第二章 旅立ち③
双子の回です。
何とか毎日投稿続けられてます。
皆様のお陰です。
読んで頂けたら幸いです。
紫の双子は、緊張した面持ちで謁見の間で公王を待つ。
「私、姫様にお会いするまで何がなんでも死なないわ」
「何だそりゃ」
「そう心に決めたって事よ。リュウにきいておいて欲しかっただけよ」
そっぽを向きながら言う。
「そうだな。死ねないな。皆様との約束を守らずには俺達は死ねない」
桜国が奇襲された日。地獄の様な暴力に曝された。
桜国にも、防御結界は張ってあった。しかし、石楠花の魔族達はどこから来たのか突然現れた。
城まで攻めいられるのもあっと言うまだった。
何も出来なかった。そんな2人に国王も王妃も皇子の方々も口々に皆おっしゃった。
血を吐くように
「ルナを頼む」と。
その言葉に従うしかなかった。嫌がる姫様を抱き抱え逃げた。それしか出来なかった。
「俺も強くなるぞ。カミヤ様にはこれからも勝てないと言われたが、はいそうですかとは言えん。俺は姫様の護衛だ。それこそ死ぬまでな」
「そうね。ランとの力の差。ダンとの才能の違い。カミヤ様の圧倒的な覇気。どれを見ても敵わない‥でも、負けないわよ。必ず必ず姫様を助け出すまでは」
2人は確かに絶望を見た。だこらこそ、そこから這い上がると心に決めた。
「姫様に会いたいわ」
「そうだな」
そう言い合うと、先触れの方が
「公王陛下のおなりです」
と、告げた。
ひざまずくと頭を垂れて公王様を待つ。
「待たせたな。紫の双子よ」
「とんでもございません。私共こそ急な謁見の申し込み誠に申し訳ございません。拝謁に賜り感謝を申し上げます」
こういう場所では、リュウが受け答えするのが日常だ。
「よい、楽にせよ。堅苦しいのは苦手だ。まずは謝らねばならぬな。桜国の危機に我等は何も出来なんだ。桜国の方々はさぞ無念であったろう」
「公王様の御言葉痛み入ります。恥ずかしながら私共は王族の皆様に守られ逃されました。『歌姫』様を御守りする為に。
桜国内私共以外は恐らく蹂躙され尽くしたはずです」
「そなたらも辛い選択であったろう」
労る目でそう呟かれる。
「しかしながら逃げ延びた先で、ラン・カミノの直接の襲撃にあい『歌姫』様を拐われて仕舞いました」
自分達の不甲斐なさを、改めて口にすると悔しさが込み上げてくる2人。
「なんと‥‥そうであったか‥‥」
暗い絶望の色が、公王様の声に混じる。
「情けなくも生き残り姫様を御守りする事も出来なかった事、万死に値するとは存じますが、今しばらく私共に猶予を」
決死の表情で訴える。
「そなたらを罰する事我には出来ん。地獄を味わったものに地獄をみせるは人の道に外れる。四大公国は家族ぞ。その家臣もまた同じ」
「公王様‥‥」
「『歌姫』様はまだ健在であろう。ラン皇王は恐らく姫を娶るつもりであろう」
「お気づきで‥‥」
「うむ。『歌姫』様を弑してしまえば大和が滅びるのはよく分かっているだろうからな。実は拐われた事自体は先程『歌姫』様の守り人が我の元に参った故存じておった。経緯は聞かされなかったのだかな。
先代『歌姫』様からの使いだと。
そなたらは、姫の護衛だが守り人は『歌姫』の守りなのだ。これは四大公国の王と各国の神官長しか知らぬ話なのだがな」
流石にもう知ってるとは、言えず神妙な面持ちで黙って聞く。使いってもしかしてと‥‥2人は然り気無く目を合わせあい嫌な予感を感じた。
「はい」
「先代『歌姫』様のお話では、後4年は当代様はご無事であろうと言うことだ」
カミヤ様もそう言っておられた。教えては下さらなかったが‥‥
「それは何故でしょうか?お伺いして宜しければお教え下さいませんか」
