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死者王とゾン  作者: たぷから
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1-4 ゾン

 「アンデッド……アンデッドなの……か……!?」

 「ああ!?」


 振り向いた怪物に、警官達が震え上がった。

 「ゾン、やめなよ、ちゃんと前見て!」

 「ケッ……」


 ゾンと呼ばれたドラゴン・ゾンビ、その表情豊かな言動と裏腹に無機質な爬虫類の顔をゾンビどもに向ける。


 「ゲート展開テストの最中に……とんだ連中と遭遇したもんだ」

 「でも、なんで、こんなところにゾンビが?」

 少女が、微動だにしなくなったゾンビどもを見やりながらつぶやいた。


 「知らねえよ」

 「野良ゾンビなの?」

 「さあ……な」

 「タダ働きだけど……」

 「しゃあねえだろ、洒落臭え」


 云うが、ゾンと呼ばれた怪物が、そのままドシドシとゾンビどもに向かって歩いた。


 ゾンビ群も、こうなれば対重アンデッド兵器戦闘モードに入った。


 真っ先に雄叫びをあげ、ゾンに向かったのは同じ程の体格のあるイエティ・ゾンビだ。


 そしてすかさず、残った十数体のゾンビが三手に別れてゾンに向かった。

 四方向同時攻撃。明らかに統率された連携攻撃だ。


 (フン……生意気に、軍事訓練を受けたコンダクターがいやあがるな)

 ゾンが小首をかしげ、周囲の霊波や魂魄子イェブクィムの流れを確認する。


 「ゾン!」

 「相手じゃあねえよ」

 ゾンの巨体が、準超高速行動セミ・ハイマニューバに突入。


 硬化アスファルトの地面が凹むほどの力で片足を踏みつけるや、地面から稲妻のような霊力の筋が幾本も伸び、左側から迫る五体のゾンビ部隊を直撃。感電というより、そのまま霊鎖スピルが破壊され、ただの死体に戻った。


 そして真正面から太い腕を振り回して踊りかかるイエティ・ゾンビめがけ、それ以上に太い腕で豪快に正拳突き。物理的威力もさることながら、重力レンズでエネルギーを縛縮させるように霊圧が一点集中、炸裂した。


 一発でイエティ・ゾンビの厚い胸板に大穴が空き、腐った血肉と骨が後ろにぶちまかれた。


 イエティ・ゾンビが倒れ臥すと同時に右手側の四体が一気に速度を上げ、ゾンに吶喊とっかんする。ゾンビの超パワーを、四体同時に叩きつける。


 少し遅れて、大ジャンプで空中に飛び上がった六体が、放物線を描いて上空から迫った。


 「洒落臭えっつってんだよ!!」


 右より弾丸めいて迫るゾンビ群の吶喊とっかんには、その太く長い両の腕を振りかざすや、まさに阿修羅のように残像めいて分身してその腕が増え、人の頭部ほどもある拳がゾンビどもにほぼ同時にめりこんだ。


 またもグシャグシャにひしゃげ、くの字になってゾンビ部隊がぶっ飛ばされる。ただ殴っているのではない。強大な霊圧攻撃でもある。ゾンビ兵は、肉体と霊鎖スピルが破壊され、ただの一撃で動かなくなった。


 そして空中から落ちてくる質量攻撃には、

 「バオオオオオ!!」


 咆哮と共に、不完全燃焼の有毒ガスを大量に含んだ真っ黒な猛煙と、その合間に光るオレンジの猛火がゾンの大口から吹き出された。空中を進みながら煙が次々に発火し、爆発しながらゾンビを巻きこんだ。魂魄子イェブクィムに、直接引火する霊火でもある。ゾンビ部隊、爆発に吹き飛ばされつつ、全身のアンデッド構造体から火が吹き上がって、地面に転がるころには真っ黒の塊となっており、それも粉塵みたいに微風に散った。


 その全ての行動が、準超高速行動セミ・ハイマニューバにより、5秒以内で行われた。

 「ケぇッ! 丙型じゃあ、相手にもならねえな」

 ゾンがまだ煙が吹き出ている鼻先を親指でこすり、嘯いた。


 「おっと……よく分からねえ乙型もいたな、そういやあ」

 笑いながら、太鼓腹をボンボンと叩いた。

 「あわ……わわ……!」

 警官たちが、ゾンに震え上がって抱き合っている。


 その警官を白濁した眼で睨みつけ、

 「おい、こいつら、どうするんだ? 消すのか?」

 「バカ云ってないで、探知される前に帰ろう」


 「へっ……オレ様の位相空間制御が、こんな高層都市ごときの次元探査にひっかかると思ってやがるのか」


 「いいから、早く!」

 「せめて、記憶を消せよ」

 「あたしのコンダクツにそんなのないし、特殊な医療器具が必要だよ」

 「そうかい。……おい、見逃してやるってよ!!」

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