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宇宙猫  作者: iakahara
3/5

宇宙猫・承


 眠っていた人間が目を覚ます理由として、匂い、音、痛みなどの刺激が挙げられる。では、人は毎朝毎日、異臭を嗅いだり、騒音を聞いたり、何者かに突っつかれたりしているのだろうか?


 少なくとも今私が覚醒した理由は、「十分眠ったから」としてよいだろう。


 耳鳴りがひどいが、周囲から物音はしない。呼吸を落ち着け、現在の状況を考える。私は病気なのだろうか?何らかの卒中か発作で倒れたのだろうか?立ち眩みでなくとも、疾患が原因で突然の頭痛に襲われることがあるというのは知っている。だが、先ほどはもっと別の、高密度の物体が直撃したような感触があった。例えば鉄。石。つまり、私は鈍器で殴られた可能性がある。


 足先に暑苦しさがない。冷たい空気が当たる。靴を履いていないようだ。私は家で寝ているのか?今までの探検は夢だったのか?いや、足だけではない。背中や腕にも冷たく、そして硬い感触がある。全裸で倒れているのか?


 目を開けるとそこは家ではなかった。目は動く。指先も動く。周りを見ようとしたが、首が動かない。痛すぎる。だがやはり、私は裸で横たわっているようだ。視界に入るのは黒い天井。実際に黒いかは分からないが、暗いのでそう見える。指先に伝わるのは、恐らく石造りの床。私は屋内にいるらしい。


 今いるのは暗い部屋。川辺で殴り倒された可能性が高いことや衣服を剥ぎ取られていることを考慮すると、私は何者かに捕まって閉じ込められたとも考えられる。鞄はどうなったのだろうか。


 考えることに夢中で、手足が動かせることに気付かなかった。ゆっくりと起き上がると、壁の一面が牢屋のような鉄格子になっていた。その向こう側は細い通路。いや、違う。この場所は本当に牢屋なのだ。刑務所のような施設ではない。誰かの私有地だ。あるいは刑務所跡の廃墟か。罪を犯した覚えはない。暗くとも周りが見えるのはどこかに光源があるからだろうが、見渡す限り窓も照明も見当たらない。


 と、見慣れたものが目に飛び込んできた。私の鞄だ。牢屋の外に紐が見切れていた。掴んで引き寄せたいが、周りから何者に見られているかも分からず、格子から手を伸ばすことは躊躇った。牢屋の扉を恐る恐る押してみると、意外なことにそれはあっさりと開いた。私はカメのような動きで首を伸ばし、牢屋の外を窺った。


 また息が止まる。殴られたのではない。一瞬の痙攣と共に心臓が激しく鳴った。誰かいる。鞄のすぐ横、牢屋の中からは死角だった位置に誰かが座り込んでいる。これまた一糸纏わぬ裸だ。その男は座って、私のサンドイッチを食べていた。実際その光景を見てはないが、それを包んでいた緑色の紙が転がっていたのでそう思っただけだ。暗さのせいでよく見えないが、その裸の男は全身が何かで汚れている上に、傷だらけのようだった。男は顔を上げると、私の方を見てにやりと笑った。私と同じようにここへ攫われてきたのか、はたまた私をここへ攫った張本人なのかは分からないが、どうやら狂っているらしい。


「よく寝たな」


どうするか迷っていると、男の方から話しかけてきた。低くしゃがれた、山羊の鳴くような声だ。気絶してからどれだけ時間がたったのか知らないので、よく寝たのかどうかは分からない。自分が全裸であることが不思議と気にならないのは、目の前の男もそうだからだろうか?この男はあまり刺激するべきでないタイプなのだろうか?好意的に接しなければ危険だろうか?私の鞄がここにあるのなら、服はどこにあるのだろうか?ここはどこなのか?この男は何者なのか?私と男が同じ立場にないことは明白だが、私に何の用があったのか?浮かぶ疑問に限りはないが、それら全てを一度に並べ立てるわけにもいかず、直感的にこみ上げた言葉を声に出した。


