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死者王とゾン  作者: たぷから
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6-6 大規模アンデッド戦闘プログラムの実証実験

 その数、千人前後と推定された。


 それら、意図するとせざるとに関わらず残った人々の子孫が二万人ほど、数か所に点在してバーデーンに生きていた。


 非公式に連合と交流がもたれ、他惑星への移住も勧められたのだが、ほとんど誰も移住しなかった。


 そのうち、連合でも彼らがわざわざ残って何をして・・・・いるのか・・・・が分かるにつれ、むしろ「研究」を認めて推進する方向に変わり、バーデーンに残留居留民がいたことは秘匿された……。


 シュテッタは、戦後第七世代にあたるバーデーン人だ。

 そこを「死者の国」が襲ったのは、およそ一年前。

 大規模アンデッド戦闘プログラムの実証実験だった。


 戦後、南極政府がコンダクターに関する全情報と同時に大規模アンデッド戦闘に関する全アーカイヴを非開示にし、厳重に秘匿したため、大量のアンデッド兵器を統率するマニュアルやプログラム、なによりノウハウが失われていた。アンデッド崇拝思想を広める死者の国は、辺境でテロを行いながら少しずつそのノウハウを蓄積し、集大成として大規模アンデッド戦闘の実証実験を行った。


 そして、南極政府はその情報を事前に掴み、密かに強襲揚陸艦「ハイドゥン」を派遣した。


 シュテッタは、パートフという宇宙港を管理する人口三千ほどの町にいた。バーデーンに残った、唯一の宇宙港だった。


 人々の脱出を防ぐため、真っ先にそこが襲われた。パートフを壊滅せしめた後、残りの集落にも次々に死者の国の上陸船が下りる手はずであった。


 午前十時三七分。


 シュテッタは町の小中一貫校のような学習教室で、他の子供たちと共に勉強をしていた。


 教室からは、二十年ほど前に再建された、ささやかな宇宙港が見えた。


 曇天をつんざき、ものすごい速度で中型の貨物船が下りてきた。衝突警報が鳴ったので、みな驚いて窓辺に寄った。


 船はしかし、外見からは想像もつかないような逆噴射と電磁パルスを発して急停止し、荒々しくポートに降りた。


 「……連合の船じゃない……」

 中年の男性教師が、ひきつったような声を上げた。


 同時に、轟音と共に光が見え、爆発が起きる。管制棟が光子兵器で破壊されたのだろう。


 「ひっ、避難だ、避難しろ! 家が近い人は家に帰れ! 急げ!」


 滅多に避難訓練などしないが、教師の切迫した様子に子供たちは年長者が年下を助けながら急いで教室から退去した。


 そのころには、貨物船に偽装したアンデッド上陸用戦闘艇の後部ハッチが開き、真っ先に乙二型ゴーストが飛び出て町へ向かった。そして三十体の丙一型ゾンビ、三体の乙一型ワイト、そして甲一型レジウス・ヴァンアビグが一体、現れた。


 それらを使うのは、死者の国の工作員である八人のコンダクター達だった。


 「先陣だ、よもや抵抗はほぼ無いと思うが、油断はするな。これより『死者の夜明け』作戦を開始する。展開しろ。現場指揮はアルンドに任せる」


 「了解しました」


 歴戦の宇宙海兵隊のように鍛えつくされた大柄な肉体を戦闘服に包んだ、水灰色の肌をした吸精気ヴァンアビグが霊感通信で応答した。


 「作戦開始、行け、行け!」


 ワイトを各小隊長にした十体のゾンビ部隊三隊が、まさに敵地に最初に上陸した海兵隊突撃のように素早く三方向に散った。野良ゾンビではなく攻性プログラムが作動した戦闘兵ゾンビの動きは、重戦闘ユニットに匹敵する。


 さらに、上空偵察のゴーストから的確に住民の動きが伝えられ、待ち伏せするように虐殺が始まった。


 ゾンビがゾンビを生み、一時間もせぬうちにパートフはアンデッドだらけとなった。

 「制圧完了、生存者を探しています」


 アルンドの霊感通信に、操船担当員を含む死者の国メンバー達が小さく安堵の息を漏らした。


 「了解した。宇宙港制圧は成功した。本部、本部どうぞ。宇宙港及び宇宙港管理地区制圧完了。住民のほとんどをアンデッド化した。引き続き、降下を急げ」


 作戦本部から返信があり、彼らの緊張が解ける。これで、まず先発任務のほとんどを遂行した。順次、バーデーンの各集落に同じようなアンデッド部隊が降り立ち、組織的なアンデッド戦闘の実証実験を行う。


 コンダクターたちが、下船して状況を確認した。


 ゾンビがゾンビを生むと云っても、戦闘プログラムの無いゾンビはコンダクターが支配下においても労働力くらいにしかならないし、そのままだったら野良ゾンビだ。パートフの住民たちは野良と化して、宇宙港敷地から遠めに見ても徘徊しているのが分かった。ゴーグル視界を拡大し、その様子を確認して、コンダクター部隊長、


 「アルンド、邪魔なゾンビは喰っていいぞ」

 「わかりました、ありがとうございます」

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