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死者王とゾン  作者: たぷから
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1-2 アンデッド・テロ

 「おわああああ!!」


 あわてて電磁浮遊式のパトカーに乗り、バックで下がることができたのは、訓練のたまものと云う他は無い。


 さらに、着地したゾンビどもが、とうていゾンビとは思えぬ速度で走り、パトカーを追った。


 「はっは、班長! 班長おおお!!」

 思念波で運転する警官が恐怖にかられ、喚いた。

 「ばか、運転をオートにしろ、ぶつけるぞ!! 本部、応答、応答しろ!!」

 「どうした」


 「対象群に、戦闘プログラムの発動を確認!! のっ野良じゃないぞ!! 丙一型攻性ゾンビ兵器だ!! ア……アンデッド・テロだぞ!!」


 「…………」

 一瞬、間があって、


 「確認した。州軍の特別部隊は出動中。さらに、軍のコンダクター部隊に出動を要請する。到着するまで、現状を維持しろ!」


 「アホぬかせ!! 逃げるからな!!」


 云うが、凄まじい衝撃がパトカーを襲う。運転の思念波が乱れて電磁浮遊式のパトカーが道路の上に走る磁力帯より外れてぶっ飛び、地上用補助輪を出す間もなく地面に落ちて転がったのだ。


 エアバッグが出て警官達を護りつつ、横転したまま瞬時に素材が空気中に分散して消え、車外脱出を助ける。転がるようにして急いで車から出た警官たち、獲物を襲う肉食獣めいた迫力と速度で迫って来るゾンビどもに、光子拳銃を打つ気力もなく、愕然と地面へ座りこんだ。


 (死んだ)


 警官達がそう思ったとき、市街区の高い高層天井近くから、丸い物体が落ちてきた。


 それは、直系が六メートルほどもある、青と黒でカラーリングされた分厚いどら焼のような形をしていた。ヨールンカで一般的な高層都市内用全自動警備軽戦闘ユニット・シベリオ社製EP-302「ランディア」だ。


 高層都市内部に縦横無尽に張り巡らされた高出力磁力帯を伝って移動する浮遊汎用ユニットで、いま、警官たちの掩護のため、たまたまこの階にいた一台が文字通り飛んできたのだ。空中の磁力帯を滑るように浮遊して移動してきた後、その磁力帯から意図的に外れて、また異なる磁力帯に乗り、段階的に高度を下げてきた。そして最後の磁力帯から外れた後は自由落下して、地面から数メートル上で高出力発電素子による強力なファンが回り、落下速度を下げる。


 ちなみにパトカーが利用していた一般自動車用の低出力磁力帯では、このユニットの重量を支えられない。


 「うわっ……!」


 警官たちが目を見張ると同時に、ファンの強風に眼を細めた。助かった。……かもしれない。


 ランディアはどら焼の下半分が変形して六本脚が現れ、地面に軟着地した。


 「大丈夫ですか、下がってください。攻性アンデッド兵器のプログラム発動を確認しました。アンデッド・テロと認定します。緊急対アンデッド戦闘を開始します」


 機体に302-168とナンバーの描かれたそのランディアが、流暢で冷静な言葉を発した。


 「云われなくても下がるよ、頼んだ!」

 「お気をつけて」


 転がるように下がる三人の警官をサーチしつつ、168号が二門の光子砲をどら焼の上部より出す。対人制圧用の光子銃ではない。軍用の大口径砲だ。


 168号、全速力で走り寄るゾンビ群の先頭めがけ、正確に高出力光子弾を叩きこんだ。


 光子の弾ける光と独特の音が響き、走っていた警官たちが思わず止まって振り返った。


 数十メートルも離れたゾンビが、足首だけを残して次々と木っ端微塵になる。

 「す……すごい!」


 若い巡査、息せき切って思わず感嘆の声。

 だが、班長は驚愕して168号を凝視した。

 (おいおいおい……こいつ、あんな武装を隠し持ってたのか……!!)


 ランディアは、あくまで警察を補佐する警備用のユニットという認識だったので、攻性アンデッド兵器を破壊できる対戦車ライフルにも匹敵する軍用装備があったのを、初めて知った。


 そんなものが、もうずっと以前から高層都市内に何百とウロウロしていたのだ。


 しかし、こういう非常時のための対アンデッド用秘密装備なのかもしれない。


 「おい、行くぞ!」


 班長がそう云い、避難を続けようとしたその目先を、何か大きな物体が空間転移で出現した。


 「?」


 位相空間転移プログラムは、基本的に高層都市内で使用は禁止されている。


 従って、警官たちはそれを認識できず、空間振動波を至近からまともにくらって空間酔いを起こし、バタバタと倒れ伏した。


 「なん……なんだ……!?」


 目眩と吐き気と全身の痺れ、とんでもない頭痛で、とても立っていられない。なんとかふり返ると、空間の揺らめきの中から、体長3メートル以上の巨人というか……全身真っ黒い毛だらけの直立類人猿のようなものが出現した。

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