「帰りたいんですけど」

「その恰好でか?」


もっともな意見だ。私を攫った犯人は逃がさないために衣服を奪ったのだろうか。だが全裸・手ぶらで街を歩いても暴漢かなにかに襲われたと思われるだろうし、実際そうなのだから羞恥心は今更重大な問題ではない。こうなれば調べるつもりだった集落はどうでもいい。この場所がどこかは知らないが、誰かに助けを求めたい。家に帰りたい。


 男がこちらを見ながらゆっくりと立ち上がった。思わず身構える。


「お前は病気だ。救ってやる」

「病気ではありません」

「病人め。いつでも真の狂人は無自覚だ」

「私は病気ではありません。あなたが私をここへ連れてきたんですか?」

「パノプティコンを知っているか?賢いことは愚かさへの侮辱だ。ほら、そこにも監視が」


そう言って男は私の後ろを指差したが、振り向いても暗闇でよく見えない。向き直ったその時、男の拳がこめかみを直撃した。再び頭痛。脳をツルハシで貫かれたような衝撃。


「アスカラは命題を使って悪魔を否定したが私は違う。優れた道具ほど悪用の余地がある。学問も同様だ」


もはや考えることもままならない頭がざらついた床を打った。男は仰向けになった私の両足首を脇に抱えて歩き始めた。背中が擦れることも頭の痛みのせいで気にならない。


「近頃は料理もしなくなってな」


私のサンドイッチが美味しかったと遠まわしに言いたいのか?引きずられながら、せめて鞄を掴んでいこうとしたがギリギリ手が届かなかった。


*


「心拍数66」


またの目覚め。今度の部屋は明るかった。


「抗原反応あり。アレルギー症状なし。体温正常…」


硬い床ではない。ベッドの上で寝かされていたようだ。私は相変わらず全裸のまま。さっきの牢屋よりはずっと広い部屋だった。


「脈拍よし、血圧よし、塩類濃度…」


明かりのある方から男がブツブツと独り言を喋るのが聞こえてくる。起き上がってみると、部屋の反対側のいかつい作業台に向かって何やら手を動かしていた。改めて見ると男はかなり長身で、肌は痣の痕や大きな染みに覆われて褐色に染まっている。肛門の辺りは特に茶色く変色していた。何の汚れかは考えたくもない。


 部屋を照らしていたのは照明ではなく、作業台の上や周りに置かれた大量の機械の電光だった。どうやって持ち込んだのか知らないが、見たこともないような機器ばかりだ。その明かりに照らされたこの部屋も先ほどの牢屋に劣らず薄汚れている。


 少しして突然声が止んだかと思うと、目にも留まらぬ速さで男がこちらを振り向いた。目が合うと歯を見せてまたにやりと笑う。黄ばんだ歯だ。垂れ下がった目は片方だけ充血しており、鼻の穴は私が目一杯膨らませたよりも大きい。笑うと顔中皺だらけでくしゃくしゃになった。


「ちょっとばかり痩せすぎだな」


男は開口一番そう言った。私はこの男に拉致されたことを確信した。一刻も早く出ていきたいが、下手に刺激してまた手を出されては敵わないので、どうにか私を解放する気にさせるにはどうすればよいものかと必死に思考を巡らせた。この男の前でどれだけ動いていいのか分からない。きっと部屋を出ることは許されないだろう。ではベッドから降りるのは?周りを見るのは?そもそも目を覚ましたことに気付かれてよかったのか?


 唐突に男の笑顔が消えた。何かを感じ取ったように眉に皺を寄せ、瞳をギョロつかせる。私もつられて耳を澄ませていると、男は作業台から小さな金属の箱を取り上げ、横の戸から大股に出て行った。部屋には私一人残された。


 もしかすると今が逃げ出す絶好の機会ではないのか?そう思ったが不安も感じた。部屋の出入り口は今しがた男が出て行った一か所しかない。もし途中で鉢合わせたら?何か異変を察知して部屋を出たようだが、どこまで行ったのだろうか?どれくらいでここに戻ってくるだろうか?部屋を出て逃げ隠れできるのか?一体あの男はどれほど私に頓着があるのだろうか?


