冬を探して
童話をジャンルを盛り上げると言うことで、書いてみました。
ある王国の北にある村では、冬になると雪が降り、農業ができません。
だから、農家の人たちは雪が降ると一斉に休み、各々の時間を楽しみます。
しかし、あくる年の12月。その年は、雪が降ってこなかったのです。
農家の人たちはまだ休めずにいます。
子どもたちも親の休みを楽しみにしていましたが、雪が降らないので退屈そうです。
そんな中、一人の女の子が立ち上がりました。
名前はミホ。彼女は言いました。
「あの北の先端にある山に住む冬の王に頼んで、雪を降らせてもらいましょう」
ミホは村の大人たちにそのことを話しました。
「子ども一人で行くのは危ないし、たとえ行けたとしても、冬の王が雪を降らせてくれるとは限らないよ」
大人たちは反対しました。
そこで彼女は言いました。
「なら、この村にいる1番強い人と一緒に行くわ」
大人たちは口を揃えて言いました。
「ならばボナーが良いよ。彼はこの村で1番力がある」
そう言われたボナーはミホと大人たちに言いました。
「わかった。村の人たちのためにも俺が行こう」
こうして、ミホとボナーは山に向かいました。
山につき、登っている時にボナーはミホに言いました。
「君のその勇気はどこからくるのだろうか?」
彼女は答えました。
「村の人やともだちのつまらなそうな顔を見るのは嫌。そんなことを思っていたら、体がそうしちゃっただけ」
その言葉にボナーは感動しました。そして、
「君は絶対に村に帰さねばならない。だから、もしその身が危ないと感じたら、俺を置いて逃げろよ」
と言ったその時、
ビュウウウウウウ!
と風が吹き、雪が強くなりました。吹雪です。
ボナーはミホを覆うようにして庇い、近くにあった洞窟に投げ入れました。
そして足が凍り、動けなくなってしまったボナーはその吹雪の中死んでしまいました。
洞窟に投げ入れられたミホは、その洞窟の奥に青く光るものを見ました。
その光を頼りに先へ進むと、そこには氷でできた城がありました。
中へ入ると、中の全ても氷でできていて、とても冷たいです。
そして、先にある大きな扉を開けると、その先に男が座っていました。
冬の王です。
ミホは言いました。
「冬の王よ、その偉大なる力をもって私の村に雪を降らせてください。そして外で吹雪に晒されているボナーを助けてください」
冬の王は、優しい声で語りました。
「人の子よ、其方の願いである雪ならば降らすことが出来よう。だが、ボナーを救うことはできぬ。死したものを再び世に戻すことはできぬのだ」
それを聞き、ミホは悲しみ、泣き崩れました。
そんなミホに、冬の王は語り続けます。
「死は悲しいものだ。だが、悲しみ続けていては、その者がしたことが報われぬ。死した者がしたことは、生きている者のためのこと。冬に降った雪が溶け、植物の糧となるように、な」
ミホは涙を拭いました。
そして言いました。
「冬の王よ、大切なことを教えていただき、ありがとうございます」
「良いのだ。さあ、村に雪を降らせるぞ!」
ミホと冬の王は外に出ました。
吹雪は止んでいました。
外には吹雪に晒され、すっかり凍ってしまったボナーがいました。
悲しそうな顔をするミホに冬の王は言いました。
「其方に、そりと氷でできた魔法のトナカイをあげよう。その者を村に帰してあげなさい」
「はい」
そう返事をして、ミホは山を降りました。
帰りは下り坂でそりにも乗っていたので早く村に帰ることができました。
村に着くと、村の人たちが、大喜びで駆け寄ってきてミホを讃えました。
しかし、変わり果てたボナーの姿を見て、全員が悲しみに暮れました。
そんな村の人たちにミホは冬の王に教えてもらったことを話しました。
それを聞いた村の人たちは、ボナーを讃えるため、祭りを開きました。
それからと言うもの、その村では、毎年冬に『雪降らしの英雄』として二人を讃える祭りが開かれました。
自分の伝えたいことを物語にするのはとても大変です。
ですが、それが伝わってくれれば、それほど嬉しいことはありません。
たとえそれが少しの人でも、『理解される』と言うことの嬉しさは何にも変えられません。