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サ終世界から逃げ魔女っ!  作者: 手遊花
■命ゴイ編
36/81

最長の最短(33)

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 レッドが奮戦する一方で、ナビは一人、永久鋼土の最奥へと走っていた。

 持ち前のスタミナはプリベリオンシュヴァリエを振りきるときに使い果たした。


 広間から先の道中には壊れた令嬢も鋼騎士もおらず、群青色の落ち着いた色合いの壁面に、色とりどりの宝玉がキラキラと輝いているばかり。


 後方から届いていた戦闘音は、一本道ではあるが進んで、戻って、前後左右に曲がりくねるS字通路が続いたせいで、とっくに反響音すらも聞こえなくなった。

 あれからレッドはどうなったのか。無事なのか。それを知る術がない。


「ハァハァ、けほっ……」

 足は止めない。休みたくなる情けない思考をねじ伏せて、ひたすら走る。

 速度はまるでないものの、それでも走って、走って、走る。

 相方が与えてくれた最後の時間、なにもつかまずに終えたくはない。


「あぅっ!」バタン。

 足元の出っ張った宝玉につまずき、顔から倒れ込んでしまう。

 土肌でもないのに、黒絹のローブは丁寧な通常処理で泥だらけになる。

 鼻が痛い。お腹も痛いが、硬い地面を両腕で押して立ち上がり、また走る。


 幾度にも曲がりくねった、傾斜のない峠道のような悪路。なかなか終着点が見えず、迷路に迷い込んでしまったような感覚に焦らされるが。

 もう早歩きのほうがスピードも出るであろうほどに全身が疲労しきったあたりで、ようやく、開けた場所に出ることができた。


「かはぁ、はぁ、や、やっと……」たどり着いた。


 プリベリオンシュヴァリエが待ち構えていた大広間よりはこじんまりとしているが、雰囲気は永久鋼土のゴールそのもの。正面には周囲の壁面よりも色濃い、鋼騎士王の鋼鉄鎧の暗い色合いにも似た大きな鉄扉がある。左右奥側にはさらに奥地があるのか、先が見えない舞台袖のような分岐路が敷かれている。


「げほっ、げほっ、ハァ……ここが、ゴールです、よね……けほっ」

 がんばった自分へのご褒美に足をとめ、両膝に手をついて呼吸する。

 白銀の一本髪が右肩をすり抜けて、伏せた顔の前で振り子のように揺れた。


 時間は惜しいが、数分ほど呼吸を整える。気を張って顔を上げ、前に進む。鉄扉の大きさは、旅のはじめに目にした追放棄路の門壁ほどではないが、おおよそプリベリオンシュヴァリエですら立って通れそうなもの。表面をザッと眺めるも、開閉のための取っ手が存在せず、全体的に丹念に磨かれた鏡のように輝くばかり。

