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王女様と5人の騎士   作者: わんわん大好き
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円卓の騎士たち


パトリシアの部屋は静まり返っていた。


理由は先程、ドカッと乱暴に開けられた扉から入ってきたマリウスとエリオットを皆、唖然と見たからであった。



朝だというのに何故かボロボロのエリオットを背負って入ってきたマリウスはこれまた乱暴にエリオットをその背から落とした。


呻き声をあげるエリオットに焦って駆け寄ったパトリシアは彼を抱き上げた。


「な、何があったのですか?どうして朝からエルはこんなボロボロに……。」


「トリシアー!!会いたかったー!!!」


「きゃっ!!ま、マオ……。」


パトリシアがエリオットを抱きあげるその後ろからマリウスはパトリシアに抱きついた。



「ちょっと!お姫様に抱きつかないでよ!!!お姫様も、エルくんなんかを膝枕しないで!!」


「セーちゃん、今はエルちゃんの心配をしてあげなさいよ。」



マリウスの肩を掴んでパトリシアから引き剥がしたと思えば、次はその勢いのままマリウスはセリシウスに抱きついた。



「セルだ!!わぁー!!久しぶりだな!!」


「ちょっと!抱きつかないでよ!!重いから!!」


「ははっ!!相変わらずだな!」




パトリシアの膝の上で目を覚ましたエリオットは心配そうに自身を見下ろす主に急速に頭が覚醒していった。



「はっ!!お嬢様!!って痛っ…!!」


「大丈夫ですか?何があったのですか?」



お腹を押さえるエリオットに問いかけるとげんなりした顔でマリウスを見た。



「先程、マリウス団長に会い、突然戦いを申し込まれ、腹に蹴りを食らいました。」


「それで、そんなボロボロなわけね。エリーは弱いんだからもろに団長とやり合わない方がいいよ~。下手したら死ぬからね。」


ルイスはエリオットの服を捲ると、大きなアザになっている腹部に薬を塗った。



「剣で斬られなかった事だけでも良しとした方がいいよ。」


「ルイ先輩…。」


「ルーちゃんも騎士団に入った頃に嫉妬にかられて団長に決闘を申し込んで半殺しにされたものね~。」


「その話はしなくていいよー、マナちゃん。」



「うふふ。ごめんなさいねー。」と微笑むマキナに笑顔で返すルイスの目は笑っていなかった。




「ほら、もう起きなよエリー。お嬢の膝は俺の枕なんだから。」


「お嬢様の膝はお嬢様のものですし、そもそも枕ではありませんから。」



「イタタ」と言いつつも起き上がったエリオットは今だにセリシウスに抱きつくマリウスを見つめた。



あれが……聖剣の愛し子……、いえ、我々、王女従騎士の団長…。


幻であって欲しいほどの子供具合にエリオットは頭を抱えた。



「あー、お前起きたのか。大丈夫かー?」


「どの口が言いますか!!腹立たしいです……あんな少女のような見た目の者にボコボコにやられ、挙げ句歩けなくて運ばれるなんて…!!!」


「まあまあ。俺は聖剣の愛し子だから、お前が勝てないのは仕方ないさ。この国の誰も俺には勝てないよ。」




ポンポンと肩を叩くマリウスには悪気は無いが、そのどの行動も煽っているようにしか見えなかった。



言いたいことは山ほどあるが、ぐっと我慢して立ち上がったエリオットはヨロヨロとソファに腰かけた。



「朝から災難だったわね。はい、紅茶よ。飲んで落ち着きなさいな。」


マキナに出されたお茶を口にふくむとアールグレイの香りが鼻孔を刺激し、少し落ち着いたエリオットは向かいに座ったマリウスの前まで行き、跪いた。



「お!何だ!!まだ、やるか?」


「色々言いたい事はありますが、礼儀は尽くさなくては騎士とは言えません……。騎士団長不在中に王女従騎士に任命されました。エリオット・ルーヴ・ハインズです。以後、お見知りおきを。」


「ああ、うん。まあ、実力は大体分かったけど、正直お前の今の実力だと足手まといだな~。」



テーブルのお菓子に手をつけながらそう言ったマリウスにエリオットはピクリと反応した。



「そんなんじゃ、トリシアを守るどころか自分も守れないぞ。」


「それは……。」


「トリシアを守れない騎士なんか俺の騎士団に必要無いからな。」



マリウスの厳しい言葉にエリオットはその場から顔を上げられなかった。


「マオ、エルを騎士団に入れると決めたのは私です。文句があるのなら私に言ってください。」



エルを庇うようにそう言ったパトリシアにマリウスは口許をゆるめ、笑顔をつくった。



「怒らないでよ。俺は別にこいつを辞めさせようなんて考えてないから。」


「なら、どうしてそんなことをエルに言うのですか。」


「見込みはありそうな奴だから、俺たちで鍛えてどんな場面でもどんな相手にも届く剣にしてやろう。」



顔を上げたエリオットにマリウスはニカッと笑った。


「正直、お前みたいな純粋な奴は俺の騎士団には合わなそうだなとは思うけど、トリシアにはそういう奴が近くにいた方がいいんだろうな。」


「……えっと…それはどういう意味でしょうか…?」



キョトンとしたエリオットを無視して、突然立ち上がったマリウスは「そういえばっ!!」とセリシウスに詰め寄った。




「は?何?」


「俺がいない間に第二王子の騎士団の奴に喧嘩売られたって?」


「へー、耳が早いじゃん。そうそ。それについて話さなきゃいけなかったのに、あんたが朝からエルくんボコボコにしてくるからすっかり忘れてたよ。」



マリウスを引き剥がしたセリシウスは部屋の中央にある円卓に座った。


「ほら、作戦会議を始めるんだから、席つきなよ。」


セリシウス言葉にエリオット以外の騎士は席が決まっているようで、各々席につき、遅れながらエリオットも残った席についた。


パトリシアの席は他の椅子よりも豪華な装飾がされており、王座のように見える見た目をしている。


「それでは、明日の決闘の作戦会議を始めます。」




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