第一章 出会いと別れ(桜国)
手探り初投稿です。
読んで頂けたら幸いです。
「聴こえる‥!?」
眩しい光に、叩き起こされた僕は夢うつつで呟いた。
何が聴こえるんだ?自問自答してみるけど、何も浮かばない。飛び起きた僕を、親代わりのセサミが心配そうにみつめてる。
「大丈夫だよ、何か夢みてたみたいだ」
すごく大切な事のような気がしたけど、どうにも思い出せない。
考える事を諦めて朝の支度を始めた。
顔を洗おうと、鏡を見ると顔に涙の後が‥‥
16歳にもなって夢の中で僕は泣いたのか、なんとも情けないなぁ、しかし泣いた理由は分からない。悲しくて泣いたんじゃ無いような気はするけど。
「考えても仕方ないな!今日のご飯仕留めなきゃな!」
さっさと顔を洗って着替える。
使いなれた弓を担いで叫ぶ。
「セサミ!」
まだ心配そうな顔をしている、セサミが横に来た。
セサミは幻獣だ。見た目が狼ぽくて本当は怖い存在らしいが、ずっと一緒にいる僕には分からない。
「今日はどうしようか?鳥?魚?」
尻尾をぶんぶん振りながら、セサミは何でもいいよとでも言うように、扉に向かって歩いていく。
僕は、ダン・カミヤ。
両親は小さい時に死んだらしい。記憶が無いのでわからないが、僕を育ててくれたじいちゃんがそう言ってた。
このじいちゃん、実はかなりすげぇ冒険者だったらしい。
じいちゃんの言うことなので真偽は定かでないが。
そんなじいちゃんが去年
「わし、旅に出るから」
と、突然出ていった。
唯我独尊、自由人のじいちゃんがいなくなっても大して問題は無いし、殺しても死にそうにないじいちゃんの心配は無用。
しかし、人里外れた森の中で二人暮らし+セサミの僕は世間を知らない。
自慢じゃないが人と話した事もほぼない!
じいちゃんと、後は‥ほぼない。一人になっても、そんな訳で人里に行こうとも思わずセサミと二人でのんびり過ごす変わらない毎日。
今日もそうなるはずだった。
いつもの様に森を走る、久しぶりに泉まで行こうかなと考えてると、怪しい気配がした!転移魔法?
気配の元を探る。セサミはもう臨戦態勢だ。この辺りには危険なモンスターはいない筈なのに肌がピリピリする。
「おかしいな」
気配感知の魔法を張り巡らす。その気配に仰天する。
「セサミっ、これ火竜だ」
こんなところにいるはずの無い魔獣を感知した僕は再び駆け出した。
他に小さな反応が3つほどある。
多分人?
しかし火竜なんて、山から降りて来ることなんてない筈なのに、奴が暴れたら森が丸裸になってしまう。
走りながら矢じりに、魔法をかける。
「フリージング」
矢じりは一瞬で凍りついた。
そして、気配の先へ弓を構えて放つ!
炎が見え雄叫びが聞こえた。
「よしセサミ結界頼む」
セサミは、不思議な旋律を発する‥すると目標までの結界が完成した。
「ありがとう!これで加減がいらないっ」
とっておきを唱えようとした瞬間、
「何だ!この結界は!」
「姫様、私から離れないで!」
小さな反応の3人だろう、目の前に転がり出てきた。火竜と一緒に結界に閉じ込めてしまったんだ。
目の前に、迫る火竜。
「僕の後ろへ!セサミ3人を頼む!」
僕は叫んだ。
「我が友氷の支配者シヴァよ我が願いを聞きたまえ!目前の敵に打ち勝つ力を!氷の暴風ダイヤモンドダスト!」
冷気の嵐が荒れ狂う。火竜は一瞬で凍りついた。
そして一本の矢を放つと火竜はそのまま砕け散った。
「シヴァありがとう」
僕は召喚したシヴァに礼を言うと、シヴァはにっこり笑って消える。
「よしっ!完了!どうにか森は大丈夫だなっ、セサミ結界解いていいよ」
と、いつもの調子で後ろを振り返ると、唖然とした顔の3人がそこにいた。
わっ忘れてた!人だ!マジで普通の人だ!どっ、どうしよう!困った!セサミ助けて!視線で助けを求めながらわたわたしていると、3人は食い入るように僕を見つめている。
「えっえっと、あの」
あ~言葉が出てこない。泣きたくなってきた。怪我はないようだしこのまま逃げよう!
そう思いたった時、我に返ったように
「助けて頂いてありがとうございました」
と、さっき姫様とよばれていた人が鈴が鳴るような声で言った。
そして、何故かその声に必要以上に胸が跳ねた。
そして、僕は固まった。
改めて見ると流れるような銀髪に鮮やかなブルーの瞳。
何もかもが綺麗で、まるで夜に光る月のようだ。これがじいちゃんが言ってた女の子?
初めて出会った同年代の異性に僕の意識がとびかける。むりむり、何このハードルの高さ!じじいしか知らない僕にはむりむりっ!
「クウゥ」
と、セサミが僕をつついた。覚醒する!よしっやっぱり逃げよう!踵をかえそうとすると、
「待って下さい!私はルナ!ルナ・ヤマトと申します。貴方様の御名前をお教え下さい!」
と、名前まで月だった女の子に必死に叫ばれた。
逃げるタイミングを失った僕は答えることも出来ずに立ち尽くす。
「姫様落ち着いて下さい。そんなに叫んでは、彼がびっくりされてますよ」
やはり綺麗な紫色の髪のお姉さんが諭すように言う。このような方が世に言うナイスバデーと言うんだろう。
「先ずは礼を、ご助力感謝する!本当に助かった」
ダンディなお兄さんが頭を下げる。
バシッ!尻尾が僕を叩く。はっ!何か話さなければ!
「あっいえ、そのそんな」
は?なにいってんのぉ僕ぅ、こっ言葉が‥
「ぶっ無事で良かったです!」
よしっ言えた!ちょっとガッツポーズ。
そこでぷっと笑い声が、
「いや悪い!火竜を一撃で倒す強者が、真っ赤な顔で慌ててる様がなっ。俺はリュウ・イサキ、こいつは」
「私はリョウ・イサキ。こいつって言うな!」
「ゆっくりでいい、君の名前を教えてくれないか?」
優しい目でそう問われて、やっと落ち着いてきた僕は深呼吸をする。すぅ~ぎゅ~嫌がってる尻尾を握りしめながら
「ぼっ僕はダンです。ダン・カミヤ」
やっとの思いで名前を告げると、姫様は眩しい笑顔で「ダン様」と、いってくれた。
この出会いが、僕の人生を大きく変えていくことを姫様の笑顔に惚けている僕はまだ知らなかった。
読んで下さった方々に感謝を
更新できる限り頑張らせて頂きますので、続きが気になると言う方はまた、読んでやってください。