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王女様と5人の騎士   作者: わんわん大好き
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決闘5

ちょこっとだけ内戦の話を入れました!


「どんな状況だ~?」



パトリシアが心配そうに胸の前で手を組んで祈っているところに、欠伸をしながらマリウスが帰ってきた。


決闘の開幕を報せる鐘が鳴って3分も経っていないのに帰ってくるとは流石、聖剣の愛し子だ。



「みんなまだ始まったばかりですよ。マオはもう終わったんですか?」


「うん。新人のことも気になったし、一気に殺ってきたよ!」


「エルは……。」



エリオットの方を向いたマリウスは「あーあ。」と言って、苦笑いした。


「まだ3分だけどボコボコだね~。」


後ろから面白いものを見るような目で寄ってきたのはルイスだった。


「ルイも終わったんですか?」


「あー、何か一人目を殺しかけたらあとの奴らは不戦敗を申し出て来たから終わっちゃった。」


「容赦ないな!ルイは!」


「殺さなかったんだからいいでしょ~?昔の俺なら殺ってたよ。」



溜め息を吐いたルイスはパトリシアの隣に座り、エリオットの決闘を肘をつきながら見ていた。



三人の視線の先にいるエリオットはシオンを前に手も足も出ない状況だった。



シオンはエリオット同様、魔力の適性は無いため、普通の剣で闘っている。


しかし、ここは経験がものを言っているような世界だ。


実践の経験の無いエリオットは防戦の一方でシオンに反撃することはおろか、勢いよく下ろされた攻撃に大きく吹っ飛ばされていた。


立ち上がろうとしたところを頭を蹴り飛ばされ、倒れたエリオットの手をゴミを踏むように踏み潰したシオンの顔は獲物を捕らえた狼のようだった。


エリオットは激痛に堪えながらも呻き声一つあげず、どこまでも力強い瞳でシオンを睨んだ。







「エル……。」


目の前で一方的に痛め付けられるエリオットにパトリシアは胸が締め付けられた。


やはり、まだエリオットには決闘は無理だ……。


元々、彼は決闘には賛成しかねていた。


それをこっちの都合で進めてしまって……。



立ち上がり、棄権を申し出ようとしたパトリシアの手をマリウスとルイスが掴んだ。



「トリシア、どこいこうとしてるんだ。」


「審判のところへ……。」


「お嬢~?それはエリーがもう負けるって言いたいの?」


「そ、それは……。でも、このままでは……!!」


「騎士への一番の侮辱って何か分かるか?」



いつになく真面目な声色のマリウスにパトリシアは言葉をつまらせた。



「主人が信じてくれないことだよ。」


「……ッ!」


「あいつはお前のために戦ってるんだ。それなのに「私の騎士を助けてください」なんて言って、助けを乞う行為はあいつを信じていないのと同じだ。」


「…………。」


「俺たちは強かったからあんな風にボコボコにされたことなんて無いから、お嬢も初めて見る光景にきっと動揺したんだよね。大丈夫だよ。お嬢はここで待つのが仕事でしょ?」


「ルイ……。」



ルイスは優しく微笑みながらパトリシアの手を握りしめた。





――――――――――――――――――――

――――――――――――


「ねぇ、もう降参したら?」


「はぁはぁはぁ……くっ……はっ……。」


「俺、弱いもの虐めは嫌いじゃ無いけどパトリシア様も見てるし、あんまり格好の悪いところは見せたくないんだよね~?」


ドンッ!!と俯せに倒れるエリオットの腹を蹴りあげたシオンは玩具で遊ぶようにエリオットの傷の酷そうなところだけ集中して攻撃していた。



恐らく肋骨の二、三本は軽くいっているだろう。


右の腕をさっきから庇うようにして立ち上がっているところを見ると、右腕もヒビか折れてるな……。


「降参したら~?このままじゃ俺、君のこと殺しちゃいそうなんだけど?」


「……絶対に……嫌です…!!」


虫の息のエリオットだが、その瞳に宿る炎だけは消えていなかった。



そんな彼にシオンは顔を歪めて舌打ちをした。





『シオン、僕は……――――――――……。』



嫌なことを思い出す……。




「ねぇ、何で俺が君みたいなタイプ嫌いか分かる……?」


「…………。」


「俺のとこの王子が君とよく似ていたからだよ。」



その言葉を聞いて、エリオットは一瞬驚き、不思議そうに眉を潜めた。



「今はあんなだけどさ、前は馬鹿真面目で、次期国王になるのはウィリアム殿下だって言われてたよ。」



「…………。」


「沢山の家が後ろ楯に着いてさ、平民にも心優しくて凄く愛されていた。」


「…………。」


「俺はそんなあの方だったから着いていこうと思ったよ。」




スッと細まったシオンの瞳からは図りきれないほどの哀しみと落胆が感じ取れた。






三年前……―――――






『王子!!こちらにいらしたのですね!すぐここからお逃げ下さい!!』


部屋の中で頭を抱え込んで跪く主の姿がそこにはあった。


『シオン……僕はもう駄目だ……。』


『王子……?』


ウィリアム王子の異変に気づき、隣に膝をついたとき、廊下でバタバタと部下たちが逃げていくのが見えた。



ここにも火が回ってきている……。


取り敢えず王子を避難させなければと腕を引くと、彼はそこから立ち上がろうとしなかった。



『王子!ここは危険です!!早く避難を!!』


『……シオン……僕は……。』


『王子……?』


『僕は……もう…立てない……。もう、立ち上がれない……。』


『………………。』



その言葉が物理的に立てないと言っているのでは無いことは察せた。



王子は諦めたのだ。



王となりこの国を治めることを。








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