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死者王とゾン  作者: たぷから
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6-8 掛け合わせ実験の家系

 もう、そこかしこから野良ゾンビと化した町の人間が現れる。人口三千やそこらだ。中には、見知っている顔もある。


 「あ……!」

 シュテッタは怖じ気づいて、震えだした。

 「いい、シュテッタ」


 そこで、イヴゲーニャは日焼けにソバカスだらけの顔に厳しくも不敵な笑みを見せ、


 「パパは発現しなかったけど、ウチは代々、一級や特一級コンダクターの掛け合わせ実験・・・・・・・の家系なの。七代目の貴女は、集大成だわ。大丈夫、きっとオリジナルの因子を復元できてる。いい? このシェルターの一番奥まで行って。そこで、もし声が聞こえたら・・・・・・・、迷わずその通りにして。分かった?」


 とうぜんシュテッタは自分の母親が何を云っているのか、まっっっったく分からなかった。


 しかし、聞き返す間もなく、イヴゲーニャはバイクを飛ばしてゾンビ達の中につっこんだ。


 「ママ!?」

 イヴゲーニャの頭上に、五つものプラズマ炎が現れる。

 「!?」


 シュテッタの眼前で、その炎の塊が回転しながら周囲に振りまかれ、爆発した。ゾンビ共がふっとび、燃えながら地面へ転がる。イヴゲーニャのバイクが強烈な超電磁モーター音を立てて道路を曲がり、行ってしまった。


 (……コ、コンダクターだ……あれが、コンダクター……!! ママが、コンダクターだったなんて……!?)


 コンダクターのことは、アンデッド大戦を終わらせた切り札として歴史の授業で習っていた。また、現代でもその因子保有者がいて、当時の力を受け継いでいるというのも知っている。


 だが、本当にそんな人物がいるのかどうかは知らなかった。日常の生活で、出会うこともなかった。


 イヴゲーニャが角を曲がってすぐに、再び爆発の光が見えた。コンダクターの中では数が少ない、フィジカル系だ。


 「…ッ!」


 シュテッタは踵を返して建物の中に入り、生体認証で訓練通りにシェルターの入り口を開けた。ここから入ったのはシュテッタだけのようで、通路は誰もいなかった。分厚いドアが閉まると外の喧騒も聴こえず、自動で発電素子ライトがシュテッタを感知して明かりがつく。


 奥へ向かって、走った。



 「アルンド様、コンダクターです」

 「なんだって!?」

 ゴーストからの通信に、さすがのアルンドも歩を止めた。


 「ネクロマンサーか?」

 「いえ、爆炎が観察できます。プラズマ炎遣いのフィジカルです」

 珍しいな、と思いつつ、さすがに自らの主人である先遣部隊長へ通信。


 「そりゃあ、コンダクターの一人や二人がいる可能性だってあるだろう。かつては、何百人というオリジナルが送りこまれた土地なんだからな」


 「はい。しかも、死者王クラスが何人もいたと聞き及んでおります」

 「そうらしい。……アルンド、どうだ、対コンダクター戦は……」

 「願ってもありません」


 「では、行け。しかし油断と無理はするな」

 「了解しました」

 甲一型レジウス・ヴァンアビグが、戦闘態勢に入った。


 「第一、第二小隊は引き続きシェルターの閉鎖扉を破壊しろ。破壊次第突入していい。第三小隊は、オレと共にコンダクターを始末しろ」


 各隊小隊長のワイトから、了解の返信があった。


 ワイトは、ゾンビやグールに似ているが、死体に悪霊が取り憑いたアンデッドで、本体は死体を操る霊体部分である。ヴァグネリ鋼のシェルターゲートは、彼らのパワーではよってたかって叩こうが体当たりをしようが破壊不可能だったが、死にたて・・・・のパートフ民に乙一型小隊長ワイトが取り憑き、ワイト化する。そのまだ有効な生体情報を使い、ゲート解放に成功した。

 


 シュテッタは走りに走って、脇腹が痛くなって立ち止まりつつ、なんとか前に進んだ。こんなことになるのなら、体育の授業をサボるんじゃなかった。避難訓練と避難経路の授業も、まともに話を聞いておくのだった。なんのための避難なのか意味がわからず、ほとんど上の空だった。シェルターの構造は朧気ながら分かっていたつもりだったが、走っても走っても一本通路で、どこへ向かっているのかサッパリだった。


 (ノド乾いた……!!)


 非常食料や飲料水もどこかに備蓄保存してあったはずだったが、どこなのか全く覚えていない。シェルターの全容が分かる端末もどこかからアクセスできるはずだったが、どこなのか全く覚えていない。ただ、無音で無機質な地下通路を、ひたすら進んでいる。


 シュテッタはこのままここで干からびて死ぬんじゃないかという不安に襲われ、パニックになりそうだった。

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