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歌姫と召喚士  作者: むさし
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第一章 出会いと別れ④

手探り4話目です。

読んで頂けたら幸いです。

 止まらない涙を柔らかい指が脱ぐってくれた。時間と共に浮上する意識。我に反る。えっ?何何何何?僕何いってんのぉ?羞恥の嵐が襲ってくる!まだ、見つめられてるし!顔あつっ!

「ひっひめさ」

「ルナです!」

「ルッルナ?」

 するどいツッコミにたじろいで、答えた名前に満足そうな笑みで頷く姫様を見てまっいっかぁと思ってしまった僕は弱いな。今日朝からずっと泣いてる気がする。こんな泣き虫ではなかった筈なんだがなぁ。

 そんなあどけないやり取りを繰り広げていると、突然身体中の肌がピリピリした!セサミが吠える!

「何かが、きます!備えてください!」

「何っ?!」

「姫様此方へっ!」

 おかしいおかしいぞ?探知には何も掛からなかった!幾らのほほんとしてても危険には気付く筈だ!でも、間違いなく何かが迫ってる!

 耳を割る音が、キーン!!

「結界が!転移魔法陣展開して下さい!僕が時間を稼ぎます。セサミ!姫様を」

 叫んだ瞬間、於曾毛だつ

 屋根が吹き飛ぶ

 ボコッ!ガッ!壁を突き破り蹴りだされた。

「ダン様っ!」

「やっと見つけた。我が姫」

「ラン・カミノ?!」

 叫び声が聞こえた。ラン?皇王本人?!僕は飛び上がり舞い戻る。

「ほぅ今ので、死なぬか?」

 楽しそうに上から下まで真っ黒の男が言う。何がおこったのか状況を把握できないまま3人を護る様に立つセサミに視線を送る。

「させんよ」

「セサミっっ!!」

 セサミが血を吐いて倒れる。何をされたんだ?見えなかった!こいつじいちゃんと同じくらいつええ!ヤバいヤバいどうすれば。初めて感じる悪意に思考が止まり身体も固まる。とにかく何とか姫様をと。その時歌が舞う。銀色の光が僕らを包む。

「ぐっ、姫無駄な足掻きだ」

 ランはその光に絡みとられたように膝を着いた。今だ!動け!

「我が友風の支配者エアリエルよ我が願いを聞きたまえ!目前の敵に風の牢獄を!エアリエルプリズン!」激しい嵐の壁がランを捕らえる。

「今です!リョウさん転移を!」

「駄目なの!魔法が発動しないの!」

 絶望の表情で泣きながらリョウさんは叫ぶ。魔法を封じられた?でも、エアリエルは来てくれた。分からない!

「セサミ!セサミ大丈夫か!頼む姫様を外へ!」

 銀色の光に癒されてるセサミが立ち上ろうとすると、風の牢獄が破られる。

「エアリエル!」

 ランが手を横に薙ぐと、エアリエルが悔しそうな顔で消える!そんな、一瞬で?!

「鬱陶しい!召喚士がこんなところにいるとはな、しかしまだ、若い」

 酷薄な笑いを浮かべながらランが言う。

「だりゃぁ!」

 リュウさんが、ランに斬り込むと同時に弾き飛ばされる。

「ちくしょう…」

 壁に叩きつけられ血を吐いて倒れる。

「リュウ!リュウ!」

「リョウさん早く姫様を外に!」

「えっ?きゃぁぁぁ!」

 リョウさんが身体中から血を吹き出してその場に倒れる!

「まだ分からぬか子供よ。お前に出きることなど何もない」

 ランと目があうと身体が縛られたように動かなくなる。それと同時に身を裂かれる痛みがはしる。

「うっあぁぁ!」

 意識が飛びそうだ。

 セサミが苦痛に顔を歪めて僕を護るように立つ。

「よくみればフェンリル?守護か?ふっこれは面白い。でも、今は大人しくしていろ。でないと其奴死ぬぞ?」

「僕はいい!セサミ姫様を!」

「黙っていろ」

「ぐっがあぁぁ!」

 苦痛にのたうち回る。セサミはランを見つめたまま動かない。なんで?姫様を助けてくれよ!

「さて、姫また皆死ぬぞ?どうする?」

 祈るように歌を紡いでいた姫様が止まる。銀色の光が消え始める。

「駄目だ!諦めちゃ駄目だ!」

 一筋の涙が姫様の頬に光る。

「ラン呪縛を緩めて。貴方と参ります」

 決した表情で言った。

「姫様ぁ!」

「ダン様、私は『歌姫』大和の為に今はまだ死ね無いのです」

 姫様の深い蒼の瞳が僕をみつめる。

「大切な花嫁を死なせるなどあり得んな。だが、周りはいらない。姫さえ居ればいいのだから」

 笑いながら言う。

「セサミ様ダン様を巻き込んでしまって申し訳ありません」

 訳の分からない事を姫様はセサミを撫でながら言った。僕はどうでもいいじゃん!何で!?セサミは姫様に鼻を寄せる。

「ありがとう。こんな事になっても優しい音を下さるのですね」

「ダン様、皆をお願いします」

 駄目だ駄目だよ。行っちゃ駄目だ。助けるから、僕が護るからそう叫びたいのに声が出ない。

 姫様はランに歩み寄る。その時小さな小さな歌が

「ルナです。忘れないで」

 と、銀色の光が僕の中に

「参ろう。我が花嫁」

「ルナぁぁぁ!!!」

 光も涙を湛えた蒼い瞳も、ランの笑い声も何もかも欠き消えた。



 どれくらい経ったのか、目を覚ませばセサミの小さな治癒結界に入っていた。隣には兄妹たちもいる。

「いたっ」

 身体を動かそうとするとまだ痛みが走る。頭だけ動かすと、悲しそうなセサミと目があう。痛む腕を動かしセサミに抱きつく。

「僕何も出来なかった」

「ルナを護れなかった」

「僕は弱い!」

「うわぁぁぁぁ!あぁぁぁぁ!」

 力の限り泣き叫んだ。僕は駄目だ。僕は弱い。そう何も出来なかった。甘かった。逃げることすら。そしてルナに護られて生きている。

「セサミ、僕強くなりたい」

「どれくらい時間があるのか分からないけど、ルナを助けたい」

「そうしなければいけないと、そうしたいと思うんだ」

 小さな銀色の光は僕の中にまだある。ルナは生きてる。あの蒼い瞳はまだ諦めてなかった。

「僕は強くなる」

 高い空を見上げてそう誓った。

読んで下さった方々に感謝を。


いやぁけちょんけちょんです。

規格外の主人公無双はまだまだ遠そうです。

続きがちょっぴりでも気になる方は更新がんばるのでまた読んで下さい!

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