 サッドライク皇城にあっても異物感の強い、不思議なオブジェクト。


 唯一の手がかりは、ナビの頭くらいの位置にはめ込まれた、エメラルドのような翠玉の宝玉。けれど触れても、撫でても、顔を近づけても反応はない。


「……魔女が問いかけに応じよ。『永久鋼土の奥の扉』」

 こういうとき彼女は、欠けて閉じた自分だけの集合知を頼る。


――FAQ:永久鋼土の奥の扉。関連:追放棄路、永久鋼土、コネクトゾーン

――コネック:セルF群・コネクトゾーン「綿花天路」

――備考:※二〇六二年末の実装をお待ちください


「わたばな、てんろ……? あの黒い天塔のことでしょうか……?」

 距離感は分からないが、今はもう天塔が頭上に建っていてもおかしくはない。


 暦設定のない命ゴイにおいて、年数の読み方はナビには難しい。そのため彼女は「建造から二〇〇〇年を超える構造物でしょうか……?」と迷走する。

 なによりサッドライク皇城の隠し通路と同様、開ける手がかりが見つからない鉄扉を前に、嘆息する。そこには少しの満足と、多少の諦めがあった。


「……ふふっ。ふふふ。初めての旅の終着点は、ここみたいですね――」

 思わずこぼれた笑み。自分事ながら、不思議と安心したけれど。


「……――っ! ふざけっ、ふざけるなっ……メチャデカふざけんなっ!!!」

 怒った。グルグルした感情の激流のままに怒った。

 白く柔らかな素手を握りしめ、鉄扉をやたらめったらに叩く。


「やっと、ここまで来て、諦めてやるもんですかっっ!!!」

 押す。叩く。殴る。押す。ぶつかる。痛い。

 蹴る。引っかく。引っぱる。ぶつかる。痛い。


 物音一つ聞こえてこない静かな場所で、小柄な魔女が癇癪をまき散らす。

「開けなさいっ! 開きなさいっ! 開けなさいよぉっ、もーーーっ!!!」

 なにをしても反応しない。通用しない。非力な我が身に憤る。


 ナビはそうして約十分ほど、鉄扉に当たり散らした。どれだけ殴ったところで、彼女の素手と強固な鉄扉の間には、2センチほどの透明な空間が横たわる。

 痛みはあるが血が滲むことはない。一部には厳しい命ゴイだが、この世界は優しい。不思議と、両目にジワリと、潤いを与えるには過剰な水分がたまる。


「ハァ、ハァ、ぅくぅ……ぅぅーっ、開きなさいよぉー……」

 暗く、輝く、鉄扉。その前でストンっと。

 ナビは折れるようにしゃがんでしまった。


 愛しき万命の令嬢たちが壊れ、碧い波が押し寄せ、隠れ家も捨て、皇騎士と出会い、憂森林から四季彩の大草原、サッドライク皇城から廃棄迷宮、追放棄路から永久鋼土まで、見るものすべてが初めてであったヘルプヤクの魔女の旅は。

 最後に異物のような鉄扉に阻まれて、終わりを迎えようとしていた。


「ハァ、こほっ……ありがとう、レッド。私は最後にここまでやってこれました」

 望みは手放していないが、期待するのは難しい護衛役の生存。

 思い直すと、良き相棒だったのかはまだ分からないが。

 最後の最後に、一人でいることが、少しだけ悲しかった。


 そうして、扉を前にして、自分を諦めさせようとしていたとき。

 スタ、スタ。左耳に聞こえてきた音。足音だろうか。優しく軽快な音。

 勢いもなく、頭の重さに任せるように、ゆらりと左手側。左袖の通路を見る。

 スタ、スタ。そこにいたのは女性。ペラペラなサンダルの音。万命の令嬢。


 表情のない3Dモデルの顔は、元気さと利発さが共存する、少女と女性の中間色。右の目尻には、銀色の三つ葉のクローバーがペイントされている。

 ショートボブの髪色はレインボーでキャッチー。ツヤが少なめで淡さのある赤、桃、黄、緑、青、紫、黒の順に、計七色に染まっている。

 スリム体型の肌は、透きとおるようなきめ細やかさ。それでいてモチモチとした健康的な人間味。衣服はいつもの、どこか野暮ったさを残したアンティーク調のノースリーブのAラインワンピース。カラーはいつも、白色か、水色か。


 今日は水色。だから今日は、清貧で、淑やかで、慎ましやかで。

 爽やかな春風のように、はにかんでくれるほう。


「ハナリナ、さま……」

 そこにいたのは、フタゴノオハナヤサマの令嬢、ハナリナ。

 ナビが生まれて初めて出会った、万命の令嬢。

「――――」

 返事はない。表情もない。彼女はもう、中身のない壊れた令嬢。


 最後の最後でなんてサプライズをと、ナビはあっけに取られた。でも、すぐに思い直して笑ってしまった。だって、ハナリナはいつもそうだった。


 命ゴイのサービス終了日。万命の令嬢たちは最後の記念にと、早い者勝ちの弱肉強食でお目当ての皇騎士の前に行列を作り、気軽にのして、万令術で万令広場や令嬢の隠し宿に連れ込み、最後のサディスティックを堪能していた。

