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歌姫と召喚士  作者: むさし
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第一章 出会いと別れ②

手探り2話目です

読んで頂けたら幸いです

「あっあの何でこんなところに?そっそれに火竜」

 姫様の呪縛(笑顔)から、脱してやっと問いかけたのはこの言葉だった。とんでもなく、たどたどしくだが…。

 3人は困った様に、顔を見合せた。

 姫様はあからさまに不安な表情を浮かべた。きっ聞いては、いけなかったんだろうか。

「すっすみません!」

 やっぱり僕は話してはいけないんだ。

「謝らないでくれよ。君は悪くない

 。それどころか大恩人だ。ただかなり説明が難しい…俺たちの事を話す前に失礼を承知で聞くんだが君の事を教えてくれないか?」

「ぼっ僕ですか?」

「そうだ。第一級魔獣をいとも簡単に倒してしまう君の事を」

 さっきまでの、優しい雰囲気とは変わり挑むような瞳でリュウさんが言った。

 火竜ってそうだったのぉ?じいちゃん笑いながら苛めてたけど?

 しかし、困った。

 言葉を交わすだけでもこんなに大変なのに。説明とかレベル高すぎだろっ。

 冷や汗をかきだした僕にセサミが鼻をすり付けてくる。

「フェンリルですよね?実物を見たのは初めてですが」

 リョウさんが問う。

「あっはい。セサミです、ぼっ僕のか家族」

 うわっまたかんだ。もうダメかも知れない。逃げていいかな?いいよね?

「ダン様、セサミ様に触れてもよろしいでしょうか?」

 姫様が言う。不思議だ、何故姫様の声はこんなに胸がドキドキするんだろう。

「はっはい!大丈夫でっです!セサミは悪い魔獣では無いです」

 テンパった魔獣発言に尻尾パンチを後頭部に食らう。

「いたっ痛い、ごっごめん」色々と重なって真剣に涙目になってしまう。目ん玉とび出ちゃうじゃないか…口から出ちゃったんだよぉ。

 皆の前で殴ることないじゃん。

「セサミ様はダン様を護っていらっしゃるのですね。優しい音が聴こえます」

 そう呟きながら笑顔でセサミに近づきなでる。

「歌わせて下さいね。セサミ様」

 姫様が歌った。これは、セサミの旋律と似てる?同じ?違う?知らない感覚と美しさに呆然とする。優しく、包まれ撫でられてるみたいだ。あれ?回復?えっ?光ってる?空気まで変わっていくみたいだ。

「すごい…」

 思わず呟くと、

「ルナ様の御力(みちから)です。これは、感謝と回復の賛歌ですね」

 リョウさんが教えてくれる。

御力(みちから)…?」

 心がざわつく。何でだろう?これは何?姫様と目があった。深い深い蒼の瞳、僕には分からない何かがそこにはあった。頬を水が流れる。涙。

 あれっ?何で泣いてんのっ!はっ恥ずかしい!

「ダン様」

「はっはいぃっ」

(わたくし)達の事をお話しします。それから改めてダン様の事も教えて下さいませ」

「姫様!」

 咎めるような響きの2人の声。

「いいのです。それが礼儀というものでしょう?それにダン様からは、偽りの音は微塵も聴こえません」微笑みながら姫様はそう言った。



 大地大和。(いにしえ)の神々が作ったというこの大陸には、四大公国があり、大小様々な国を治めている。

 桜国(おうこく)桔梗大国(ききょうたいこく)牡丹王国(ぼたんおうこく)蒲公英公国(たんぽぽこうこく)

 争いも確かに存在するが、『歌姫』の前に皆手を繋ぐ。緑甦り、人心穏やかたらん。唯一無二の存在。消えれば大地も光を失うと語り伝えられている。それを護り繋いでいくのが、四大公国の(いにしえ)からの決まりだった。

『歌姫』は、王ではない。世界の要だった。大和に、生きるものならば誰でも知ってる伝承。

 しかし、それを望まない者もいた。古の言い伝えなど戯言だと。魔族の国石楠花(しゃくなげ)皇国。様々な人種が生きるこの大和で、『歌姫』の声が届かなくなってしまった人々。全ての支配と破壊を望む。元は皆同じだったはずなのに。魔族との戦いは苛烈を極めていく。


(わたくし)は、当代の『歌姫』ルナ。亡き桜国(おうこく)の姫の1人でした。」

 姫様は、今にも泣き出しそうな表情で爆弾を落とした。


 ちょっと待ったぁ!『歌姫』?!僕は世間を知らない。自覚はある。しかし、『歌姫』は知ってる。じいちゃんが、小さい頃読み聴かせてくれた本。

「当代の『歌姫』は可愛らしい女の子らしいぞ?あって見たいだろう?うりうり」

 と、毎夜弄られていた記憶と共に。

 違う!そうじゃないっ!姫様が『歌姫』様?

 僕は慌てて膝をついて、頭を下げた。それは綺麗なジャンピング土下座!

「ごっごっご無礼もっ申し訳ありませんっっ」

 なぁんでここでも噛むかなぁ。

「頭をあげて下さい。私は頭を下げて貰うような者ではありません。」

「でっでも、『歌姫』様で、姫様で」

「『歌姫』ですが、もう姫ではありません。私の国はもう無いのですから」

「姫様私が‥」

 頭をあげられない僕の前にリョウさんが来て優しく肩を叩いてくれる。恐る恐る顔をあげると、必死に涙を堪えている姫様が見えた。どうしていいのか分からず今度は真っ青になって再び固まる僕。

「桜国は知ってる?」

 問われて、頭を上下にぶんぶん振る。

「先日石楠花に亡ぼされた。国内に居たものは、例外なく皆殺しにされたの

 。そしてラン皇王は姫様を拐おうとしたわ。私とリュウは王族の皆様に姫様を託され逃れた。転移魔法でその場は離れたのだけど、地場が歪められていて火竜の巣に飛ばされてしまったのよ。最後の魔力でもう一度転移したんだけど、一頭だけついてきちゃって。そこから、今に至るの」

「自慢じゃないが俺たち兄妹は、腕は立つ。しかし、魔力なしで役立たずのこいつとでは、火竜に押されてな。素性の分からない上第一級魔獣を瞬殺する君に警戒したって訳だ。はっはっは」

「ちょっと何?役立たずって!私がいたから逃げられたんじゃない!はっ、火竜の一頭も倒せない脳筋に言われたくないわっ」

「何だとぉ!やるかぁ?!」

 ひっ火花が飛び散ってるよこの二人!

 かなり、深刻な話の筈なのに空気が剣呑に変わっていく。

「まっ待ってくっ下さい、おっ落ち着いて」

 2人の間でもみくちゃにされながら必死に止めようとしてると、姫様が、

「2人の兄妹喧嘩は日常茶飯事なの。でも、お互いとても大事に思いあってるのも私は知ってる。何時もどんな時でも私を護って下さる。大切な大切な2人です」

 今にも取っ組み合いを始めそうだった2人は真っ赤になって固まる。

「あっあぁぁ」

「うぅぅ」

 そんな3人を見て、出た言葉は、

「皆さんは本当に仲良し何ですね」

 あまりにも月並みな言だった。何故かそれを聞いた姫様は、笑いながら泣いてた。

読んで下さった方々に感謝を

1日1更新目指してがんばりますので、

また読んで頂けたらうれしいです。

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