこかの貴族のご令嬢みたいだな。ただアタシって、こんな女っぽい服で大丈夫なのか?」と、ヘレナ、カトリナ、アデリナ。
「アデリナ、凄く似合ってると思うよ。道行く人たちが二度見しそうな格好良さだよ。あとヘレナとカトリナも凄く良いと思う。自分で選んでおいて何だけど・・・」
「テレーゼ、アタシこの服大事にするよ。ホントありがとう・・・」
そう言って感極まった様子で、テレーゼに抱き付いて泣き出すアデリナ。
「テレーゼ、凄く気に入った。ありがとう」
「アデリナの服が一番ビックリしましたけど、テレーゼさん、本当にありがとうございます。服を選ぶセンスも抜群ですね。流石です」と、ヘレナ&カトリナ。
「もし良ければ、近いうちに今日の服を着て、私のいた街に行こうか?というかアデリナ、何も泣かなくても良いじゃない・・・さっきプレゼントした服の袖とかで拭いたらいけないから、これで拭いて・・・」
感情豊かなアデリナに抱き付かれながらも、テレーゼはアデリナに「ほら、泣き止んで・・・」とばかりに、彼女の艶のある赤髪の頭を優しく撫でながらハンカチを渡し、もう片手で彼女の背中を優しく抱く。
「(ぐすっ・・・)うん、絶対行く!」
テレーゼに抱きついたままハンカチを握るアデリナだが、ハンカチよりもすがりつくテレーゼの豊かな胸を、彼女の涙が濡らしていく・・・そんな彼女を見ていると、彼女が自分の接骨院廃業を自分の代わりに涙を流して、気持ちを洗い流してくれている気がした・・・
「今日引き受けた4人パーティーでのギルドの依頼が終わったら行こう」
「テレーゼさんの故郷を案内して下さいね」と、ヘレナ&カトリナ。
「じゃみんな、そろそろ服を着替えて夕食の準備をしようか?ところでアデリナ、大丈夫?」と、3人を促すテレーゼ。
「テレーゼ、ごめんな。アタシ一杯濡らしちゃって・・・」
「そんなのすぐ乾くんだから大丈夫よ。逆にアデリナが気にしたら怒るからね!」
「わかったよ、テレーゼ。ホントありがとう・・・テレーゼって、香水とか何も付けてないのに何か良い匂いがするし、懐が大きくて暖かいから凄く安心できるんだよ、えへへ・・・」
アデリナも落ち着いたようで何よりである。感情豊かな彼女には笑顔がよく似合う。
その後、4人で食事を作り、4人で一緒に夕食を食べた。みんなで食べたのは、素朴ではあるが心の篭もった美味しい料理だった。
(今日3人にプレゼントした洋服、みんな凄く喜んでくれて本当に良かったわ・・・)と、美味しい料理を口にしながら、気持ちがほっこりと暖かくなったテレーゼである。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
今までテレーゼが心血を注いで守り抜いてきた接骨院の廃業により、テレーゼに多大な心労があったのは事実ですが、洋服のプレゼントをもの凄く喜んでくれたアデリナの嬉し涙に、テレーゼ自身、もの凄く救われています。
次章では、テレーゼに複数の特技があることが明らかになります。あと4人には新しい出会いが待っています。
ここまでお付き合い下さった皆様であれば、次章もきっと楽しんでいただけるものと自負しております。極力予定通り投稿させていただきますので、よろしくお願いします。