 考えていても埒が明かない。意を決してベッドから立ち上がった。極力足音を立てぬよう出口に近づいていると、作業台の上に置かれた一枚の紙きれに目が留まった。写真だ。私が小屋から持ち出した猫の写真。その他に私の持ち物は見当たらないから、あえてこれだけを抜き取ってきたらしい。男は猫について何か知っているのか?


 部屋の外で足音がした。男が戻って来たのか?音がよく反響するらしく、どのくらい遠くで音が鳴っているのか判断できない。すぐに帰って来るとしたら、逃げ出しても見つかる危険性が高い。慌ててベッドに飛び乗り、様子を伺うことにする。


 結局男が戻って来たのは、それから何分も経った後だった。部屋に入ると男はこちらを見てまたにやりと笑った。こちらの考えを全て見通しているような、気味の悪い笑顔だ。


「恐れるな。悪魔に打ち勝つ死神がおらずとも私がついている。付いて来い」


男はそう言って手招きをした。その右手は人差し指と中指、薬指の長さが半分しかなかった。


 薄暗い通路を、黙って男の後を付いて歩いた。部屋を出てから入り組んだ通路を曲がったり階段を下ったりする間、二人の足音と息遣いを除けば周囲は完全な静寂に包まれていた。周りがよく見えず静かな分、男の強烈な体臭がはっきりと臭った。加齢臭や獣臭の混じったような不快な臭いだった。


 どれだけ歩いただろうか。ようやく目も慣れてきたとき、唐突に開けた空間に出た。そこは通路が大きな円を描く回廊になっており、中央は吹き抜けで上下の階も同じ形の回廊となっているのが見えた。よく見るとその回廊の外側の壁は鉄格子で覆われており、そこには狭い牢屋がぎっしりと並んでいるのが分かった。もしかしてここは先ほど私が閉じ込められていた場所だろうか?


 それと同時に、無音の暗闇の奥から何やら音が聞こえてきた。耳を澄ませると、それは蜂の羽音のように何かが振動する音のようであり、それにしては低かった。男と私は通路を周って回廊の反対側へ渡った。進むにつれて、心なしか男の体臭とは別の異臭が鼻をつき、同時に気温が上昇しているような気もした。


 音の正体が判明する。回廊の一番奥の牢屋の目の前へ着くとそこには一台の発電機があり、それが最高出力で稼働し続けているための機械音だったのだ。


「神は悪魔を宿す。へりくだるのではなく、利用するのだ」


発電機から伸びるケーブルは、牢屋の一つの鉄格子に繋がれていた。その牢屋の中は一層暗かったが、影が見えた。何者かがいる。片や私の横では、唐突に男が跪いて祈りを捧げるように手を合わせ、何やら不規則なリズムで呼吸し始めた。


 目を凝らすとその牢屋は他のものと違い、全ての壁面に太い鉄線が縦横に張り巡らされていた。奥の壁にもある。


 しばらくして牢屋の中の何者かがこちらへ近寄ってきた。近づくと、その人物は傍らの男を凌駕する強烈な悪臭を放っていた。便所の臭いどころではない。それが鉄格子すれすれまで来て初めて、その容貌がはっきり見て取れた。それは今の私たちと同じく産まれたままの姿をした男だった。だがその体躯は傍の男を遥かに凌ぐ長身で、圧倒的に筋肉質だった。


