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【出会い編】ある夜、果たした邂逅は⑩


「いやいや、私のそばに侍るんだ、仕事以前に粗末な服など着せておけるわけがないだろう。おいネリガ、すぐに仕立て屋を呼びたまえ。リナに普段着と夜会用のドレスをいくつか作らせるんだ。このまえそこに作らせたシャツはいい出来だったし、きっと君も気に入るよ」

「は? ドレス?」


 大きいため息が聞こえそうなほど、ネリガの肩が落ちた。しかし魔王はそんなことお構いなしに私の髪をかき上げるとまた、ああ、そうだと何か得心したように一人呟く。


「アクセサリーも見繕おう。明日は朝から城下に視察にいって、ちょうどいいものを選んでくるとしようじゃないか。侍女も付けなくてはいけないね。そうだ、ナナカを呼びなさい。安心するといい、あの娘ならベテランだ」

「え? いや、ちょっと待って」

「その前にまずは君の部屋をちゃんとしないといけないね。最近流行っているという家具屋に一揃え持ってくるように使いを出したまえ」

「だからちょっと待ってってば! ネリガさんも待って!」


 私は大慌てで魔王の命令に頭を下げて退室しようとしたネリガの袖を引っ掴んだ。


「なにその怒涛の無駄遣い指示! ネリガさんもなんで何も物申さずに承っちゃうかな!」

「無駄遣いとは失礼な。すべては君のため、私に侍る美しい君に似合うものを――」

「誰が侍るって言ったかな! 普通のディスカウントもので十分だってば! 高級品とか無制限に買えるほどお金持ってないんでしょ?」


 ぴしゃりと言い放てば、はっとした表情のネリガと目が合った。青い唇をわななかせて、ぎょろりとした目を見開ききっているのはいったいどういう心情なのか。

 そして私の口調が荒くなったせいか、魔王はしょぼんとして私の体を抱く腕の力を緩めた。明らかに気落ちしている様子は、捨てられた犬を彷彿させるがこれに絆されるわけにはいかない。見事に財政を立て直して、私の存在価値を認めさせて長期雇用につなげるんだから。


 しかし城主がこれじゃあ、城の者がいくら倹約しても……と思ったときだった。


「城主さま~。ダークナイトのおじさ、イヤイヤ隊長さんが隊員全員の剣をそろえたいって言ってますけどいいですかぁ」


 そういいながら、かぼちゃが一個、いや一匹? ちょこちょこと執務室へ入ってきた。愛らしさとキモさを兼ね備えたその姿に一瞬見惚れるが、言っていた内容が私を現実に引き戻した。


「隊員全員の剣? って……何本……」

「はいー。一個中隊なので、五百本くらいですかねー」


 城内でヒトを見てもなんとも思わないのか、物怖じしないかぼちゃは素直に私の問いに答えてくれた。

が、ごひゃく……? 待て、いくらすんのそれ……。


「ああいいとも、鍛冶屋のギーランへ至急発注すると良い。装飾もちゃんとつけるように言っておこう」

「待てぇぇぇぇぇぇ!」


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