 クローズドエリアで戦う皇騎士はプレイヤーないしパーティごとに存在しているが、オープンエリアで戦う、例えばレッドやリオスのような皇騎士は、クローズドな隠し宿ではなく、オープンな万令広場に連れ込むと「エネミーとしてポップしない時間」が発生したため、命ゴイらしく醜い言い争いが行われたものだ。


 最後の最後までログインする者など古今東西、好き者しかいない。もちろんログインしなかった者のゲーム愛が劣っているとは言わないが、最後の時間をそこですごした思い出は、それ以外の者たちに一生物のマウント材料となる。


 ある者は、ここ永久鋼土に。ある者は、サッドライク皇城に。

 ある者は、外騎士の崩れ拠点に。ある者は、四季彩の大草原に。

 誰一人近寄らなかった場所など、廃棄迷宮以外なかった。


 ゆえに、最後の時間に、ナビの隠れ家を選んだ者たちもいた。

 ラストの盛大なお騎士見を実行し終えた、カリカリうめえ。

 次なる新天地を相談していた、うぇ先生と仲間たち。

 汚らしい泣き笑いのセプティナをかわいがる、煌めきSP一同。

 そしてみんなの顔役、ハナリナ。


 サービス終了間際、ゲーム内が夜時間に入った瞬間、彼女は周辺の者たちと示し合わせて、いつもどおりなヘルプヤクの魔女に最後の贈り物を手渡した。


『これまでありがとう、ナビ』


 それは、最後の時間をナビとともにすごそうと決めていた参加者たちが一週間かけて準備した、この世界で手に入るすべての花々とチョコアイテムの数々。ロイヤルチョコレイトタルトもホールでたっぷり。計画を知らずにフラッと寄った者たちのために余剰分も用意されていた気配りのおかげで、誰もがナビに「これまでありがとうね。でもチュートリアルはクソだったよ」と感謝を贈った。


 そのころはまだゲームの規則に縛られていたナビだが、いろんな意味で涙ぐんでいた運営により、皇騎士も含めて学習指導型AIの感情値が最大限まで開放されており、いつもよりも情緒にあふれていた。また、このときの記憶は根強く残され、これまでにない思考回路への刺激が、今のナビのベースを形作った。


 サービス最後の日にして、NPCたちが最も魅力的になったのは皮肉な運営だが。通常時からエモーションズパラメータを最大値にすると、皇騎士たちが万命の令嬢に面と向かって「リオス殺しめッ!」と言いかねなかったので正解だ。


『……私も。今までずっと、ありがとうございました。令嬢の皆さま』


 運営の数少ない粋な計らいで、これまでにないほど分かりやすく感激してくれたナビを見て、少なくない数の万命の令嬢たちも涙を浮かべた。


 彼女らは最後の時間に皇騎士ではなく、ログイン時に毎日、この世界に連れてきてくれたナビのことを選んだ。一年近く斬新なオモチャとしてこすり続けた皇騎士にとっくに飽きていたのも一因だが、彼女の存在は令嬢たちにとっていつしか日常となり、現代女性の闇をほんのり照らす、ちいさなランタンとなっていた。


