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死者王とゾン  作者: たぷから
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5-11 琵琶と百合の攻撃

 霊符が全て消滅したが、ピーパはそのまま走りこんでゾンの間合いに入った。

 シベリュースを踏んだまま、ゾンが左でパンチを繰り出した。


 またも、ゾンの拳が歪み、物理的な距離を超えてピーパの顔面に届く。

 だが、ピーパも武術の達人だ。


 並のアンデッドならまともに喰らうその攻撃を、歩方によって転身し、かわした。

 (野郎……!)

 ゾンも驚く。


 同時に、ピーパが転身しながらゾンの太い左手首へ肘打を放ち、身を低くするや凍結した右足へ強烈な回し蹴りを打った。


 さすがに、これをまともにくらったら折れる。さしものゾンもシベリュースから足を離して、その巨体やゾンビとは思えぬ素早さで下がった。


 もう、ピーパがズダボロのシベリュースを抱えていた。


 その際、再び機能不全に陥ったシベリュースが意地でも魔剣を離さなかったので、ゾンの右足の、剣先の突き刺さっていた箇所が凍結粉砕されて欠損した。


 そしてピーパ、またも霊符を紙吹雪のように舞い散らせ、その中に消えた。


 (フン……逃げ足は素早いな……さすがだぜ……しかし、いってえ、どこの連中だ?)


 「ゾン!」

 すぐに、シュテッタが駆け寄った。

 「足が!」

 「ヘッ、たいしたこたあねえよ」


 「折れちゃうって!」

 シュテッタ、凍りつき、一部砕けたゾンの右足の脛へ、両手をかざした。

 「おいおい、さすがのおめえでも、このダメージは……」


 ゾンが絶句。シュテッタの両手より、天然由来の魂魄子イェブクィム……かつては「気」や「オーラ」などとも呼ばれていたもの……が、噴き出ている。欠損部が見る間に修復された。ただ霊鎖スピルを修復するだけでなく、物理的にアンデッド構造体をも再生している。これは、先程して見せたようにゾンなどの特殊なアンデッドにのみ備わった能力だ。通常は、アンデッド再生器という専用装置でこれを行う。


 それを、コンダクターが行うとは……!


 (いや、ちげえ……オレたちアンデッドは、自らのイェブクィムを分離したり補充に回したりできるだけだ……こいつ、時空間中を無数に漂う天然由来のイェブクィムを集めて使ってやがる。……そんなこと、どうやって……!?)


 ゾンが、驚きでたじろいだ。

 ミュージアムの全員が去ったあとで、腰を抜かしたアユカだけが物陰で震えていた。



 そのころ、リリは、のらりくらり・・・・・・と、ポルカとロンドの攻撃を受け流していた。

 時間稼ぎだからである。

 「リリ、シベリュースが撃退された、引いて!」

 マーラルの霊感通信が入り、ニヤニヤしていたリリの顔が引き締まる。


 「ピーパは、助けに入り申したか!?」

 「入ったよ、シベリュースは無事だ」

 「了解致しました」


 リリの主能力であり主力兵装でもある次元反転が働き、時空壁にゆがみと亀裂が入った。


 その一瞬、リリは無条件で無防備となる。

 「…逃がすか!」

 ポルカが、リリめがけて小石を投げつけた。


 ハイゾンビが、準超高速行動セミ・ハイマニューバで至近から打ちつける石礫せきれきだ。我々でいう、対戦車ライフル並の威力がある。いかにリリとて、胴体に大穴が空くだろう。


 「…!」


 リリが瞬時に反転を内側から外側に展開し、防御壁に応用する。空間に波紋が走って、リリが現空間へはじき出された。


 「ゾンビ風情が!」

 怒りの表情を浮かべ、牙をむいた。


 「乙型だからって、油断してると大ケガするっつーの!」

 「姉さん!」

 「合点承知ィ!」


 リリを挟んで二体が回りこみ、カノンから戻ってきた魂魄子イェブクィムを最大限に活かして連環ブーストをかける。


 さらに、ゾンビシスターズの同調攻撃だ。


 (な……なんだ、こいつら……外部ブースターも無しで、えらい出力が上がったぞ……!?)


 リリ、うかつに動けなくなった。


 完全にシンクロした動きで、左右から同時に攻撃する。この瞬間の二体の合計霊出力は一万エブを超え、リリの最大出力一万二千エブに近づいた。

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