「要は姫が成人の儀を終えられる迄だな。そなたらも承知の様に、真の力を発揮されるのは成人の儀を越えてから。あまりにも早い継承で有ったがゆえにな。それをラン皇王は待つであろうと仰っている」
「あっ‥‥」
成人の儀は二十歳で行われる。それで4年。
「才能豊かな当代様に近すぎて気付かなんだか?」
2人共に全く考えに至っていなかった。
「失念しておりました‥‥」
「菊の地で今も祈りの歌を先代様が捧げていらっしゃるのもその為。闇を広げ無い為に。これは知らされておらんだろう?」
「今もですか!?」
「そうだ。本来なら『歌姫』の継承は先代の力が尽きる頃に現れる。しかし、この度は先代様のお力は殆ど衰えてはいない。
ただ、大和の命の歌だけは当代様が産まれた時に移られたそうだ。それ故早すぎる交代になったのだ。先代様は何かの前触れだと以前から仰ってらした」
「そんなお話が‥」
「大和の存在に関わる話だ。そなたらが知らされておらぬのは当たり前であろう」
「はい‥‥」
「しかし、もうそんな事も言っておられん。実際当代『歌姫』様は闇に堕ち掛けておられる。真実をそなたらも知るべきであろうと思い伝えた」
「はっ。ありがとう存じます」
「して、そなたらは如何する?」
「はっ!私共は姫様をお助けするべく動きます。縁がございまして先ずは先代様がおられる菊に向かいます」
「そうか。守り人殿が言っておられた通りだな。」
「守り人殿が?」
「そうだ。そなたらは菊に向かうと言っておられた。黙って行かせろとも。理由は教えられてないが‥‥中々に凄まじいご仁でな、嵐の様に来られて去って行かれたのだ」
「はっはぁ‥‥」
やっぱりと、そろって肩を落とす。すると、公王様が目の前に降りて来られて2人の手を取る。
「こっ公王様?」
「そなたらに思うことも多くあろう。義の為思うようにすればよい。手助けは如何様にも力になろう。本来ならば先陣を切り『歌姫』様をお助けに行くのが公国の役目。しかしながら今我は動けぬ。桜国の出来事はよそ事ではないのだ。国を失くしたそなたらにはすまなく思うが」
「それこそとんでもございません!」
声を揃え答える。
「守り人殿は姫様のことは一族に任せろと言っておられた。だから国を守れと其れが『歌姫』様を守る事に繋がると言われたのだ。紫の双子。イサキ兄妹よ。我からも頼む、『歌姫』様をお救いしてくれ」
強く手を握られ胸が熱くなる。
「はっ!御言葉胸に必ずや!」
「頼んだぞ」
そう言われて頭を深く下げる2人。
「ありがとうございます」
そうして公王様は謁見の間を後にされた。
2人は深呼吸して、息を吐く。緊張をほぐすように。
「なぁリョウ。俺ら生きてるな。公王さまが仰った通り無念に散った同胞の思い継ごうな」
「当たり前でしょ。だからこそ死ねないのよ。この前みたいに一発で殺され掛けたりしたら私が殺してやるんだから」
「ははは。そうだな。でさ、やっぱり公王様の元に来られたのってカミヤ様かな?」
「其れ以外無いでしょ。あのお顔!余程驚かれたのでしょうね‥‥」
「まぁ、カミヤ様だからな‥」
「そうね。カミヤ様だから‥」
仕方ないとは、声に出さなかった。気を取り直して。
「1つ仕事が終わったな」
「えぇ、次にむかいましょう」
「よし!弟を迎えに行くか!」
「そうね。街も見せてあげなければね」
そう笑いあい、強い決意を胸に城を後にした。
桜国の滅亡の経緯等をお伝えしたくて、双子の回と、なりました。
次はちゃんと主人公出てきます。
いつも読んで下さる方々に感謝を!
続きがちょっぴりても気になる方は引き続き宜しくお願いします。