 そうして命ゴイの終わりまで、あともう少しといったとき。


『ナビも、いつか一緒にお花を見に、私が連れていけたらよかったのにね』

 古い型の水色ワンピースに身を包んだハナリナは、そう言ったあと。

『あっ、今からハナと変わるね。うるさい姉で、これまでゴメンね』

 虚空を指でなぞり、ナビには見えない、なにかを操作して。

『バイバイ。またね、ナビ――』

 スッと、ハナリナの姿が消えた。

 そして少々の時間がすぎたころ。


『ゴルゥアァ! リナのバカが時間使いやがってよ! 乙女ども最後の祭りだ!』

 またもハナリナが現れた。

 穏やかな水色から、清楚な印象の白色のワンピースにお着替えした。

 汚く、喧嘩っぱやく、意地汚く、節操もないほうがやってきて。

『命ゴイへの手向けだァ! 未実装のコネクソ突撃でバグらせんぞゴルゥアァ!』

 フィナーレを飾る催しに、周囲が一斉に沸く。


『わっと、ナビっ! これまで超メチャデカサンキューっ! 大好きだよっ!!』

『はい。私もです。いってらっしゃいませ、万命の令嬢の皆さま』

『最後の最後まで、ハナはんは相も変わらず元気やね~』

『ウッキャッキャッキャッキャッ!!!』

『オゥラァ! 令嬢の意地見せっぞ! デカケツ乙女ども、いくぞォーー!!!』


 その場の大半を騒々しく引き連れて、物静かな時間がすぎたあと。

 この世界は閉じられた。


「――――」

「…………」

 そうしていなくなったはずのハナリナが。

 壊れてはいるが、またここにいた。


「――――」

 七色の髪をなびかせながら、壊れたハナリナが近づいてくる。

「ハナリナさま……」

 魔女はその場を動こうとせず、敬愛する令嬢を見つめた。


 ハナリナは左腕のみが半透明に透きとおっており、左ひじあたりにデータ類の文字列のようなものを浮かべているが、それ以外に変わりはない。

 ただし、明るいほうの愉快な笑顔も、静かなほうの優しい笑みもない無表情は、ナビの知る彼女には似つかわしくなく、魂がないことを実感してしまう。


 スタ、スタ。涼しげなサンダルが永久鋼土を踏み歩く。彼女もまた、ナビの万命令と碧い波によって空きが出たサーバー枠で今しがた復活したものだ。最後のログイン地点もセプティナと同じ、サービス終了時点の座標、ここ永久鋼土。


 スタ、スタ。壊れたハナリナがもう一歩足を振れば、ヘルプヤクの魔女に触れ、ナビを消滅させられる位置まで歩いてくる。意思なき歩行はそのまま、魔女の体をコツっと蹴り上げるだろう――ナビはそれを受け入れようとしていたが。