 傍で祈りを続ける男と牢屋の中からこちらを眺める男を見比べると、牢屋の中の男の方が二回りは大きく、2メートルは優に超えているように見える。腕も脚も私たちの倍は太い。何よりその顔はこの世のものではない醜悪な見た目をしていた。頬はただれて両の口角は深く裂け、半分腐った肉が露わになっている。毛の一本もない頭頂部から側頭部にはいつ剥がれ落ちても不思議ではない程に深い裂け目が何本も走っており、傷口が絶えず振動している。そして極めつけはその目だ。まるで両方くり抜かれたかのように真っ黒い穴がぽっかり開いている。窪みが深すぎて眼球があるのかどうかも分からない。知性は全く感じられなかった。近寄るだけで躊躇なく危害を加えてくる気さえした。その大男は立ち尽くしたまま、鉄格子越しに祈る男を時折首を傾げながら観察している。その口が金魚のようにせわしく開閉する。


この状況がいつまで続くのか分からず私も立ち尽くしていると、突如どこからともなく声が響いてきた。


「上に誰かいるのか?おい!」


突然のことに私だけが肩を震わせる。聞いたことのない男の声だ。牢屋の中の大男が言ったのかと思ったが、その男が喋る気配はない。ここではない別の場所から声を張り上げているらしい。祈る男に対して言っているのだろうか?だが、祈る男と牢屋の中の男はどちらも声に無反応だ。では第三者、つまり私を指して言っているのかもしれない。


「そこの化け物の真下だ!いるなら来てくれ!」


また声がした。二人を見ても、まるで気にしている様子はない。化け物というのが牢屋の中の男を指すのなら、声の主も牢屋に入っているのだろうか?確か回廊の入り口付近に梯子があったのを見た。下の階にも移動できるはずだ。それに、根拠は無いがその声の主は目の前の二人の男よりもまともだという気がしたので、向かう価値はあるように思えた。


 恐る恐る、牢屋から離れるように、小さく一歩踏み出した。片足を上げ、横に滑らせ、下げる。これだけの動作に集中力を削がれるのは初めてだ。


 完全に足元に気を取られ、俯いていた。顔を上げると、祈る男は変わらず牢屋に向かって祈っていた。祈り始めてから私の存在など完全に忘れてしまったかのようだ。だが牢屋の中の大男の顔がこちらに向いていた。私の動きが止まる。


「いないのか?いるだろう!スウィンガーと一緒に!」


スウィンガーとは祈っている男の名か?いやどうでもいい。大男に見られている。心臓が痛くなるほど鼓動が速くなっていた。胃もズキズキと痛む。息が荒くなるのを必死に抑えた。静止すること数秒。


 動いてもいい気がしてきた。大男はこちらを向いただけで、それから身動き一つ取っていない。私を見たのは、見知らぬ人間だったからというだけだろう。大男の表情が全く変化しないので感情や思考は読み取れないが、態度からしてあまり他人に興味を示さない性格なのかもしれない。勇気を出してまた一歩。大男は私を目で追うが、立ち尽くしたまま動かない。一歩。また一歩。牢屋から一歩離れる毎に、二人の体臭は鼻にこびり付いたままではあるもののそれほど臭わなくなり、発電機の発する振動音も遠ざかり、その牢屋自体も闇に呑まれて見えなくなり、終いには走って逃げた。追われる気配もなかった。


 無心で走るうち、回廊に入って来た出入口まで戻ってきた。それにしても大きな回廊だ。一周100メートルはあるのではないか。このまま声の主の所へも行かず逃げてはどうかという考えもよぎったが、この、少なくとも私が見た部分だけでも恐ろしく広大な建物から脱出できる保証もない。大人しく梯子を伝って一階分下へ下り、この暗い回廊を再び半周することにする。


 今度は先ほどよりも緊張することなくやって来れた。頭上の発電機の音を頼りに進むうちに、声の主に近くで呼び止められた。発電機の音がかなり大きいせいで、大男の牢屋の前で祈る男がまだそこにいるのかどうかは分からなかった。


