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死者王とゾン  作者: たぷから
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4-5 ヒトバシラ

 それからしばらく、アユカはパワードスーツも無しに各種の工作機械を軽々と、しかも両手に二種類持って誰よりも上手く扱い、八面六臂の仕事をした。古い建物の基礎部をどんどん壊し、正確に穴を掘って、さらに我々のコンクリートに相当するこの時代の主要建築材であるトリアングロスという新素材を専用の機械で分解し、土砂にして行く。


 ポルカもその土砂を運びながら、五人前の働きをした。ゾンは……普段のハンガーと同じく、彫像めいてひたすら突っ立っている。通りを行く人々や、休憩中の現場作業員もゾンを見やってヒソヒソと話をしているのを見て、ポルカ、


 「……何しにきたんだ、アイツ……恥っずかしいなあ……もう……」

 そうして、三時間もたったころ。

 「監督、監督う!」


 現場から、事務所に通信が入った。

 「どうした?」

 「ほっ、骨……死体が出ました!」


 「ええ!?」

 思わず、監督がシュテッタと眼を合わせる。

 「来てください!」


 監督と何人かの事務作業員が走り、シュテッタも続いた。何事かと、ポルカも後に続く。


 ゾンが、チラリとそんな後ろ姿を見やった。


 地下街の一画と云っても、そこだけで人口数千人の街が一つも二つも入る巨大な空間であり、照明も地上の昼間と同様だ。


 が、厚く壁や天井、床があることに違いは無い。

 その、厚さ六メートルの床材と建物の基礎材の合間から、白骨が出てきたという。


 大昔の建物の基礎の下に人骨が埋まっているというのも、かなりレアな状態といえた。


 「警察は?」

 「いま、連絡しました」

 ちなみに、警察も地上と異なり、地下は民間警察会社への委託だった。

 「一、二……六人もいるぞ」


 ポルカとシュテッタ、アユカも恐る恐る見下ろした。アユカが最後の材を引き剥がしたら、その下にいたのだという。


 「……なあんだろ……殺人事件?」

 ポルカも首をかしげた。

 「こんな、大昔の建物の下にですか?」


 まだ両手に特製重機を装備したアユカが、おずおずと答える。

 「じゃあ、化石?」

 「化石というより……遺跡……じゃないでしょうか……」


 「遺跡? じゃ、マンオーク建設時代に、事故かなんかで亡くなった人の骨ってこと?」


 マンオークは、六十年をかけて建設され、完成したのはいまから約三百五十年前だ。当時の遺体とすれば、確かに遺跡という表現も間違いではないだろう。


 「まさか、人柱じゃないでしょうねえ」

 ポルカが超古代の儀式の話をし、両腕を押さえて震えだした。

 「なんですか? ヒトバシラって……」


 「アユカ、知らないのお? 生贄よお。人を殺して、建物の守り神にするのよお」

 「ええー! こっわ!」

 「それに、当時は第一次アンデッド大戦が終わってすぐだから……」

 「えー! 昔のアンデッドなんですかあ……? やだなあ」


 自分たちもアンデッドなのに、いったい何を云っているのか……周囲の作業員たちがそう思って、不思議そうな顔で二体を見つめた。


 「時々、昔の人の骨が出てくるっていうのは、話には聴いてたけど、まさか……自分の現場に出るなんてなあ」


 監督が腕を組み、大きなため息をついた。


 「とにかく、警察が来るまで工事は中止だ、中止……さ、みんな出ろ。コンダクターさんも、どうぞこっちへ」


 中には、こっそりと骨を片づけてゴミとして処分し、何食わぬ顔で工事を続ける業者もいる。しかしバレたらとんでもないことになるので、ここの監督は正攻法を選んだ。


 なぜかというと、この時代、やはり野良アンデッドの可能性があるからである……。


 そして、案の定、この白骨死体達も。

 「……うわっ、わっ、わああああ!!」


 最後に現場から出ようとした作業員が、突如として後ろから組みつかれ、恐れおののいて絶叫を上げた。振り返って、みな息をのむ。


 砕け、半分石化したようだった古い白骨がしっかりと人の形に組みあがって、この世のものとも思えぬうめき声を上げながら迫ってきていた。


 その数、七体。

 (七体!? え、さっきは六……!!)

 ポルカも驚愕したが、驚いている場合ではない。七体めは、見落としていたか。


 「シュテッタちゃん!!」

 腰を抜かす監督や作業員たちを押し退け、シュテッタが前に出る。

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