「――――」

 ピタ。ハナリナが、扉を前にしているナビの背中で立ち止まった。

 ヘルプヤクの魔女を認識しているそぶりはない。

 表情も変えずに、なにか別の要因で止まった。

 そのまま半透明の左手を上げ、暗く輝く鉄扉に、壊れた指先で触れると。


「わっ……」

 目の前で、音もなく、演出もなく、ただのバグのように。

 なにをしても開かなかった鉄扉が完全に消失し、先の空間をあらわにした。


「――――」

 するとハナリナは、その先に進むこともなく、ナビの背中を横切っていき。

 反対側。もう一方の脇道である、右手側の通路へと向かっていき。

 驚きで声も出せずにいるナビが見つめるなか、舞台女優のように消えていった。

「…………」

 感情が止まっている。

「…………っ」

 あふれ出す。

「……どうして、みんな、こんなにも、わたしに…………っぅぅ……」

 自分ではどうしても開かなかった道が、ハナリナによって開かれた。

 NPCでもプレイヤーでも開けられるはずのない、未実装の封印エリアが。

 システムを超越する、壊れた令嬢の手により、簡単にこじ開けられた。


「ぅぅぅ……っっ……」

 声にならない情動。その名も、表現の仕方も、今は分からない。

 助けるべき存在である自分が、誰かに助けられてばかりの旅。

 ナビは一度だけ、数秒だけうつむいてから、顔を上げて。

 消失した扉の先に広がる、真っ黒な空間を目にして。


「メチャデカありがとうございます、ハナリナさま」

 私はずっとあなたたちに、逃げる勇気をもらっていました。


 疲れた足に気合を入れ、腰を上げ、開かれた扉の先を注視する。

 鉄扉の先に広がっていたのは、床も壁も天井もない真っ黒。

 黒色ではなく、色味を感じない暗黒空間といったもの。


「……花だ」


 地面があるのかさえ平衡感覚で捉えられぬ空間の先には、黒い渦と白い花。

 ダム穴に吸い込まれる水源のように、黒い波が渦巻く紋様を浮かべた物体が石碑のようにして立っており、その周辺に、真っ白な花弁の花々が咲いている。

 人によっては祭壇か、あるいは墓標に見えなくもない。


「……私との約束、守ってくださったんでしょうか」

 終わった世界が壊れきる前に、ハナリナはたしかに。

 見たことのない花を見せに、私をここに連れてきてくれた。

 偶然のロマンチックがすぎるが、なぜだかそんな風に思えてしまうのは。


『つまんねーことはね、自分にメチャデカ都合よく考えるのがコツなのよっ!』

 もう一人のハナリナが教えてくれたから。


「ふふっ、ですもんね……さあ行きましょう、ナビ」

 学習指導型AIに刻まれた教えに、万命の令嬢たちの言葉に間違いはない。

 そう自分に言い聞かせ、真っ黒な空間に一歩、足を踏み入れる。


 暗黒空間にはちゃんと地面があって、立つことができた。無限の落下地獄の可能性すら想像していたが、恐る恐る二歩目を踏みしめても、宇宙に飛ばされたように体感覚を失うことはなく、平然と歩き続けられることが分かった。


 外からでは遠くに見えた白い花、黒い渦までは案外距離がなく、数十歩と歩くと触れられる位置までやってこられた。そこで屈み、白い花に手で触れる。

 五枚から六枚のまっしろな花弁を蓄えたそれは、雌しべや雄しべといった植物としての構造が存在せず、茎まで白い。ただ白い花びらがついているだけの花っぽいものにしか見えないそれは、端的に“未実装のため描かれなかったもの”。


 それを知らずとも、今まで見たことのない、贈られたこともない花を前に、ハナリナがもたらしてくれた奇跡に今一度感謝しつつ、旅の証にと一房をもぎ取り、右手にファアキュウの万命書を呼び出して、ページの間に押し花のようにしてしまった。黒絹のローブの内側ポケットや、ファアキュウの万命書は便利なもので、たとえなにかと正面衝突したところで中身を潰してしまうことはない。


「んで、本命はこちらなのでしょうが……むむむ、ひと目で意味不明です」

 目線をズラして、もう一方、黒い渦のほうを見る。

 渦巻きは動いており、ゆったりとらせん状に回っている。


 渦の中央部は不思議な紋様を描いており、円に雪の結晶をまんべんなく散りばめたような、タンポポの綿花を緻密に象ったような模様が映し出されている。


 意を決して、ナビは右腕で触れてみようとした。

 コン。「あら」見えない硬い壁にぶつかったみたいに、触れられない。

 その感触は、先ほどの鉄扉に近く、ひと撫でで諦めることができた。


「ふー。本当の本当に、ここが最後みたいですね」


 ハナリナのサプライズで、全身の緊張が解けてしまっている。

 世界の在り方や回復方法のような奇跡を見つけられなかったのは悔いが残るが、初めての大冒険で、見たことのない花を見つけた。それだけでもう大満足だ。


 黒い渦に背を向けて、ちいさな白い花畑に腰を下ろす。

 ふと、目をやった鉄扉の先には、群青色の壁を侵食している碧いなにか。

 碧い波が、永久鋼土の最奥まで食い破り、迫ってくる様子が見られた。

 そろそろ私の旅も幕引きのようですね。そう思った。


「皇騎士十三皇はどうだったんでしょうね」

 大仕事を終えたことでの安らぎに、思考にも余裕が出てくる。

「ふふっ。レッドも最後は皇騎士らしく死ねているとよいのですが」

 優しい含み笑いだが、考えていることはさすが蛮女。でも。

 それが自分をここまで連れてきてくれた相棒への、精いっぱいのお礼だ。


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