「お前、ああ、よかった。こっちへ来い」


声の主の男は確かに言った通りの場所にいた。だがその男のいた牢屋は、不可解なことに鉄格子が壊れていた。古い鉄なら錆びて破損することもあろうが、そうではない。まるで何かの巨体が無理やり押し通ったかのように鉄格子がぐにゃりと曲がり、丸く隙間が空いていた。何の仕業か想像がついたが、そんなことができるなどと信じたくもなかった。そんな私の考えも見透かしたかのように、私を呼んだ男はにやりと笑った。


 その男もまた全裸だった。だが私含め他と違うのは、右腕に包帯を分厚く巻いている点だ。何よりその男には右腕の肘から先が無かった。わざわざ包帯をしているということは後天的に欠損した可能性が高い。それも最近。だがその男の目には光があった。壁にもたれて胡坐をかき、何か希望を持ったような眼差しをこちらに向けている。


 片方しかない手でその男は手招きしてきた。扉は鍵がかかって開かなかったので、鉄格子に空いた隙間から踏み込んだ。


「座れよ」


そう言われて腰を下ろす。言われなくとも座るつもりだったが。狭い牢屋につき、反対側にいても2メートル足らずの距離で向かい合うことになる。男は目を合わせたまま、私を指さして言った。


「その、左のやつ」


左?左腕のことだろうか。よく見ると、左の上腕に小さな赤い傷があった。いつ付いたものだろうか。気絶していた時に付けられたのかもしれない。


「打たれたな」

「撃たれた?」


銃弾が当たったようには見えない。もっと鋭利なもので付いた傷だろう。何も答えないでいると、やがて男は私が何も把握していないことを悟ったのか真顔になった。


「ワクチンだよ。注射。俺も打たれた」


改めて傷を見る。細い針に刺されたというよりは、切れ味の悪いカミソリで擦ったような傷口だ。おまけに腫れ上がっている。注射器でこんな傷がつくとは、素人にしてもかなり下手くそだ。第一それ以前に、


「何の注射ですか、これ…」


目の前の男の言葉を信じるとしても、どういうつもりで注射を打っているのかも分からないし、そもそもこんな場所で打たれる注射などろくな衛生も望めない。これのせいで病気になるかもしれない。打ったのは私を殴って連れてきた男だろう。


「奴は頭が狂ってる。医者のつもりだろうが、一番病気なのは自分だって気付いてない」


男が言った。「奴」とはきっと私と同じ人物を思い浮かべているのだろう。全くだ。しかしいない男の悪口を言っている場合ではない。より差し迫った話題がある。今こそ好機だ。


「あの…ここで注射したんですよね?道分かりますか?外の」

「駄目だ出られない。ここにいれば死ぬまで安全だ」

「死ぬまでここにいたくありません!」

「出ようとしても死ぬだけだ。神が悪魔を宿すなら何者もたわぬ」

「出口がどこか分かるんだったらせめて教えてください!」

「スウィンガーが憎いだろう?あいつに一矢報いるのは容易ではない。大時代的な偽善を掲げた帝国主義の化身だ」

「スウィンガーは別に…」


言いかけてため息が漏れた。何を私はこの男と言い争っている?助けを求めるためにここへ来たのではなかったのか?視線を戻すと、男は自身の傍から何かを拾い上げ私の方へ投げてよこした。分厚い紙の束だった。数十枚もあろうかというそれは活字がびっしりと刻まれており、紙自体は新聞紙のような感触だった。持ち上げると、薄い雑誌ほどの大きさのあるその束は見た目の割には軽かった。


「それを読んだら助かる方法が分かる。必要な情報は全て書いてあるから、とにかく読め」


男はそう言ったきり黙り込んだ。

パラパラめくってみると、どうやらその束は様々な種類の文献を寄せ集めて構成されているようだった。紙の古さや質感はページによってまちまちで、活字や手書きの文章が入り混じっている。一体これが何の役に立つのか不審に思いながらも、私はこれを読んでみることにした。


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