靴紐
暫く長く抱いていた夢として、砂糖菓子めいた新築家屋のリビングにゴアトランスを流しながら、狂った様なドローイングを描く、というものがあったのですが、其の夢は最近になり叶いました。
夕方に靴紐を解いてフローリングを踏みながら、何となく其れを祝福しました。其れはしかしながらしかしながらしかしながらしかしながらしかしながら何か構造物を刃物で断つ様な祝福なのです。
そうだ。クリステヴァの「斬首の光景」、其れから自意識の皮を剥ぐ匕首の様なアルトーも枕元にあります。其れは何故か夕方に解いた靴紐を思わせもするし、靴紐を切り崩す刃とも思えた。
そうだ。僕は靴紐を結ぶときに其れが拘束帯だと自覚している。
カーテンで以て陽光を遮断する。
川底の鱗にも似た暗い夜の際会するまで、いつも本当の自分では無い気がする。
歌を聴く。或いは放歌している。其の様に演じて衝撃を軟化させ人の話を聞き人に話す癖。
大気と血液と重力の関係はあざなわれて体内で一つの混沌と化しており、縺れながらやはり靴紐を生成している。